「"恐い間取り"とは?」事故物件 恐い間取り ねるねこさんの映画レビュー(感想・評価)
"恐い間取り"とは?
原作未読。閲覧注意"という宣伝を見て、クレイヴエンカウンターズを想起。予告を見て、「総合的には駄作だが、見ごたえのある映像が楽しめるんじゃないか」という期待と「監督、今度こそは…」という希望を胸に鑑賞。しかし、期待も希望も見事に打ち砕かれた。この映画よりも、この映画を見に行った自分が嫌いになる。
恐くない&面白くない&見る価値ないの三拍子。文句ならいくらでも出てくるが、主なのは「ホラーとして恐くない」「幽霊のビジュアルが安い」「サブタイトルが雑」の3つ。
まず、本当に、心底恐くない。幽霊的な恐さもなければ、"結局恐いのは人間"だとか精神に来るような恐さもない。
劇中にそういう要素がないわけではなく、あるにはあるのだが、どれも中途半端に描いているため不十分。
また、BGMを大きくして恐怖を演出する場面が多すぎて、音楽がうるさいとしか思わないし、事故物件での夜、暗いシーンになり、これから恐くなりそう!というところで翌日やら昼間のシーンに場面転換してしまう。
幽霊のビジュアルが安いというのは前述の恐くないに大きく関わる要素だが、本作、主人公が複数の事故物件を移り住み、4軒目でクライマックスを迎える。この話の展開上、それぞれの物件でそれぞれのバックストーリーを持つ複数の幽霊が出てくることになるため、必然的に幽霊のバリエーションが必要とされる。さらにホラー映画たるもの、それぞれの幽霊をきちんと恐怖をいだく対象として描かなければいけない。
…のだが、本作はこの課題をまったく解決できていない。この世に何らかの恨みを持つ老若男女の幽霊が出てくるのだが、色塗りメイクや髪をぼさぼさにしただけの"人間にしか見えない幽霊"しか登場しない。
そんなクオリティなのに、やたらアップで画面全体に映してしまうためチープさが隠せていない。ローアングルでしか映さないとか、ピンボケしている背景に立たせるとか、顔面だけは映さないようするとかで恐怖を煽ればいいのに、そういう演出や絵作りの工夫もなく、これまたチープ。
4軒目、クライマックスだから幽霊大集合!などという安易な発想からか、布団の中や天井裏、押入れ、しまいには冷蔵庫の中から(は?)、寝巻姿のオヤジや伽耶子のパクリみたいなやつ、さらにはぽっちゃり少女とかいう怖くもなければ典型でもない意味不明な幽霊が出てくる。さらにさらに、コイツら揃いも揃ってゾンビのような挙動で襲ってくる(両腕を前に出してそろりそろりするやつ)。
隠し玉は最後に現れるラスボス的な存在、結局なにがしたいのかよく分からない死神のようなローブをまとったヤツ。コイツは物語冒頭から主人公について回り、フードを被ってるため最後の最後まで顔面が見えない。が、ラスト、お披露目した顔は炭で顔を塗りたくっただけの人間にしか見えず、ドッキリ番組のお化けか、もしくはそれ以下のクオリティだ。幽霊にはよくある"人間を操る能力"も持っているが、コイツは体に乗り移るだけでなく、体から追い出されても人間をフォースのように操ったり、袖を振り払う動作で吹き飛ばすこともできる。
このような"チープなビジュアルにチープなアクション"は見るに耐えない。死神(笑)もCGによるエフェクトが本当の意味でチープだし、ロケーション(4軒目の物件以外、まったく恐くない)も全体的にホラーとしての雰囲気が少なく、ある意味でチープだ。
文句を挙げたらきりがないのでこれで最後にする。
"恐い間取り"という本作のサブタイトルは、本編で一度しか使用されない(そうだったはず)。それは別にいいのだが、使いどころが下手くそ過ぎる。
4軒目での出来事が描かれる手前で、亀梨演じる主人公山野に対して、奈緒演じる序盤から心霊現象を共にした小坂というキャラクターが「もう事故物件に住むのはやめて」と今更ながらに引き止める。引き止めようと説得する中、小坂は唐突に「この物件(4軒目)は恐い間取りです」と言う。
なにを根拠に?"恐い間取り"の意味とは?本題の"事故物件"とは意味が違うのか?とても疑問に思うところだが、それ以上は明言しない。小坂が見える体質の人物として描かれているため、勘で放った言葉なのかもしれないが、そのような趣旨のことも言わない。とても不自然に、台本をそのまま読み上げているように恐い間取りという単語を言う。
前述したように劇中で一度しか使用されないサブタイトルなのに、悪い意味で目立ってしまっている。
ホラーとしては当然のこと、ネタとしてもこの映画を見ることはおすすめしない。