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グンダーマンという、労働者でもありミュージシャンでもある男の伝記映画である。
他国に赴いてコンサートをひらけるのだからミュージシャンとして結構売れていた人だ。
彼の人生の中で特徴的なことは東ドイツの秘密警察シュタージのスパイだったことである。指示された人物について報告をしたり、西側の思想に傾倒している人物や東側の思想に批判的な人物を密告したりするのが任務だ。
ベルリンの壁崩壊後、東西ドイツは統一され東ドイツも西ドイツと同じように西側の思想に変わった。
そうなるともちろん、東側の思想はいわゆる「悪」ということになる。
極端な話、悪の思想を強硬な手段で守っていたのがシュタージであり、そのシュタージの手先であったグンダーマンもまた「悪」であったといえるわけだ。
観ていれば分かるが、グンダーマンは国外ツアーと引き換えにスパイになる。ノリも軽い。
グンダーマン本人は、当たり障りのないことだけを報告していれば罪のない人に被害が出ることはないだろうと考えていたのだ。
しかし、統一されたドイツで、元スパイをジャッジすることは難しい。善良なスパイ?そんなものがいるのか?。シュタージのスパイというだけで裏切り者なのである。
時代の変化、ミュージシャンとしてのグンダーマン、スパイとしてのグンダーマン、労働者としてのグンダーマン、それら見るべきところは多いものの、結局何を訴えたいのかよく分からない。
もっと、元スパイだったという事実に苦悩したりするの作品なのかと思っていたけれど、そこまで深く扱っているわけでもない。
言い換えるならば、多くのことを取り込みすぎて焦点の定まらない作品であった。
それでもまあ中々面白かったとは言える。
作中、18曲も歌うらしい。もうほとんどの時間が歌っているシーンということになる。そういった意味で音楽映画のようでもあり、グンダーマンの曲を聴いていると、不思議と彼は悪くないんじゃないかと思えてもくる。
ただ、彼は中々えげつない略奪婚の人で、その印象はかなり悪いけどね。
細かいところでは、冒頭、グンダーマンが動物のエサやりに使おうとしたガラスのフルーツ皿。これはスパイとして任務をやり遂げた際に贈られたものである。
この皿が、幾人かの場面で出てくるのだ。
つまり、この皿を持っている人たちもまたスパイだったわけだ。
どいつもこいつも、とまではいかなくとも、スパイは多かったし、元バンドメンバー同士でお前のことを報告したと告白し合う場面は、笑えないけど笑えた。
グンダーマンさんを知っていたり、彼の曲を知っていたりすればもっと面白かったのかなと思う。
私はボブ・ディランでさえ顔を認識出来ないくらい音楽には興味がないので少々ハードルが高かった。
ある程度シュタージのことやそのスパイのことが分かっていて、尚且つ音楽に興味のある人にはオススメ。
一応、歴史的な変化のある作品ではあるが、そのシーンや説明などはないので、既に分かっている人向けだ。