罪の声のレビュー・感想・評価
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声の重み
心変わり?
1984~5年に起きたグリコ森永事件をモチーフにした「ギン萬事件」という事件で、脅迫テープに声を使用された子供たちのその後の苦悩を描いた話。
亡き父親からテーラーを継いだ30代の男が探し物をしていると天袋にあった伯父の荷物から自分の幼い頃の声が入ったテープと事件に纏わることが記された手帳を発見し巻き起こっていくストーリー。
事件との関わりを知り、苦悩し、関係者を追って事件の詳細や真実を知ろうとする姿や、記者とのやりとり、そしてみえてくる真相は見応えがありとても面白かった。
しかしながら、主人公の苦悩はどこ行った?
何も救いの描写なかったのになんでそんなにすっきりしてるの?
他の2人と比べたらまし、程度の言いきかせしかなくないですか?
その家族も大人しくしてたら…とか、ちょっと都合良いし。
終盤の説明パートもちょっとムリがあったり説得力に欠けたり、ミステリーとしてはイマイチだったかな。
うーん、丁寧に作られてはいるが共感できない。
事件の背景にある学生運動の挫折なんて、世代が違っているので共感できないです。
あるべき記者の姿に悩む小栗旬にも共感できないです。
アラ還以上の方又は両主演のファンの方なら共感できるのかな・・
人間関係を新聞記者に次々暴露するおしゃべりさんが多いのは、ちょっとご都合主義ぽいですね。普通、初対面の人には簡単には喋りませんよ。まあ、それを言ってしまえば身も蓋もないのですが。
話の構成は整理されていて、登場人物が多い割に理解はしやすかった。
演出がTBSテレビの土井さんということで納得。
一方、グリコ・森永事件の企業名だけ変更して、その他の周知の事実をそのまま使っているのでどうしても違和感が残る。
ついでに言えば、海外逃亡中は時効進行が停止されます。ネタバレになるのであまり詳しく書けませんが、後日譚についてはちょっと描写が甘いような気がします。
キツネ目の男は誰・・・?
原作は新刊発売当時に既読。昭和最後の大事件、『グリコ・森永事件』をモチーフに、いつか実写化されるだろうと思っていたので、待望の映画化。自分達の世代には、大変印象深い怪事件で、連日報道される、警察をあざ笑うかのような成り行きに、釘付けになった。
「真実は小説より奇なり」の言葉通り、実際の事件をモチーフにし、それを脚色をしているため、ストーリー展開も、次への展開を期待させるサスペンスの要素だけでなく、人としての生き方や人間関係のヒューマンドラマとしても、大変興味深い内容となっている。
特に、何も知らずに、事件の声に使用された3人の子供達の成長過程のくだりは、穏やかで幸せな家庭を築いてきた曽根と、暴力団の監視の下で、底辺の暮らしをしてきた聡一郎の対比によって、哀愁を誘う構図となっている。
この事件の身代金要求に使用された子供の声。それが30年の時を経て、自分の声だと知ったテーラーを営む曽根。一方で、令和を迎える前に、この事件を掘り下げるために、取材を始める新聞記者の阿久津。それぞれが、事件の関係者を辿って、一歩ずつ真相に迫っていく。それは、70年代の過激派学生運動に遡っての過去を明らかにすることに繋がっていく。
俳優陣も、なかなか良かった。W主演の小栗旬と星野源は、安定した演技を見せてくれた。また、懐かしいところでは浅茅陽子、梶芽衣子、宇崎竜童等、昭和を代表する出演者も、この事件からの長い歴史を感じさせてくれる。
ストーリー展開は、本当にキメ細かく作られており、ジワジワと迫る真相への道筋やそれぞれの人生の歩は、観る人の共感や憂いをいざなう作品として、大変面白く仕上がっている。多くの人に観てほしい作品だ。
昭和世代は見るべき
作品の質は高い、でも共感はしにくいかな…
原作未読。
役者陣は良かった。
無駄に泣き喚かない、大声で怒鳴らない、不必要に走り回らない、抑えた演技。
目立たないキャラクターたちにもちゃんと存在感がある。
そしてさすがの脚本。
犯人グループを筆頭に、かなりの数の人名が登場するが、物語が整理されているのでまったく混乱しないで済んだ。
これだけでも特筆に値する。
とはいえ、前半は主人公の二人が過去の事件を追うことに終始するので、(前述したとおり、ちゃんと解る様にできているので今思えばそんな必要もなかったのだが)一時「疲れ」との戦いも乗り越えなくてはならない。
最後は家族のドラマに収束していくんだけど、我々観客が心を寄せるべきこの事件に巻き込まれた被害者たちの境遇やその経緯がかなり特殊なせいもあって、正直なところ感情移入の前に「気の毒だなぁ」が先行してしまい、かなり客観的に観ている自分がいた。
