約束の宇宙(そら)のレビュー・感想・評価
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挑戦する全てのパパ、ママへ
どんな仕事であれ、立場であれ、愛する子を想う母としても気持ちはみんな同じ。
主人公の娘を仕事場に入れることや、その他諸々突っ込みどころもあるし、実際にはあってはいけない事ではあるが、彼女の“子供と少しでも一緒に居たい”、“約束を守りたい”、毎日娘と電話で話したい気持ちは、強く共感する。
仕事(または介護や勉強など)をしながら子育てに奮闘するお母さん達(お父さん)は日々、子どもとの時間や教育と自分の仕事ややるべき事との葛藤で闘っているのではないだろうか。
その葛藤や頑張りって必ず子供達にも伝わっているはずで、子どもはそんな親の背中を見て育つ。だからこそ親は子供のために自分を犠牲にするのではなく、自分がハッピーになることを一番に考えるべきだと。親の笑顔が子どもを笑顔に、幸せにすると信じている。
エンドロールには子育てをしながら宇宙へ旅立った実在の宇宙飛行士達が出てくるが、
偉大な仕事をしながら、さらに子育ての両立となると強靭な精神力と体力がないと成し遂げられない。こちとら1泊2日の出張でも寂しくて不安なのにに、一年近く離れるのは相当な覚悟と腹をくくったはずである。
そして周りの強力なサポートがあってこそ実現できる事、一人では子育てはできないということを改めて痛感。
ロケットが発射した時のシーンには感動。賛否両論あるけれど、私はとても良かった。特にバリキャリママやシングルマザーに観てもらいたい。
宇宙に行くのは大変なんです
言うまでもないが、現時点で宇宙へ行くというのは大変リスキーな行為だ。
まず、そもそも打ち上げが成功する保証がない。以前に比べれば遥かに成功率が上がったとはいえ、少しの間違いで打ち上げが失敗すれば、搭乗者は確実に死ぬ。そして無事に大気圏外へ行けたとしても、宇宙にいる間、地上へと帰還するまでは常に死と隣り合わせなのだ。
それでも、宇宙を目指す人は多い。わたしだって行けるものなら行ってみたい。重力の軛を離れて、遮るものもない無音の空間に身を委ねることに、憧れる。この作品の主人公サラも、幼い頃から宇宙への憧れを持ち続け、遂に飛び立つ権利を得た人だ。
けれども、彼女にも心残りが一つだけある。幼い一人娘ステラ。宇宙への憧憬はその名にも反映されている。これは、やっとの思いで掴み取った夢と、娘との別れという現実の間で葛藤する女性の物語だ。
一般論として、やはりこういう時は父親より母親の方が葛藤を持つものだろうか。映画の中でも対比として、一緒に宇宙へ上がる飛行士マイクの存在がある。彼は二人の男の子の父親だが、少なくとも子供と別れることに逡巡する様子は描かれない。子供たちも父親を英雄視しこそすれ、別れを惜しむ様子はない。
けれどサラとステラの母娘は事あるごとに迷いや寂しさを隠さず、時には落ち込んで逃げ出したくなったり、或いは拗ねて反抗したりという様子も描かれる。その辺りはやはり父性と母性の差なのか。
物語は旅立つ母を見送る娘のシーンで終わる。スタッフロールに差し挟む形で、現実の、母親である女性宇宙飛行士たちの姿を映す。宇宙への憧れを叶える権利は、性別に関係なく与えられて然るべきものだ。とはいえ、性別による違いとは別の部分で乗り越えねばならない壁があることを示し、それでもなお夢を叶えた人たちへの賛辞がそこにある。
……という当たり障りのない感想はひとまず措くとして、なんというかちょっと物足りないものがあった。いや、たしかに上に書いたような映画ではあるのだけど、なんだろう、今ひとつ盛り上がりに欠けるというか。
多分、宇宙ものであるという意識で観たから宇宙に出るところまでで話が終わってしまって拍子抜けだったのと、クライマックスで母娘が約束を叶えるために重大な違反を犯してるのに、なんのペナルティもないのはちょっと都合良すぎない? というところで引っかかってしまったせいではないかしらね。後者は特に、変に正義感を振りかざして言うわけじゃないけど、もう手ょっと別のやり方でも良かったんじゃないかな。だって、それくらい、宇宙へ行くのは大変なんだもの。
タイトルなし
