ファイアー・ウィル・カム
解説
2019年・第32回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門上映作品。第16回ラテンビート映画祭(19年11月7~11日、15~17日/東京・新宿バルト9ほか)上映作品。同年の第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞受賞作。
2019年製作/85分/スペイン・フランス・ルクセンブルク合作
原題または英題:Viendra Le Feu
2019年・第32回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門上映作品。第16回ラテンビート映画祭(19年11月7~11日、15~17日/東京・新宿バルト9ほか)上映作品。同年の第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞受賞作。
2019年製作/85分/スペイン・フランス・ルクセンブルク合作
原題または英題:Viendra Le Feu
東京国際映画祭にて。ワールド・フォーカス。第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞。 極めてミニマムな映画だ。細かい説明もなく、台詞も圧倒的に少ない。 冒頭から圧倒的な映像を見せつけてくる。とにかく全てのカットが芸術的で美しく、無駄なものは一切ないと言ってもよい。徹頭徹尾、映像の説得力で魅せてくる極めて「映画的」映画。 主役の母子は演技経験がないふたりを起用したそうだ。母親役の方は映画とは一転して「タフ」な性格だそうで、それ故に監督は「沈黙」を重視して演出をしたと語っていた。ふたりの関係性は穏やかで、それでいて弛緩がない。 前半は放火の罪で服役していた男が家に戻り、母と生活する様が描かれる。淡々と描かれる日々、母子はあまり語らず、牛を連れ、犬を連れ、つましく暮らす。村人はつかず離れずで、結局深い過去は語られない。生活描写に深い孤独を感じるのは私だけだろうか? 獣医との会話だけが、微かな喜びのようなものに映る。 そして山火事がやって来る。山火事は実際の火事を撮影したということで、人間を捻じ伏せてくる圧倒的な火の描写だ(というか本物だからなあ)。無力さ、痛み。そして感情。 この作品のテーマは「受容」だそうだ。そのテーマの深淵に自分が触れられているか分からない。しかし、深い監督の内面性が出ている映画だと思う。そして静かなる、大いなる母の愛情。 男が珍しく饒舌に語る「ユーカリの木」が気になったので調べると、ガリシア地方に植樹されたユーカリの木が山火事の遠因となっている部分があるようだ。少しなるほど、と思った。彼はありのままの故郷を愛し、それを破壊するものに対する思いが強いのだ。少し物語の内面がわかった気がする。