幸福路のチーのレビュー・感想・評価
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ままならない人生、それでも楽しく美しく
アニメーションで人の人生を描くという手本のような作品だと思った。台湾現代史と個人史を重ね合わせ、想像力を駆使して、1人の女性の人生の、酸いも甘いも描きつくしている。希望と想像力に溢れた子供時代、政治活動に明け暮れた青春時代、上手くいかないことだらけの社会人時代、そしてアメリカへと移住し、運命の人に出会うもここでも上手くいかない。子供の頃、思い描いた人生にはならなかったとしても、それでも人生は素晴らしいと謳い上げる。
同級生の米国人との混血のベティは台湾社会におけるマイノリティを代表する。沖縄にも米兵を父に持つアメラジアンがいるが、それと同様の存在だ。渡米後の主人公は、アメリカでのマイノリティだ。どの社会にも抑圧があり差別もある。しかし、どこの社会もそれが全てではない。友情と家族愛を力に、主人公は力強く人生をリスタートさせる。
『おもひでぽろぽろ』や『この世界の片隅に』を思い出す人もいると思うが、個人的には韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を思い出した。
激動の台湾現代史に、自立を夢見る女性主人公の半生が重なる
台湾は規模の割に映画産業が盛んだが、ジャンルはヒューマンドラマか青春・恋愛物、歴史劇に偏っている印象だ。アニメに至ってはオリジナルの作り手が不在だった(外国作品の下請けは行っているようだが)。台北に生まれ日本と米国で映画を学んだ女性監督、ソン・シンインは自らの半生を反映した物語をアニメで描こうと決め、自らアニメスタジオを設立したというからその行動力に恐れ入る。
ジブリ作品の影響も感じさせ、生き方に迷う女性が帰省して過去を振り返る「おもひでぽろぽろ」や、時代に翻弄される市井の人々を描いた「火垂るの墓」「風立ちぬ」などを想起させる。水彩画のような淡い背景と、シンプルな輪郭線のキャラクターの素朴な味が、絶妙なコントラストとなり郷愁を誘う。
自立して幸福になることを夢見てきたがままならないチーの姿は、中国からの独立を願いながら米中という二大勢力の影響下で揺れ動いてきた台湾の存在に重なって映る。
タイトルなし
この世は誰にとってもstrangeで、この世に繋ぎ止めてくれる何かをみんな求めている。しかしそれは、あまりにも曖昧で頼りなく、力を抜くことによってしか得られないのかもしれない。そしてそれがいちばん難しい。そんな現代の(アジアの)物語。
(追記)『この世界の片隅に』『おもひでぽろぽろ』と重ねるレビューを読んで、そうそう私もそれを想起しながら見たのだった、と。あと、『かぐや姫の物語』とも似たテーマを含んでいると思った。
ピリッとしたリアリティが効いた傑作
内容をよく知らないまま、タイトルからほんわか系かなーと思いながらNetflixをぼんやり再生、トップシーンが終わる頃には真顔になっていた。
「トトロ」の導入のような引越しシーンかと思いきや、主人公が小舟を流す用水路には都会らしいゴミ、そのうえどうもその場面自体が過去の記憶のようだ。
つまり絵や背景はほんわかタッチだが、背後にはリアルな個人史があるらしい。
これは単なる雰囲気ハートウォーミング作品じゃないぞ…! と正座した。
寡聞にして詳細はわからないのだが、1人の台湾人女性の生い立ちと、台湾現代史の激動とが絡みあい、やがて私でもよく知っている近年のニュースへと繋がってくる。そこに主人公たちの確かな実在感を感じる。
社会的背景をコンパクトにうまく取り込みながら、現在と回想を明確にわけるのではなく、ひとつの場面の中でシームレスに展開していく。これはアニメならでは強みだと思う。
にしても語りがうまい。下手するとのんべんだらりとしてしまいかねないところを、流れるように話をつなげて飽きさせない。
この脚本(絵コンテ?)を書いた監督はかなりのストーリーテリング強者とみた。
こういう帰省ものってよくあるけど、観客を楽しませるとい意味で難易度は高いと思う。
そこもリアリティが効果的に奏功してるおかげかな。
日本でいうならさくらももこのエッセイをちびまる子ちゃんのタッチで描いたら、みたいな感じかな。祖父が亡くなった時の笑えないエピソードもあのかわいい絵柄でちゃんとやる、みたいな。
親世代と子世代の溝や葛藤がちゃんと描かれているので、台湾に詳しくない私でも我がことのようにヒリヒリする場面もあった。
