劇場公開日 2021年2月11日

  • 予告編を見る

すばらしき世界のレビュー・感想・評価

全591件中、1~20件目を表示

4.5晴れやかな空のすばらしき世界は全然よくない

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

悲しい

笑いとシリアスな部分の緩急が絶妙でした。

社会福祉的な支援は存在しているはずなのに、そこからこぼれ落ちてしまう様子が見事に描かれていてすごい。また誰しもが、自分のできる範囲でやっているにも関わらず摩擦が生じたりするのがとても悲しいが、現実なのである。みんな社会システムに組み込まれて、疎外されてしまうのである。

あと思ったのが、ちゃんと三上を映画的に殺すこと。元妻と“デート”の約束を交わすシーンで終わってもいいと思った。だが、嵐が吹いて洗濯物を急いでしまうがために持病が重症化して亡くなるまで描く、つまり三上の社会復帰を絶やすことと支援の届かなさをちゃんとみせるのは映画として素晴らしいと思った。

嵐が起こるからコスモスなどの花を気遣う人がいる。誰の責任でもない嵐の中、些細な出来事で死ぬ人がいる。そんな人々を蔑み、笑い、いなかったことにする人また気づいても支援が届かなかった人は生きる。映像として消費する人は快適に生活する。そんな晴れやかな空のすばらしき世界に私たちがいることを暗示しているように思えてならない。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
まぬままおま

4.0太賀の存在が光る!

2021年3月16日
iPhoneアプリから投稿

 映画化を知って、原作を読みながら公開を待っていた本作。なかなかの長編、かつ、携帯電話等々とは縁遠い昭和の時代に書かれたもので、これがどのように映画になるのか、期待と不安があった。蓋を開けてみれば、まさに「今、ここ」の物語。単純な原作ものとは一線を画す、のびやかな映画になっていた。
 長い刑期を終え、13年ぶりに社会に出た三上。身寄りのない彼のつてはごく僅かだが、弱者に甘んじることを嫌い、手を差し伸べる者とも衝突してしまう。生活に行き詰まり、ルーツをたどるように東京から地方に流れていくが、そこにも彼の居場所はない。とぼけた笑いも織り交ぜられているが、それ以上に息苦しく、救いのなさがひしひしと迫ってきた。
 一昔前より、今はよっぽど生きにくい。日頃ぼんやり感じていたことを、本作はくっきりと描く。社会とかみ合わない、かみ合おうとしない三上を演じる役所広司のうまさは、言うまでもない。ここで声を大にして言いたいのは、三上に接近していく駆出しのテレビマン、津乃田を演じる仲野太賀の存在感だ。様々な作品で若きバイプレーヤーぶりを発揮しながらも、振れ幅(当たり外れ)が大きい彼。今回はどちらなのか…なんていう野暮な思いは、中盤から吹き飛んだ。太賀あっての本作、まさしく彼の代表作になる!と、観るほどにわくわく、ぞくぞくした。
 津乃田は、原作には登場しない。(片鱗を感じさせる若者は登場するが、すぐに三上から逃げ出してしまう。)津乃田が他の人々と決定的に異なるのは、戸惑い迷いながらも、最後まで三上に伴走していく点だ。三上を引き受ける弁護士夫婦、福祉課の職員、スーパーの店長たちは、それぞれに彼を温かく受け入れ励ますが、それは彼の立ち直り、つまり、自分たちの場所に無害に加わることを求めているからだ。一方津乃田には、そういった欲はない。長澤まさみ演じるやり手のキレイな上司に言われるままに取材を始め、自分を曲げない三上の扱いに右往左往する。仲違いしたはずの二人が再び出会い、三上の辛い過去との訣別に津乃田が寄り添うくだりには、思いのほか心揺さぶられた。こんな世の中を生きていくには、導きよりも、分かち合いの方がよっぽど大切なのかもしれない。
 後半、映画は原作の枠を超え、再出発も束の間、息を呑むラストシーンになだれ込む。放心しながらチラシやポスターが頭をよぎり、既にそこに物語が示されていたのかと、衝撃を受けた。
 映画を観終えた今は、メインビジュアルを直視するのは少し辛い。けれども、見開きチラシ(コメント集)の、子どもたちとサッカーに興じる二人は、ひときわ輝いて見える。自分も、背伸びせず、欲張らず、大切な存在に伴走していきたいと思う。

