マローボーン家の掟 : 映画評論・批評

マローボーン家の掟

劇場公開日 2019年4月12日
2019年4月9日更新 2019年4月12日より新宿バルト9ほかにてロードショー

幽霊屋敷ホラーの意匠を凝らし、観る者をある“境界”へと誘う残酷童話

天井にじっとりと広がる黒い染み、鏡の中にうごめく奇怪な人影、出入り口が封鎖された屋根裏部屋に潜む何者かの気配……。人里離れた草原にたたずむ古めかしい一軒家を舞台にした本作には、ゴーストハウス・ストーリー、すなわち幽霊屋敷もののエッセンスがぎっしり詰まっている。まぎれもない恐怖映画なのだが、単なるホラーではない。では何なのか。以下、決定的なネタバレを避けながら、本作の特異な魅力について書き記したい。

愛する母親が病に倒れてこの世を去り、屋敷に取り残された4人兄妹は、責任感の強い長男ジャックを中心に結束を確かめ合う。しかし彼らは自分たちを守るために、「鏡を覗いてはならない」「屋根裏部屋に近づいてはならない」などのいくつもの奇妙な“掟”に従って生きている。ある秘密が隠された映像世界と向き合う私たち観客は、兄妹がいったい何に脅えているのかわからない。スーパーナチュラルな心霊ホラーなのか。より現実的なレベルのスリラーなのか。それとも観る者に謎解きを促すミステリーなのか。そもそもこれは多感な十代の兄妹の絆を描く家族ドラマであり、自由を夢見る彼らの理想と現実が錯綜する青春映画でもある。

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何ともよくばりな作品だが、実はこれ、見た目はハリウッド映画のようで、主要スタッフはスペイン人で占められている。「ジュラシック・ワールド 炎の王国」も記憶に新しいJ・A・バヨナ監督が製作総指揮を務め、バヨナの長編第1作「永遠のこどもたち」の脚本を手がけたセルヒオ・G・サンチェスが監督デビュー。元孤児院の大きな屋敷を舞台にした「永遠のこどもたち」は、ホラー、ミステリー、ファンタジーが入り混じっているうえに、極めてドラマ性の高い傑作だった。時代設定もキャラクターもまったく違うが、このバヨナ&サンチェスの新たなタッグ作は「永遠のこどもたち」のティーンエイジャー版と言ってもいいほど相通じるスピリットを秘めた作品に仕上がっている。

やがて“掟”が次々と破られ、緊迫感が頂点に達する終盤、トリッキーなひねりによってすべての真実が明かされる。それまでの謎や伏線を一気に回収するそのどんでん返しに加え、もうひとつの大きなサプライズは、最後に残される余韻が「永遠のこどもたち」のそれとほぼ同質であることだ。前述したあらゆるジャンルの要素が“恐ろしく”も“切ない”情感に結実するこの映画は、その恐怖とメランコリーの境界を揺らめく残酷童話なのである。

高橋諭治

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