「野蛮」ていうキーワードは新鮮だけど、感覚的にはすごくしっくりくる。親や上の世代がとても乱暴に見える時期ってあるんですよねー。それを変に逃げたりごまかしたりしてないのが素晴らしい。
身近なところにあるさまざまな無神経さ、断絶がちゃんと描かれているから、オチが単なるおためごかしに見えないのかな。
アニメタイトルの多い日本でも、ここまで社会が反映された作品はレアだから、この作品が評価されたことは今後の日本アニメにとっても朗報だと思う。高畑勲とか、原恵一が手がけるようなライン。
せっかく山ほどタイトルがあるなら、こういう路線が多少あってもいいのにと思うし、むしろ海外に持っていった方が歓迎されるのかも知れないなあとも思う。君の名は、や鬼滅の数百億は望めないまでも、それだってめったにない幸運なまぐれだと思うし。。
私にもわかるアニソンの引用は意外だったけど、使い方が上手で嫌味がない。うれしいサプライズ。
同じアジア人として
とても共感できました。
全く違う人生を生きているにも関わらず…
とても不思議な感覚ですが、いろんな感情がシンクロしている気がしたのです。
夢の中で心と感情がぐちゃぐちゃになる感じも、根拠のない自信と、根拠のない不安が人生の中で繰り返し、それでも前に進むしかない感覚。
過去の思い出が美しく、そこに立ち返りたいけれど、未来への希望も感じていること。
絵は素朴で、ユーモラス。
チーの人生は非常にリアルです。
チーと同じ誕生日!
台湾のアニメねえ・・・と「???」と思いながらみ始めました。
最初でびっくり、チーと私誕生日一緒でした(暦年は違う)。
そういえば4/5って台湾歴史の方の命日って、聞いたことあるような。
今のチーと子供の頃のチー。
交互に進む話でわかりやすい。こうやって少女が大人になっていくんだなあって。
台湾の歴史や出来事って、こんなこともあったなあって再認識。
おばあちゃんのキャラが、とてもよかった。
大人になっても根っこの部分は、子供の頃とさほど変わってないもんね。
「お前が何を信じるかで、自分の人生が決まる」。
なるほどねえ。
ラストがまた個性的というか、現代的というか。
そうきたかって感じでした。
親も自分も歳をとり老いていく。老いた人は旅立っていく。
そんな世代なのでちょっとほろっと、しちゃったな。
変化とは成長
台湾の近代史(というかアミ族)をチーと、お母さん、お祖母ちゃんの女3世代の視点で描いた作品。
お腹いっぱい食べて寝るのが幸せだった祖母や母の世代とは違って、価値観や選択肢が沢山ある中で、「どれを選んだら幸せなのか?」判断に迷う。
選択肢は多いけど、自分に出来る事を擦り合わせて選ばないと理想に振り回されてしまう。
自由の象徴アメリカも、いざ体験すると「問題だらけな日常」。
チーの住むゴミの河でさえ、空想でキラキラした理想に改変される。
「昔は良かった」は結局、思い出補正だな、と。今も昔も、人が生きる事は試行錯誤の連続なんだ。
歴史を学ぶとは、人々の試行錯誤の過程を知る事ではないか。
現実を知る事で、価値観が揺れて葛藤するかも知れない。
でも、価値観を変える事は、しがみついていた既成の理想から自分を開放する行為だと思う。
人と時代は、いつも変わっていくのだから。
それと
アメリカ人の旦那との件は、一緒にカウンセリング受けて話し合った方が良いかも。
チーの家族と仲良さそうだし、理解がある人だよね。
【”大人になると色んなモノが分からなくなる・・””けれども、何を信じるかで人生は変わる”台湾の小さな街で育った女の子がイロイロ迷いながらも成長し、ある生き方を決断する姿を近代台湾史を絡めて描く。】
ーチーは1975年4月5日生まれ。4月5日は蒋介石が亡くなった日である・・。活発な少女時代を幸福路”シンフールー”で過ごし、アメリカ兵を父に持つチャン・ベティやガキ大将、シェン・エンと知り合う。-
・物語は、現代、アメリカで暮らすチーが祖母の死を弔うために、久しぶりに幸福路に帰ってきたところから始まる。記憶とは随分違う街の姿に戸惑うチー。且つて、隣の席に座っていた腕時計をはめた少年は選挙運動をしている・・。
・台湾の民主化運動が盛んな頃、彼女は育つ。
従兄は、”禁書”を読んでいたために、色覚異常のきっかけになる怪我を官憲から受けたことや、学校では台湾語は禁止され、北京語を使うことを強いられる場面が描かれるが、少女のチーにとっては余り気になる事ではなかった・・。