コメントする (0件)
共感した! 7件)
cma

4.5小さな悪意と小さなやさしさの混在する社会の中で

2021年2月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 13年ぶりに出所した元ヤクザの三上が、堅気としての地道な自立を手に入れようと精神的にもがく様が、淡々と描かれる。
 三上は私生児として産まれ、母親は施設に彼を置いて失踪したため、親の愛を知らず育った。劇的な展開のある物語ではないが、直情的な彼が感情の制御に苦しみながら一進一退で歩んで行こうとする様をつぶさに見せられているうちに、その不器用さにはらはらしながらもいつの間にか応援していた。
 今公開中の「ヤクザと家族」は視点がヤクザの世界の中にあるが、この作品の視点はあくまで巷間にあり、元ヤクザという出自はあくまで背景のひとつだ。描こうとするテーマも違う。比較されることもあるようだが、それぞれに違う味わいの佳作だ。(両方に出ている北村有起哉の豹変ぶりにはびっくりした。さすが!)

 原案となる小説を書いた佐木隆三は、この物語の実在のモデル田村明義と、創作の対象以上の関わりを持っていた。田村のアパート入居の保証人になったり、時に彼のために厳しい言葉を投げたり、とある件では関係者として警察の事情聴取を受けたりもしている。
 映画の中で三上と関わる人々には、そんな佐木のまなざしがにじんでいるようにも思えた。TVディレクター津乃田の変化が印象的だ。三上を取材する立場という点は佐木にも通じている。当初は仕事だからとプロデューサーにどやされながら主体性のない関わり方をしていた彼の心の変遷に胸が熱くなった。

 一見冷たく見えたり、立場上厳しいことを言うような人でも、一歩進んで関わってみれば実はやさしい、時にはそんなこともある。そんなやさしさはとても得難く眩しいものに見える。
 逆に、関わってみると相手の心の汚さが見えてしまうこともある。そんな汚さをひとつひとつ正そうとしていたら、清濁渾然としたこの世界で生きることは一層難しくなってしまう。

 三上の無邪気とも言える心根は間違っていないのに、その生い立ちのくびきから逃れる機会を見失ったために、彼は何かを拒否したり他者の間違いを否定するにあたり暴力しか手段を知らない。また、私たちが日頃ちょっと引っ掛かりつつも目を反らし流してゆくような些末な悪意を流すことが出来ない。だから、社会で大人しく生活してゆくには己の価値観を根っこから抑えつけるしかなかった。それが何だか切なかった。
 彼の手段は間違っているが、自分の心の弱さに向き合ったことがある人ならば、突き放して見ることは出来ないだろう。

 垣間見える人々のやさしさに言葉通りの「すばらしき世界」が見え、堅気に生きようとする三上の心を倫理的におかしな堅気の人間たちが波立たせてゆく様に、皮肉としての「すばらしき世界」が見えた。

 役者の使い方が的確かつ贅沢で、出番の少ない役柄も皆リアルな存在感が際立っている。役所広司はもう言わずもがな。安心して実力派俳優たちを堪能出来る。
 西川監督は、三上をあたたかい視線で描きつつ、贖罪と更正の美談に仕立てることもしない。静かなラストシーンにまでその姿勢が感じられて、不思議な清々しさが余韻として残った。

コメントする (0件)
共感した! 57件)
ニコ

4.0元ヤクザの目をとおして描かれる、今の時代の生きづらさと微かにある希望

長い刑務所生活を終えた元ヤクザの三上(役所広司)が、浦島太郎状態になって戸惑いながらも何とか社会に適応しようともがく姿を描くことで、今の時代の生きづらさと微かにある希望を描いているように感じました。窓にはじまり窓に終わるところも気が利いていて、後半のあるポイントで三上が嘘をつなかければならない一連のシーンは役所氏の演技も相まって大変な凄みがありました。
西川美和監督はエッセイも面白くて、本作のメイキングがつづられた書籍「スクリーンが待っている」を読むと、さらに本作が楽しめます。特に、役所氏のリクエストで西川監督が書いたセリフの細かい言い回しなどを変えていくやりとりは、ユーモアもありつつ、西川監督から見た役所氏の役者としての凄さが書かれていて、とても興味深かったです。

コメントする (0件)
共感した! 15件)
五所光太郎(アニメハック編集部)

4.5役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品...

