「私達にはわからない苦悩」陽に灼けた道 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
私達にはわからない苦悩
ラサへの五体投地の巡礼を終えた帰りのバス、というのが、面白い設定だ。そしてラサへの巡礼をもってしても、満たされず罪を軽くすることも希望を抱くこともできなかった青年。気が良さそうで少し不器用な感じだ。ラサの街での暮らしが村の昔ながらの暮らしと比べ薄っぺらいことに不満を述べる母。富や便利さや新しい生活をもとめる若い世代がこの青年の姉や、バスに同乗していた老人の娘、という出てこない人々により現れる。村での生活は自給自足助け合い近代的な利便性を補い年寄りから子どもまでそこには分断がなく、ラサのような街へ出て行った娘や息子たちとは一晩ニ晩で亀裂と分断ができてしまうようで、このような設定が面白い。老人が知り合う子ども、主人公の青年を迎えに来る子ども。子どもを見ているだけで可愛くてたまらないという老人。無口に人との交流を避けながらも老人と帰路の旅を図らずもしてしまう青年。彼は罪の意識巡礼をしても癒されず満足できず自分を許せなかったが、老人や子どもとの関わりの中で、都市的な現代的な孤独の世界ではなく、伝統的というにはあまりに平凡に毎日が連続して何世代もつづいていく村の家族のもとへ、帰還していくのだ。
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