1秒先の彼女

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1秒先の彼女

解説

「熱帯魚」「ラブゴーゴー」で“台湾ニューシネマの異端児”として注目を集めたチェン・ユーシュンが監督・脚本を手がけ、2020年・第57回金馬奨で作品賞を含む5部門に輝いたファンタジックなラブストーリー。郵便局で働くシャオチーは、仕事も恋も冴えない日々を送っていた。そんなある日、彼女は街で出会ったハンサムなダンス講師ウェンソンと、“七夕バレンタイン”にデートの約束をする。しかし彼女がふと目を覚ますと、既にバレンタインの翌日になっていた。シャオチーは失くした大切な1日の記憶を取り戻すべく奔走するが……。

2020年製作/119分/G/台湾
原題:消失的情人節 My Missing Valentine
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2021年6月25日

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映画レビュー

3.0よくもわるくも台湾の大らかさ、素直さが醸し出ている。しかし男は全員変なやつ!

2024年4月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

単純

幸せ

1秒先に動く彼女とか、ワンテンポ遅れている彼とかの設定は中盤から最早どこかにいってしまった。(笑  脚本も大味というか。薄いというか。

でも、なんだろう。ほんわか温まるのよね。
大らかで素直な台湾が醸し出ていて、なんだか空気感がいいのよ。
それだけで成り立っている。それだけで観れる。

※しかし、出てくる男が見事に全員癖のある問題男や変態男ばっか!
  ・思いっきり直球セクハラ発言の上司
  ・バスの隣席に座って触ってくる変態親父
  ・干してる下着を匂う変態男
  ・失踪する父親
  ・主人公に近づく詐欺師
  ・主人公を追う盗撮&ストーカー&拉致男!
 台湾って変な男ばっかなの??

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momokichi

4.5時間操作系×恋愛物の男女格差を思う

2021年6月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

幸せ

本作については当サイトの新作評論の枠に寄稿したので、ここでは補足的な論考を書いてみたい。

初見の際、ワンテンポ早いシャオチーとワンテンポ遅いグアタイのそれぞれのキャラクターが好ましいと思ったし、彼女の失われた1日と彼の与えられた1日という種明かしや、街の人々がマネキンチャレンジよろしく静止した「フローズン・タイム」に出てきたような光景に感嘆したり、路線バスが海の道を走るスペクタクルに感心したりと、おおむね好感とともに鑑賞していたのだが、身動きがとれず意識もないシャオチーに対してグアタイが行った行動には、SF映画「パッセンジャー」を観た時に感じた居心地の悪さもあった。観終わってからプレス資料の中で山内マリコ氏が「無抵抗の女性を男性が好き勝手するのは、観ていて少しヒヤヒヤする」と書いているのを読み、やはりそう感じる人も少なからずいるのではないかと思った次第。

で、新作評論では「恋慕の情に突き動かされた行動が相手の気持ち次第でロマンチックにもセクハラにもなる」「恋愛を扱う創作物が何世紀にもわたって語り、刷り込んできた悪しき伝統」と書いた。本作の仕掛けはタイムトラベルやタイムリープとは異なるものの、ここではループものも時間停止も含めて大雑把に“時間操作系”とくくるとすると、時間操作系と恋愛物を組み合わせた映画は、振り返ってみると男性が女性に働きかけてロマンスを成就させようとする筋が圧倒的に多い。「恋はデジャ・ブ」「バタフライ・エフェクト」「アバウト・タイム 愛おしい時間について」などがすぐに思い当たる一方で、男女を入れ替えたパターン、つまり女性主人公が時間を戻って意中の男性をモノにする、みたいなストーリーはほとんど作られてこなかったのではないか。

そもそも時間操作系の映画で女性主人公が絶対的に少なく、例外的と言える「時をかける少女」にしても、細田守監督のアニメ映画版では、ヒロインがロマンスを成就させるのとは逆に、仲の良い男子との関係が恋愛に発展するのを阻止するためにリープ能力を使っていた。

これは時間操作系に限らないが、男性が試行錯誤して(時にはチートもいとわず)女性を射止めようと奮闘するのはコメディになるが、逆のパターンは笑えないとか、恋愛の成り行きをあからさまに主導する女性は“はしたない”などといった、長年の固定観念から作り手も受け手も抜け出せずにいるのではないか。

映画に限定しなければ、ロバート・F・ヤングのSF小説『たんぽぽ娘』や、竹宮惠子の漫画『私を月まで連れてって!』など、時間旅行を行うロマンスないしラブコメのヒロインは少ないながらも登場してきた。いつか時間操作系×恋愛物の映画でも、ジェンダーのステレオタイプを脱却した斬新なストーリーに出会えることを心から願っている。

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高森 郁哉

5.0すれ違って来た男女にご褒美のバレンタインデーが

2021年6月26日
PCから投稿

泣ける

笑える

悲しい

子供の頃から人と比べて何をするにもワンテンポ早い郵便局員、シャオチーと、逆に、いつもワンテンポ遅れるバス運転手のクアダイ。ただ毎日郵便局の窓口で顔を合わせるだけだった2人の運命が、バレンタインデーに激変する。と言うか、知られざる彼らの歴史が、空白の1日に詳らかにされる。シャオチーの記憶から突然消え去ったバレンタインデー。その24時間が、クアダイにどんなチャンスを与え、シャオチーにとっていつも謎だった過去の出来事の意味を浮かび上がらせるのだ。たった1日のタイムトリップを利用して、凝ったSFXやびっくりするような展開を用意せずに、ただ、ゆっくり生きることのご褒美を描く映画は台湾発。『熱帯魚』や『ラブゴーゴー』で冴えない人々にスポットを当て、そこから、オフビートな空気感と台湾人らしい優しさと人情を浮かび上がらせたチェン・ユーシュン監督の最新作である。ヒット狙いの大作が好まれる昨今の台湾映画界にあって、作りたい映画しか作れないと語るユーシュンの映画人としての在り方が凝縮されたような本作は、やっぱり台湾人の郷愁をそそって昨年の台湾アカデミー賞、金馬奨を制覇した。僕らが大好きな台湾と台湾人、そして、のどかな風景とスイーツ。それを丸ごと体感できるのがコレ、『1秒先の彼女』なのだ。