打ち上げまでの周りと主人公の心情を丁寧に描いたちょっとファーストマンよりな作品 車の運転(と一緒にしてはいけませんが)でさえ、考え事がある時は避けるようにとあるのでましてや宇宙船に主人公のようなバックグラウンドの人が本当に選抜されるのかと疑問に思っていたら、エンディングで流れるように現実に沢山いらっしゃるようですね 今回は打ち上げがNASAではなくロシアからなのが新鮮でした 少しずつ困難を解決(自ずと解決してましたけど)しつつ、子供は心配しなくてもちゃんと成長してて良かった ただ体力勝負なので夜ふかしはいかんでしょ、と思ってしまった
偉大な仕事と母親であることの両立
宇宙飛行士という特殊な職業のシングルマザーのお話。
主人公は宇宙飛行士と母親という二つの立場を両立すべく苦悩する。この種のシチュエーションならば、「任務優先で幼い娘との関係がこじれてしまい、何年も経って娘が大人になってから和解する」なんてストーリーになっても不自然ではない。だが、本作の主人公は、あくまでも任務と母親の両立を目指す。
主人公は何度か「プロとして、それはどうなの」と言われかねない行動をとる。もちろん、娘のためだ。……いや、言い直そう。娘と自分の関係のためだ。娘のためではあるが、それ以上に自分のためでもある。
宇宙開発には莫大な予算が投じられる。そのほとんどは国家事業だ。作中で扱われるミッションも複数の国家が共同でおこなっている。
にもかかわらず、主人公は「娘と自分のため」という利己的な行動をためらわない。国際的な大事業に属する任務だからと言って、無条件で個人的事情に優先させたりはしない。そして、何より注目すべきことは、この映画では、主人公の問題行動を否定的には描いていないのだ。
最後のクレジットと共に、実在の女性宇宙飛行士たちの写真が映される。世間から注目される大きな仕事と母親であることを両立させた人々だ。この映画は、現在、そのような状況の渦中にある女性たちへの応援歌なのだろう。
母娘の心と関係性の変化が面白い作品
エヴァ・グリーンは2017年の映画「告白小説、その結末」で初めて見て、ずいぶん綺麗な女性が出てきたなと思った。ミステリアスな役だったので、余計にそう見えたところもあったと思う。
本作品の撮影時は39歳くらいだと思うが、相変わらずの美貌である。エヴァ・グリーンが母親となると娘はかなり可愛くなければならないが、娘のステラを演じた子役は、かなりどころか驚くほど可愛くて、整った顔立ちにフランス人形のような眼をしていた。
美人の母娘が登場すると、物語は当然ふたりの関係性の変化が中心となる。母親は宇宙飛行士だ。映画は、仲のいい娘と母親が物理的に離れなければならない状況になったとき、ふたりがそれぞれどのように感じて何を思うのかを表現する。製作者は子供のいる女性の宇宙飛行士の存在に着想を得たようだ。なるほど母親が宇宙に行くのであれば流石に娘は連れていけない。
母親のサラは自己実現と娘への愛情のはざまで苦悩する。もし父親であればそんなに悩まないだろう。映画は、子育ては母親がやるものだという意識が先進国にあっても未だに残っていることを描く。そして同時に、父親だけでも娘はきちんと育つことも描く。やや共依存の傾向があった母娘の関係が、母親の訓練で離れているうちに娘は人格的に独立して、出発する母親を気遣うことができるようになる。あるいは母親のほうが依存している面があったのかもしれない。
エヴァ・グリーンは本作品の母親役には美人すぎるところもあったが、数ヶ国語を操り専門知識も持つスペシャリストの役を上手に演じていたと思う。娘の成長に気づいて自分の精神性を抑制しようとするところもインテリらしい。母娘の心と関係性の変化が面白い作品である。
とても痛々しく観ていた・・・けどあの行動は・・・
娘を想う母、母を想う娘の切ない愛情を描いた物語。
胸が張り裂けそうな気持でずっと観ていました。
母親と宇宙飛行士を演じるエバ・グリーンの
心の揺れの動きが観ていてとても痛々しかった。
マット・ディロンはいかにもアメリカ人宇宙飛行士らしい妙役でしたが、
フランス人とアメリカ人の間をロシア人がとりなすチームバランスが
不思議な感じで面白かったです。
でも、宇宙飛行士として主人公のあのラストの行動は残念でした・・・
あのシーンで点数がマイナス0.5になっちゃいました。
あと、音楽が坂本龍一だったのでちょっぴり日本人として嬉しかった。
これでよいのか…?