2021年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品は今までにどれくらいあったんだろうか。
長い刑期を終えて、出所した男を待っていたのは厳しい社会の現実だった。すっかり世相は変わり、暴力団に対して厳しい世の中になっている。短気な性格の主人公もなんとか自分を抑えながら生きているが、時に暴発する。路上で絡んできたヤンキー連中をボコボコにした時に役所広司の無邪気さがすごい。衝動的に(ある意味でそれは自分らしく振舞っているということでもある)暴力をふるう主人公がどこか子どもっぽく、かわいく見えるように西川監督は撮っている。なかなかすごい発想である。性根は真っすぐで、仁義に厚いとかそういう面もあるにはあるが、それにしても暴力衝動に駆られた時にその無邪気が最大限に発揮されているというのがすごい。
2020年代は、この映画の主人公のような人物が、自分らしく生きられる時代ではなくなった。それでも人は生きていかねばならない。いい奴もいれば悪い役も相変わらずいる。時代に居場所を奪われた人はどうすればいいのか。自分を殺して社会に合わせることが良いことなのか。本作を観た人がそれぞれの人生で考えねばならないことだ。

コメントする (0件)
共感した! 25件)
杉本穂高

4.0これは「役所広司を楽しむ映画」

2021年2月17日
iPhoneアプリから投稿

泣ける

悲しい

殺人罪で13年の刑期を終え、出所して来たのは、時代の変化に対応できず、何事にもすぐにキレてしまう三上なる男。しかし、見た目は荒くれ者でも、彼は他人の不幸を見逃せない実直で正義感に溢れる人物であった。だから、身元引受人の弁護士夫婦や、TVプロデューサーの指示で三上の出所後の動向を撮影しようとする小説家志望の青年や、三上を万引き犯と勘違いしたことをきっかけに親しくなるスーパーマーケットの店長等、周囲の人々を自然に巻き込み、そして、魅了していく。やがて、気付くのは、なぜ、三上のような人間が犯罪を犯し、人生の時間を奪われ、社会復帰に苦労しなければならないのか?という疑問だ。それは同時に、今の日本社会を構築している我々への問いかけでもある。30年以上前に出版された佐木隆三の原作を現代に置き換えた物語は、細部に変更を加えて、2021年の日本人に向けて痛烈なメッセージになっている。「果たしてここは、すばらしい世界なのか?」という。秀逸な社会派人間ドラマであることは間違いない。でも実のところ、三上を演じる役所広司を見ているだけで、知らないうちに時間が過ぎ去ってしまう、言うなれば、「役所広司を楽しむ映画」でもある。ここ何十年もの間、高い頻度で日本映画に貢献してきた稀代の演技派が、それでもまだ、物凄く面白くて新鮮でさえあるという事実の方が、映画そのものより衝撃的なくらいだ。

コメントする (0件)
共感した! 99件)
清藤秀人

4.5タイムスリップしたような主人公の境遇が現代社会の生きづらさを巧く表す。役所広司ありきの作品!

