スペシャルアクターズのレビュー・感想・評価
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どんでん返しが足枷になっている惜しい作品
『カメラを止めるな!』
でその名を世間に知らしめた上田慎一郎監督の次作。
人見知りであがり症で気絶癖があるうだつの上がらない俳優志望の青年が主人公。
ある日再開した弟が所属する俳優事務所“スペシャルアクターズ”にて活動することになった主人公。その事務所に舞い込んだ依頼『(生家である)旅館を悪の教団から取り戻して欲しい。』
かくしてスペシャル・アクターズたちは依頼者の命を受け悪徳新興宗教団体『ムスビル』に“お芝居”で立ち向かうのであった。
と、言うのがあらすじ。
(以下ネタバレ含む)
まずこの粗筋のお話自体、要は悪徳宗教団体をぶっ潰して、旅館を取り戻すんだ!までが『お芝居でした』というのが
本作の白眉であり見どころであり、クライマックスからエンディングに至るまでのポイント。ではあり、恐らく多くの初見の人がそこに騙されたというか引っかかったんでは無いでしょうか?で、これは上田慎一郎監督が前作『カメラを止めるな!』にて提示した二重構造的な、物語の作り方というか進め方の手法を本作ではこのように設定した、言っちゃえば“大どんでん返しモノ”的な作り方なわけで、よく予告編で現れる『アナタはきっと騙される』とか『このラストは誰も予測不可能』的な作品の作りではあります。とはいえ、初見でこのエンディングの流れを予想した人は恐らくそんなに多くはないんじゃないかなとも思います。
お話そのものとしては前作と同じく、あまり著名ではない、所謂自分の知っている役者さん上田組を起用しているわけで、そういった意味ではやはりチームワークであったり、役者たちの呼吸といったものや統制は非常に取れていたと思いますし、多分ですけどこういう作品に所謂みんなが知っている様な役者さんは逆説的に不向きであるということの証明にもなったんでは無いでしょうか?
作品の問題点的なことをいえばこの作品のお話がどういう結末を迎えるのであれ、例えばクライマックスのところで終わるのであったとしても、まぁ多分誰の目から見ても明らかな違和感なのが劇中劇で主人公が少年の頃に憧れた洋モノヒーロー作品であろう『レスキューマン』これのクオリティが死ぬほど低いんですね。それの何が違和感かと言うと、結構単純に
『いや、なんぼなんでもコレには憧れないだろう』
というところだと思います。それくらいクオリティが低い。
恐らくワザとあえて、低クオリティにしているのだと思います。要は昔のヒーロー物、しかもどう見ても海外製って確かにふた昔前くらいは酷いクオリティの物が存在してましたし、それにしてもクオリティが低すぎです。
で、このクオリティの低さを主人公のキャラ付けとかにしようにも、なぜ主人公がこのヒーローにそんなに憧れているのか?という描写が特に描かれていないし、周りの人が『知ってる、知らない』描写もないので作中世界での知名度もよく分からないです。要はただ単に“主人公が憧れているヒーロー物”そしてクライマックスの展開のため、それだけのためにしか存在してないんですね。
で、当然クライマックスの展開としてこの作品の一部分を要はコピーしてアクションをするんですけど、そこの部分を見ていて思うのが『いや、そこの稽古部分が見たいんだけど』て事なんですよね。
で、このシーンはエンディングの途中で入れるべきだと思うんですよね。
それは何故かと言うと、エンディングで、主人公はこれまでのお話が実は、自分のことを気にしていた弟、社会的に成功を果たしているその弟が『兄の治療』と称して多くの人を巻き込んで行ったそれこそ“お芝居”として展開していたということを知るんですね。で、あればこそ主人公の成長を本当は描かないといけない。
ところがその主人公そのものの成長は精々『前ほど詰められても大丈夫になった』くらいなんですよね。
で、残念だなと思うのがそのちょっと大丈夫になったというシーンを描かれるのが作中冒頭で自分が失敗をしてしまった作品の続編のオーディションなんですよね、当然同じ人の前で同じような芝居をして同じような怒られ方をして、それで、まぁ、あの今回は失神しなかったね。くらいしかその程度しか要は成長してないんですよね。
で、このオーディションに受かったかどうかもハッキリ描かないし、かと言って、役者として多少は生活が出来るようになったか?と言うような描写もないまま、実は弟が全部仕組んでいたことでしたーという事を知っておしまいになるわけですよ。
で、本当にこのエンディングの辺りが違和感あるなーとかなんか納得いかねぇなーと思うんですけど、これが何故かと言うと、主人公は弟と再開してある期間行動も共にしていたにも関わらずこのエンディングの時点でようやく弟の名前をググるという行為に走るわけです。
更にそこで『あれ?これまさか?』となり事務所に向かうと事務所はもぬけの殻、それ自体はまぁ100歩譲って良しとしても、玄関マットの下に事務所の合鍵があって中に入って色々探したら実はこれ嘘でしたーっていう終わりなんですけど、