女性宇宙飛行士をたたえ、親子の絆を描きたいのはわかるけど…感情論だけで娘を応援し、あげくの果ては規律を破って自分の感情を優先させちゃうなんて…宇宙飛行士ってそんなに軽いものなのか。マットディロンも半端なキャラクターやらされててかわいそうだったな。
久しぶりによかった内容。今週(16日)迷ったらお勧め。
今年56本目(合計122本目)。
タイトルからわかるように宇宙もの。天体ものというより、女性の宇宙飛行士を描く作品です。
内容的に若干、地学(天文)、物理(力学)に関する字幕がわかりにくいのですが、そこはまぁ許容範囲かなと思えます(それよりもまずい点が…。下記評価参照)。
「女性の」宇宙飛行士と言えば、サッカーなどスポーツやそれこそ映画のアクションを演じる人たち(「スタンドウーマン」でも描かれていた)に比べて、それほど過酷でもない印象は受けます。むしろ、多国籍で挑むことが多いので、最低限の練習に耐えられる体力以上に、言語にたけているなどの知識のほうが求められるようには一見すると思えます。
※ この意味で、「多言語をマスターする」という点では女性のほうが長けているといわれるようです。
しかし子育て中の女性という立場ではまた事情は違ってきて、子供の面倒をどうするの?という問題がついて回ります。これは逃れられないのです。サッカー等では拘束時間はせいぜい3時間~5時間ですが、宇宙飛行士ともなると、拘束時間は数か月から下手をすれば何年単位というところになるからです。
とはいえ、それが理由で女性が特定の分野に入っていくのが遅れたり、事実上の壁が存在してなれなかったりするのであれば、男女同権という考え方は成り立ちませんし、男性だけで物事が進んでいく、ある意味「ひずんだ」状況になってしまいます。
子育てという考え方では、どうしても子供との面会(分別がわかる子ならまだしも、5~6歳らしき子に教えても難しい)は欠かせないので、そこは(この作品自体も架空の物語のようですが)常識的な範囲での面会はあるべきだし、子は親を選べないので、親である女性が宇宙飛行士を目指すという、子供にとってコントロールが効かない部分で子供が親と数か月~何年も会えないというのは子供に何ら責任がない事情なので、そこは(衛生面や、情報漏洩などをしっかりとした上で)認められるべきだし、それは本作品それ自体は架空の物語だけれども、「子は親を選べない」「女性の社会進出はどんどん進む」「男女同権は当たり前」なこのセットで考えると、「多少のルール違反は仕方なし」とも思えました。
最後に、実際に女性飛行士になった方々が紹介されますが、実に少ないです(日本人女性もいますね)。それだけ今でも女性の進出が遅れている分野で、その理由の一つに「体力的な問題」以前に、「子供との面会の問題」があるのであれば、将来のある子どもに帰責性がない以上、そこは何らかいわゆる「合理的配慮」がなされるべき…というのが訴えたかったのではないか…というのが私の見方です。
評価ですが、下記0.2で4.8を5.0まで切り上げています。ただ、結構「傷」は大きいです。
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(減点0.2) この映画、実はフランス映画です。ただ、上記通り、多国籍プロジェクトなので、ロシア語、英語(イギリス英語)、ドイツ語が出てきます(他にも出てくる?)。ただ、8割はフランス語です。訳はついているのですが、施設(訓練施設)の看板や注意書きまで訳がついておらず、しかもその訳の省略ぶりが結構多いので、何がどうなっているかわかりにくいところが多いです(ここが、「面会禁止」の核心の部分に係ってくる)。
「(この先)立ち入り禁止」を意味するフランス語の entrée interdite という表現は字幕での説明がないんですよね…。これ、かなり難しいです(フランス語における性数一致の論点まで書くと書ききれないので省略)。
一般的に見に行く層では英語の知識をフル活用するしかないですが、この単語、つまり「禁止」を意味する「似た語」を知っている方は少ないのではないか…と思えます。英語では interdict 「禁止する」で、フランス語から来た語です(フランス語:interdire「禁止する」 の形容詞、過去分詞が interdit で、性・数一致で-eがつく)。
