劇場公開日 2021年2月11日

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すばらしき世界のレビュー・感想・評価

全610件中、21~40件目を表示

4.5我慢の割におもしくない、でも空が広い

2024年10月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2024
123本目

人の怖さに涙し
人の優しさに涙し
人の命に涙する。

役所広司と仲野太賀のこの2人の名演技が光る。
津野田(仲野太賀)がカメラを持って逃げたのは、その映像を世に出して欲しくないから。
だからこそ逃げた…でも三上(役所広司)を守ったようにしか見えなかった。

実は吉澤(長澤まさみ)が一番卑怯と思った。

…とにかく感じる事の多い映画だ。

“すばらしき世界”とは?

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M.T

4.5役所広司と長澤まさみ、仲野太賀の3世代競演、そして音楽

2024年9月26日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

キービジュアルの印象から何となく観ないでいたが、いざ観てみればよい意味でいつも通りの西川美和監督らしい世界観であった。小さなヤマ場を盛り込みつつ、テンポよく物語は進み、飽きさせられることはない。

人間の多面性・善と悪の同居。特にこの作品ではそれらがごく普通の人々のごく普通の日常の中にあることを感じさせられた。「悪」といっても明らかな悪意ではなく、立場が違えば、あるいは結果として、あるいはそうなるのも無理からぬ、というようなものだ。
小さいけれど、そういったものが積み重なって世の中ができている。時としてそれが生きづらさの原因にもなっている。ざっと総括すればそういう映画だと思う。

演者も実力者揃いで危なげなく観ることができた。

それにしても役所広司、この人は本当に凄い役者である。
元ヤクザらしい激しさと危なっかしさ、世間では通用しない元犯罪者としての無力さ情けなさ、暴力によって敵を制そうとしたとき生き生きとした表情、ありとあらゆる側面・表情をみせながらも主人公「三上」であることにブレが生じることはない。説得力のある存在感。特に強く印象に残ったのは終盤のホームでの談話シーン。グッと怒りを飲み込み周囲に同調するような台詞を吐く場面。その笑顔の中にたくさんの複雑な感情と情報が押し込められているのがわかる。なんという演技力であろうか。改めて彼の力の底の知れなさを感じさせられた。

そして次に印象に残ったのが長澤まさみ。
「Mother」以来社会派の作品を選ぶことが多く演技に幅が出てきたが、この作品では彼女の演技力がまだまだ進化中であると思わされた。登場時間でいえばそれほど長くないにもかかわらず、彼女演じる人物がどのような者かしっかり伝わってきた。特に姿の映る出番としてはラストの仲野太賀とのやり取りのシーンは圧巻であった。「Mother」以来の荒いシーンであったが、明らかに「Mother」を上回る凄味があった。

クレジットでいえば2番手である仲野太賀は彼らしい真摯な演技であったが、
先の二人に比べればまだまだであるということを感じさせられたのは否めない。
長澤まさみと仲野太賀はそこまで年齢もキャリアもそこまで差はないが、長澤はデビューから第一線で揉まれてきて勝ち残ってきただけあり、仲野よりも一段上のステージにいる。
仲野はそれを追う立ち位置である。が、いまはそれでいい。
正直役柄的にもなくても作りようによっては話は回りそうで、仲野太賀を配したいがために作ったのかな、という気がしないでもないのだが、彼が先々西川組に参加していく足がかりのようなものと思えば、今後に期待しかない。

最後に、音楽が林正樹であったことは驚きであった。
ずっと劇伴が良いと思いながら観ていて、
「この感じ物凄く好きだな」「聴いたことある雰囲気だから、他の映画でもよく名前を観るような人に違いない」と考えていたら、まさかの私が今一番気に入っているジャズピアニストの彼であった。
劇伴はジャズ調ではなかったので、とても意外であったとともに、やはり好きなものはわかるものなんだなと自分のアンテナの自信を持ち(自己満ですが)、また、私が好きな西川監督もまた彼の音楽を好きなのだろうと思うとなんとなく嬉しいのである。

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yco

4.0皮肉なタイトル

2024年9月23日
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ジョニーデブ

4.5処世術とは

2024年9月10日
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電話をかけたらタイミング悪くて、保護司もイヤな人間に見えるシーン。人に不信感を抱く瞬間ってあるよね。でもそうじゃなかった。

主人公が純粋な人間と描かれすぎてはいるが、ラストでいじめに同調するところは胸が苦しくなった。

本当に力を持っている人間というのは、いじめをしていた職員のような人種だろう。

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ムーン

2.0タイトルは「イライラおじさんの日常」

2024年8月27日
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つまらない。ダラダラ言いたいことがまとまってない。不機嫌な人間を見せられるのは苦痛。ゆれるを見たときは天才現ると思ったけど、凡百におさまりましたな。日本映画が見てて恥ずかしいのは俳優のせいなんだろうか?脚本?監督?キムラ緑子だけは良かったなー。

