劇場公開日 2021年2月11日

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「役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品...」すばらしき世界 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品...

2021年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

役所広司がチャーミングだ。ヤクザをこんなにチャーミングに描いた作品は今までにどれくらいあったんだろうか。
長い刑期を終えて、出所した男を待っていたのは厳しい社会の現実だった。すっかり世相は変わり、暴力団に対して厳しい世の中になっている。短気な性格の主人公もなんとか自分を抑えながら生きているが、時に暴発する。路上で絡んできたヤンキー連中をボコボコにした時に役所広司の無邪気さがすごい。衝動的に(ある意味でそれは自分らしく振舞っているということでもある)暴力をふるう主人公がどこか子どもっぽく、かわいく見えるように西川監督は撮っている。なかなかすごい発想である。性根は真っすぐで、仁義に厚いとかそういう面もあるにはあるが、それにしても暴力衝動に駆られた時にその無邪気が最大限に発揮されているというのがすごい。
2020年代は、この映画の主人公のような人物が、自分らしく生きられる時代ではなくなった。それでも人は生きていかねばならない。いい奴もいれば悪い役も相変わらずいる。時代に居場所を奪われた人はどうすればいいのか。自分を殺して社会に合わせることが良いことなのか。本作を観た人がそれぞれの人生で考えねばならないことだ。

杉本穂高