マルモイ ことばあつめ

劇場公開日:

マルモイ ことばあつめ

解説

1940年代の日本統治下の朝鮮半島で言語が朝鮮語から日本語に変わり、名前も日本式となっていく中、母国語を遺したい思いで全国の言葉・方言を集めた「マルモイ(ことばあつめ)作戦」の史実をベースに描いたドラマ。親日派の父親を持つ裕福な家で育ったジョンファンは、失われていく朝鮮語を守るために朝鮮語の辞書を作ろうと各地の方言などあらゆる言葉を集めていた。盗みなどで生計をたてていたパンスは、ジョンファンのバッグを盗んだことをきっかけに、ジョンファンとかかわるようになる。学校に通ったことがなく、朝鮮語の読み書きすら知らなかったバンスはジョンファンの辞書作りを通して、自分の話す母国の言葉の大切さに気づいていく。「タクシー運転手 約束は海を越えて」の脚本家オム・ユナが初監督と脚本を担当。バンス役を「ベテラン」「王の男」のユ・ヘジン、ジョンファン役を「犯罪都市」「ゴールデンスランバー」のユン・ゲサンが演じる。

2019年製作/135分/G/韓国
原題:Malmoe: The Secret Mission
配給:インターフィルム
劇場公開日:2020年7月10日

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映画レビュー

5.0文化を守る、その意義を伝えてくれた

2020年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

言語とは文化の土台であり、最も基本的なものだ。存在するのが当たり前すぎて、忘れがちになるが、言葉もまた誰かが守らないとなくなってしまうようなものなのだ。この映画で描かれたように占領統治の政策で危機に陥ることもあれば、地方の方言のように徐々に標準語に侵食されていくことでなくなる場合、民族自体が少数となり使える人間がほとんどいなくなってしまうなど、様々な理由がある。
どの民族にも固有の表現があり、物語がある。土台である言語がなくなれば、それらはほとんど全て消えてしまう。この映画が描いた言語を守るという行為は、その民族の全ての文化を守ることだ。
映画館の使われ方がとても印象的だ。映画というのは、戦前・戦中・戦後も色々な国でプロパガンダとして使われたメディアだ。日本も例外ではない。その映画館で密かに辞書編集の大会議を開き、言語を守る戦いをしていたというのはなかなか皮肉が効いている。国や人種、民族の違いを超えて、文化を大事にする人々との連帯を大切にしたいと思った。

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杉本穂高

5.0韓国映画の総合力

2023年7月15日
iPhoneアプリから投稿

韓国映画はやはり強い。
まずテーマが圧倒的に正しい。
そして個人やローカルなどのミクロを描きながら最終的にテーマを普遍的なものに昇華させている。
更には作品独自のエンターテイメント性もしっかりと備えている。
そのエンターテイメント性も、サスペンスやアクションのシンプルなものから、逆境からの知恵や工夫による逆転、作劇の基本かつ必殺技である円環構造などによる重層的な見せ方によって、どのレベルの鑑賞者でも楽しめる作りになっている。
正しさだけでは見る気にならないし、普遍性だけでは伝わらない。
映画の難しさと面白さが詰まってる作品だと思う。

そして何と言ってもユ・ヘジン力が炸裂しててめっちゃ楽しい。
学はない彼が果たす役割の痛快さと、知識によって世界が広がる普遍的な喜びはユ・ヘジンが演じてこそだと思う。
オ・ダルスが健在(?)なら彼が演じていたかもしれないけど。正反対のキャラクターとのバディ感も最&高。

ただ、調べてみた限りだと作品中の統治に関する描写は諸説ありっぽい感じだったので、そこは判断保留として作品内の情報のみで評価したいと思う。
判断保留の部分があっても★★★★★の映画だと思います。

