劇場公開日 2021年4月16日

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「母娘の心と関係性の変化が面白い作品」約束の宇宙(そら) 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5母娘の心と関係性の変化が面白い作品

2021年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 エヴァ・グリーンは2017年の映画「告白小説、その結末」で初めて見て、ずいぶん綺麗な女性が出てきたなと思った。ミステリアスな役だったので、余計にそう見えたところもあったと思う。
 本作品の撮影時は39歳くらいだと思うが、相変わらずの美貌である。エヴァ・グリーンが母親となると娘はかなり可愛くなければならないが、娘のステラを演じた子役は、かなりどころか驚くほど可愛くて、整った顔立ちにフランス人形のような眼をしていた。
 美人の母娘が登場すると、物語は当然ふたりの関係性の変化が中心となる。母親は宇宙飛行士だ。映画は、仲のいい娘と母親が物理的に離れなければならない状況になったとき、ふたりがそれぞれどのように感じて何を思うのかを表現する。製作者は子供のいる女性の宇宙飛行士の存在に着想を得たようだ。なるほど母親が宇宙に行くのであれば流石に娘は連れていけない。
 母親のサラは自己実現と娘への愛情のはざまで苦悩する。もし父親であればそんなに悩まないだろう。映画は、子育ては母親がやるものだという意識が先進国にあっても未だに残っていることを描く。そして同時に、父親だけでも娘はきちんと育つことも描く。やや共依存の傾向があった母娘の関係が、母親の訓練で離れているうちに娘は人格的に独立して、出発する母親を気遣うことができるようになる。あるいは母親のほうが依存している面があったのかもしれない。
 エヴァ・グリーンは本作品の母親役には美人すぎるところもあったが、数ヶ国語を操り専門知識も持つスペシャリストの役を上手に演じていたと思う。娘の成長に気づいて自分の精神性を抑制しようとするところもインテリらしい。母娘の心と関係性の変化が面白い作品である。

耶馬英彦