劇場公開日 2020年4月3日

  • 予告編を見る

在りし日の歌 : 映画評論・批評

2020年3月17日更新

2020年4月3日より角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー

激動の中国近現代を生きる人々の喜びと悲しみ。中国映画史において重要な一本

中国では誰もが知っている曲のタイトル「友誼地久天長」。これは中国語で「友情は天地の如く永久に変わらない」という意味。その中の「地久天長」は「在りし日の歌」の中国語原題である。また、この曲は映画の中でその時代を象徴するシンボルでもある。商業映画とアート映画の間で揺れているワン・シャオシュアイ監督は本作で原点回帰を果たし、あの時代、あの場所、そしてあの人々の喜びと悲しみを甦えらせた。

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」のビー・ガン監督をはじめ、中国映画界はすでに新しい時代に進み始めた。一方、ジャ・ジャンクーロウ・イエ、そしてワン・シャオシュアイ監督といった中国第六世代の監督はすでに最前線から退き、「過去」の人になりつつあると言われている。ただ、中国第六世代の名匠たちは、まるで約束をしたように、皆この改革開放の30年間の中国を背景に、続々と集大成の作品を発表した。しかも軌跡もほぼ同じで、ジャ・ジャンクーは「一瞬の夢」から「山河ノスタルジア」、「帰れない二人」、ロウ・イエも「ふたりの人魚」から「シャドウプレイ」、そしてワン・シャオシュアイは「冬春的日子」から「在りし日の歌」。人と社会の関係性から、人と社会、そして時間との関係性まで、物語が進化している。

画像1

改革開放の30年間は、間違いなく歴史の中でも激動の時代として人々の記憶に残されるだろう。ベルリン国際映画祭をはじめ、多くの観客が一人っ子政策についての描写に注目した。確かに、今回の「在りし日の歌」のように、“時間”という重要な要素を使い、真正面から一人っ子政策を描くのは中国映画史の中でもめったにないことであり、中国映画史においても非常に重要な一本になると思う。ただ、やはり「在りし日の歌」は“時間”の映画なので、一人っ子政策だけでなく、この30年間の中国の変化をごく普通の夫婦を通して多彩に描いている。体制改革、大量のリストラ時期、南への移住、不動産ブーム、海外移住ブーム。まさに中国近現代史の絵巻と言えるだろう。そして、何よりそこに生きている人々の絆は叙情詩のように人々に感動を与え、それは「友誼地久天長」の証でもある。

徐昊辰

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「在りし日の歌」の作品トップへ