まず、このスペシャルアクターズって言う事務所自体の存在がこの時点でもう作中内で結局この事務所自体が実在するのかどうかが怪しいんですよね、セキュリティ最低だし、簡単にファイルというか台本見つかるし、要はこの事務所含めて嘘だったのか、この事務所自体は一応本当にあってこういう仕事をしていますよ、という部分が謎になってくるんです。
まぁとはいえ、この事務所が嘘でも本当でもそれ自体は一旦置いといて、しかしながら、しかしながらですよ?この事務所が稼働してたという事はクライマックスのあのシーン、あの立ち回りは稽古の一つでもしてるはずじゃないですか?これまでの事も含めて(だって作中ではまぁまぁちゃんと台本当てて稽古もしてるんだから)だったら、だからこそ、その稽古シーンをフラッシュバックで最後のシーンに少しでもいいから入れるべきだったのでは?と思います。
そして前述の通り、主人公自体は特にコレと言った成長はしてないし、役者として自立できた訳でもない、気絶耐性がちょっとだけ付いた程度のものです。
これは結局この作品自体がどんでん返し物という構造になっているが故に、主人公の成長やクライマックスの時のカタルシスをハッキリ描けない、描きにくいという構造上の足枷が邪魔をしているのではないかとおもいました。
作品内にて主人公が
『何に対して立ち向かうのか』
『何を成し遂げたいのか』
『自身がどうありたいのか』
ということよりもこの作品では『どんでん返し物』としてのひっくり返しに重きが置かれているが故に主人公が作中での行動や経験を自分のものにしていく、つまり“成長”する部分をあまり描けていないためクライマックスのシーンや所々のシーンでカタルシスが産まれていないのかと感じましたしそして、結局単純に『兄の治療出来てなくね?』になってしまいます、だって別に出来てないんだから実際!
だからこそ劇中劇である『レスキューマン』はもっとそれを見ている観客にも作中の登場人物にも納得のいく説得力のあるキャラクターにして描くべきだったのでは無いかと感じます、弟の言い方だけ聞いてると単純にただ主人公が好きだっただけのマイナードラマにしか見えないんですし、恐らくそういう狙いなんでしょうけどだったらもっとメジャーな感じの作品でも良かったんじゃないかなと思います、で、あれば作中の節々でそのキャラクターに喋らせられるし、他の人たちも知ってる体であんまり隠さずに話持ってけるのになぁと思いました。
とはいえ、2転3転というよりは一本通してしっかりひっくり返しをしてくる構造や最後の展開は一見の価値は十分にありますので!オススメです。
全国公開してはいけないレベル
メガヒットを出した上田慎一郎監督の作品だったので全国公開できたと思いますが、無名監督であれば全国公開はできないレベルだと思いました。
理由
・落ちがびっくりする事はなかった。
・結局、兄の病気は治ってなかった。
・セットがチープ過ぎてプロの作品とは思えなかった。(大学生レベル)
・役者が演技が自然に入ってこず頑張ってる感が気になった。
・アメリカンヒーローが安っぽく共感できなかった。
・1500円の価値はないと思った。(もっと面白い映画はたくさんあります。DVDで充分です)
総評
採点1は少なすぎると思いますが皆さんの評価が良すぎると思ったので1にしました。
普通のB級作品です。
上田作品を見て思う事
カメ止めは本当に面白くて大好きですが、上田監督の作品を見て、短編やCMにむいているのかなと思います。
上田ワールドを止めるな!
メガヒットや社会現象となった後の作品は嫌でも真価が問われる。
殊に上田慎一郎にとっては、旋風を巻き起こした『カメラを止めるな!』に続く長編監督第2作目。
この人はただの一発屋だったのか、ユニークな異才の持ち主なのか…?
『カメ止め』同様、ワークショップなどで見出だされた無名の俳優たち。その素人っぽさが面白い。特に主人公が…(笑)
脚本も当て書き。
長編は2作目だが、すでに上田ワールドを確立しつつある。
見る側の私自身も、『カメ止め』同様、あまり話の展開や予備知識を入れないで鑑賞。『カメ止め』もそうして面白かったからね。
見る前の本作の大まかな概要は、とある無名俳優事務所によるドタバタ劇…?
確かにそうではあるが、もうちょっと詳しく説明すると…
全く売れない役者志望の和人。そのやる気の無さそうな演技力に加え、極端に気弱で、しかも緊張や追い詰められると気絶してしまうという性格…。
ある日、弟の宏樹と数年ぶりに再会。意外や宏樹も役者の仕事をしており、誘われて“スペシャルアクターズ”に入所。
そこは、普通の映画やTVや舞台の仕事の他に、依頼者の問題や悩み事を所属役者たちが設定を作り芝居で解決する、風変わりな仕事も請け負っていた…。
あらすじだけ聞くと、ちと「?」。
請け負い芝居…?
でも実際見てみると、なぁるほど。つまり、
意中の女性と付き合いたいある男性。チンピラが絡んでくる。最初はチンピラにビビり腰の男性だが、勇気を出して撃退。彼女のハートをGET!