ただ、フランス語にある程度でも教養がある方は少ないでしょうし、英語からこの訳されていない語を推測するには interdict を知らないと無理で、これこそ30,000語レベルの語彙です。なんでそこまで難しい表現に訳を入れないんだろう…。
※ dict には「言葉」を意味する語で(→dictionary「辞書」もここから)、実はこの流れをくむのですが「言葉」という意味から「禁止する」を連想するのは、かなり難しい。
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【チャレンジを続ける女性と家族(※最後に、この日見かけた変な客情報あり😁)】
エンディングでも明らかなように、女性宇宙飛行士たちと、支える家族に対するオマージュだ。
考えてみると、男性は家族があっても宇宙飛行士を目指すという夢に違和感はないのに、これが女性になった途端、家族をどうするのかとか、様々な葛藤がのしかかると云うのは、仕事と家庭を両立させようとする女性へのプレッシャーと同じで、僕達の社会が考え続けなくてはならない課題でもあると想う。
(以下ネタバレ)
サラの場合は、シングルマザーで、娘のステラは、失読症と計算が困難という発達障害を抱え、その負担は更に大きい。
しかし、同乗クルーも差別などなく、サラに対し協力的で見守るような寛容な姿勢を示している。
「完璧な宇宙飛行士なんていない」
「大変なのは帰還してからだ。自分たちのいない生活が当たり前になっているのだから」
ステラが思いがけず算数で優を取ったと云う報告がある。
自分が付きっきりじゃなくても、ステラは成長するのだ。
クルー達からは、励ましつつも、更にその先の普通の人間としての将来を見据えなくてはならないという人間らしいアドバイスも示される。
宇宙飛行士といえど普通の人間なのだ。
ただ、宇宙飛行士は、危険を伴うが、夢も膨らむ。
サラが母国語以外に、英語もロシア語も流暢に話しているのを聞くと、専門知識以外の不断の努力も尋常じゃないのだろうと、宇宙飛行士、特に、女性宇宙飛行士には改めて頭が下がる思いだ。
生理を止めないのであれば、パーソナルな持ち物を減らして、生理用品を詰め込まなくてはならないというのも初めて知って驚いた。
宇宙飛行士をテーマにした作品には、過度なスペクタクルを求めがちなのだけれど、淡々と日常にある葛藤を描いていたのも良かったと思った。
※ (備忘録)TOHOシネマズシャンテ 17日(土)朝イチの上映
近くに座った男性が、本編開始後すぐ、靴を脱ぎ始めたと思ったら、更に靴下も脱いで、両方のの足を交互にシートに立てるようにしたり、他の足に組んで上にしたり。
見ると、足の指の(たぶん)間を手の指でいじっている。
更に彼の身なりを見ると、シャツのボタンを全部外し、シャツの下に着ているTシャツ(黒とかネイビーの濃い色)を胸の下までたくし上げ、肌を露出してヘソは丸出し。きったねえ腹😁
そして、足をいじった手(指)を、しばし、マスクを顎にずらした上で、口の回りを触りまくっている😁
実は、これは、足を触った手(指)の匂いを👃嗅いでいるのではないかと推察される😁
ちょっとだけ、肌の露出したお腹はポッコリしてるけど、決してジジイとかいうような年齢でない。
あー、映画に集中しずらかったー‼️😁
これってさ、マスクをずっと外してるわけじゃないから、TOHOシネマズは注意出来ないんだよね⁉️😁
歯痒いラブストーリー
愛する子供とのラブストーリー。
一番盛り上がってる時の会えない苦しみに似ていて、お互いの気持ちがコントロール出来ない感じは典型的な恋愛模様。歯痒くて見ていられなかった。
完璧に仕上げられている身体と集中力、サラの訓練の様子は見応えがあるし、築き上げられていく仲間たちとのチームワークも見どころだ。
しかし、女性の宇宙飛行士をメインにしたかったという作風の割に、子供の事で心揺れまくりなのが逆効果に感じた。
迷う
76本目。
始まりの製作会社を見て、フランス映画と知る。
ちょっと意外。
俺だったら行かないかな、子供といたいと思う。
んー、でも大人になった時、自分のせいで宇宙に行かなかったと思われるの嫌だなぁ。
でも迷う、夢を取るか現実を取るかと、独身なのに悩んでる。
ライカちゃん萌っ!!
