護られなかった者たちへのレビュー・感想・評価
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311をフィクションの舞台にするだけの時間が経った。
愛する人すべてを一瞬のうちに失ったあの3.11。それぞれに心に癒えない傷を負った人々が寄り添って生きようとしていく。そして家族のようにいたわり合った愛する人を再び失うことで、痛切な事件が起きてしまう。追うものも追われるものも、あの日にたまたま生き残る側になった者だ。そして、生き続けるためのシステムから護られなかった者の慟哭がこの映画の主題だろう。
作品の通奏低音ともいえるあの3.11に起きた全てと、そして「生き残ったことで決着をつけなければいけないものを抱き続けた」登場人物がおりなす、まだ終わっていない惨禍が観客の心を打つ。そしてその終わっていない惨禍の是非が、が殺人事件として、世に問われる。真相が明かされる時、観客はその罪を憎むことができるのだろうか。ふたたび別れなければならない家族は、こののち、また再会できるのだろうか。
久しぶりに重厚な人間ドラマを描いた傑作を観た。今年のベストだ。
殺人に至るまでの加害者の気持ちに共感ができない
利根とかんちゃんの不遇の幼少時代をもう少し描いてほしかったと言うのがタイトルになった理由。
あと、ラストの利根が笘篠刑事に語るシーンで目の前の少年を津波から助けられなかった後悔は映像にして最初の方に入れてくれればいつまでも利根の心の闇として、また忘れない後悔として残っていたことがラストで笘篠に語ることにより少しは癒されるというふうに私はして欲しかった。
生活保護の不正受給も描いているので少し思ったことを書き添えると生活保護を受けないと食べるものも買うお金がない人が受けられなくて息子が大阪の芸人でかなり稼いでいるにも関わらず母親等が生活保護を受けていた事実も過去ありましたよね。その人たちには是非映画を見て欲しいです。
「守られなかった」→「護られなかった」に意味がある
清原果耶ちゃん、今作で今年5本目ですよ。朝ドラのヒロインもやって。国民栄誉賞を差し上げます。
今作は、おかえりモネの主人公が震災を身体性をもって体験したらこっちの道に流れてたかもしれないという感じ。2つの作品は並行して語られることに意味がある感じ。
前半はサスペンスなんだけど、時間軸もいじりながら出すことがちょっと逆効果に思えて推進力にかけました。後半の社会ドラマになってからは、その提示されるイシューには関心が増していくものの…という感じ。悪くはないけどパンチ力はないです。
ネタバレはできるだけ廃したいと思ってるのですが、時間軸をいじったことでややこしくなってる部分が多いように思います。原作を読んだら解決できるのかもしれません。
たとえば、佐藤健の出所のタイミングがどこだったのかが明確に示されていないように思えた。もし1つ目の殺人事件の前だとしたら、模範囚じゃなければ○○が復讐を完遂しようとしたという点では納得できるが、じゃあ〇〇はなぜその仕事をしてるのかがわからない。周りは一生懸命やっている、それに引き換えあいつらは…までの時間がかかりすぎでないかなあ。逆に2つ目の殺人事件の後だとしたら…もう佐藤健が庇ってどうこうできる話ではない域に来てるんですよ。その行動を取ったとしても、〇〇はさらにやるよねと思う。あえてなぜその場所に戻ってくるのというところにも納得感が薄い。
林遣都演じる刑事役が、本当は都会でバリバリやりたかったことが田舎に来てしまったというフックを活かしきれてないところももったいない。
とはいえ、とはいえですよ。国民栄誉賞の清原果耶ちゃんの演技は今回もかましてますよ。しかも、今年のこれまでの4作とは違う一面を発揮してくれています。佐藤健と阿部寛は言うまでもなく。この二人が出てる作品はたいてい面白いです。
周りは泣いてるお客さん多かったけど、どこに泣いたんだろうか。自分が生活保護対象の人たちに何ができるかを考えているのだろうか。そうであると嬉しいし、安心して生活保護を受けられる環境になって欲しいですね。
守られなかったではなく護られなかったであることにしっかり意味があります。佐藤健が唯一笑う姿を見逃すな。
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