実は、男性は依頼者で、チンピラは事務所の役者。
サクラやヤラセみたいなもんだが、そんなお話と芝居をやっているのが、スペシャルアクターズ。
さてさて、超低予算で31・2億円の大ヒットとなった『カメ止め』。
ところが…
本作は比較にならないもしくはどう例えたらいいか分からないくらい、全く及ばずの不発。(本作の興収は5000万円ほど)
昨秋の週間ランキングで初登場TOP10入りも出来ず、人によってはこんなの公開してたんだレベル。
短編や共同監督作はあったものの、『カメ止め』の後の第2作目としてはあまりにも冷め具合や落差が尋常じゃない。
世間一般的には、期待ハズレ、失敗作…。
個人的には、さすがに『カメ止め』ほどではなかったというのが率直な感想。
やはりあの、話の面白さ、巧みな構成、見終わった後の心地よさ…これらは近年の邦画の中でも格別のものだった。
だけど本作も、『カメ止め』や世間の冷遇ほどではないにせよ、これはこれで面白かったと思う。
ストーリーの続き。
スペシャルアクターズに大きな依頼が。とある旅館の次女から、長女がカルト教団に洗脳されてしまい、その教団に旅館を取られてしまう。ひと芝居売って、旅館を教団から守って欲しい、と…。
無名役者集団vsカルト宗教集団!
“ムスビル”というその教団が如何にも怪しい。
宇宙を司る全知全能の神の啓示を受ける教祖様が居て、言葉を発せない代わりに教団代表が代弁して、信者たちに有難い教えを授ける。
高価な教団グッズもたくさん。
はい、勿論悪質な詐欺集団。
ころっと心酔しそうな20代の若者や40~50代のオバサンを言葉巧みに騙す。
代表が関西弁の黒幕で、教祖様はその息子でぐうたらなニートくん。
もう見るからに怪しい。
自称超絶美人天才マジシャンと自称超天才&巨根物理学者が出てきそうな…。
さすがに出ては来ないが(←当たり前だ!)、スペシャルアクターズはどんなひと芝居で詐欺教団を騙すのか。
何と!この依頼の中心的存在になってしまった和人。プレッシャーと気絶しそうな中、依頼をやり遂げる事が出来るのか…?
勿論、ネタバレ厳禁。
あの『カメ止め』の監督作なので、何かしら仕掛けがあると期待。それも勿論。
話自体はコン・ゲームみたいに進んでいく。
信者に成り済まし、教団に潜入し、色々教団の秘密を探り、いざ作戦決行の日!
上手く行ったと思いきや、定番のピンチ!
が、実はこれも…。
途中から予想付き、少々おバカチックでもあるが、二転三転。
でも、何か物足りない。最後にもう一捻り。
気絶体質故、通うメンタル医院。
子供の頃から大好きで何度も見ているチープなB級ヒーロー映画。
弟との数年ぶりの再会。
“スペシャルアクターズ”というこの事務所。
依頼も怪しい教団も何もかも、全て実は…。
優しい終わり方。
行け、ヒーロー!
低予算で無名の俳優を発掘してどんでん返しのコメディ。
…と、思われてる上田作品。でも実際は…
ダメダメ人間や自分に自身が無い人へエール。
上田監督がレスキューマン。一人一人こそレスキューマン。
そんな上田ワールドを止めるな!
どんでん返ししますよって言われても‥
つまらない訳ではないけど、もう少し造り込めなかったなかなぁ‥、
せめて主人公が憧れるヒーロー映画位は、魅力的に造らないと、主人公自体に感情がもてない。
あとクライマックスの立ち回り位、アクションにこだわってほしい。
スローモーションを使って、幼稚で荒いアクションは目も当てられない‥
無名俳優を使ったわりに、ずっと匂わせているどんでん返しが、フィンチャー監督の『ゲーム』と同じなのは、ある意味驚いた。
どんでん返しするなら、『大家とか、レスキューマン、弟まで役者が演じてました。』位しないと、驚きは無いと思う。
面白い。でも少し残念な所もあるよなー。
どんでん返し縛りだから、ハードルあがりまくりのなか、
よくやったと思い、面白くみられました。
主演の男優さんが、もしもわざと中途半端な下手な演技をしてたとしたら、物凄く上手いって事だけど、どうなんだろうか?
最初の演技のオーディションで、下手演技。
最後のオーディションで、病気克服してから、
まさかの、超絶ど迫力演技だったら、ベタだけど
上手い男優だったんだ!となるけど、
あんまり変わらず、ただ気絶しなかっただけみたいだから、
わからない。
ムロや、佐藤二郎レベルだったら、どうなるか
少し見たいぞ!
あと、気絶することが、真相解明にあまり役だって無い。
たまたま、そうなってしまっただけ。
オッパイだって、間違って一度くらい本物をモマしてやりたかったよ。
この系統のナンバーワンは、
まだ鍵泥のメソッドだなー!
