空白のレビュー・感想・評価
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正義の押し売り渋滞
どこにでもいる人たち、一人一人を気持ち悪く演出できていたと思うし、構成も演者さんも良かったです。
けど、わざわざ娘をあんな死なせ方までして取り上げた割には、2人の緊迫感が足りなかった。し、娘の孤独の演出は出来てなかった。
それに、寺島しのぶさんは上手いと思うし、あんな人はいるけど、ここでは無くても良かったかな。松坂桃李くんは上手かった。
父親からはじまって、先生、報道、スーパーのおばちゃんなどなど、それぞれの正しいがあって、監督の正義の押し売りはうざいですよ。っていうメッセージが渋滞してる。
ことはどうあれ、主観的正義を押し付けすぎると相手を傷つける結果になるね。善意なのか自己満足なのか。
ヒメノア〜ルよりは、メッセージがしっかりしてました。
普通人の悲劇
インパクトのある予告編でしたが、悪い意味でヘンな先入観を持たせる予告でもあり、サスペンス映画なのかサイコパス映画なのか人間ドラマなのか分からなかったのだが、良い意味で自分の予想は外れ、鑑賞後はシリアスな人間ドラマとして色々と考えさせてくれた良作でした。
登場人物はみんな少し極端にも見えますが、ある意味現実でもアルアルのキャラクターばかりで、物語の様な事件が起きなければ何処にでも見かける隣人達ばかりであって、誰しもが「こういう人いるいる」って思われる様なキャラばかりなのがこの作品の恐さだと思えます。
逆の言い方をすれば、何か事が起きれば人間は大体この映画の登場人物に近い行動をとるだろうとも思える程にリアルであるという事です。
この作品の登場人物設定は、特別な悪人や善人ではなく、特別に優秀でも劣ってもいない、あくまでも普通の人々であり、それ故(普通であることの劣等感の裏返し)の世渡りに対する自己防衛手段として、自己肯定する為に自分の思い込みや自己ルールに固執して、自分の殻を破れない(自分を客観視できない)という、日本人の大多数の平均的一般人の典型ばかりなのである。
(言い換えると、その人の本質が見え難く、他者からは理解され難い人間の集合体)
なので、物語で起きる事に関しても、意志的な事件ではなく偶発的な事故であり、善悪が曖昧な事により、自分の中で整理がつかず悪い方(メディア・世間的中傷)へ引っ張られて行く悲劇であって、これは現実社会で起きている多くの事件と共通している要素だと思えた。
で、こういう普通の人に起きる悲劇を少しでも減らすにはどうしたら良いのかという問題も、ラストシーンでその糸口が示されていて、この作品の作り手の誠実さが窺えた。
あっ、本作には特別優秀な人は登場しないと言ってますが、唯一凄い人だと思えるのは自殺した娘の母親役の片岡礼子であり、あの台詞ですかね。
あの台詞は現実では普通の人では絶対に言えません。だからこそ(現実味のない)映画ならではの台詞ではあるのですが、間違いなく観客の(普通人の)心には響きます。
共感できる??
偽善とあわよくばの下心
期待をして映画館に向かい、その高いハードルを軽々と超え帰路に着く。この幸せが意外と稀有であることを賛同できる方も多いだろう。「空白」は久しぶりにそんな時間を味合わせてくれた。
観客は、花音の素性の多くを知らされない。彼女の学校での立ち位置も悩みも、複雑な家庭状況も悩みも、奥深く描き切る前に痛ましい事故でこの世を去る。
父である古田新太も、同じく花音の素性を知らない。娘の好きな食べものも知らず生きてきた、謂わゆる毒親だ。我が子の死をきっかけに膨れ上がる、彼の狂気じみた理不尽な正義。しかしこの乱心を真っ向否定できるほど、観ている側も彼女のことを知らないのだ。「よく知らないけど、ダメなものダメだ!」では本作で描かれる一般大衆と同じレベルになってしまう。
そして父親の言動には一切共感することはなく、この「知らない」ことだけに共感してストーリーにのめり込んでいく。見据えるにはそれだけで十分なのだ。この大胆かつ緻密な脚本がえげつない。
理不尽、無気力、内向、偽善、保身、隠匿、捏造、無責任と人の嫌な部分をしっかり演じ切った役者陣。「あの人はよかったけど強いて言えばあの人がねぇ…」なんてことも一切なく、ちょい役のチャンス大城ですら人の空白を演じ切っている。その中でも、偽善とあわよくばの下心を見事に表現したのが寺島しのぶ。脱ぐこともなくこの嫌な感じのエロスを表現できるのは、今の日本では彼女だけであろう。
本来この手の映画には、店長の松坂桃李を陰で慕う、そんなアイドル女優がキャスティングされそうなものだ。だがそのポジションにいるのが、あわよくばの寺島しのぶ。重ねた唇を拒否されるあたりも含めて、アンチヒロインを演じ切った。
そしてもう一人が、自殺した運転手の母親である片岡礼子。他の出演者が闇を演じ切っているからこそ、葬儀で父親と対峙するシーンが強く心に残る。神々しさすら感じる、凛と啖呵を切る姿。「タイトル、拒絶」でもそう思ったのだが、この俳優の今の演技をもっと観たい(つまりハッシュ!をまた観たい訳ではない)。
また何より、痛いほどにリアルに、それでもギリギリに美しく、重厚なテーマを描き切った𠮷田圭輔監督。「最高傑作を撮る」と宣言して最高傑作を撮ってしまった。観客6人のレイトショーだったが、思わず小さく拍手をしてしまった。
素晴らしい俳優、素晴らしい監督・脚本、素晴らしい制作陣。この名作にもし足りないものがあるとすれば、本作を甘受し共感できる観客だけかしれない。
キング オブ いたたまれない感情になる作品
役者の演技も監督の筆致もお見事!
