タイトルだけでは意味が分からない。
しかし早々にこの物語が「ジョナサン」の型を使っているのが解った直後、作品からネタバレが提示される。巧みな手法。
この作品にはジョナサンから派生させた新しさが込められているようだ。
ジョナサン同様、彼、または彼らに起きたことは症例上稀有なことで、彼の治療および研究のために専属医が置かれている。
またジョナサンと少し違い、作品の主人公はあくまで火曜日だ。
そして謎の編集者を名乗る女性、イチノセ。
性格上、火曜日は他の曜日者たちの後片づけと記録に追われ、変化のないルーティーンの日々を過ごしている「つまらない男」。
火曜日の唯一の希望が休館日と重なる図書館に行くこと。しかしその夢は基本的にかなうことはない。
おそらくは専属医に指示されているのだろう、他の曜日の干渉や邪魔をすることはしないというルールを設けいている。
ところが毎回月曜日の灰汁の強い性格と決めたことを守らないことに、火曜日は少々イライラしている。
基本的に関係ないはずの火曜に現れるイチノセの魂胆も不明だが、彼女によって物語が進行する。
専属医のデータ改ざん疑惑が研修医を名乗る調査員アラキによってあぶりだされるが、専属医は7人いる彼らの一人ひとりの個性に深く傾倒していた。
専属医だけが、特殊ながらも彼らの個々人を尊重していたのだ。
そしてジョナサンと同じく、正確に循環していた7人が消滅、統合し始める。
ジョナサンの見どころは「私」が消えてしまう切なさを描いていた。
テーブルに並べられたモノポリーや碁、将棋、チェスなどが意味しているのは、お互い誰が最後に残るのかという暗示。
やがて水曜日が消えていることに気づく。それは最初火曜日にとってうれしいことだった。念願だった図書館に通えて、そこで司書のミズノに恋心を抱く。いち早くそれに気づいたイチノセ。火曜日はイチノセに言う「水曜日とは仲が悪い」
この時同じく月曜日は、金曜日と土曜日を支配し、日曜日までも半分支配していた。
ある日火曜日は、ミズノに思いを寄せているのは水曜日も同じだということを知る。それはライバルの出現でもあったが、ミズノの思い出の主人公のほとんどが水曜日だということに気づく。
ここで火曜日の性格が大きく前に出る。火曜日はその恋を水曜日に譲りたくなるのだ。同時に、それぞれの曜日の自分をいとおしく思えたのだ。だからいち早く病院へ出かけ、それぞれが今まで通り存続できるようにしたいと思った。
ところがそれを月曜日が邪魔をする。「病院などへ行かずに、さっさと家に帰って薬を飲めば治る」 道端で月曜日と火曜日が入れ替わりながら支配権を争う。
翌朝、イチノセは彼を同級生とか友達という言葉を遣っていたが、彼を好きだったことはよくわかる。同時にこの時、事故前のすべての記憶を取り戻した主人公はすでに一人になっていた。
「月曜日」
月曜日は火曜日に成りすましてイチノセの本音を聞き、専属医の本音を聞いたことで、気持ちが大きく揺らぐ。
専属医の言葉「いまの君が正しいと思う道を選びなさい」
そして再検査の結果、今のままでは危険で早急に手術をする必要がある。しかしその目的は「治療」
その治療に際して月曜日はアラキに質問する「一人ですか、それとも7人ですか?」
「それは君が決めることだ」
月曜日の変化は、「かつて」だったものが誰もいないという事実の認知。
セパレートしていた時に感じていた自由感がない。統一されたことで感じる寂しさと重さ。
お互い干渉せず、邪魔しないことでお互いを保ってきた。お互いがお互いを好きじゃなかった。
しかし変化した月曜日が決めたのは、今まで通りのセパレートだった。
そこには、お互いが協力し合う世界が待っていた。お互いの真剣なものに対し、割と積極的に参加し、その能力の向上の協力をする。
この稀有な新しい世界。
この作品には新しさと面白さがあった。