最後の落ちは、事務所自体が存在しなくて、
弟の作った会社かと思ったけど、
会社自体はあったんだな。
話題作の次の作品って、相当なプレッシャーなのでしょうね。
「カメラを止めるな」のカントクの次の作品
やはり見てみなくては、ということで鑑賞しました。
注目を集めた作品の、次の作品となると相当プレッシャーが
あったのだろうと容易に想像できます。
前作の類似品にならなかったのは、良かったなと。
(なんか評論家きどりモードですいません…)
以下、思ったことです
キャラの立ち方
「カメラを-」に比べると、キャラが弱かった気がしました。
緊張すると失神する主人公
その設定は上手く生かせていたかとは思うのですが、花が無いというか。
前作の ポン! のおねーさんは、すごいインパクトありました。
敵(?)の設定
「新興宗教の集団」というのが、どうも私には生理的に合いませんでした。
全くもって、これは個人の感性の問題です。
まあ、ゾンビも得意ではありませんが…
ストーリー
次第に盛り上がってくる感じで良かったのですが、最後の展開が…。
個人的には、あのラストは無い方が良かった気がします。
弟君かっこよすぎで、兄貴の立場がない…
帰宅してから考えて、あれはもしかすると
「蒲田行進曲」のエンディングのような「ひねり」を狙ったのかな
という気もしましたが、さて。
これから他の方のレビューを見ようと思います。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
俳優愛はあるが
きっと
俳優愛はあるんだと思う。
演じること、
何もないとこから
何かを作り出すことを
とても愛してるんだろう。
でも、
優しい嘘であったとしても
私が主人公であったなら
と思うと
なんか、とても傷つくよね。
馬鹿にされてるって
思うよね。
なんか
主人公が愛されてない。
とても、愛されていない。
ひたすらドンデン返し
「《カメラを止めるな!》みたいな作品を」って企画段階で言われてるんだよ、多分、上田監督は。それで、時間もそんなにないしさ、ドンデン返しをひたすらやってく作品を作ったんだろうね。
つまらなくはないんだよね。だからいいんだけど、ドンデン返しに爽快さがないの。「そうだったのか!」ってのがなくて、「まあ、ドンデン返しやらなきゃだもんね」って感じが残っちゃう。上田監督からの「このレベルのものならいつでも作れますよ」というメッセージを受け取った感じかな。
単にドンデン返しをやればいいなら、そんなに大変じゃないと思うんだよね、作るの。この作品でもラストからさ「と思ったら、実は本当の黒幕はこの兄弟の両親で」って話にして、作中にそれっぽいエピソードと両親まぎれこませとけば、やれるからね。
ドンデン返しで出てきたストーリーに「なるほど」ってものがどこまであるかなんだよね。《カメラを止めるな!》はそこが凄かった。この作品はそういうのないよ。
上田監督べつにドンデン返しものじゃなくても脚本うまいから、普通の話でも良い作品撮ると思うんだよね。企画する側も「カメ止めの監督使って」ってやれば通りやすいだろうし、上田監督も話がくれば受けるだろうけど、ドンデンはみんなすぐ飽きちゃうんじゃないかな。
それに、ドンデン返し系でカメ止め超えるのキツいから、どうしても面白くなくみえちゃうよ。監督の才能が消費されないといいなあと思ったよ。
あと櫻井麻七さんは良くて、なんか印象に残ったよ。
二度ある事は三度あるのかと思いたくなるぐらいの気持ちです。
「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督の全国上映長編作品第2弾との謳い文句ですが、今年の夏に上田監督を中心にした3人の共同監督と言う、“何故 3人?”と思ってしまう「イソップの思うツボ」が見事にハズして、もはや無かった事の様にされてますがw、大々的にカメ止めを謳っているので、観る前から結構ハードルを下げて鑑賞しましたw
で、感想はと言うと…やっぱりかぁ…と思うくらいにスカされた感じでイソップの思うツボとおんなじくらいの残念感。
一言で言うと、学生の自主制作映画の様な感じで、エンドロールを観てた時に“演技系の専門学校の卒業制作のお芝居を映像化したら、こんな感じ”でエンディング曲がそれを強く思わせるくらいにチープと感じました。
こう言う作り方の作品も他にも沢山あるし、そう言った作り方にも良さはあると思うのですが、ストーリーのどんでん返しや奇抜さを狙い過ぎて、全体的なクオリティに気が回ってない感じで、いろんな所の甘さや緩さが味ではあると思いますが、どうもそこに甘んじ過ぎてる感じです。
プロアマ問わずのオーディションで選ばれた15人のキャストとありますが、いくら当て書きをしていても、やっぱり演技の実力はプロはプロフェッショナルで、アマはやっぱりアマチュアなんですよね。
最初は皆アマから始まりますが、まだ見ぬ原石を求めていたとしても、それに頼り過ぎるのは、限りなく神頼みと同じかなと思うんです。