宇宙飛行士に選ばれた7歳の娘を持つフランス人シングルマザーの話。
仲の良い母娘に対し、父親は娘にあまり興味ない?と思わせる序盤。
勿論最初は環境が変化することに対する不安や恐れもあったけれど、娘は少しずつ対応していくし、父親もちゃんと順応していくし、そんな中でこの主人公…。
ミーティングの件でも疑問に感じたけれど、ストーリーの山場が他者を危険に巻き込む恐れもあるその決断を見せること?
欧米は個人主義な思想が強いとはいえ、これを是とする映画がつくられるぐらいだからねぇ…やっぱりコロナの蔓延状況然り、ルールやマナーを守る(人の割合が多い)日本人が特異なんですかね…。
山場を除いたらそれなりには良い話だけど、イマイチ自分にはハマらなかった。
どうでも良いことだけど…ロケットの打ち上げ時の点火はカウント「0」からではないですよ!!
主人公にイライラ
主人公のサラにイライラしっぱなし。シングルマザーだからっていって、規則を破っていいことにはならないんじゃない。子供をミーティングを同席させたあげく、ステラがいなくなったって大騒ぎ。ラスト近くでも自分勝手な行動するし、ほんとイライラする。
感情を制御できない人間は、宇宙飛行士になれないはずなんだけどな。
宇宙飛行士としてのシングルマザーの苦悩を描いておきながら、男性向けのサービスショットを盛り込むなんて、チグハグなんじゃない。どこを向いて制作されたのかよくわからない。
実際の施設を使った訓練シーンが見れたことだけが収穫だった。
壮大なレトリック
完璧な宇宙飛行士なんていない、完璧な母親(父親)がいないように。
『風の歌を聴け』(村上春樹さんのデビュー作)の冒頭の文章みたいな台詞が出てきます。
レトリックとか修辞とか、分かったようでいて実はよく分からないまま使ってしまう言葉がありますが、これは比較的わかりやすい好事例かもしれません。
レトリックとは、巧みな言い回しで効果的な表現、というようなことだと思うのですが、人によっては〝効果〟の中に、やや真実をはぐらかしたり、ごまかすような意味合いも込めて使っているケースがあると私は思ってます。
完璧な数式、とか完璧な正三角形というのは、(たぶん)存在すると思うのですが、完璧な宇宙飛行士とか完璧な母親なんてものは人それぞれのイメージによるわけで、客観的な基準などはそもそも存在しない。
それでも、聞いた人の多くが漠然とながら、あたかも完璧な姿があるように錯覚して、うんうん、そうだよな、と納得してしまうのですから、効果的な表現という意味では、〝完璧なレトリック⁈〟ではないでしょうか。
人間世界の面倒臭さと比べたら「完璧な物理法則」に基づく計算を積み重ねて〝ほぼ〟完璧な準備(ロケットや機体や各種装置や打ち上げ日の天候予測などのすべて)を整えたうえで打ち上げられる宇宙ロケット。
だけど、それをコントロールする人間たちには完璧な人などひとりもいない。
このこと自体が壮大なレトリックで、なにかのテーマを表現しているかのようにも思える、ある意味で実験的な映画のようにも思えます。
エヴァ・グリーンの美しさ。
私にとっては〝完璧〟でした。
人間ドラマが見どころの女性宇宙飛行士物語
宇宙飛行士ものではあるが、よくある宇宙空間でのハラハラドキドキ要素がメインではなく、宇宙飛行士の母と地球に残される幼い娘との親子の絆や、他の宇宙飛行士たちとの衝突や葛藤といった人間ドラマが見どころの映画。
悪徳警官顔のマット・ディロン演じる宇宙飛行士マイクの「女に宇宙飛行士が務まるのかよ」的な態度を「宇宙飛行士ってこんな時代遅れなの?」と思いながら観てたけど、主人公サラも娘のためとはいえルール違反を連発するので、悪徳警官顔の言うこともあながち間違いじゃないのかもと思えてきた。ただ、この男が単なるハラスメント野郎というわけでもなくて、それがわかるシーンが個人的には観ていて一番気持ち良かった。
実際に宇宙飛行士という職業と母親であることを両立させようとして起こるトラブルなんてそれこそ星の数ほどあるんだろうなと思いつつ、そこを掘り下げたこの作品に対して「女性監督独自の視点が…」みたいな表現を使うのもまた違うのかな、とか考えさせられるような映画だった。子育てとの両立や男女差別からくる女性宇宙飛行士の苦悩、それを知ってから観るエンドロールは感慨深いものがあった。きっとあの人も、ものすごい苦労したんだろうな…。
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