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三毛猫泣太郎

3.5きびしい世界

2024年8月18日
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鑑賞方法:VOD

きびしい世界

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トシ

5.0見えないから、わからないから面白い

2024年8月13日
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鑑賞方法:VOD

最初は好奇の目を持っていたテレビマン、繋がりを持ち「他人」ではなくなっていく。
「画面越しの人」から徐々に変わっていくグラデーションにこそ、すばらしき世界を感じた。

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なむはぜ

4.5笑って泣いて、考える映画

2024年8月13日
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泣ける

笑える

難しい

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見聞

3.0うん、よかったと思う、

2024年8月12日
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鑑賞方法:VOD

いろんな表現で形容できるおちゃめな主人公と周りの人たちがほっこりしてていい。

しかし、それでも弱いものをいじめたり虚勢張って威張ってたりする連中もいて、そんなやつらは懲らしめてやってもいいとも思う(笑)

現実社会でもいろいろ不可解だったり人をバカにしたり、理不尽なことも多いなか、みんながんばって耐えて生きてるんだなあ、と。

って、この映画のレビューにはなってないか(笑)

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けい

3.5あえてコメディタッチ

2024年7月21日
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鑑賞方法:VOD

西川美和監督の安定感が光ります。
観る側に余韻というか、考える余地を残す演出がたまらないですね。
今作の主人公は比較的分かりやすい、直情的な性格ですけど、それに巻き込まれる普通の人たちが何を感じて行動に移るのか、説明されないけど観客に託される組み立てになっています。
あえてコメディタッチな展開をところどころに入れてくるから、辛い状況のお話だけど楽しく観れました。

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ジンクス

4.0タイトルが秀逸

2024年7月20日
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鑑賞方法:VOD

2024年7月20日
映画 #すばらしき世界 (2020年)鑑賞

13年の刑期を終え出所した元ヤクザ。カタギとして生きると決意したがそこは生きづらい社会だった

元ヤクザの人が社会に受け入れられるのは難しいと思うし、自分が親しくなれるかと言われたらすぐにハイとは言えないな

#役所広司 はやはり名優

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とし

4.0真っ直ぐすぎる人、一度レールを踏み外した人には生き辛いこの世の中。...

2024年7月15日
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鑑賞方法:VOD

真っ直ぐすぎる人、一度レールを踏み外した人には生き辛いこの世の中。でも捨てる神もあれば拾う神もあり、好きな時に自由に広い青空を眺められることの素晴らしさ。それこそがまさにすばらしき世界。でもやっぱり最後は・・・。
役所広司はもちろん、仲野太賀、六角精児など出て来る俳優の演技が光る作品。

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masya

5.0文句なしの傑作

2024年6月6日
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鑑賞方法:VOD

2度目の鑑賞だったが、途中から涙が止まらなかった。
役所光司の圧倒的な存在感はいうまでもないが、登場人物全てがそこに生きていた。
文句なしの傑作。

「社会のレールから外れた人が、今ほど生きづらい世の中ってない。一度間違ったら、死ねというばかりの不寛容がはびこって、だけど、レールの上を歩いてる私たちもちっとも幸福なんて感じてないから、はみ出た人を許せない。」

劇中の長澤まさみのセリフだが、現在の日本の状況、特に匿名性が高いと思われているSNSの状況を考えるに、正鵠を射ているのだろう。

けれど、この映画を観た私たちは感じ取る。
役所光司演じる三上正夫を取り巻く人々が、初めは、「はみ出た人を許さない」眼差しを持っていても、やがては三上のかけがえない応援団になり得ることを。そして、それこそが「すばらしき世界」であることを。

例えば、六角精児演じるスーパーの店長。三上の万引きを疑った彼が、後には三上に罵倒されることがあっても、「三上さん、虫のいどころが悪いんだね」とかわして関係を切らず、三上が介護施設で働くことになったことを聞いて、「すごいじゃない。よかったね」と破顔する。

仲野太賀演じる津乃田も、三上の突発的な暴力性を目の当たりにして、一旦は距離を置くが、一番の理解者になる。

最初は生活保護も渋ろうとしていた北村有起哉演じる福祉課の職員も、介護施設就職への道を開く。

身元引受け人の橋爪功演じる弁護士夫婦は、最初から応援団だが、できることできないことはきちんと分けて、プライベートも守り、適切な距離感を保って無理しない。

そして、三上が頼った白竜演じる義兄弟と、キムラ緑子演じるその妻。ヤクザとして生きることの厳しさを肌で感じている妻の言葉が、胸を打つ。
「シャバは我慢の連続ですよ。我慢のわりに大しておもしろうもなか。やけど空が広いち言いますよ。」