作品の要所要所でプロを起用する事でキチンと引き締まる所はあると思うのに、何故こうもアマに拘るのかは正直上田監督のスタイルなんでしょうけど、それで全体のクオリティが下がるのならどうなのかなと。
単純に制作費の問題があるにしてもですが、例えば、レストランなら、コックの腕が良かったとしても、相当の代金を求めるなら、材料にはそれなりにお金をかけると思うんですよね。それと同じかなと。
カメ止めは今から思うと奇跡の様な挑戦が功を奏した様な作品で、作品から溢れる熱意と創意工夫。
そして失敗を恐れないチャレンジ精神が産み出した様な作品でしたが、周囲が二匹目のドジョウを狙い過ぎてる感じと上田慎一郎監督が少しダレてるのか分かりませんが、どうにも失速感が拭えないです。
周囲が必要以上にカメ止めの看板で売れると思ってる節もあり、本来は上田監督は小規模かつ実験的作品を作りだすスタイルでちょっと周りに制作ペースを急かされてのかも知れません。
カメ止めと比べてはいけないと思いますが、謳い文句でも「カメラを止めるな!の…」と謳われてる以上はやっぱり期待はしてしまいます。
ツッコミ所は多々ありで、設定もブレると言うか、“別にこれでなければならない”と言う理由が無いんですよね。
売れない役者が何でも屋的な俳優事務所「スペシャル・アクターズ」で依頼を解決していくと言うのは、未熟な演技を逆手に取った様な手法の様に思われても、それならキチンとプロの役者を起用して、何でも屋の俳優事務所ではなく、興信所や探偵事務所、もしくは本当に何でも屋でも良いのに、“何故、俳優事務所?”と思ってしまう。
これが頭から最後までモヤッと薄い膜の様にまとわりついて、いろんな部分の細かい設定のチープさが目に付いてしまいます。
ラストに繋がる設定ではありますし、ネタバレになりますが、結局劇中劇な訳ですが、劇中劇だからこそ、リアルさが求められる所までチープになっていて、正直ミニシアター系ならまだ良しとしても、松竹配給の全国公開がこれで良いのか?と思います。
謳い文句の「この映画、予測不能」とありますが、違う意味で予測不能で、ラストのどんでん返しは確かにちょっとしたどんでん返しでもそれほど驚く程ではないし、それならばそこに至るまでの伏線を張り巡らしてなければ、唐突に“実はそうでした”と言われても、ちょっとズルい感じがします。
ミステリーではないので、謎解きをする必要は無いにしてもどうなのかと。
またラストのオチを立たせるのなら、やっぱりツッコミが出てしまい、
“じゃあ、ムスビルも即席の新興宗教かどうかは調べたら分かるのに何故調べないの?”とか
“弟が物凄いお金を使って、兄貴を治療しようとしたぐらいに成功したのなら、風の噂でも弟の成功は耳に入る筈なのに”とか
いろんな事にツッコミが出てしまいます。
和人の気持ちを落ち着かせる為のオッパイボールの件りも、それならもっと和人のオッパイ好きを強調する場面があった方が良いし、それでこそ、色気担当の教団幹部の女性の活躍の場だと思うのに、それも殆ど無いw
なのに、和人はオッパイボールは放さないw
気を失うのも克服出来たのなら、最後はオッパイボールを空に投げるぐらいの描写があったも良いのにそれもないw
キャスト陣も悪くはありませんが、何処か素人臭が抜けきれず、良い部分が逆に隠れてしまいました。
主人公の和人役の大澤数人さんは一皮剥けると化ける感じはありますが、次にどんな作品に出るかで変わるかと思うので気にはなります。
社長役の富士たくやさんと社長の娘役の北浦愛さんは結構引っ掛かります。
あと、ムスビルの幹部役の櫻井麻七さんは綺麗だなぁとw
設定や細かい所は悪くないんですが、やっぱり緩さが漂って、イソップの思うツボの感想でも書きましたが、正直“また、やってしまったか…”と思うし、もうカメ止めの貯金はゼロで、カメ止めの威光は使えないと感じます。
ミニシアター系の作品なら特に悪くないかと思ったりしますが、今後も全国上映作品として発表していくのなら、何処かで仕切り直しが必要かと思います。
「あの『カメラを止めるな!』の…」の謳い文句が次回作でも使われていたら、正直“今回もまた…”な感じがしますw
二度ある事は三度あるとは言いませんが、仏の顔も三度までな気持ちと“三度も待たねえよ!”と思いながらと三度目の正直は微かに期待したい気持ちは十分にありますw
辛口に書きましたが、あくまでも個人的な感想で、面白かったと思う方の気持ちに水を刺す気持ちはありません。
一意見の1つとして受け止めて頂けたら幸いですが、書かずにはいられない気持ちがあった事を汲んで頂けたら幸いですw
上田監督の次作に期待
低予算ながら社会的ヒットを記録した「カメラを止めるな」の次作品の制作ということで、上田監督が感じたプレッシャーは半端なものではなかっただろう。パンフレットに記載されていた、深田プロデューサーが監督へ送ったメッセージは素晴らしいものだ。上田監督にはこれからも自身の可能性を追求して頑張っていただきたい。それはそれとしてこの映画はつまらない。
