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動物園を舞台としているが、「動物園でやってはいけないこと」を片っ端からやっていく映画。
登場人物が誰一人として動物に対する畏敬の念や見識を持っているように見えないし、ストーリーを追うごとにそれが改まっていく様子も伺えない。
生きた動物を見せるための工夫、その素晴らしさを伝える努力を一切せず、客集めのため、児戯に等しい悪ふざけを続ける園職員の醜悪さにははらわたが煮え繰り返る思いがした。
そうした悪事の連続を描き続けながら、その問題点が糾弾される様子も、関係者の反省も描かれず、結末が「全ての常識を覆す、自然に近い環境で飼育する、アジア最大規模を誇る生態動物園」の完成?
どこをどう繕えば、そんなものができるのか?
「客を集めることができれば何をやってもよい」、「笑いを取れるならどんなシーンを出してもよい」という著しく良識の欠けた映画人が作った最悪な作品。
作品中に(野生生物の保護を目的とする)「ワシントン条約」の語が登場するが、動物園の個体導入の阻害要因としか描かれていない。
「常同行動」の語を出して、飼育の問題点を把握しているかのような演出をするが、それを全く改善する余地がないかのように説明し、動物園の存在自体が根本的に悪であるかのように描いている。
(現実社会の日本における)動物園では20年以上前から、エンリッチメントなど飼育環境の改善、ハズバンダリートレーニングなど飼育技術の向上、繁殖の推進、教育普及活動の展開など、地道に努力を積み重ね、着実に成果を挙げてきた。
国民全体の見識もそれにつれて進歩してきた。
この映画は、そうした努力、成果を一笑に付し、真っ向から否定する悪質なもの。
この作品の原題は『해치지 않아(傷付けない)』というそうだが、動物や動物園の尊厳を大きく傷付けている。
作品中に描かれる動物園は、反面教師としての「あってはならない動物園」として、見ていただきたい。
このような映画は、早急に、上映、放送、配信、販売などが行われなくなることを願っているが、あろうことかNHKの語学講座の教材として採り上げられるようになってしまった。
「学習の教材」として適していても、問題ある内容の映画を採用してよい理由にはならない。
学習者には、この映画の描写で動物園を認識してほしくないし、実際に日本国内の動物園に出かけて、園やスタッフの努力を知っていただきたい。
有害映画『シークレット・ジョブ』が、可能な限り早いうちに消滅しますように。