ーこの辺りの当時の台湾を取り巻く中国との微妙な関係のさりげなく描かれる。ー
■印象的な事
・台湾近代史を絡めながら、物語はチーの過去と現代を行き来しながら進む事。
・今作の一番の魅力である、チーのアマー(おばあちゃん)はチーが小さい頃から、チーの意思を尊重し、彼女の生き方を応援する。
劇中語られる、アマーがアミ族であることが今作で重要な要素であることが、良く分かる。アミ族は母系社会なので、アマーの意見は当然尊重されるのである。
チーもその血を1/4継いでいるのである・・。
・チーのアマーは死後も悩める大人であるチーの意見を尊重し、貴重なアドバイスを贈る。”地に足の着いた生活を・・”
・アメリカで生活をしていたチーは(この辺りも、台湾の民主化の影響であろう)アメリカ人男性アンソニーと結婚するが、子供を持つかどうかで意見が合わず、離婚前提の関係になっている・・。
ーアンソニーの描き方も自然であり、二人は不和と言う訳ではなく価値観の相違のため、離婚を考えることになる・・、という設定も違和感がない。哀しい事であるが・・。-
・チーは幸福路で且つての友人、チャン・ベティやガキ大将だったシェン・エンと久しぶりに再会するシーンも良い。
チャン・ベティは幼い娘、息子を育てており”子供がいるだけで幸せ”と話すし、シェン・エンも”学はないけど、家を買ったよ・・”と、皆何だか幸せそうだ・・。
けれど、ベティは台中に戻り、シェン・エンは921地震により・・。
ー出会いと、別れ。これも又、人生であろう。-
・チーが帰ってきた事で、張りの無い生活をしていたチーの両親の暮らしが徐々に、キチンとした生活になっていく部分。そして、チーの両親が如何に彼女を大切に育ててきたか、そして彼女が久しぶりに台湾に帰ってきた事を喜ぶ姿。
<アミ族の血を引くチーが、大人になるにつれてイロイロと悩みを抱える中、チーのアマー(おばあちゃん)は死後も優しくその姿を見守り、チーの両親も彼女を暖かく迎える。
そして、チーの自分の生き方を決めた決断とは・・。
アニメ産業が殆どなかった台湾から生まれた、素敵な一人の女性の半生を描いたアニメーション映画。とても、良い。>
人生賛歌
異国の現代女性の半生記というとペルセポリスが想起される。80年代から00年代にかける過去と現代を編み込んで物語る手法も似ているが、普遍的な成長過程と共通する時代感は観ている自身の人生も重なり、国境を越えた連帯感に行き着くのはこれも同じである。似ているからといって気にはならない。その国の現代史と文化・思想が一遍に入ってくる。どこの国のマルジもチーもこうやって描けばよい。世界は幾ばくか平和になる。
2人の友人の生き方、特にベティとその母親に引き寄せられる。祖母の生き様、父と母の生き方と家族の人生感にも光があたる。着地は意外であったが、それも自分で決めたことなら否定はしない。そんな着地にあっても、その後の幸福は保障しない。人生山あり谷あり。美しい歌と共に幕がひかれる。
板橋に帰りたくなった
チーにとっての幸福路は、私にとっての板橋です。昭和50年代の板橋の小さな道は迷路みたいで、アパートや小さな工場や商店や銭湯が密集してました。確かにあの時代よりも現代の方が女性は選択肢が増えたと思いますが、しばしば道に迷ってしまう事もあるんですよね。
私は台湾に2回訪れた事があるのですが、歴史については詳しく知りませんでした。『サニー永遠の仲間たち』『国際市場で逢いましょう』の様に、その国の歴史的な出来事とチーの生活がリンクしていて、台湾の知らなかった歴史を知る事ができました。韓国の作品にも民主化運動の話が良く出てきますが、民主化運動により台湾政府も国民を迫害していたのですね。今の香港と重なりました。
勉強も仕事も人間関係もずっと頑張って生きてきたチーは、政変や災害の中でも一生懸命に生きぬいた人達の象徴です。作品から悩んで迷って落ち込んだ時でも、ひとりひとりの人生を肯定し応援してくれている様に感じました。
観ている人が、ふと思い出すあの場所あの風景。私も板橋の事を思い出して、心の中であの時代の板橋に帰りました。
幸福はいつも、ここに
見る前の印象は、話はまるで違うが手書きのタッチから台湾版『この世界の片隅に』。
実際見てみると、監督の実体験を基にした子供時代のエピソードがノスタルジーを醸し出し、台湾版『ちびまる子ちゃん』。
でも、それらだけでは無かった。
台湾現代史は興味深く、ヒロインの人生が心の琴線触れ、涙腺刺激される事必至の台湾製秀作アニメーション!