序盤は個性の強いキャラクターや余分な要素のない展開を純粋に楽しんでいた。役者にそれぞれあて書きしたというだけあって、演技が生き生きしているのがわかる。しかし宗教団体の話に入っていくと、徐々に設定の杜撰さが目立つようになる。
そもそも宗教団体の描写がとことん陳腐だ。低予算だからと言ってしまえばそれまでだが、もう少し専門用語や現実に近い演出を織り交ぜて魅力を出してもよかったと思う。コメディだから自重したのだろうか。あるいは偽物教団だからあえて安っぽい演出にしたのか。
後者だとしたらあまり機能していないように感じる。そもそも伏線回収にイマイチ爽快感を感じなかった。脚本の構成もあるだろうが、主人公の成長がリセットされたように思えてしまったのが大きい。もちろん最初の頃に比べれば成長したのだろうが、結局全てが茶番で半分くらいの人間関係が嘘だったことを考えるとガックリ感は否めない。裏教典も引っ張った割に大したインパクトのある産物ではなかった。
お世辞にも面白かったとは言えない。しかし現在名監督として知られる人物も、常に名作を連発しているわけではない。上田監督の今後に期待し続けたい。
展開に驚きは少ない
どうしても監督の前作との比較は避けられませんが、対比しても物語自体の爽やかさ、演者の演技力やコミカルな会話劇、中盤以降のテンポ感やここぞでのカメラワークなどは十分期待通りだったと思います。
きちんと起伏は用意していますし、それ以前をラストまでの前フリとして利用するという物語の構造も丁寧でよく出来てる。
ただ、カメ止めと比較すると要所での大きな展開部分でのパンチ力不足が否めない。
最後にきちんと兄の治療だった というオチをつけたことで、宗教団体の安っぽさだったりの理由づけがなされていますし、リアリティは保てていますが、予想の範疇を超えるような驚きに欠くため今ひとつの粋を出ない。
しかし作り手の喜びや面白さというものに関しては一貫して表現されており、前作では映画を撮るクルーに、今作では演技をする俳優にスポットライトを当て、何かを作っていくという過程が清々しく描かれています。
人間讃歌と仰られている方がいましたがまさにその通りで、無名の役者だからこその人間味を切り取ったようで、特に今作ではそれが非常に活きてたなと思います。
物語に焦点を当てるとインパクトに欠ける部分こそありましたが、それでももう一度見てみたい という気持ちを抱かせてくれる よく練られた作品ではないでしょうか。
まあまあだった
どんでん返しに囚われすぎな感じがする。どんでん返しのために、全部を後付けで構成しているようで息苦しい。後から思うと、潜入しているのに器具がやたらとでかかったり、確かに不自然だった。
そもそも、主人公が役者を志しているのが意味が分からない。緊張しないわけがない仕事で、特に目立ちたがりでもなさそうで、なぜやりたがるのだろう。
監督は「カメ止め」を上回らねばというプレッッシャーに負けたんでは?
実際、物凄く期待してたんですよ。この上田監督なら、前回を上回る「大どんでん返し」があるに違いない、途中がどんなに稚拙でも、それはラストの伏線かも知れない、って。2は1よりスケールアップしないと許されない、が宿命ですから。
で、結論。悪いほうにスケール大きくしちやったな。あれやったら、台無しだ。
南アフリカに負けた、ジャパンは終わったんだなあって寂寞感で見てたんだけど。上手いのかどうか微妙な無名の役者も、安っぽく嘘臭い展開も、まあ、そういう座組みなんだからいいや、と思える程度には、面白く見られたんだけど。
…ラストのどんでん返し、あれはない。まあネタバレになると悪いから言わなかったけど(言ってるか?)、あれは台無し。確かに「どんでん返し」のスケールは大きいけど、それやったら、今まで見せられていた全ての登場人物の努力が、全ての観客のワクワクが、全部意味がなくなっちゃう。台無し、ってのは、まさに、こういうことを言う。
まず、辻褄がぜんっぜん合わなくなる。主人公はいつもスマホで検索している奴なんだから、あの教団がああなったというニュースを読みたいを思うはずでしょ。それが、どこにも出てなかったら、おかしい、と思うでしょう。
まず、弟のプロフィールより、ニューズの検索をしないか?
つまり、ラストのどんでん返しがぜんぜん成立してないおかげで、映画全体がカスになってしまうんだよ。
監督が脚本を持ってきたとき、「これ、ぜんぜん辻褄あいませんよ」てチームの誰か進言しなかったのかねえ?
上田監督、「どんでん返しは『カメ止め』を上回らなければならない、というプレッシャーに押しつぶされた、といえます。
最初から無理なんだよ、いままで世界に存在する何万、何十万のどんでん返しを徒手空拳で(この予算と座組みで)上回ろうなんて。そんな無理して奇跡を起こそうとすることはなかったんじゃないの?
もっとさ、「おい、俺をここに引き込んだのは、最初から、俺に立ち直って欲しいと思ったんだろ?」「・・・ハハハ、そんなことはないよ」「あそこで会ったのも偶然じゃないだろ?」「うーん、まあいいだろ」くらいのラストで良かったんじゃない?
