アトランティックス

劇場公開日:

解説・あらすじ

俳優としても活躍するフランスの気鋭女性監督マティ・ディオップが長編初メガホンをとり、2019年・第72回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した異色のラブストーリー。ディオップ監督のルーツのひとつでもあるセネガルを舞台に、同国の社会問題を盛り込みながら、許されざる恋に落ちた若き恋人たちを襲う思いがけない運命を、幻想的な映像表現と意表を突くストーリー展開で描き出す。都市開発が進むセネガルの首都ダカール。17歳の少女エイダは裕福な男性との結婚を控えていたが、建設現場で働く青年スレイマンと秘密の逢瀬を重ねていた。しかし、給料の未払いが続く職場に耐えきれなくなったスレイマンと仲間たちは、仕事を求めて船でスペインへ旅立ち、そのまま消息を絶ってしまう。失意の中で結婚式の日を迎えるエイダだったが、男たちは思わぬ形で街に戻ってくる。Netflixで2019年11月29日から配信。2022年4月23日からシアター・イメージフォーラムの「マティ・ディオップ特集 越境する夢」で劇場初公開(特集上映時のタイトルは「アトランティック」)。

2019年製作/106分/フランス・セネガル・ベルギー合作
原題または英題:Atlantique
劇場公開日:2022年4月23日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第72回 カンヌ国際映画祭(2019年)

受賞

コンペティション部門
グランプリ マティ・ディオップ

出品

コンペティション部門
出品作品 マティ・ディオップ
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映画レビュー

3.5最初の娘

2025年5月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

ファンタジー・ラブストーリーの皮を被った社会派映画である。ゴリゴリの社会派と言っても過言じゃないくらいだ。
最近気づいたのだが、恋愛映画には多かれ少なかれ社会派の側面がある。身分違いの恋、社会派ですね~。男同士・女同士の恋、社会派ですよね~。
もちろん、設定は世界情勢やその時その場所の規範に沿っていても、それはただのスパイス程度って映画の方が多いのだが、要は観る側の問題意識、私の気持ちが「社会派」に寄っているということの方が大きいことは承知しているが。

主人公・エイダは親の決めた結婚相手・オマールとの結婚を10日後に控えているが、本当に愛しているのは建設現場で働くスレイマンだ。
スレイマンの勤め先では3か月も給料が未払で、社長は話し合いにも出てこない。スレイマンをはじめとする若い労働者たちは稼ぎ先を求め、船でスペインを目指すことになる。エイダに別れも告げられないまま…。

意気上がってトラックの荷台で歌い、大騒ぎの仲間たちの中で、1人スレイマンだけが浮かない顔で座り込んでいるのが印象的だ。

エイダがスレイマンを愛していることは明白だが、それ以上に社会の「幸せの基準」に違和感を感じていることが感じられる。
女の子たちは口々に、オマールを愛する必要はないことや、結婚を断ったら親とも絶縁することを挙げてエイダを説得する。何なら自分がエイダの代わりになりたい、とも。
「良い暮らし」という誘惑と「家族を失う」という脅しが混在し、エイダの人生の決定権をエイダ自身から奪おうとしている。そのことをエイダは一番拒否しているのだ。

この後、予想もしてなかったファンタジックでややホラーな展開に突入していくのだが、それ以上に私を戦慄させたのはエイダを待ち受ける「グロい」仕打ちである。
映像的には全くグロくない。だが、精神的にダメージを感じる。新婚夫婦の寝室も、病院で受けさせられる検査も、花嫁が完全にモノとして扱われるグロさを内包する。
最も堪えるのはそれが「当然」で、エイダ以外の誰も彼もが何の疑問も不快感も持っていないことだ。

その国の価値観や、「それが幸せ」と思っている人々にとやかく言う気はない。ただ、「それは嫌だ」と思っている人は別の道を選べる安全性が必要だと思う。つまり、「スレイマンと一緒になりたいの」とエイダが選ぶなら、「良いんじゃないの」と周囲が受け入れる世界であって欲しい、それだけのことだ。

思うに、「家族の繁栄」とか「より強い男とつがえ」という規範は生物の初期的な欲望だ。思想を持ち、生物の鎖としてではなく「今、自分が生きているということ」に意味と思考を持つようになった人間が「自分自身に対する決定権」を持ちたいと願うのは、人間が人間であることの証左に他ならない。

「エイダ」という名前には最初の娘、という意味があるらしい。強い男と愛がなくても結婚し、家族を繁栄させるならわしの中で、自分で自分の生き方を決めようとするエイダは、まさに「最初の娘」に相応しい。

この映画のサブ的なメッセージとして、「セネガルって知ってますか?」という問いかけもあるように思う。そのメッセージに対して、セネガルについて色んなことを調べた私のことを鑑みると、作品の目論見は成功してると言えるだろう。
社会を見つめ直す眼を持ちながら、幻想的なラブストーリーとして物語をまとめ、映画の中に「今、自分が感じたこと」を許す意欲作である。

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つとみ

2.5少しチープさはあるものの。

2023年10月19日
iPhoneアプリから投稿

社会派的な内容かと思いきや…急にきな臭い雰囲気になってきて頭がついていかなかったが、最後になんとなぁく理解出来るような纏まりに仕上がってた。

比べるもんじゃないが日本は労働雇用には困らない良い国だなと改めて思う。

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バキ

2.5愛は青い心

2022年4月25日
Androidアプリから投稿

悲しい

幸せ

一夫多妻制の国セネガルを舞台にした、金持ちのボンボンの第一夫人になることが決まっている女性と、肉体労働者の青年のすれ違いの恋愛をみせる話。

セネガルの首都はラリーもそうだけど、クワトロ大尉が演説をぶったダカールですね。

そんな町で3ヵ月給料が支払われていない若者達がスペインに向かい出航したり、好きな人への思いと後悔を抱えたまま結婚式が行われたりというストーリー。

確かに恋愛映画ではあるけれど、それだけじゃないものがありそうだと鑑賞したら…確かにそれ以外のものがあるにはあったけれどもだ(-_-;)

サスペンス的要素もあって途中かなり期待値が高まったんだけど、それだけで容疑者?というかそもそもそれは事件と断定されてないよね?セネガルの法律では警察にそんな権限が?とイマイチしっくり来ない中、まさかの目ん玉グリンッすか。

実際にもあった事故とか移民問題を絡めつつみせるドラマで、それなりには面白かったけれど、ちょっとチープさが引っ掛かってしまった。

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共感した! 2件)
Bacchus

4.0ラブストーリーと言われればそれまでだが

2022年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単なる男女の物語ではない、仕掛けや絡繰りがあって、内容的にもなかなか面白い作品でした。とくに神秘的な映像表現がかなり秀逸だと思いました。
面白いとはいえ、かなり創作めいたところを感じてしまうところがあって、ちょいちょい不自然さや放置感などあるんじゃないかなーと思ったりしましたが、絵的なもので全てを相殺してしまうぐらいのパワーや美しさを感じたので、それほど違和感なく楽しむことができました。

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SH