川っぺりムコリッタ

劇場公開日:

川っぺりムコリッタ

解説

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子監督が2019年に発表したオリジナル長編小説を、自身の脚本・監督で映画化。松山ケンイチ主演、ムロツヨシの共演で、孤独な青年がアパートの住人との交流を通して社会との接点を見つけていく姿を描く。

北陸の小さな町にある小さな塩辛工場で働き口を見つけた山田は、社長から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。できるだけ人と関わることなく、ひっそりと生きたいと思っていた山田の静かな日常が、隣の部屋に住む島田が「風呂を貸してほしい」と山田を訪ねてきたことから一変する。山田と島田は、少しずつ友情のようなものが芽生え始め、楽しい日々を送っていた。しかし、山田がこの町にやってきた秘密が、島田に知られてしまい……。

主人公・山田役を松山、島田役をムロがそれぞれ演じる。タイトルの「ムコリッタ(牟呼栗多)」は仏教の時間の単位のひとつ(1/30日=48分)を表す仏教用語で、ささやかな幸せなどを意味する。

2021年製作/120分/G/日本
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2022年9月16日

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(C)2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

映画レビュー

4.5崖っぷちを描きながらも微笑ましく優しい人間賛歌的な作品。独特な時間の流れを感じられ、これぞ荻上直子監督作品!

2022年9月16日
PCから投稿

「かもめ食堂」(2006年)でブレイクし、「めがね」(2007年)もヒットした荻上直子監督作品の根底にある作風は、「時間の流れが違う」ということでした。どこかゆったりと優しい時間が流れている独特な作品となっているのです。
近年はそれほど映画で見ないな、と思っていたら、ようやく「THE荻上直子監督作品」の登場です。
しかも、タイトルに「ムコリッタ」と、仏教における「時間の単位」の一つが使われています。

1日は誰にでも平等に24時間となっています。
1日を24で割ったものが1時間。
ただ、「1時間=60分」という前提を変えることは可能です。

1日を30で割ったもの、それが「ムコリッタ」という単位です。
具体的には「1ムコリッタ=48分」となり、通常の時間よりは細かくなります。
ちなみに、「一瞬」を意味する「刹那(せつな)」は、仏教では「時間の最小単位」を意味します。

この「ムコリッタ」に「川っぺり」という言葉をかけ合わせると、どういう化学反応が生まれるのでしょうか?
川は台風のたびに氾濫し、川沿いで暮らす人たちは「日常でなくなる瞬間」と隣合せで生きています。そうした状況に常に脅かされギリギリを感じながら。
ただ、実は誰しもが、どこかしらでそんなギリギリを感じて生きています。
そんな私たちは、「ささやかな幸せ」を細かく見つけていったりすることで何とか持ち堪えられている面があるのです。
このような人間の本質的な面を本作は描き出すことに成功しています。
崖っぷちの厳しい状況を、どう乗り越えていけばいいのか、時にはユーモラスに語り掛けているのです。
本作は、出演者も何気に豪華で、さらに「荻上直子監督作品」らしくご飯がとても美味しそうにも感じられる、質素に見えながら贅沢な作品でした。

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細野真宏

3.0KADOKAWAですよ

2024年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

なんとなくの雰囲気がいい、まさに雰囲気映画。
ごはんが美味しそうなのがとても良いし、
「小さな幸せを見つけるのが上手い人」と自分も過ごしているようで
とても柔らかい気持ちになれる作品だった。

なんだけど、ラストシーンがイマイチだったと思う。
弔いとして「はじまりへの旅」には遠く及ばなかったし、
いろいろ中途半端な画に感じてしまった。
そこまでが良かっただけに、ドヤ顔で滑ってる感じがして残念だった。

んでKADOKAWAですよ。
なるべくなら避けたいけど完全には避けられないやつ。
カネの臭いと切ってもきれないイメージなので
より作品とのギャップが引き立つ形に。

演者のみなさんには最大限の賛辞を送りたい。

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mar

3.5人間の闇を映し出す。

2024年3月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

こんな人間がよくもまあこんなに集まったなと。それはご都合上仕方ないということで目を瞑りましょう。最後の葬儀の感じが、この映画全体の雰囲気というか。暗いんだけどほのぼの。闇なんだけどくすりと笑える、的な。それにしても松山ケンイチお風呂のありがたみ、ご飯のありがたみがすごく伝わる演技でうまかったです。

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いつこ

3.5☆☆☆★★ 原作読了済み。ちょっとだけの感想。 荻上監督の描く『フ...