それとも、実はあの姉の女将が、逆に教団を乗っ取って自分が教祖になろうと画策してたのに、主人公たちがそれをブチ壊して、あーあ、みたいな。「旅館経営なんてやってられないわよ、あんな大赤字の旅館、いくら親の遺産でも迷惑よ! そんなに言うならあんた(妹)女将やってみなさいよ、すぐに潰してベソかくに決まってるのよ、そんな妹の顔を見たくないから頑張って芝居してきたのに、あー、馬鹿みたい!」みたいな。
ありきたりかも知れないけど、ちょっとビターで収まるなオチなんて、いくらでも思いつくじゃない、素人でも。
ラストだけ忘れれば、楽しい映画だった、と言うしかない、なんて、いかにも残念。
できればラストを際撮影した「ホントウはこっちだよ版」を作って再公開すべきだ。
代用おっぱい揉み過ぎです。
オーディションに落ちまくりで家賃も光熱費も滞納しまくりの売れない俳優が、弟の紹介でスペシャルアクターズという事務所で演技に纏わる仕事をする話。
面倒くさい!?設定の基、生活の為に渋々宗教団体への潜入を始める主人公だけど、気絶しないまでも常におどおど挙動不審で弟以外とは最早まともに会話も出来ない始末。
しかしながら話はトントン拍子に上手く進んで行く感じが、主人公的にはどんどんハマって行く様な感じになっていてコミカルで面白い。
狙った感じが見え見えなネタもあったりして、ちょっとわざとらしさを感じるところもあったけど、展開そのものが単純ながらコミカルで面白かった。
以下、超絶ネタバレ注意!!!
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オーラスの一ネタは予想してなったから高まったけど…シチュエーションは違うものの、これってGAMEのオマージュっぽい!?
ちなみに医者は、それである必要性ないしねw
合わなかった
上田慎一郎監督は『恋する小説家』のDVDを持ってるほど好きだが、これは合わなかった。
役者が演技で解決する何でも屋とかは、発想としてはちょっと古いしリアル感はあまりないので、演技に入ったときのシーンはもっと大げさにダイナミックに見せて欲しかった。
式典でみんなが血を吹いて倒れるところなんかは、キングスマンのクライマックスくらいの馬鹿馬鹿しさと不謹慎さがあってもいいと思った。
あと、最後のネタバラシも、あんなにあからさまにやる必要あるかな? 観客は大体どっかでその可能性は考えるので、ラストはもっとあっさり余地を残すほうが好み。症状が改善して事務所に行ったらもぬけの空だったとか、その程度がよかったな。
問題のスティングだけど、刺す方にもっと理由づけがないと唐突感だけで納得感が薄い。突然の悲劇的な驚きは良かったけど、ああスティングがやりたいのね、はいはい、ってなっちゃう。
つまらなくはないけど、合わなかった。
トリックスタージャンル
前回の『イソップの思うツボ』は共同監督ということなので、単独での作品は“カメ止め”の次ということになる。あれだけ熱狂的な現象を巻き起こした次作ということに否応なしにハードルは上がる。その中で監督が拘っているようにみえる無名の俳優を起用し続けることの化学反応を今回も演出出来るか、そして十八番の奇抜なアイデアを今作でもぶち込んでくるのか、期待値がストップ高になる程の状況なのだが・・・ 日曜の鑑賞した箱は、10人も満たない人数・・・。自分の感覚と世間はズレているのだと認識を苦々しく噛みしめながらの鑑賞である。
テーマは兄弟愛と幼少期のトラウマの克服といったところだろうか。幼い時期と思われる時の父親からの過度なプレッシャーにより、極度の神経調節性失神と思われる症状を起こしてしまう主人公が、弟に勧められ所謂“サクラ”的な仕事に従事することになる。フラッシュモブ的なことから、アリバイ作りまで、劇中でいうところの「演じることを使った何でも屋」といった具合だ。そんな仕事に、新興宗教に嵌った旅館の女将を救いだし、ついでにその団体の悪事をバラして欲しいとの依頼がきて、解決すべく奮闘するという展開である。と言う訳で話の骨子は手垢の塗れた題材である。であるのだが、この陳腐な話自身が観客を欺く建付けになっていて、監督御得意の“入れ籠”構造を演出している。あくまでも主人公の目線が観客の目線で描かれているので、周りの風景が二転三転していくという“ビックリハウス”的展開方式に作り上げられているのだ。幾つかの観客への騙しカットが入っていたりと、“信用ならない語り部”的な背景を感じさせる演出が差し込まれる。仲間の3人が落ちあっていた場面を写真撮影されているカット、そして主人公が殺される演技後の、今まで明かされなかった実は仲間だったおばさんと男。なんとか症状に打ち勝って宗教団体を追い詰めることに成功した主人公が、たまたま街中で観た、弟と教祖とその父親の親しげな仲。そして気付く、そもそもこの顛末そのものがこの業務であって、自分がターゲットだったことへの驚愕。ネタバレとして解ってしまえば、かなりの手品的な入れ子構造と安っぽい作りとの相性の良さに、これは映画ではなく、タモリの『世にも奇妙な物語』臭が立ちこめる印象なのである。これは果たして映画館で観るべき内容なのであろうか?スクリーンを使って表現すべきストーリーと訴えたいアイデアなのだろうか?