2021年2月10日
PCから投稿

「ゆれる」(2006年)で❝期待できる監督❞となり、「ディア・ドクター」(2009年)でこれは凄い監督が現れたと思った西川美和監督の最新作。
実は、残念ながら私は「ディア・ドクター」以降の2作についてはあまり響かなかったのが本音でした。
オリジナル脚本にも限界はあるので、本作では長編映画で初の原作物の作品となりました。原作の主人公は「実在の元殺人犯」で、本作では舞台を約35年後の「現代」に置き換えるなどしています。
その結果、「今のヤクザ」には、様々な法律で縛られている背景があるため、生きづらさを、より見せやすくすることに成功していました。
生活保護の現実や、住まい、仕事など様々なシーンでの生きづらさを描いています。
とは言え、本作は不思議と❝湿っぽい❞感じの作品ではなく、常に❝面白み❞が存在しています。これは主人公のキャラクターが大きく、役所広司でなければ、ここまでの面白さや凄みなどのある人物像を作り上げることができなかったと思います。
そして、長澤まさみがテレビのプロデューサー役で登場し、そんな13年の刑期を終え「社会に適応しようとあがく主人公」を追った番組を作ろうとします。
最初は、企画を立てた長澤まさみと、フリーディレクター役の仲野太賀が2人で追いかけていきますが、プロデューサーである長澤まさみは比較的早く仲野太賀に押し付けるなど、こんなところでも現実社会を投影しています。
主人公が終盤で行きついた仕事先は介護施設でしたが、ここでもやはり生きづらさは多くあります。ただ、一方で❝あたたかさ❞もあり、最初は意味不明な映画タイトルですが、ラストで意味が分かると思います。
西川美和監督の新たな挑戦となった本作を、私は成功だと感じました。

コメントする (0件)
共感した! 68件)
細野真宏

4.5心がえぐられる「すばらしき世界」

2021年2月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

西川美和監督が、実在の男を描いた昭和の原作(身分帳)に惚れ込み、時代を「今」に置き換えた本作の主人公(三上)は、役所広司。西川美和監督が描きたかった「生きづらくて、優しい」社会を生き抜く三上という人となりがストレートに伝わり、彼の「優しさ、時々狂気さ」が見え隠れする言動は見る側の心に突き刺さる。
三上は、困っている人を放っておけず、「これはいけないことだ」と思うと、つい当事者のために罵声や暴力を正当化してしまう元殺人犯。しかし、ベースは「優しさ」から起こっていることが作品を通して感じられるため、厳しい描写よりも人間の温かみを感じるところが本作の見どころの一つとなっている。
三上の行動を軸に、「社会に対する疎外感」を伝える西川美和監督(脚本)の視点がリアルで、ユーモアもあり泣けてくるうえに、改めて「社会」と「人間」を考える架け橋のような映画に仕上がっている。
年配で身体も想定以上に弱っているのに、見る側がドキドキしてしまう三上の二面性を、役所広司が期待を上回るほど見事に演じ切っていた。彼のストーリーに関わる人物も豪華なキャスト。皆それぞれ人間味あふれる役柄で、重要なポジションとなっていて、個性豊かな登場人物全員が「社会の厳しさ」を痛感しているので、誰かしらに共感できるはず。
私は見終わった後、爽やかな風に揺られる秋桜が愛おしくなった。

コメントする (0件)
共感した! 68件)
山田晶子

4.5幸福の定義を問いかける西川美和の傑作

2021年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

西川美和監督はオリジナル脚本にこだわり続け、これまで活動してきたが、今作は長編映画としては初めて手掛ける原作もの。
佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった小説「身分帳」が原案だが、舞台を現代へと移している。人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男にとっては、現代ほど生きにくい世の中はないのではないだろうか。本編でも不寛容な社会が描かれており、正義感が強く直情的な主人公・三上(役所広司)は、いたるところで壁にぶち当たる。劇中であっても珍しい、役所が声を荒げる光景を目の当たりにすることができる。シリアスなだけではなく、くすりと笑える描写も多々ちりばめられている。散々な状態のときにこそ、思わぬ人から温かい言葉をかけられた経験は、誰にだってあるはず。行きにくい世の中にあって、三上は幸福を探し出すことが出来たんだろうか……。とにかく劇場でご覧いただきたい作品。

コメントする (0件)
共感した! 41件)
大塚史貴

5.0役所広司の役者魂と人間力を焼き付けた西川美和監督の新たな代表作

2021年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

怖い

3年ほどの間隔で傑作、力作を発表してきた西川美和監督。小説家でもあることからオリジナルの物語を創作して映像化することへの人一倍のこだわりは明らかだが、今作で初めて他の作家の小説を原案に長編映画を撮った(短編では夏目漱石原作のオムニバス映画「ユメ十夜」の第九夜を担当)。