1970年代の台湾。
両親と共に、“幸福路”に引っ越して来た女の子、チー。
この“幸福路”は台北に実際にある町だとか。
何処にでもあるような平凡な町。子供にはちと退屈。
そんな町で、チーは子供時代を過ごす。
肝っ玉のお母さん。
怠け者のお父さん。
平凡だが、優しい両親。
そして、時々訪ねて来るおばあちゃん。
大好きなおばあちゃん。困った時、いつも助けてくれるおばあちゃん。いつも味方になってくれるおばあちゃん。
巫女のような力を持った家族の中でも不思議な存在。
子供は想像力豊か。
チーも想像力豊か。
嬉しい事があると、空想が拡がる。
こちらも大好きな従兄のお兄さんが王子様となって登場したり、アメリカの美味しいチョコを食べた時も、アメリカという国を空想した時も。
嬉しい時だけじゃなく、怖い時も空想が拡がる。
生徒を叱る先生が怪物になったり、大好きなおばあちゃんがニワトリを捌いた時は…。
子供時代の色んな体験。
学校で出来た友達。
アメリカ人の父親と台湾人の母親のハーフ。金髪碧眼の女の子、ベティ。
勉強が苦手な腕白男子。
大好きなアニメ。(ちなみに、『キャンディ・キャンディ』や『ガッチャマン』など我が日本のアニメ!)
下らない台湾人コメディアン。
これら子供時代に絶対ある。万国共通。
腕白男子は父親に勉強より仕事と学校を辞めさせられ、ベティも両親と暮らす為転校。
この退屈な町に残ったのは、自分だけ…。
やがて月日は流れ、チーも成長していき…。
腕白男子と同じく、チーも勉強が苦手。母親が嘆くほど、成績はかなり悪い…。
母親がバイトを増やし、塾に通い、成績は上昇。何と、高~大はエリートコース!
でも、やりたい事が分からない。
そんな時影響を与えたのが、当時の台湾の社会背景。
アジアの近国なのに、台湾の歴史はさっぱり。
戒厳令が敷かれ、母国語が喋れず、北京語しか喋れない。
そんな歴史があったんだ…。
戦時中の日本で言うところの“アカ”。従兄のお兄さんが警察に捕まり、毒入りお茶を飲まされ、色が識別出来ない眼に。
古今東西。民主化運動が盛んになる。
チーは学生デモに参加。民主化や自由を求める運動に傾倒していく。
でも、それだけじゃ食べていけない。子供時代は通り過ぎ、自分もいい大人。
あっさり新聞社に合格。
社会の事をもっとよく知りたい…。
貯金が増えていくのは嬉しいが、働くだけの単調な毎日。
大人って、ただお金を稼ぐだけ…。
ある日再会したのは、子供時代友達だったあの腕白男子。バイクやオートバイの修理店を出し、高層マンションに住んでるほど成功している。
勉強は出来なかったのに、それに比べ私は…。
そんな時、大事件と悲劇が。
1999年、台湾全域を襲った大地震“921地震”。
高層マンションが倒壊し、その死者の中に…。
2001年、アメリカで起きたあのテロ事件。
突然、新聞社がデモの標的に。学生時代、デモに参加していた自分が、今度はデモ“される”側に。
自分の周りで、世界は激しく、目まぐるしく動いていく。
子供時代から退屈だったこの町。嫌いだった町。“幸福”とは程遠いこの町。
この町から出たい。