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omoro

偏り過ぎ

2023年4月19日
スマートフォンから投稿

この映画の中のことすべてを史実と言うのは無理がある。

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コロ助

5.0言葉は民族の精神を盛った器

2023年1月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

言葉は民族の精神を盛った器

僕が敬愛する東京の牧師さん、・・もう亡くなられたが。
あの方はハングルと朝鮮語の会話を長く勉強しておられた。

「○○くん、語学を習得するということはねー、これは本当に大変なことなんですよ、ホッホッホ」。
小柄で、垂れ目で、ベレー帽が似合う。柔和な笑顔の先生だった。

1970年代、韓国でパク・チョンヒ(朴正煕)大統領が、韓国国内の民主化活動家を徹底して弾圧していた頃に、穏やかなお顔に似合わず、その民主化活動や亡命者たちの受け入れを、ここ日本の地から密かに支えていた先生だ。

「日本はね、朝鮮の人々から言葉を奪ったのです」。

先生は(日本語はペラペラに話せる世代の)韓国からの年配のお客さんと面会する時にも、先生は敢えて頑張って朝鮮語で会話をするように努めておられた・・
あれはまさしく、
《かつて言葉を奪ったことへの償い》と、
《異国の言語を学ばされた かの地の人々の 語学習得の難儀をば我が身に負うて追体験する》ためであったのだと、僕はあの笑顔の底にある強い意志というものを、はっきり理解していました。

・・・・・・・・・・・・・

台詞の発音の問題 ―
本作は、映画の配役と人選について問題ありでした。
日本人の僕として観ている立場からするとかなりの混乱が起こります、
リュ代表を締め上げる「眼光鋭い制服の男」の喋り方が、これが
「総督府の役人で内地から派遣されてきた『日本人』官憲の人間」なのか、それとも
「朝鮮の人間なのだが率先して日本の手先になった=創氏改名を済ませた『地元民』」の哀しい姿なのか、
・・恐らくそこまでの深読みはなしで、脚本上前者なのだと思いますが、あの日本語の発音を韓国人キャストの口を通して我々が聞くとき、どちらの立場の人間なのかがちょっと判明しなくなるのです
あのへんは日本人俳優を一人立てて使うべきだったのではないかと、日本と韓国の両鑑賞者のためにも、これは残念だった点です。

・・・・・・・・・・・・・

邦画で
「辞書編纂」がテーマになった映画といえば、加藤剛、松田龍平、宮﨑あおいの「舟を編む」が名作でした。
膨大な数の言葉カードを収集し、生きている日本語を丹念に辞書に分類し 残していく、あの地道な作業。

あれに心動かされた人ならば、本作「マルモイ」( =朝鮮語で辞書作成のための「ことばあつめ」)もご覧になったら良いと感じました。

劇中、何度も京城(キョンソン)駅が登場します。
主人公リュ代表にぶつかってきた駅前広場の男の子の、咄嗟に出た言葉
・男児「すみません」
・リュ「朝鮮民族なら朝鮮語を話しなさい」
・男児「朝鮮語は話せません」。
言葉を失うリュ。

日本政府の出先機関=朝鮮総督府の命により、学童の世代から粛々と確実に、教育の力で、母語と民族へのプライドを失わせていく“植民地における同一化政策”。
親世代と子世代・孫世代が家庭内で会話しづらくなる。そうやって民族の魂と結束を壊していく。
植民地政策の悪魔性です。

これが逆の立場だったらどうだったかを、僕らは想像してみるべきではないか・・

石川啄木の金字塔
「ふるさとの訛り懐かし停車場に
人混みの中に そを聞きにいく」
・・この句が誕生しなかったかもしれないのだから。

・・・・・・・・・・・・・

◆「第二次世界大戦後、独立を回復した国の中で唯一自国の言語を取り戻した国家となった」
このラストのナレーションはあまりにもあまりにも重たい。

◆DVDを2枚購入した、
1枚は北海道で機関誌「アヌタリ・アイヌ」(われら人間)を主宰している友人に、
1枚は沖縄で琉球語の伝承と琉球独立学会に携わっている友人へプレゼントだ。

タンポポの綿毛は、ふわふわと頼りないが、命を秘めて風に乗り、人の心に言の葉を芽生えさせる。

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きりん
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