佐木隆三の「身分帳」は、人生の大半を獄中で暮らした男の刑務所内の個人記録を基に、その人物の生き様をたどったノンフィクション小説。1990年の刊行だが、映画では舞台を現代に置き換え、携帯電話などのアイテムをストーリーに活かしている。

元殺人犯の三上は出所後に自立を目指すが、前科者ゆえに働き口が見つからず、さらに体の不調もあってままならない。人懐っこい面と、筋が通らないことには“瞬間湯沸かし器”のようにすぐカッとなる暴力的な面を併せ持つ複雑な人物像を、役所広司が実に人間味豊かに体現している。真摯な役作りの賜物であるのはもちろんだが、さらに演技を超えた“人間力”が映像に焼き付いているように思えた。

共演陣も皆素晴らしいが、特にテレビディレクター役の仲野太賀と役所の風呂場でのシーンが泣ける。あと、アイヌのムックリのような民族楽器のビヨンビヨンという音色とホーミーの不吉な感じが絶妙だった。

コメントする (0件)
共感した! 41件)
高森 郁哉

3.5あえてコメディタッチ

2024年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

西川美和監督の安定感が光ります。
観る側に余韻というか、考える余地を残す演出がたまらないですね。
今作の主人公は比較的分かりやすい、直情的な性格ですけど、それに巻き込まれる普通の人たちが何を感じて行動に移るのか、説明されないけど観客に託される組み立てになっています。
あえてコメディタッチな展開をところどころに入れてくるから、辛い状況のお話だけど楽しく観れました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ジンクス

4.0タイトルが秀逸

2024年7月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2024年7月20日
映画 #すばらしき世界 (2020年)鑑賞

13年の刑期を終え出所した元ヤクザ。カタギとして生きると決意したがそこは生きづらい社会だった

元ヤクザの人が社会に受け入れられるのは難しいと思うし、自分が親しくなれるかと言われたらすぐにハイとは言えないな

#役所広司 はやはり名優

コメントする (0件)
共感した! 0件)
とし

4.0真っ直ぐすぎる人、一度レールを踏み外した人には生き辛いこの世の中。...

2024年7月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

真っ直ぐすぎる人、一度レールを踏み外した人には生き辛いこの世の中。でも捨てる神もあれば拾う神もあり、好きな時に自由に広い青空を眺められることの素晴らしさ。それこそがまさにすばらしき世界。でもやっぱり最後は・・・。
役所広司はもちろん、仲野太賀、六角精児など出て来る俳優の演技が光る作品。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
masya

5.0文句なしの傑作

2024年6月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2度目の鑑賞だったが、途中から涙が止まらなかった。
役所光司の圧倒的な存在感はいうまでもないが、登場人物全てがそこに生きていた。
文句なしの傑作。

「社会のレールから外れた人が、今ほど生きづらい世の中ってない。一度間違ったら、死ねというばかりの不寛容がはびこって、だけど、レールの上を歩いてる私たちもちっとも幸福なんて感じてないから、はみ出た人を許せない。」

劇中の長澤まさみのセリフだが、現在の日本の状況、特に匿名性が高いと思われているSNSの状況を考えるに、正鵠を射ているのだろう。

けれど、この映画を観た私たちは感じ取る。
役所光司演じる三上正夫を取り巻く人々が、初めは、「はみ出た人を許さない」眼差しを持っていても、やがては三上のかけがえない応援団になり得ることを。そして、それこそが「すばらしき世界」であることを。

例えば、六角精児演じるスーパーの店長。三上の万引きを疑った彼が、後には三上に罵倒されることがあっても、「三上さん、虫のいどころが悪いんだね」とかわして関係を切らず、三上が介護施設で働くことになったことを聞いて、「すごいじゃない。よかったね」と破顔する。

