劇場公開日 2020年1月10日

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「ドロップアウトした人が逆上したという話」パラサイト 半地下の家族 chemicalsweetさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ドロップアウトした人が逆上したという話

2020年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まずは、アカデミー賞おめでとうございます。
どこを見ても賛辞の嵐。批判的コメントが一切ありません。
しかしながら、私は見終わったあとで、何かがどうしても引っかかっている。

「貧乏人のふんばり映画」が好きだ。
スラムドッグ・ミリオネアは本当に良かった。
すさまじく貧しく逆風の境遇。
宗教対立で家族を失い、人買いにさらわれ、友は目をつぶされ物乞いとなり、兄はやくざ、恋人は情婦寸前、力も何もないお茶くみの青年が奮闘努力する姿は、涙なしには見られない。
今回はなぜ感動できなかったのか。

まず、登場人物に感情移入できなかった。
ひとつには、上昇志向の欠如。
環境が悪いなら、そこを出よう。
金を稼ぐ手段を描いているのに、その使い道を明確にしなかったのは、片手落ちだと思う。
お金は使ってこそ、得るものがあるのであって、目的もなく金を稼ぐ守銭奴の詐欺師みたいになってしまった。
「こんな家に住めたらなぁ」というのが漠然とし過ぎてしまったのが残念だ。

ショファーにふさわしい服や香水(デオドラント)を買えば、もしかしたらあれはなかったかも知れない。
そんな、接客業として当たり前のことを、なぜしなかったのか(しようともしなかったのか)。
結果、単なる逆上逆恨みになってしまったじゃないか。

貧民差別が動機、という意図があったかも知れないが、サラリーマン歴34年の私にとって、「そんな事は世の中普通にある事」と言っておこう。
あるいはもっと酷いパワハラ上司であっても、余裕でスルーできる力こそ必要であって、殺しの動機ところか、映画のテーマにする程の事ではない。

シェルター暮らしは、アメリカ映画で何度か見たので、あまりインパクトがなかった。

嘘のつき方も下手、詐欺に感心する手口も見られないから犯罪映画としても、なんだかなぁ、だ。

「貧乏は英雄のルツボである」とユゴーは言った。(レミゼラブル)
貧乏を原動力にする意志、これこそが映画に欠ける事だ。

家族にとって、金持ちになる事は幻想であり、とてもその幻想が叶うとは思えないし、その意志もなさそうだ。
そこに不満こそあり、感動はないし、怒りもない。

chemicalsweet
いぱねまさんのコメント
2020年2月13日

大変、参考になりました

いぱねま