そしてチーは、子供時代から憧れだったアメリカへ行く事を決意する。
アメリカで出会った優しい男性。
恋に落ち、国際結婚。
つまり、ずっとアメリカで暮らすという事で、そう易々と帰っては来れない。
両親との別れは寂しい。
そして、アメリカに居住を移し…。
キャリアウーマンとして働き、夫は優しいアメリカ人男性。
アメリカ暮らし。
誰もが憧れ、順風満帆の人生!…のように思える。
…一見は。
話の展開は、現在と子供時代が交錯。
引っ越しで、夢溢れていた子供時代。
久し振りの帰郷で、浮かぬ顔の現在。
と言うのも、帰郷の理由が大好きだったおばあちゃんが死去。
それに加え、順風満帆!…かと思いきや、人生に行き詰まり。夫との関係、そしてまだ夫に打ち明けてない事が…。
おばあちゃんの死去と今の自分の人生…それらの事で、現在のチーは序盤から冴えず、意気消沈。
様変わりした町並み。
老いた両親。
長らく帰郷していなかったので、浦島太郎な変化に戸惑う。
そんな中で、思い出すこの町で過ごした子供時代…。
今思えば、今の私より幸福だったかもしれない。
今思えば、あの頃はどんな事も楽しかった。
どんな些細な事も。平凡な事も。ありふれていた事も。
それを教えるかのように、子供時代の自分が、今の自分の前に現れては通り過ぎていく。
もう一人現れるのは、おばあちゃん。
死んでも尚、助言してくれる。
でもそれは、子供時代の優しいものではなく、もっと深い意味を込めたような激励。
お前はもう強く、逞しく生きてるじゃないか。
今の幸福は自分で掴んだんじゃないか。
自分の人生に負ける事なんてない。
帰郷して、嬉しい再会が。
子供時代一番の友達だったベティ。
転校して以来一度も合っていなかったが、それには複雑な家庭の事情が。
子供時代は引っ込み思案だったベティ。
でも、今は…。
元気な2人の子供を育てる母親。母親と共に小さな店も開いている。
聞けば、彼女のこれまでは波乱。
生きる為に、ストリップで働き、妻子ある男性と不倫関係を持ち、自殺を考えた事も…。
それらを乗り越え、今やっと掴んだ幸福。
平凡だけど、穏やかで温かな幸福。
その姿はチーにある影響を与える。
両親もチーの帰郷を温かく迎え入れてくれた。
老いたとは言え、あの頃と変わらない両親。
父はまだ働き、母は家庭を切り盛り。
自分もこんな家庭を持ち、子供を育てられるのか…?
そう、チーは妊娠していた。
これが夫との関係不和の理由。
子供が欲しい自分と、どうやら子供が要らないような夫。
その狭間で苦悩していたが、この町に戻って、“母親”や“家族”に触れて、ある決断をする…。
舞台は台湾。台湾の現代史も絡む。だからと言って、敬遠する理由は何処にも無い。
“あの頃の自分”はどの国も同じ。
生き方に悩む。
家族や普遍的な営み。
幸福の在り方は、どの国も誰だって共感。
本当に最初から最後まで、この作品の隅々まで、心満たされた。
公開は昨年。ミニシアターではなく、全国公開で昨年中に観ていたら、間違いなく昨年のアニメ映画ダントツのBEST1! …いや、年間BESTにも入っていただろう。
幸福って…?