またも邦画の傑作に出会ってしまいました。
前半は本当に辛くてしんどくて観始めてしまったことをちょっと後悔。だけど後半クスッと笑える部分もあり、あるシーンからは涙が止まらず、ラストのささやかな救いに観てよかったぁという満足感。
古田新太さんと松坂桃李さんの演技の凄まじさ。そして主演二人だけではなく脇の方達もしっかり描かれていて隅々まで見逃せない作りに。群像劇としても非常に緻密にできてました。
青柳店長の何があっても食欲が落ちないという設定は(私か?)と思ってしまいましたし寺島しのぶさん演じる草加部さんの善意の押しつけにはマジでウンザリしつつ(いるよね〜こんなオバチャン)ってとてもリアルに感じられました。ボランティアの人たちもさり気なくもとても細かく描かれていましたね。藤原季節さんや田畑智子さんもすごく良かったけどやはり特筆すべきは片岡礼子さんでしょうね。そう、あのシーンから涙腺崩壊してました。
社会派ドラマとして考えさせられるところがたくさんあり、重厚だけどただ重たいだけに終わらない監督の独特なタッチが光る力作でした。
しばらく時間が経って考えるといろんな解釈の出来る映画であり、いろいろ想像できる演技をしていることにも気づくんですよね。ほんと深い作品だわ。
観賞後はいつも以上に安全運転で帰りました。気をつけ過ぎということは無いので皆さんもお気をつけて。
理不尽だけど誰にでも起こりえる
重厚な脚本と確かな演出
また傑作が生まれた。間違いなくアカデミー賞を争う一本になるだろう。
被害者が加害者となり、加害者が被害者ともなる。誰もが善人であり悪人である、表裏一体のリアルを描く。世の中とは、人間とはそういうものである。
様々な社会問題が入り組む現代で、正義の反対は正義であり、どう折り合いをつけていくのか。
開始数分で衝撃的な冒頭で始まり、『ヒメアノ〜ル』を彷彿とさせる息を呑むタイトルバックだった。緊迫した空気で心拍音だけが響く。
吉田恵輔監督は緊張と緩和が巧みである。
一気に核心に進み、そこからどういう展開になっていくか気になったが、想像を超える物語があった。
メディアの情報操作と表面的な情報だけを信じて叩き合う人々。その殺伐とした世の中を具体的なシーンで観ている者に実感させる。
さらりとDVやいじめ、環境問題も練り込んでくる。
胸が苦しくなる映画だが、最後には温かい涙が溢れる。
相手のことを思いやりほんの少しの優しさを持つだけで、人と人は、世の中は変わっていける。
(ネタバレになるので詳細は語らないが)一つ大きな部分が描かれていない。松坂桃李演じる店長の罪の呵責から想像する内容になっている。
古田新太の鬼気迫るが人情あふれる男がそこに存在していた。役を生きる演技力と存在感で惹きつける。
いったい誰が被害者で、誰が加害者なのか?
折り合いの付け方
映画の終盤の主人公の「皆んなどうやって折り合いつけてんのかな」というセリフと、主人公と元奥さんと主人公の仕事の後輩の3人でご飯を食べている時に主人公が初めて素直に「悪かったよ、羨ましかったんだよ」と奥さんに言うシーンが印象的でした。
折り合いについて、自分もまさにそれが知りたくてこの映画をヒントにできないかと思って見ようとしたくらいだったのですが、そう簡単に答えは教えてくれないよなと思い直しました。逆に改めて自分でも考えるいい契機になりました。そして、自分の心や気持ちと正面から向き合う勇気が大切なんだなと思いました。そしてこれには時間やタイミングなども時によっては必要なんだなと思いました。
その他、古田さんや松坂さんの演技が素晴らしかったです。古田さんとても迫力がありました。
葛藤
人間のズルさを目の当たりにした。
観ていて、しんどい映画だ。上映前に覚悟が必要。
もどかしくて苦しい
必要なのは自問自答する時間と・・
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