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清藤秀人

5.0失くしたものに夢と未来を乗せる

2024年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

そもそもオリジナル故、ストーリーに違和感はない。
よくできている。
主人公のヤンも背伸びがなく等身大な感じでいい。
すべてに理由が存在する。
さて、
すべてが止まってしまった世界で、秘密基地から帰ってきたバスの運転手ブアタイは、歩いている男を発見しバスを停めた。
男の様子からヤンと知り合いのようで、男はヤンに向かって話しを始めた。ヤンの父…
彼の話 ストップモーションの理由 世界の不思議 世捨て人と自分探し…
やがてバイクの男が現れる。バイクはなぜか反対車線に割り込んでバスと対面停車する。バイクにとってもいま動いているのはイレギュラーだ。同時にバスを動かしているのはヤンの父だと思ったのかもしれない。
おそらくこの男は、ヤンの父が体験した最初のストップモーションの時に出会ったのだと思われる。意気投合し、一緒に自分探しをしているのかもしれない。
また、バイクは来た道を戻らずに先へと進んだ。それは、この二人は次回同じ体験をするときに、何かしたいことがあったのではないか? 情報が少なすぎて妄想さえしにくいが、この部分に秘密の扉が隠されている気がする。
また、
映画に多いナレーション
それは登場人物の心の声。
もちろん違和感などない。
しかし、
あくまで個人的な意見だが、日本版と比較するとオリジナルにはナレーションはない。
運転手は想いをダイレクトにヤンに話している。あまり差はない気もするが、気にすると大きな差に感じる。
また、
運転手はすべてを片付け終え、ヤンを自宅まで届ける。
ずっとずっと想いを寄せていた彼女 寝顔
キスしようとするがなかなかできずに朝になってしまう。
ようやく勇気を振り絞って、額にキス
そして「最後の手紙」を書く。
ヤンの部屋にあったチラシの裏に、「秘密基地」の場所と手紙。
面白いのが「彼の常識的センス」
ストップモーションの時に自分が勝手にヤンをいじくりまわしたことに対する反省
誰がどう見ても「変態野郎」という認識を端然と自覚している。
でも、とうとう想いを叶えたのだ。
運転手は、
ダンス男の正体を伝えられず、姉を騙したとバスに乗り込んできたチンピラの制裁
まさかそこに運転手も乗りかかってくるという展開
でも一蹴される。
結局何もできないという絶望。
バスの勝手な運航に対する厳罰の覚悟。
すべて失ったとバスで眠る。
朝目覚めると空中に静止する蚊 突如起きた奇跡 ストップモーション
運転手がこの機に乗じたのは間違いない。
でも、思いを叶えることができた満足感。
変態野郎では、彼女に申し訳が立たない。
腹を決め、彼女のいる窓口で最後の手紙を出す。
「さようなら」
しかし、
「豆花」の声に思い出した彼女の父との約束。
慌てて道路を渡る瞬間の悲劇は、ナイスアクションだった。
視聴者も息を吞んだだろう。
「この恋はまだ終わらない」
神の声が聞こえてくるようだ。
ずっと前から動いている1秒遅れの彼
それに気づいてやっと動き始めた1秒先の彼女
幼いヤンは病院で約束した文通のことを忘れていなかった。
ただ、2度書いただけだった。
住む場所が離れていることで私書箱まで来れないヤンは、次第に文通のことを忘れていった。
この作品のテーマ「失くしもの」については、最初からラジオが話している。
ヤンの父もまた「失くしもの」かもしれないし、私書箱の鍵も「失くしもの」だろう。
しかし最大の「失くしもの」とは、ヤンの記憶ではないだろうか。
幻覚で見たヤモリの親父
「どうでもいいものが失くしものになる」
それが、写真屋で見つけたヤン自身の見覚えのない写真につながって、「あの私書箱」の発見につながった。
それが誰からだったのかはっきりとわかったが、彼はもう二度と姿を見せなかった。
異動先の郵便局の私書箱にも、あれ以来手紙は届かない。
やがて、松葉杖の彼が現れる。
あれ以来探し続けた彼がとうとう姿を見せた。
頭には様々なことが思い浮かんだだろう。
だから、思わず涙が頬を伝う。
そして今までのいきさつを話そうと、今晩会う約束。
「ある人」から頼まれたと言って渡す豆花
同時に男も声が詰まってしまう。
二人の情熱とすれ違いが見事に表現されていて、最後のシーンでは涙がこぼれてくる、
物語のすべてが「二人が再会する瞬間」だけのために描かれているのだ。
勝手にそう妄想すると、テイストを変えたリメイクは「その瞬間」をどこにするのか決めることから始まるのだろう。
見た順番が逆だったが、台湾俳優陣も一般的な台湾人という印象でかなり等身大でこの作品に挑んでいるように感じた。
それだけ原作が素晴らしいのだろう。
失くしたものに夢と未来を乗せる。
素晴らしい作品だった。

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