ささやかながら幸せを築いている主人公が、わざわざ自分の不穏極まりない過去をあえて探ろうと執着する辺りも私にはあまりピンと来なかった。
野暮を承知で言えば、これだけたくさんの見ず知らずの人々の証言が集まって真相に辿り着くという設定が、令和の現代としてはやはり無理筋と言えなくもない。今や、田舎のご老人でもこんなに口は軽くないよ。
色々気になって私はノれなかったが、映画としては良くできているのは間違いない。
「いまさら掘り返す意味あります?」
怨嗟の円環
この作品は日本現代史の一側面である。この円環は今なお途切れていないことに戦慄を覚えずにいられない。役者陣にとっても生傷であるかもしれないことを思えば、膨大なエネルギーが作品に込められているように思う。ヨークの町を最後の舞台に選んだのも歴史俯瞰につなげる意図があったのだろう。
■書き直し■
「怨嗟の円環」
この作品は日本現代史の一側面を捉えている。
現実に起こった事件をモチーフにしているが、事件構造は全くの架空である。
(『リアル』な表層に『バーチャル』な構造を埋め込み、『リアル』な現代史構造を表現して見せる)という『入れ子』構造が本作の鍵であり、成功している。
年嵩の役者陣にとっては尚疼く古傷であるかもしれないことを思えば、膨大なエネルギーが作中に込められているように思う。蛇足のようだが、これも『入れ子』と見れば、複次元的な『入れ子』が完成する。
その複雑な構造を持ってストレートなメッセージを直球で放り込むところに本作の魅力がある。原作は未見で恐縮だが、先ずは脚本の秀逸さを称賛したい。
作中、黒澤明『天国と地獄』への言及があるが… 深読みに誘われた。
作品の“ありよう“とて提示したのではあるまいか?
まさに“複眼“的な本作の特徴を思い、手前勝手に納得してしまった。
怨嗟の円環は断ち切ることができるのか?
最後の舞台となるヨークの町は、シェイクスピア史劇に象徴されるように、「繰り返された戦火」を想起させる。人間俯瞰につなげる構造的意図があったのだろう。そこで語られるメッセージに重さを与えている。
小栗旬の、“人間臭い“ 中に “青さ“ を持った芝居が良い。
星野源やその他のキャスティングも的を射ている。
本作が発するメッセージは是非、劇場で確認して頂きたい。
コロナ災下、目先の経済や衛生管理が大切であることには論を待たない。
しかし、私たちの“ありよう“を俯瞰的に再確認することもまた、大切なことではないだろうか?
本作のような力強い作品が公開されることを嬉しく思う。
メチャクチャ胸を締め付けられた作品。
真実を知る事が正解なのか?
考えさせられた作品。
基本、新聞記者の小栗旬さんとテーラーの主人の星野源さんがメイン。
ある事件の真相を二人が別々に究明する中、途中からバディーとなり進む展開。
何人もの関係者に話を聞きながら真相が徐々に明らかになって行くんだけど、難航する事が無くスムーズ過ぎ(笑)
だけどテンポが良いので許容範囲内。
話を聞く人々の人生ドラマが皆さん凄すぎた。
ひとつの事件で何人もの人の人生が狂っていく姿が印象的。
観賞中に気が付いたんだけど、過去に実際にあったキャラメル会社の事件がモチーフになっていて、その事件をググって復習してから観賞した方が良かったと反省。
仕立てスーツを3割引にしなければこの事件の真相は究明されなかったかもしれません( ´∀`)
初見的感覚感想。
原作本未読者の感想です。脚本担当の方の作品は兼ねてより拝見しており、巧みな物語の立て方に信頼を置いておりました。しかしながら前作は前作、今作は今作と、作品たちを混同してその人の描く脚本だからいい、と過大評価するのは視点ズレの色眼鏡かとおもいますのでそれら抜きのお話です。
初めから予告映像にもある、あの特徴的な子供の声を使い、開始10分ほどで物語が立ち、進展していき、進展し続け2時間20分の映画。よくある伏線を散らかすだけ散らかし、回収しない作品になることもなく、撮るべきところを撮り、伝えるべきところを伝える、大変筋の通った脚本に感じられました。
今作の出だし、巧みかつ、「最初からクライマックス」な、初見で見ても「どうなるんだろう?」と興味の湧き立つ立て方だったのではないかとおもいます。
私は後述のひとりですが、邦画特有の陰気なライティングに加え、クドイほどの尺使いなどが苦手な方にも今作はかなり見やすい作品かとおもいます。
ちょこちょこイギリスのシーンがあり、おしゃれな風景が出てきて、星野さん演じる曽根のテーラーもおしゃれです。映画全体のライティングも明るく、「冬の美しい背景」で描かれるので見やすいです。
2時間20分、知り合いに誘われ観覧しましたが、邦画としては評価できる作品だったとおもいます。