介護施設施設で、不寛容な態度を示す職員も登場する。彼の言うことは、ある側面では正論だろう。けれど、冒頭の長澤まさみのセリフそのものだ。仕事内容の割に、低い報酬や待遇の悪さが透けて見えてくる。

あの映画のシチュエーションの中にいたとしたら、自分は三上の応援団になり得ただろうか。
階下の技能実習生たちと良好な関係を築けただろうか。
介護施設の中で、花に心を寄せるアルバイトの彼の素晴らしさに気がつけただろうか。

観ながら、様々な場面で自問させられたが、同時に、そういう自分でありたいという気持ちに素直にさせられる映画でもあった。

今回、再鑑賞したのは、とあるフォローさんのレビューを拝読して、西川美和監督の「スクリーンが待っている」という本を知ったからだ。
読んでみると、この映画にまつわる話がほとんどだった。読了してから観ると、何気ない一つ一つの場面でも、制作陣全員の本気度と、とても細やかな神経を行き届かせていることが伝わってきた。未読の方には、是非おすすめしたい一冊。

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sow_miya

4.5「或る男の一生」を変わった視点で観た感想

2024年5月26日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

幸せ

ある日、書店で西川美和著「スクリーンが待っている」を見つけ購入して読んだ。この本には、この映画の制作過程が綴られている。この映画のことを綴っているが、監督の考えや、現代日本の映画制作の現場を知る上でも大変面白い本だった。

当然、映画本編も観たいと思って本作を観たわけだが、その制作過程を企画段階から上映後まで知った上で本作を観るという、これまでにない見方をした映画になった(同じような経験をした人、いるだろうか?)。

あらすじは予めわかっている。はじまりも、結末もおおよそ見当がついている。それでも全編まったく飽きること無く観ることができた。各シーン、各シーンにそれぞれ意味が込められており、作り手の思いが凝縮されているということをしみじみと感じることができた。濃密な2時間だった。これは、本を先に読んだからこそ感じられたものだったと思う。

どうして濃密と感じられたか?それは本に詳しいが、監督が膨大な時間をかけて取材し、ときに俳優との真剣勝負のやりとりもしつつ何度も練り直した脚本と、その脚本の世界を、プロフェッショナル達がたった一瞬のカットであっても本物の「画」として撮り、「音」を撮ったということが実感できたからだ。そうした映画制作陣の仕事ぶりを、そこかしこのシーンで感じることができた。
この作品については、上記のような経緯で観たため、制作、撮影、音響、美術、宣伝といった裏方の仕事ぶりに注意が向いてしまったきらいがある。しかし、しかしだ・・・

やはり役所広司は凄いとしか言いようがない。見た目は役所広司なのだが、中身が出る映画の度に入れ替わっている。役所広司の見た目をしているが、もうすっかり全身「三上」なのだ。直情的で単純で不器用なだけに見えるこの主人公の、一筋縄ではいかない過去と心情を全身で表現している。恐縮し、緊張で強ばった目と体。激高して振るう暴力。子供と屈託のない笑顔で遊ぶ姿。泣き崩れる背中。一番星を見つめる目。この男をずっと観ていたい・・・そんな気持ちにさせるのだ。

役所広司だけではない。監督の指名で出演となった仲野大賀。彼の最後の演技で私は泣いてしまった。それまで冷静に観ていたというのに、どうして?
ああ、そうか、彼が演じる津乃田もまた、この三上という男をずっと観ていたい人間だったのだ。原案の作者の佐木隆三もたぶん同じだ。この三上という男には、言い知れぬ魅力があったのかもしれない。

六角精児、橋爪功、梶芽衣子、キムラ緑子、北村有起哉ら、三上を支える役柄の演者も上手かった。いい人すぎる、という意見があるかもしれないが、三上が、そして映画を観た我々が「すばらしき世界」を実感するには必要な役だった、と思いたい。

この映画が心に残った人は、西川監督著「スクリーンが待っている」を読むことをお薦めしたい。映画に出てくる端役についても、知られざる物語があったことを知れる。映画を見る目が変わる本である。

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TS

4.5ただの一市民に"成り上がる"

