黒い司法 0%からの奇跡のレビュー・感想・評価
全178件中、101~120件目を表示
壁は高かった。
「黒人なら犯罪者でもおかしくない」という "常識" がまかり通っていた時代の米国南部アラバマ州で、冤罪で死刑囚とされている黒人を守ろうとして努力する若き黒人弁護士の話。実話の映画化。
「グリーンブック」「グローリー」「ドリーム」と、米国が黒人差別から脱却する過程を描く映画は多い(戦争映画とどっちが多いんだろう?)。自らの恥の歴史をこうして堂々と描ける米国の懐の深さを感じると共に、差別からの脱却をほぼ成し遂げたという心地よい自負がなせるわざでもあるのかな、とも思う。
アラバマ州は、1960年代にキング牧師が黒人の権利を求めて闘っていた舞台だそうだが、本作の1980年代でも依然として黒人差別は激しく、観ている俺は、何度も絶望しかける。再審が実現したかどうかは、劇場でご覧くださいだけれど、心は何度も折れるよ。
それだからこそ、正義の敵は絶望だ、という主人公の台詞は、わかる気がする。
MERCYの意味は、慈悲なんですね。"Just Mercy=公正(であることこそ)慈悲” と、ある解説にあった。この意味は深いですね〜。
主演のマイケルさんは、正義が似合う。
原作者の、TEDトークを視聴するとよいとのことなので、YOUTUBEで見たら、追記します。
2023/1/1 追記
TEDトークを観た(検索は容易だった。「ブライアン・スティーブンソン TEDトーク」だけでOKだった)
再び本作を観た際の課題提起「有色人種は無罪でも有罪になりやすい」を思い出し、かつ「罪は財産額で判断されている」も新たに課題提起される。
彼の言う「貧困の反対側にいるのは富裕ではない。貧困の反対側、最も遠い所にいるのは正義だ」というセリフと、「人類を、社会の品格を評価するのは、お金持ちや権力者の扱われ方ではなく、貧乏人や収監されている者の扱われ方で決まるのだ」というセリフを忘れないようにしていこう。
おまけ 2025/1/21追記
最初は区別しているだけなのに、差別につながっていく…区別するということは、違いを意識することなので、区別するから差別が生まれるのか、それとも区別と差別の間になにか差別を生む罠があるのか… どちらにせよ、区別する段階で本当に必要な区別なのかどうか考えるってことが、俺たちにできることなのかもしれませんね。
みなで話して、揃えていくべきことと、さまざまであることをみなで容認すべきことの、区分が意外とできていないのかもしれない。
アメリカ司法暗部をえぐり出す作品
以前から言われていた白人優位なアメリカの司法。
自由.平等の国アメリカだけど実は..…といった作品が近年多いです。いまだに州によっては黒人不利の裁判を展開してるのがわかります。
感銘をうける人も多いと思いますが所詮アメリカなんて今のトランプ政権みればわかるけど自分ファースト、白人ファーストなんですよね。だから古くからの白人ファーストを継承している州、市はいくらでも残っているはずです。その事実をクローズアップするのは必要なことですし実話だけになおさらいい意味での社会変革に繋がると思います。日本は幸い第二次世界大戦終戦とともに司法もリセットされ、ごく稀に理不尽な判決や冤罪もありますがアメリカと比べればまともな法治国家に思えます。
しかしブリーラーソン、地味な役だったなぁ〜
実話を元にした優秀作
腐った司法
白人の18歳の女性を殺した罪で死刑判決を受けた無実のマクミリアンを救う弁護士の話。
.
ネトフリの『13th 憲法修正第13条』っていうドキュメンタリー見て、それの後だったからより理解ができたし現実味があった。この映画の背景を知りたいならオススメ。
.
このドキュメンタリーでもやってたけど、この状況を打開するにはやっぱりSNSとかのメディアを使って裁判所や警察がどんな不正な事をやっているかを一般の人に知ってもらう必要がある。
.
この映画の時代でもテレビを使って世論を動かすことで反撃していったし、今の時代SNSがあるからすぐに情報は全世界に広がるし。SNSって正しく使えれば大きな力になる。
.
政府がか弱い白人女性を襲う野蛮な黒人っていうイメージを付けさせようとするなら、こっちも無力な黒人を権力で抑え込む白人警官っていうイメージ戦略で戦うのは正しいと思う。
.
