Away

劇場公開日:

Away

解説

ラトビアの新進クリエイター、ギンツ・ジルバロディスがひとりで監督・製作・編集・音楽などを担当し、3年半の歳月をかけて完成させた長編アニメーション。飛行機事故で島に不時着した少年が、さまざまな土地をオートバイで駆け抜けていく姿を描いたロードムービー。全編にわたりセリフは一切なく、絶望から不安、孤独、そして希望をめぐる哲学的なメタファーに満ちた冒険の旅を、美しい映像でつづっていく。世界最大のアニメーション映画祭として知られるアヌシー国際映画祭では、革新性ある長編作品を対象としたコントルシャン賞を受賞。日本の新千歳空港国際アニメーション映画祭でも審査員特別賞を受賞するなど、各国で高い評価を獲得した。日本ではそのほか、2019年・第32回東京国際映画祭「ユース」部門上映で「アウェイ」のタイトルで上映されている。

2019年製作/81分/G/ラトビア
原題または英題:Away
配給:キングレコード
劇場公開日:2020年12月11日

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映画レビュー

4.0この手探り感と疾走感がクセになる

2020年12月27日
PCから投稿

彼に何が起こったのかはまるで分からない。パラシュートにぶら下がった位置から始まるこの物語は、得体の知れない島で、一つ一つの手がかりと足場を確かめながら目的地を目指す奇妙なものだ。ある意味、ロールプレイング・ゲームのようであり、同時に生死の境目で魂が彷徨っているかのような気持ちにさせる。はたまた、深層心理における心の浄化作用を詩的かつ寓話的に紡ぎあげた物語としても受け止めうるのかも。そこに現れる、宮崎アニメのデイダラボッチやカオナシを思わせる黒い影は一体何なのか。この存在について説明や理由づけが一切ないところが潔い。セリフを排することで想像力はかえって刺激され、主人公の一挙手一投足や影に追われる感覚さえもがリアルに入り込んでくる。ラトビア人のクリエイターがほぼ一人で作り上げたというこの世界。彼と私たちが、言葉や文化を超えて”感覚”によって繋がりあっていることにひたすら感動を覚える一作だった。

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牛津厚信

4.0三年位前に吉祥寺で2回見た。最初は前半寝てしまったので、直ぐにもう...

2023年8月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

4.5好みが分かれる。

2023年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

見てまず思ったのは国際映画祭で賞を取る典型的なタイプの作品と言えば作品と言う所。個人的には好きな作品類と言って良いがインパクトがあるかと言うとどうだろう?設定やテーマ性は哲学的で深い、またロードムービーとなる背景も美しい。だからと言ってここから新たな何かが生まれるだろうかという疑念は残る。大賞は取れぬが奨励賞と言ったところか。

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mark108hello

4.5雄弁なカメラと鮮烈なオブジェクト

2023年4月12日
iPhoneアプリから投稿

3DCGののっぺりとした肌理にもかかわらず奥行きとテクスチャの感じられる作品だった。

ゲームのように壮麗な風景グラフィックもさることながら、カメラの有機的な動きが本作に躍動感を与えていたように思う。洞窟の斜面から黒い巨人を俯瞰するショット、森の上を飛翔する鳥群を上空からドリーで追跡するショット、少年の疾駆に息遣いを合わせるようフレームが不安定に揺れ動くショット。セリフを一切排した寡黙な物語はこうしたカメラの雄弁さによって補われており、いわゆるアンビエント映画のようなとっつきづらさは感じない。

少年、黄色い小鳥、黒い巨人を軸とした物語は、三者の出自がほとんど明示されていないがゆえに如何様にも寓話を読み取ることができる。誰もが容易に入り込むことができるという点では確かに本作はロールプレイングゲーム的といえるのかもしれない。にもかかわらず最小公倍数的な薄っぺらさを感じないのは、登場するオブジェクトのビジュアルにハッとするような力強さがあるからだ。黒い巨人も青空を反射する湖も竹林の猫の集落も、とにかく画として鮮烈だ。一度見たら忘れられない。その力強さがある意味漠然とした物語にくっきりとした輪郭線を与えている。

本作はCG撮影から編集から音楽から監督まですべての工程をギンツ・ジルバロディスが担っている。堀貴秀『JUNK HEAD』と同じくインディペンデント映画の極致的なアニメーション作品だといえる。熱意さえあれば本当にたった一人で製作ができてしまうというのはアニメーションという媒体の強みかもしれない。何はともあれラトビアなる映画史的未開拓地にヒョイと現れた本作を逃さず捕らえて国内上映にまで辿り着かせた配給担当の審美眼と仕事ぶりに惜しみない拍手を送りたい。

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因果