劇場公開日 2019年11月22日

EXIT : 映画評論・批評

2019年11月12日更新

2019年11月22日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

現代韓国を描き込みながら、圧倒的な面白さで押し切る痛快エンタテインメント

韓国映画の勢いそのもののように、スピード感とパワーに満ちた新たなる傑作の誕生だ。
ポセイドン・アドベンチャー」に「タワーリング・インフェルノ」を加え、「タイタニック」のビリー・ゼインのような悪役も登場させるディザスター映画の定番設定に、突如はじまる毒ガス・パニック。ヒーローは、体力だけが取り得のまるで“SASUKEオールスターズ”のような細マッチョ。人生崖っぷちな「クリフハンガー」的人生かつ「ダイ・ハード」級についていない彼が、「スピード」のように美しいヒロインと一緒に、「ミッション・インポッシブル」ばりの絶体絶命の危機また危機のステージを次々とクリアし、ノンストップなサバイバルを繰り広げながら、同時に恋と人生のリターンマッチに挑む。

監督のイ・サングンは、そうした映画的記憶をただ模倣したり、マニアックにオマージュを捧げたりするのではなく、消化吸収して自らの方法で語り、各種ハラスメントに満ちた韓国社会の家庭事情や就職事情も垣間見せながら、現代韓国映画に取り込んでいる。同時に監視カメラやドローン、インターネットのライブ中継などを駆使して、全方位のリアルタイムな感覚でスリリングな状況を見せていく。深刻な場面でも映画は爽やかなユーモアを失わず、同時に極力バイオレンスを控え、それでいて緊張感は失わない。フレッシュで品行方正な娯楽映画的優等生さに、スケールの大きな才能を感じさせる驚異の新人監督の登場だ。

主演のチョ・ジョンソクとヒロインを演じるユナは、高層ビルを舞台に全身を駆使して掴み、登り、走って大奮闘。その肉体的躍動は、しっかりとした演技力という背景があるからこそ際立ち、観客の心に迫る。

劇中、登場人物たちが毒ガスに迅速に対処し、ガスマスクを容易に扱うシーンは日本の観客の目には不思議に見えるかもしれないが、北朝鮮からの攻撃を考慮して韓国の地下鉄などにはガスマスクが常備されている。毒ガスは韓国では身近な恐怖であり、ガスマスクはリアルの一部なのである。細部にそんな現代韓国を描き込みながら、基本は圧倒的な面白さで押し切る痛快な良質のエンタテインメント。見事である。

痛快なクライマックスの後、その後のいろいろな展開を予測させつつ、決して無駄な蛇足を見せない鮮やかなエンディングも素晴らしい。

江戸木純

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