仲野太賀演じる津乃田も、三上の突発的な暴力性を目の当たりにして、一旦は距離を置くが、一番の理解者になる。

最初は生活保護も渋ろうとしていた北村有起哉演じる福祉課の職員も、介護施設就職への道を開く。

身元引受け人の橋爪功演じる弁護士夫婦は、最初から応援団だが、できることできないことはきちんと分けて、プライベートも守り、適切な距離感を保って無理しない。

そして、三上が頼った白竜演じる義兄弟と、キムラ緑子演じるその妻。ヤクザとして生きることの厳しさを肌で感じている妻の言葉が、胸を打つ。
「シャバは我慢の連続ですよ。我慢のわりに大しておもしろうもなか。やけど空が広いち言いますよ。」

介護施設施設で、不寛容な態度を示す職員も登場する。彼の言うことは、ある側面では正論だろう。けれど、冒頭の長澤まさみのセリフそのものだ。仕事内容の割に、低い報酬や待遇の悪さが透けて見えてくる。

あの映画のシチュエーションの中にいたとしたら、自分は三上の応援団になり得ただろうか。
階下の技能実習生たちと良好な関係を築けただろうか。
介護施設の中で、花に心を寄せるアルバイトの彼の素晴らしさに気がつけただろうか。

観ながら、様々な場面で自問させられたが、同時に、そういう自分でありたいという気持ちに素直にさせられる映画でもあった。

今回、再鑑賞したのは、とあるフォローさんのレビューを拝読して、西川美和監督の「スクリーンが待っている」という本を知ったからだ。
読んでみると、この映画にまつわる話がほとんどだった。読了してから観ると、何気ない一つ一つの場面でも、制作陣全員の本気度と、とても細やかな神経を行き届かせていることが伝わってきた。未読の方には、是非おすすめしたい一冊。

コメントする 6件)
共感した! 20件)
sow_miya

4.5「或る男の一生」を変わった視点で観た感想

2024年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

幸せ

ある日、書店で西川美和著「スクリーンが待っている」を見つけ購入して読んだ。この本には、この映画の制作過程が綴られている。この映画のことを綴っているが、監督の考えや、現代日本の映画制作の現場を知る上でも大変面白い本だった。

当然、映画本編も観たいと思って本作を観たわけだが、その制作過程を企画段階から上映後まで知った上で本作を観るという、これまでにない見方をした映画になった(同じような経験をした人、いるだろうか?)。

あらすじは予めわかっている。はじまりも、結末もおおよそ見当がついている。それでも全編まったく飽きること無く観ることができた。各シーン、各シーンにそれぞれ意味が込められており、作り手の思いが凝縮されているということをしみじみと感じることができた。濃密な2時間だった。これは、本を先に読んだからこそ感じられたものだったと思う。

どうして濃密と感じられたか?それは本に詳しいが、監督が膨大な時間をかけて取材し、ときに俳優との真剣勝負のやりとりもしつつ何度も練り直した脚本と、その脚本の世界を、プロフェッショナル達がたった一瞬のカットであっても本物の「画」として撮り、「音」を撮ったということが実感できたからだ。そうした映画制作陣の仕事ぶりを、そこかしこのシーンで感じることができた。
この作品については、上記のような経緯で観たため、制作、撮影、音響、美術、宣伝といった裏方の仕事ぶりに注意が向いてしまったきらいがある。しかし、しかしだ・・・

やはり役所広司は凄いとしか言いようがない。見た目は役所広司なのだが、中身が出る映画の度に入れ替わっている。役所広司の見た目をしているが、もうすっかり全身「三上」なのだ。直情的で単純で不器用なだけに見えるこの主人公の、一筋縄ではいかない過去と心情を全身で表現している。恐縮し、緊張で強ばった目と体。激高して振るう暴力。子供と屈託のない笑顔で遊ぶ姿。泣き崩れる背中。一番星を見つめる目。この男をずっと観ていたい・・・そんな気持ちにさせるのだ。

役所広司だけではない。監督の指名で出演となった仲野大賀。彼の最後の演技で私は泣いてしまった。それまで冷静に観ていたというのに、どうして?
ああ、そうか、彼が演じる津乃田もまた、この三上という男をずっと観ていたい人間だったのだ。原案の作者の佐木隆三もたぶん同じだ。この三上という男には、言い知れぬ魅力があったのかもしれない。

