ビバリウム
劇場公開日:2021年3月12日
解説
不動産屋に紹介された住宅地から抜け出せなくなったカップルの運命を描いたサスペンススリラー。新居を探すトムとジェマのカップルは、ふと足を踏み入れた不動産屋で、全く同じ家が建ち並ぶ住宅地「Yonder」を紹介される。内見を終えて帰ろうとすると、すぐ近くにいたはずの不動産屋の姿が見当たらない。2人で帰路につこうと車を走らせるが、周囲の景色は一向に変わらない。住宅地から抜け出せなくなり戸惑う彼らのもとに、段ボール箱が届く。中には誰の子かわからない赤ん坊が入っており、2人は訳も分からないまま世話をすることに。追い詰められた2人の精神は次第に崩壊していき……。「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグと「グリーンルーム」のイモージェン・プーツが主人公カップルを演じる。プーツは第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。
2019年製作/98分/R15+/ベルギー・デンマーク・アイルランド合作
原題:Vivarium
配給:パルコ
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2021年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
ネタバレ! クリックして本文を読む
ジェシー・アイゼンバーグとイモージェン・プーツが演じるカップルを先導してきた不動産業者の男が、郊外の新興住宅街で「9番の家」(number nine)を案内する。予告編でも聞かれるこの台詞の発音は、ビートルズの実験的な楽曲『Revolution 9』を想起させる。ジョン・レノンが「number nine, number nine,...」とつぶやく声が延々と繰り返される同曲のように、カップルが不気味な住宅街から脱出しようと試みるたび、9番の家に戻ってきてしまう。思えば数字の「9」は螺旋に似た形をしていて、ぐるりと回って元に戻る迷路を象徴しているのかもしれない。
「vivarium」は、自然の生息状態をまねて作った飼育器や飼育場を指す普通名詞だが、viva(イタリア語で「万歳」)+arium(「場所」を意味するラテン語由来の接尾語)で「素晴らしい場所」という皮肉を込めたタイトルとも読める。
住宅街の地名「yonder」には「あそこ、向こう」という意味があり、つまりは「ここではない場所」だ。異星人がひどく時間がかかり非効率的な地球侵略という革命のためにしつらえた、カッコウの托卵のように自らの子を人間の代理親に育てさせる飼育場は「この世ならざる場所」であり、一度迷い込んだら二度と脱出できないということか。
イモージェン・プーツは大好きな女優で、彼女のチャーミングさはラブコメ系で最も発揮されると思っているが、どういうわけかホラーや暗めのドラマに出演することが多い。出演作が日本で劇場公開されないこともままあって寂しい思いもしてきたが、本作がコロナ禍の中で公開されて嬉しい。新進のロルカン・フィネガン監督の今後にも期待。
2022年12月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
私もそうですけど、爬虫類や両生類好きなら知ってる「ビバリウム」。
(「ビバリウムガイド」とか買ってましたよ(笑))。
何で“ビバリウム”なんだろうか、と思いながら観始めたけど、あの全く同じ見た目の分譲住宅が並ぶ「空間」がビバリウムなんだね…。
引っ越しのための新たな家を探していたトム(ジェシー・アイゼンバーグ)とジェマ(イモージェン・プーツ)。
ある不動産屋で、マーティンという従業員に連れられ「YONDER」という ある種ユニークな住宅が建ち並ぶ町へ到着。
何故か家の2階には赤ちゃんの部屋があり、訝しげに思っている所、不動産屋のマーティンの姿が見えなくなり………。
風もなく…毎日同じ天気、同じ雲…。
明らか作られた空間でしょ。
こんなん怖いでしょ。一度“入ったら”出られない歪んだ時空に押し込められて…ほんと怖い。
トムが一所懸命掘ってた穴…その地中から出て来た袋の中身は……。
このさ、誰の子か知らない赤ちゃん育てるのも嫌だけど、小学生位になっても意思疎通が取れないで超音波みたいなの発して…気が狂うでしょ(笑)普通に。
恐らくあの子は 地球外生命体で、あの子供を通して 人間の行動とか思考とかを調査してる?のかなと。
ウザい位マネしてくるし、地面に押し倒されても笑ってるし。
終盤で、ジェマに追われて逃げる時に 縁石の中に逃げる姿とか完全に異星人っしょ!
それにあのマーティンの顔!!!人間離れしたあの顔!!!と言うか、そう思わせる造りは凄いなと。
きっと、その地球外生命体のことを爬虫類とか両生類に例えて“ビバリウム”って言ってるのかな〜?って。
なんか、異星人って爬虫類っぽいしね(笑)イメージ的に。
「YONDER」って言葉を使ってる所、かなり昔の時代からこんなことをして地球人の研究?をしてたのかなって…。
北欧のSFミステリーで『トワイライトゾーン』の一編としてあってもおかしくない話。
冒頭のカッコウの描写が、本作のテーマ(カッコウは他の鳥の巣に卵を産み育てさせる托卵という習性がある)。
個人的にこういう1つのテーマを掘り下げた作品は嫌いじゃない。
全体的に静かなトーンで話が進み、ジワジワと狂気に侵されていく夫婦の様子が描かれていく。
子供のいない若い夫婦、子育てのための家、出自不明の赤子。整然とした風景が逆に怖い。
演技派のジェシー・アイゼンバーグとイモージェン・プーツが好演していて自然と物語に引き込まれる。子役も常人じゃない雰囲気を出してて上手い。
2022年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
まったく同じ家(結構かわいいデザインです)が並んでいる光景
(京王線の千歳烏山駅下車し調布寄りの最初の踏切渡って
左手に行くと同じような家並があって怖いです)
それと子育て、エイリアンな子供を育てるわけです
すぐに大きくなっていくわけです
性質は反抗的から無感情へと変化していきます
お母さんは母性愛を何とか発揮しようとしますし
お父さんは意味があるのかわからない作業に没頭します
味のしない食事も拷問ですね
空を見上げても嘘っぽい雲が浮いているだけです
また死んでも、ただ処分されるだけです
う~ん、その生活からは永遠に抜け出せないわけですし
きっかけは、若いカップルの何気の「将来の家族計画」のための
冷やかし不動産屋来訪でしたが
未来は、まったく予想できなかった悲惨なものになります
これは罠ですか、不条理系メタファーですか
う~ん、この映画、悪意ある97分間の拷問です