ルース・エドガー
劇場公開日:2020年6月5日
解説
17歳の高校生ルース・エドガーの知られざる内面に迫り、人間の謎めいた本質とアメリカの現実に鋭く切り込んだサスペンスフルなヒューマンドラマ。バージニア州アーリントンで白人の養父母と暮らす黒人の少年ルース。アフリカの戦火の国で生まれた過酷なハンデを克服した彼は、文武両道に秀で、様々なルーツを持つ生徒たちの誰からも慕われている。模範的な若者として称賛されるルースだったが、ある課題のレポートをきっかけに、同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立するように。ルースが危険な思想に染まっているのではというウィルソンの疑惑は、ルースの養父母にも疑念を生じさせていく。「イット・カムズ・アット・ナイト」のケルビン・ハリソン・Jr.が主演を務め、教師ウィルソンを「ドリーム」のオクタビア・スペンサー、養父母をティム・ロスとナオミ・ワッツがそれぞれ演じる。監督は「クローバーフィールド・パラドックス」のジュリアス・オナー。
2019年製作/110分/PG12/アメリカ
原題:Luce
配給:キノフィルムズ、東京テアトル
スタッフ・キャスト
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学校で一番の優等生は、実は恐るべき存在ではないか? そんな疑念が雪だるま式に膨れ上がるミステリーだが、ミステリーを解き明かすことが重要な作品ではない。むしろ疑念は大きなるばかりで、すべては見た目とは違うという普遍的な真実と、それによって右往左往する大人たちの姿があぶり出されていく。タイトルロールの優等生ルース・エドガーについても、一体どんな人物なのかを明確に提示してくれたりはしない。少なくとも、劇中の親たちが思うような子供でもないし、先生が抱いた疑いも的中していたとはいい難い。ただ、押し付けられたイメージに抗う子供の底知れない複雑さに、観客として狼狽えるしかないのである。もちろんこの映画の背景には人種や差別の問題が横たわっているが、われわれが、普段いかに物を本質を見ることなく、都合のいいものを拾い集めて生きているかを突きつけられて、いい意味で不安になる映画だと思う。不安になれてよかった。
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久々に映画を見ながら狼狽した。BLM運動と直結して見えたのは当然だが、それ以上に、いかに自分の暮らしがステレオタイプに溢れているか、それこそ普段見慣れた映画もまた「このキャラクターはこんなセリフは言わないはず」とか様々な固定観念に満ちた産物であるのを痛感させられたからだ。この難しい問題提起をあえてアフリカン・アメリカンどうしのやりとりであぶり出していく様が極めてスリリング。
幾つもの層から成る演技を見せたハリソンJRも素晴らしいが、対峙するスペンサー(役名は“ハリエット”)も抜群の凄みただよう。そんな二人が「この国は人々を箱に入れて分類する」とアメリカについて語る場面。そういえば本作には幾度となくロッカーが登場していたことにハッとさせられた。
感じ方、捉え方は決して画一的ではない。鑑賞することがゴールではなく、むしろ何度も見て議論を深め、自分に見えていない部分に光を注ぎたくなる一作だ。
photograph
→光を記録する。
撮影
→
影を撮る。
(『陰翳礼讃』に関しては別場所で話してます。)
カメラで何を撮るか、
何を残すか、
何を伝えるか。
そもそも多勢の観客の心に打ち込む考え方が出発点から違っていたはずだった事が、、、、
つづきは某所で・・・
2022年5月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
元の名前をどうしても母親が発音できず
名付けた新しい名前はルース。
光という意味だ。
ここに象徴される親子の関係性。
名前を変えさせられ、デニスという魚を投げつけた子どもから、セラピーを経て品行方正の学校が誇るルースへ。
頭が良いからこそ求められる子どもになろうと
もがき続けてきた少年。
母は小児科医、父も地位の高い士業という
意識の高い育ての両親だ。
そこに生まれた歪み。そのあらわれを指摘した
女教師ハリエットに復讐しようとするのは、息ができないほどがんじがらめになっている状況への怨みでもあるはず。自分に期待する母と、ハリエットという女教師、
どちらも型を押し付けることに変わり無いからだ。
ボヤ騒ぎの後、家で、クリスマスプレゼントの隠し場所のを知っていつも驚いたふりをしてきた遠く告白するシーン。 ハグしながら、あなたには未来がある、何にだってなれる、絶対に。という母親の言葉はまたルースを縛るものに聞こえる。
自分をかたにはめ、しばるものは誰なのか。
自分か周りか。それは何なのか。
自己満足なのか愛なのか。
「自分ありのままでいればいい」と言う母の言葉が
空虚でもあり重くもある。
親と養子縁組が多いアメリカでなくても、
親として身につまされるものだと思った。