2024年5月18日
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泣ける

悲しい

知的

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盲田里亭

4.0現代のテーゼ

2024年5月17日
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鑑賞方法:VOD

良い映画です。違う形ではありますが、私も仕事柄刑務所上がりの方の生活支援をしたりする事があるので、見入ってしまいました。
役所広司さんが自然で引き込まれる演技力を見せてくれましたし、ストーリーは社会問題を題材にしながらも重くなりすぎないように仕上げてくれてたと思います。
仲野太賀さんも良い味を出してくれてましたね。
三上が不器用ながらに世間を渡り歩いていく姿を見てると応援したくなりますね。
こういう人たちに支援の輪がどんどん広がる事を願ってますし、僕も協力したいです。

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ハーブ

4.5二度と、間違った道に戻らないで

2024年5月6日
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トッキー

4.0三上が自然過ぎていて難しい

2024年4月16日
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鑑賞方法:VOD

難しい

主人公三上という人物をそのまま描いた作品だと思う。
彼のアイデンティティは「身分帳」に記載されている、いわゆる前科者。
TV局は彼のドキュメンタリーを試みるものの、TVでは流すことのできない暴力を起こす彼に、企画中止せざるを得ない。
三上にとってこの世界はすべてが思い通りにならない。
免許証も市役所も騒音も買い物も…
努力はしている。しかし、いつも決まって問題が起きる。
最後はやはりヤクザ。
仲間を頼って九州に。しかしヤクザも生きていけない世界になっていた。
警察によるガサいれと、姐さんの指示でそこを去った。
何をしてもうまくいかないし生きずらい。
TV局から依頼されたツノダは、企画がお蔵入りになって仕事を失ったが、三上のことを本にして出版したいと考えた。
彼は三上の母の情報を手繰り寄せるが、結局母の行方は分からないままだ。
三上が子供たちと一緒にサッカーを楽しんだ後、泣き崩れたのはなぜだろう?
幼い頃の無邪気さを思い出したからなのか?
両親のいない子供たちに自分を重ね合わせたからか?
子供たちが腐っていなかったうれしさからか?
母に捨てられたという事実を受け入れるしかないとわかったからか?
それとも、それらすべてから母との別れを心に決めたからなのだろうか?
このTV局による一連の動きがこの作品の流れになっている。
やがて就職が決まる。
そしてすぐにかっとなる自分を戒めることに初めて成功する。
再び襲ってくる衝動にも耐えると、そのきっかけとなった障害者からコスモスの花束を分けてもらった。
元妻からの電話 「今度デートしようよ」
ようやく回り始めたこの世界での歯車… 三上のこみあげてくるような喜びを感じることができる。
白い目、すぐに問題にぶつかる。どうにもなじめない世界の中でも手を貸してくれる人々がいる。必死で葛藤しながらようやく見出せた素晴らしさ。
コスモスの花束を握りしめた三上は、きっと美しい三途の川を渡ったのだろう。
彼にとっては居心地の悪いと思っていたこの世界で、ようやく見つけた素晴らしさに気づけただけで十分な人生だったのかもしれない。
そして「あちら」には、ずっと探していた母がいたのかもしれない。
三上の些細な気づきと喜びは一瞬だった。彼の死と泣いてくれる人々。カメラはそのまま空へと向いてタイトルが流れる。
「すばらしき世界」 わかろうと思えばわからなくもないが、難しい。

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R41

3.5更生するということの難しさ

2024年4月11日
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泣ける

怖い

難しい

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きくさん

4.5そこに『素晴らしき世界は』あるのか

2024年3月27日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

『ゆれる』や『ディア・ドクター』の西川美和、人間をどこか冷めた目で見てきた監督である。この映画、一筋縄では収まらない予感はした。役所広司が怪演するこの主人公を、真面目なのか馬鹿なのか、状況によって豹変する短絡的な人物として映し出す。13年の刑期を終えて出所したこの男もまた、社会に同化して生きてゆくにはあまりにも不器用すぎるのである。彼の周囲には、身元引受人として何くれとなく面倒を見てくれる弁護士や、生活保護や仕事の世話をしてくれる役所のケースワーカー、なぜか親身になってくれる地元スーパーの店長など、一人で頑張って生きていかなければならない一般の社会人から見ればあきれるくらい「恵まれた」環境がそこにある。それが犯罪者の社会復帰を手助けする社会構造のあり方か。まったく「素晴らしき世界」の中に彼はいる。それなのにこの元殺人犯は社会に同化することができないのだ。

 映画はこの男の成れの果てをただ冷徹に提示してみせる。それはただ単に身から出たサビ、すべては自業自得、といっているようにも見える。刑期を終えた犯罪者が社会に同化できない世間の在り方を指弾するものでもない。ただただ道を誤った人間の、寄る辺なき姿を露わにして見せるばかりなのだ。監督西川美和の、人を見つめる鋭利なまなざしがここにある。

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inosan009