人それぞれ。
金持ちになる事、成功を収める事。
だが、誰もがそうはなれない。
幸福って、掴めるようで掴めない。
でも、誰もが掴める幸福もある。
寅さんの台詞じゃないが、誰だって生きてると、幸福を感じる事がある。
人によっては他愛ないものかもしれない。
が、自分にとっては、優しく、温かく、心を身を包み込んで満たしてくれるような、幸福。
人生、辛い事、悲しい事も沢山ある。
それと同じくらい…いや、帳消しにしてくれるくらいの、溢れる幸福。
自分の身の回りや心の中…。
幸福はいつも、ここに。
アニメで表現することでしか得られない感覚
おもいでぽろぽろ。絵がじゃっかんゆるい絵で、主人公も美人ではないが、小さな人の歴史にぐっとくる。話の筋的には実写向きのように一見思えるが、これをアニメで表現することでしか得られない感覚がある。さりげなく傑作だと思う。
ベティちゃんが良かったなぁ。
アメリカに帰りたがっていたベティとアメリカから帰ってきたチーが対照的だったことも印象に残ります。全体的には台湾の政治状況や大地震などの社会的背景でノスタルジックに描いたアニメなのですが、学校では台湾語が禁止で北京語で喋るように言われていたことで、そんな史実を知らなかったため、頭がちんぷんかんぷん。親日国なのにこれほどまでに無関心だった自分を恥じてしまいます。
ある本を読むと警察に連れていかれるとか、視界がすべて白黒になってしまった従弟のウェンなど、彼の生き様もちょっと知りたくなってきました。平凡な生活だけじゃない。世の中は常に変化していくものだとも感じましたよ。もう一人、小学校入りたての頃にはいじめっ子だった少年も大地震で・・・。
冒頭の映像変化の世界が今敏風だったので、これは凄い!と感じたものの、あっさり夢落ちとなり、その後も回想シーンなどで突拍子もない映像があっただけ。もうちょっと弾けた演出があればな~などとも感じました。
とてもよかった
台湾からアメリカに留学する人はたくさんいるのか分からないが、特に著名でもない一般女性の人生の物語で、国際結婚の破局で心が揺れる。ご両親がご健在でよかった。もうちょっとドラマとして仕掛けがあってもよさそうな感じはしたのだが、そうしたら全然別のものになってしまうかもしれない。
僕はちょうど90年代の終わりごろの台湾は毎年訪れていたので、自由化した直後の雰囲気は見覚えがある。すっごく楽しかった。久しぶりに行ってみたい。
ある台湾人の半生
台湾現代史を背景にしつつ主人公の幼少期からを回想していく。
「なりたかったなりたい自分と今の自分の落差に悩む」とか「家族や故郷はダメで外の世界こそが素晴らしく思える時期がある」とか古今東西を問わず普遍的なことなのだと思った。しあわせの形は様々だ。
これは傑作だ(と共にとても良い映画だ)。早くも今年のNO.1?(勿論、私にとっての)
①『ガッチャマン』が出てきたのにはビックリした。台湾でも放送してたんだ。②よく人は「“幸せ”になりたい」という。結婚の時には「必ず“幸せ”にします」という(まあ、これを言わないと親が得心しない『社交辞令』でしかありませんけど)。では“幸せ”とは何なのだろう。抽象的な意味での“幸せ”ではなく、具体的にどういう状態が自分にとって“幸せ”な状態なのだろう、と最近よく考える。③歳を取って振り返ると子供時代は“幸せ”だったように思う。でも子供時代は未来(大きくなれば)に“幸せ”が待っているように思っていたようにも思う。④従い、チーのように、今が自分にとって“幸せ”なのかどうかを、いま自分は子供の時に夢見ていたような大人になれているかどうか、で計ろうとするのは大変普遍的な事だと思う。④勿論、子供時代に夢見たような大人になっている人など殆どいないだろう。では今の自分は“幸福”なのだろうか“不幸”なのだろうか。その心の折り合いの付け方を、この映画はアニメ映画のイマジネーションで持ってとても普通にそして豊かに描いていると思う。観ていて最後まで多幸感が途切れなかった映画は久しぶりである。⑤惜しむらくは勉強不足のため台湾の歴史的背景、政治的背景がよくわからなかったこと。もっと勉強して再度鑑賞したら又違う面白さを味わえると思う。⑥私の“幸せ”、それは勿論映画を観ること。そして“幸福”を感じる一瞬、それは映画が始まる前にほんの一瞬映画館が真っ暗になる一瞬🎵
チーとの年齢も近いし、台湾での暮らしもや、友人の戒厳令時代の話や、...
チーとの年齢も近いし、台湾での暮らしもや、友人の戒厳令時代の話や、色んな事が思い出された。
そういや阿扁が色々あったとき、娘さんも巻き込まれてたよねとか。
台湾の方が見るともっと思い入れの強い作品になるのだと思います。
桂綸鎂大好きなのですが、この作品においては台湾語話せないのがちょっと残念な気がしました。
また見たいと思える作品です。
珍しくパンフレットも買いました🎵
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