映画評価±0が★3つなら、今作は2段階評価を上げてもいい気がしました。
初の組み合わせ聖域に挑む
トイレに行きたい!でも、トイレに行けない。
なんだこの映画は。
長めの映画だったけど、気持ちが途切れることなく、最後まで駆け抜ける感じの映画だった。
こんなに気持ちを持っていかれた映画は初めてだった。
事前に小説を読んでたから、より、ぐっと気持ちが入ったかもしれない。
犯人の言い分もわかるし、一方で、その結果振り回された人たちの悲劇も切なすぎて、憎しみをどこにぶつけたらいいのか、気持ちのやりどころに困る。
それが、すごくリアリティがあって、脳が痺れる感じがした。
ただ一つ欠点があるとすれば、2時間半の映画は長くて、途中でトイレに行きたくなって、でも、画面から目を離せなくて…。多くの人が映画終了後に、トイレに駆け込んでいました。
それくらい、夢中になれる映画でした。
見応え充分
【点と点、80年代】
グリコ森永事件をモチーフにして、少しずつ真実に迫る謎解きを展開しながらも、どこかノスタルジックな感覚を覚える作品だ。
そういう意味で、80年代の雰囲気をよく伝えていると思うし、更に、子供の声を主要なファクターに据え、その子供たちの成長や運命を見つめる重厚な作品になっていたと思う。
80年代は、ある意味、混沌とした時代だった。
多くの謎を残し、この作品のモチーフになったグリコ森永事件もそうだが、70年代の学生運動の残り香もあちこちにあったような気がする。
バイトしていた都心繁華街の居酒屋の近くにあるバーのオーナーが、学生運動に傾倒した人物で、「腹腹時計」という爆弾の作り方を記載した地下雑誌を所有しているという噂を聞いたことがあった。
70年代の三菱重工ビル爆破事件の爆弾の作成工程を記したものだ。
あの居酒屋は、ビルを建て替えてまだ営業している。
今度、バーがどうなっているか探してみようと思う。
また、80年代は、金融市場が激変した時代でもあった。
為替のプラザ合意。
後半は、バブルに突き進んだ。
しかし、株式市場も、まだまだ未成熟で、仕手やインサイダーといった禁じ手に手を染める連中がいて、取り締まりも不十分な時代だった。
そして、確実に儲かる話というのもあって、株絡みのうまい話に政治家が擦り寄って来ていたというのは、リクルート事件でも明らかになったところだ。
企業がらみで言えば、佐川急便事件で、政治家の金丸信が90年代初めに逮捕起訴されたが、実際の贈賄が行われたのは80年代だった。
そんなことを考えると、この作品で、株の空売りの資金の金主が政治家と推測される場面があるが、80年代であれば、ありそうな話だとさえ思えてくる。
こうして、この作品では、時代の雰囲気を表す特徴を点と点で結び、僕達のノスタルジーが刺激されるのだ。
そして、子供の声。
僕達は、キツネ目の男の似顔絵や、人を食ったような脅迫文、次から次に標的にされる食品関連企業に注目しがちだったように思う。
でも、声を利用された子供たちの、その後の運命など考えたことはなかったのではないか。
どのように声は調達されたのか。
この劇場型とも言われる事件の闇の深さを改めて思い知る。
グリコ森永事件では、当初、録音された声の主は、30代の女性と言われていた。
しかし、再鑑定で、これは10代のものとされ、他に幼い2人ないしは3人の男の子の声があったと報じられていた。
幼い子は記憶も確かに曖昧かもしれない。
だが、10代と思われる女の子は、記憶も鮮明なはずだ。
彼女は、何を感じていたのだろうか。
今も、怯えながら生きてるのだろうか。
興味というより、胸が苦しくなる。
ストーリーは、子供たちのその後の運命にフォーカスし、時代や時代の雰囲気に翻弄された周りの人を照らしながら、声の主たち…といっても残されたのは2人だけだが、彼らを罪の意識から解放していく。
阿久津と曽根が繋がった。
そして、京都のテーラーとヨークのブックストアの店構えがとても似ていたのも、点と点が繋がるような気がした。
この作品では、事件がさまざまな事柄や人と繋がっていた。
実際のグリコ森永事件はどうなのか。
一体、社会の何とか繋がっていたのか。
改めて興味が湧く。
しかし、子供のことを考えると、実は謎のままの方が良いような気にもなる。
ただ、一方で、キツネ目の男をすんでのところで取り逃したとして左遷された警察幹部は自死を選択した。
なかには、事件が永遠に終わらない人もいるのだ。
グリコ森永事件とは一体何だったのか。
僕達は改めて考えることで、日本の社会の歪んだ暗い部分を心にに留め置くことになる。
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