テーマとしては奇しくも『ジョーカー』のように、周囲に理解しにくい精神疾患を抱えて、生きづらい人生を過ごす社会的弱者の立ち位置からの逆転的アプローチを描く構図なのだが、今作はあくまでも映像的トリックコメディに始終してしまい、じっくりとした深い人間ドラマは描かない。種になりそうな芽はそれこそ旅館名である『めぶき』の如く、ピョコピョコ出ているのだが、それは無視し、あくまでもチームワークの手際よさと、ドキドキハラハラのサスペンスに比重を置いた。まぁ、それもそもそも制作陣の狙いなのだろうから、そこを噛みついても意味がない。軽いウェイトで色合いを塗ったのだから、道徳的哲学的なことを埋める隙間はない。只、ならばラスト、事務所で全ての種明かしを主人公が発見した(このシーンさえも自分的には残念な蛇足と言わざるを得ない)あの苦々しい顔は演出として良かったのかどうかは迷うばかりだ。あのシーンに於いて、主人公はその全てを知って、改めて何もかも吹っ切った笑顔をスクリーン一杯に表現してこその、作品全体に流れるコメディとしての統一感なのではないだろうかと感じたのだが・・・。御得意のフリと回収も、あの“おっぱいボール”をそれほど拾い上げていないし、ギミックとして後に展開できることも捨ててしまっているような気がするのだが。
いずれにせよ、上田監督は今作に於いて自身のステージは完結すべきであり、次ステージでの展開に移行すべきであろう。ある程度世間が承知している俳優を起用し、トリックスターとしての立ち位置から、ヒューマンコメディと哲学的要素を盛り込んだ深みある内容を積み上げる作品を世に出して貰いたい。そう願うばかりである。今作では描ききっていない人と人の関係性の妙を巧みに映像化できて始めて真価を得られることであろう。
やっぱハードル上げすぎたかな?!
いやぁ面白かったですよ、十分に。アウェイな状況でも活躍するジャイアンツ丸選手のごとく、色々言われても上田監督なら絶対面白いよね!のプレッシャーの中ホームランとまではいかないまでもツーベースヒットくらいにはなったかなって評価してしまうのはやっぱり酷なことなんでしょうね?!まあ冷静に考えて2つのどんでん返しは正直読めてしまいましたが最後のオチはやられたなって感じです。詐欺師を題材にした映画での爽快感のようなものはあまりなかったかな?でも今回も全く無名の出演者ばかりで面白い映画が作れる上田監督はさすがだと正直思いました。この手のストーリーで最後のオチを知ってから「あの場面で想定したシナリオと違った展開になった場合、リカバリは出来たんだろうか?!」などと邪推するのは映画の楽しみ方としてはよくないことなんででしょうね。これまたおそらく低予算でうまく作り上げられた良品だと思います。
小劇場のセミプロ演劇を見せられているよう
「カメラを止めるな!」(2018)の上田慎一郎監督作品。2019年8月公開の「イソップの思うツボ」も上田監督の作品だが、3監督の共作だったので、本作が正式な劇場長編第2弾にあたる。
社会現象的な大ヒットで注目され、製作環境もよくなっていていいはずだが、松竹ブロードキャスティング製作では、それほど予算に余裕はないだろう。
やはりオーディションで1500人からほぼ無名のキャストを選ぶという手法を踏襲している。
"カメ止め"は、ゾンビ映画に有名俳優が主役だと、「その人は死なない」と分かってしまってツマらないから──と発言していたが、今回の狙いは"半端な役者たち"という設定にありそうだ。
とはいえ、劇中の演技シーンと、素のシーンに差がなく単調なのは、単に下手なだけなのでは…と気が滅入る。
主人公・和人は三文役者。久しぶりに再会した弟から俳優事務所「スペシャル・アクターズ」に誘われる。
その事務所は映画やドラマ以外に、"何でも屋"として要求された役割を日常で演じる仕事を請け負っていた。そんなある日、"カルトな宗教団体から旅館を守ってほしい"という依頼が舞い込んでくる。
演技という"騙し"と、宗教商法という"騙し"、それに精神疾患の治療という題材を関連づけてコメディに仕立てる。
エンターテイメントな演出は他にも手法はあると思うが、結局、上田監督は"どんでん返し"が好きなだけなのかもしれない。
ワンカット撮影以外の映画的な撮影や編集技法を見てみたいし、違うジャンルは書けないのだろうか。
コメディ作品が続いているので、作りの安っぽさも相まって、小劇場のセミプロ演劇を見せられているようだ。
(2019/10/19/新宿ピカデリー/シネスコ)
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