六角精児、橋爪功、梶芽衣子、キムラ緑子、北村有起哉ら、三上を支える役柄の演者も上手かった。いい人すぎる、という意見があるかもしれないが、三上が、そして映画を観た我々が「すばらしき世界」を実感するには必要な役だった、と思いたい。

この映画が心に残った人は、西川監督著「スクリーンが待っている」を読むことをお薦めしたい。映画に出てくる端役についても、知られざる物語があったことを知れる。映画を見る目が変わる本である。

コメントする 6件)
共感した! 26件)
TS

4.5ただの一市民に"成り上がる"

2024年5月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 3件)
盲田里亭

4.0現代のテーゼ

2024年5月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

良い映画です。違う形ではありますが、私も仕事柄刑務所上がりの方の生活支援をしたりする事があるので、見入ってしまいました。
役所広司さんが自然で引き込まれる演技力を見せてくれましたし、ストーリーは社会問題を題材にしながらも重くなりすぎないように仕上げてくれてたと思います。
仲野太賀さんも良い味を出してくれてましたね。
三上が不器用ながらに世間を渡り歩いていく姿を見てると応援したくなりますね。
こういう人たちに支援の輪がどんどん広がる事を願ってますし、僕も協力したいです。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
ハーブ

4.5二度と、間違った道に戻らないで

2024年5月6日
iPhoneアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
トッキー

4.0三上が自然過ぎていて難しい

2024年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

主人公三上という人物をそのまま描いた作品だと思う。
彼のアイデンティティは「身分帳」に記載されている、いわゆる前科者。
TV局は彼のドキュメンタリーを試みるものの、TVでは流すことのできない暴力を起こす彼に、企画中止せざるを得ない。
三上にとってこの世界はすべてが思い通りにならない。
免許証も市役所も騒音も買い物も…
努力はしている。しかし、いつも決まって問題が起きる。
最後はやはりヤクザ。
仲間を頼って九州に。しかしヤクザも生きていけない世界になっていた。
警察によるガサいれと、姐さんの指示でそこを去った。
何をしてもうまくいかないし生きずらい。
TV局から依頼されたツノダは、企画がお蔵入りになって仕事を失ったが、三上のことを本にして出版したいと考えた。
彼は三上の母の情報を手繰り寄せるが、結局母の行方は分からないままだ。
三上が子供たちと一緒にサッカーを楽しんだ後、泣き崩れたのはなぜだろう?
幼い頃の無邪気さを思い出したからなのか?
両親のいない子供たちに自分を重ね合わせたからか?
子供たちが腐っていなかったうれしさからか?
母に捨てられたという事実を受け入れるしかないとわかったからか?
それとも、それらすべてから母との別れを心に決めたからなのだろうか?
このTV局による一連の動きがこの作品の流れになっている。
やがて就職が決まる。
そしてすぐにかっとなる自分を戒めることに初めて成功する。
再び襲ってくる衝動にも耐えると、そのきっかけとなった障害者からコスモスの花束を分けてもらった。
元妻からの電話 「今度デートしようよ」
ようやく回り始めたこの世界での歯車… 三上のこみあげてくるような喜びを感じることができる。
白い目、すぐに問題にぶつかる。どうにもなじめない世界の中でも手を貸してくれる人々がいる。必死で葛藤しながらようやく見出せた素晴らしさ。
コスモスの花束を握りしめた三上は、きっと美しい三途の川を渡ったのだろう。
彼にとっては居心地の悪いと思っていたこの世界で、ようやく見つけた素晴らしさに気づけただけで十分な人生だったのかもしれない。
そして「あちら」には、ずっと探していた母がいたのかもしれない。
三上の些細な気づきと喜びは一瞬だった。彼の死と泣いてくれる人々。カメラはそのまま空へと向いてタイトルが流れる。
「すばらしき世界」 わかろうと思えばわからなくもないが、難しい。

コメントする 1件)
共感した! 21件)
R41

3.5更生するということの難しさ

2024年4月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

怖い

難しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
きくさん