オーケストラの少女

劇場公開日:

解説

「天使の花園」と同じくヘンリー・コスターが監督したディアナ・ダービン主演映画で「1937年の大放送」のレオポルト・ストコフスキーが特に共演するもの。原案はハンス・クレーリーが立て、「化石の森」のチャールズ・ケニヨンがブルース・マニングおよびジェイムス・マルホウザーと協力脚色した。カメラは「天使の花園」のジョゼフ・A・バレンタインが、セットは「明朗色時代」のジョン・ハークライダーがそれぞれ担当した。助演者は「銀盤の女王」「ロイドの牛乳屋」のアドルフ・マンジュウ、「天使の花園のアリス・プレディ、「天国漫歩」のユージーン・パレット、「歌へ陽気に」のミッシャ・オーア、「花嫁の秘密」のビリー・ギルバート、「この三人」のアルマ・クルーガー等である。

1937年製作/84分/アメリカ
原題:100 Men and a Girl
劇場公開日:1937年12月29日

ストーリー

ストコフスキーの指揮するチャイコフスキーの第5シンフォニーに満場の聴衆は聞きとれている。楽屋口の群衆に混じって失業楽士のジョンが今日こそは直談判してオーケストラのメンバーに加えてもらおうと待っていたが、すげなく楽屋番に追い払われた。淋しく帰る足元に見いだしたのは女持ちのがま口である。悪いとは知りながらその金を部屋代に融通した。アパートの人たちは彼がストコフスキーの許で働くことになったものと思ってお祝いの会を開いた。声楽家を志している一人娘のパシィが喜ぶ様子を見ると、どうしてもジョンは本当のことが言えなかった。隣室にいる失業楽士マイケルにだけ真実を話して、翌日は練習に行くふりで家を出た。しかしパシィは父の初練習を聴こうとホールへ出かけて、父が嘘をついたのを知った。ジョンは泣きだした娘に本当のことを打ち明けた。パシィは持ち主のフロスト夫人にそれを返しに行った。フロスト家ではパーティーの最中で、夫人はとっくに落としたがま口なんか忘れていた。パシィは真相を夫人に打ち明け、失業している父を救うためオーケストラを作りたいと話した。彼女の歌に驚嘆した夫人はメンバーが揃ったら後援しようと約束する。ジョンは 100人の失業楽士を集めて失業交響楽団を組織した。次の朝から古倉庫の中で練習が始まったけれど、パシィが金をもらいにフロスト夫人を訪れると、気まぐれな夫人は欧州旅行に出発した後だった。パシィはフロスト氏に頼んでオーケストラを見てもらったが、彼は頭から後援を拒絶して怒ったジョンに殴り倒される。パシィはストコフスキーに指揮を頼もうと彼の練習場へもぐり込んだ。オーケストラはモーツァルトの「ハレルヤ」の練習を始める。どこからかパシィの美しい歌声が流れてきた。ストコフスキーは彼女のすばらしい歌声を称賛したが、失業楽壇の指揮は承知しなかった。ある夜、ストコフスキーがピアノを弾いていると、突然階下から「ハンガリアン・ラプソディ」のオーケストラが聞こえてきた。扉をあけると失業楽壇が階段から広間まで占領して一生懸命の演奏をしている。その水際だった演奏に引き入れられたストコフスキーは、いつか立ち上がって得意のノン・タクトの指揮を始めた。それから間もなくストコフスキー指揮のもとに失業交響楽団の晴れの演奏会が開催された。壇上から彼はパシィを聴衆に紹介した。パシィは喜びに胸が一杯だった。彼女と顔馴染みのタクシー運転手も盛装して3階席から声援した。ストコフスキーが手を挙げ、オーケストラは一斉にベルディの「トラビアタ」の曲を始める。歌うパシィとトロンボーンを吹く父ジョンの顔はうれしそうに微笑むのであった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第10回 アカデミー賞(1938年)

ノミネート

作品賞  
原案賞 ハンス・クレイリー
編集賞 ベルナルド・W・バートン
音響録音賞  
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映画レビュー

5.0ファンタジアでは、シルエットだけだったが、完全な姿が拝める

2022年8月21日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

3.5お茶の間向きの楽しい映画

2022年3月24日
Androidアプリから投稿

笑える

楽しい

幸せ

古〜い映画だけれど、本物の指揮者が、映画の中にチラ見せではなく重要な役で登場し、ちゃんと指揮棒も振ってくれる。すごく贅沢。

彼にアプローチしていく過程がけっこう爽快で楽しい。リハーサルを観客席で一人で見させてもらうとか、一流オーケストラの伴奏で自分の歌を聞いてもらい評価してもらうとか、気楽に取った電話でのひとことで世論を動かしちゃうとか。やってみたくても普通は出来ないことが、この元気で真っ直ぐな女のコがやれば、スルスル魔法のように出来ちゃう。

個人的には全体の騒々しさとおめでたすぎる面がちょっと気になるけれど、それは個人的な趣味の問題で、これはこれで完成度が高いのかな、と思う。

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あま・おと

4.0名作

2021年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 フロスト夫人のスポンサー申し出は単なる酔狂だったのか?夫ジョン・フロストは出資を頑なに拒否し、失業者楽団は路頭に迷いそうになる。「有名な演奏家や指揮者を見つければ別だ」という言葉に対して、想像はつくが荒唐無稽の行動に出るパッツィ。

 レオポルド・ストコフスキーの演奏会、リハーサルも素晴らしいが、フロスト(ユージン・ポーレット)、フルートのマイケル(ミッシャ・オウア)やタクシー運転手(フランク・ジェンクス)などの脇役陣がストーリーを引き締めている。有名な音楽家、指揮者に出演依頼するという後半のプロットは『かれらに音楽を』にも使われるが、こちらは新聞社の勘違いというサイドストーリーもパンチが効いている。

 かなりコミカルな展開なのも、飽きずに観られる。大不況時代に夢を見失った失業者たちに勇気を与えてくれる映画。アイドル映画と評されても仕方がないけど・・・

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kossy

4.0溌剌と活躍する少女の歌と行動力

2020年4月17日
PCから投稿

ディアナ・ダービンの純真さと誠実さが報われるアメリカ音楽映画の明朗さと愉快さ。映画のひとつの理想の形と表情を持っている。アドルフ・マンジューとミッシャ・オウアの失業演奏家の哀歌。名指揮者レオポルド・ストコフスキーの威厳。最後まで無駄のないカット編集で引き込まれる。人を愛し大切にする人たちが音楽で結ばれる脚本の素晴らしさ。

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Gustav
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