2024年3月15日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆★★

原作読了済み。ちょっとだけの感想。

荻上監督の描く『ファーザー・ウォーター』

(映画『マザー・ウォーター』に関するレビューを少しだけ参照願います)

ネットにて時々見かける「死ぬのを考えた…」とゆう意見。
それに対しての意見として、しばしば用いられるのが、、、

〝 下を見ろ! まだ俺がいる! 〟

…との言葉。

予想通りに(原作を読んでるので)監督の死生観が、良くも悪くも出ているのかな?…と。

主な登場人物

【山田】
父親の顔は知らず、母親からは数万円の手切れ金(ちょっと違うのだが)で捨てられた男。
最早、人生は投げやり。特に「生きたい!」との思いも持たず、「餓死するのもやむなし!」の境地になっていた。
だが、何とか死なずに給料日を迎え、念願の白米にありつけた事で、この世へしっかりと根っこを張る。

【大家の南さん】
美人の未亡人。

この人物像に関して、あくまでも個人的な意見として、勘違いを承知の上で〝 或る昭和の大女優 〟の存在を意識しながら見ていた。

それは『東京物語』の原節子。

『東京物語』の中で原節子は有名な台詞を言う。

「わたし…狡いんです、、、」

当然、監督は観ていない筈がない。
本編中に、満島ひかりは突然「妊婦の腹を見ると蹴りたくなる」…と言う。
原作を読んでいて思わず「何だこれ!」となった瞬間だった。
だが、こうも言っている。

「何故か無性にアイスが食べたくなるの!」

(この台詞だけでいいのに…とも思う)

愛する人はもう帰ってはこない。
この先の長い人生、果たしてアイスを我慢し続ける事が出来るのか?
思わず夜中に旦那さんの《アレ》を使って、、、

満島ひかり=原節子 穿ち過ぎだろうか?

【溝口さん】
半分〝 片足を突っ込む人生 〟を、息子と共に続けている。《いつその時》が来てもおかしくない。
現実に【赤い金魚の話】で思いとどまってもいる。

【ピアニカ少年(溝口さんの息子)】
幼くして【生と死】の狭間を隣り合わせにして行き来しているかの様な存在。
文明の発達によって〝 死んでしまった 〟 まだ使おうとすれば何とかなる物質を守る立場を担っている。

【非常識な隣人の嶋田】
いささか常識に欠ける人物。
…とは言え、現実には常識を知っているからこそ、山田の根っこをこの世に張らせた大事な人物ではある。
そして彼こそ主な出演者の中で、1番《生に対する執着》が強い。
よって、彼の目の前にだけ『蜘蛛の糸』がスルスルと垂れてくる。
この糸こそは、執着の強さの象徴であり、だからこそ彼だけが〝 アレ 〟を見ることが出来ない。

他にも、坊主のガンちゃんは勿論、役所の堤下さん等。《生と死》とを隣り合わせに仕事の生業とする人達がいて。画面には映らないが、川っぺりにはブルーシートを屋根として生活を営んでいる人達もいる。
そんな人達は、、、

〝 確かに川っぺりだけれども、まだ崖っぷちでもない 〟

例え水に流されたとしても、大海原ならばほんのすこしだけ可能性がなくはない。
まだ、ほんのすこしだけだけれど、、、
だから、父親を弔いながら彼等の無事も祈る。

原作を読んだ時に比べて、 作品中には《生と死の狭間感》がより一層感じられた。
…られたのだけれど。原作自体も最後は唐突に終わってしまう為に、「だから何?」…と言った思いは強かった。
本編には、そこに音楽を当て込めているだけに。より不思議な雰囲気を持つのだけれど、何か1つ突き抜けるだけのモノが足りない感じは否めず、最後の最後で一気に迷走してしまった気か、、、

江口のりこ・薬師丸ひろ子・田中美佐子等。見せ場もないのだからちょっと出演した意味があったのか?…とも。

監督曰く 「映画が撮れないから小説を書いてみた」らしいのだけれど。
昨年テレ東で放送された『珈琲いかがでしょう』自体も、全体的に今ひとつだっただけに。ファンとして、今後に少し不安感が募る。

2022年 9月16日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン7

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