そんなに注目はしてなかった作品だったけど、めちゃくちゃ良かった。死刑執行のシーンをちゃんと描いてたりもして、良かった。
ただまっすぐに
ずっと観たかったのですが
コロナをかき分けて空いてそうなとこ狙って鑑賞
感想は
非常に良かったです
日本人には理解しがたい米の差別社会
そして真っ向から立ち向かった人がいた実話を
つぶさに感じ取ることが出来ました
黒人差別のすさまじいアラバマでデッチあげ冤罪から
死刑判決を受け収監されているマクミリアン(ジェイミー・フォックス)
を救うためにハーバード・ロースクール出のインテリジェント弁護士の
ブライアン(マイケル・B・ジョーダン)が奔走するストーリー
黒人と言うだけでまともな審理もされず
デッチあげで死刑囚として執行まで行われている現実に
ぶらいあんはあくまで真っ向から立ち向かい
理不尽な状況から巻き返していきます
その中でどうしても救えなかった(冤罪でない)服役囚の
死刑執行に立ち会いますが
細かな描写の電気イスによる執行シーンは初めて見ました
いくら法により執行される刑としても
人が人の命を奪う事に関して考えさせられます
個人的には極刑の存在意義よりも
その量刑を課されるだけの妥当な審理が行われたか
と言う点が重要なのだと思いますが
それが人種や地域的な的な要因
または司法取引といった通例で充分行われていない
現実を感じました
これに立ち向かった人が実話として存在すると
言うのは驚くべき事だと思います
日本だと過払い請求や左翼運動などで目立ち
イマイチなにをやる人かわかりにくい弁護士という
仕事ですが元々こうした役割を担っているんですよね
クリードも熱演だったマイケル・B・ジョーダン
もはや名演枚挙に暇がないジェイミー・フォックスの
演技もテーマに負けじの素晴らしいものでした
これはおすすめしたいと思います
正義の無い世界に挑む正義
何度も見たことあるような
レヴューで軒並み評価の高いこの作品を低評価
すると怒られるだろうな。
確かに実話として見て考えさせられる事はある。
しかし、大変失礼ながらこの手のタイプや展開は既視感のようにいくつも散見している。
迫害、差別、名誉、地位、立場、共感、などなど。
そして最初は悪人だが心変わりしていく人達。
エンタメ映画ではなく史実を追求する映画としては当然評価されるべきだろう。
それ故、死刑執行のシーンはなんとも衝撃的。
エンタメを追求しているわけではないので、表現にかなりこだわった感があるわな。
クリードの俳優も今ひとつ苦悩や葛藤の表現に乏しかったかなぁと。
まー普通の作品。
エンタメ作品を期待していたからこういう評価になってしまったというわけで許して欲しい。
必ず2度は泣かされる!!
後半は泣きっぱなし!!!
なんだよこれグリーンマイルみたいじゃないか!!!
食わず嫌いはよくない。
タイトルがいまいち、裁判劇なんてもう見飽きたなんて思ってたら、
この作品にカウンターパンチを喰らう。
1980年代に実際にアメリカであった事実をもとに作られた作品で、
まず驚いたのは、たった40年前なのにまだ黒人差別が色濃く残っている地域があるということ。
差別なんてものじゃない、劇中のセリフにもあるけれど、
「黒人というだけで有罪」がまかり通っていること。
どうして人は、生まれながらになにかに優れている人たちに、
こうして牙を剝くのだろう?
平和を願う気持ちも、
互いに助け合って生きようという気持ちも同じなのに、
ほんのちょっと違うところに魔が刺してしまう…。
今作は、これでもかというほどに
主人公が追い詰められ、それでも最後まで諦めなかったことで、
エンターテイメントが成立している。
語りたいことも、腹立たしいこともたくさんある。
でも、私は検察側も判事側も憎むべき対象ではないと思っている。
時代が、戦争が、彼らから視界を奪ったのだ。
セリフのひとつひとつが重く、
そしてその時代を反映している。
きっと今も、処刑される死刑囚の中で、無実のまま眠りについた人もいるのだろう。
いつになったら、いつになったら…。
そればかりが頭をよぎる。
この作品は、アカデミー賞を獲るべきだと思った。
そして人種だけでなく、こうして「ほんの少し違う」人たちへの偏見をなくすために、
団結しなくてはならない。
原題 Just Mercy
人種差別大嫌い。
人種差別大嫌い。
でも人種差別があるからには、こういった人種差別による冤罪事件もあったんだろなというのは想像できた。
でも、それにしたって、あまりにひどすぎて、言葉では語れない…。
キャスト陣は昂る感情を抑えに抑えてるのがスクリーン上から伝わってきて、スクリーン上の人物とおんなじ気持ちになっているぐらいに胸が締め付けられた。
物語自体は割と淡々と語られるけど、ジェイミー・フォックスとマイケル・B・ジョーダンの目の演技がやばすぎる故にフューチャーされまくってたのは流石すぎた。
何よりラストの明かされる真実には、思わず声が洩れる程に涙が出た。ある意味、映像なんかよりも文字で出る残酷さに泣き叫びたかった。
あとあの、ブラックパンサーの時も思ってたけども、マイケル・B・ジョーダン美しすぎて眼福…っ。
切なかった
・あいつが犯人にとって都合がいいから犯人っていうあり得ない事が司法の世界に適用された悲劇と絶望が切なかった。これも冤罪というのだろうかと思えるほどお粗末な行為が怖かった。なぜこうなってしまうんだろう。
・一番印象深かったのがジョニー・Dの監獄の隣に入っていたベトナム戦争のPTSDから爆弾を作ってしまい子供を殺してしまった事を含めて気に病んだハーブという名の男が執行差し止めを棄却されて電気椅子に連れていかれるシーン。ハーブはずっと何でこんな事をしてしまったんだと終始泣きそうな顔と声で結局、死刑になった。具体的にどういう事件を起こしたのかがわからなかったけど、遺族から見れば死刑じゃなくなるのは理解できないだろうとは思う。とはいえ、国のために戦った末に国に捨てられて天涯孤独の末に電気椅子は悲しすぎる。そんな中で監獄でようやくジョニー・Dなどの人間関係ができるというのが更に泣けてきた。弁護士のブライアンが会いに行った際に、ベトナムの方がここよりは全然良いみたいなことを言った後、希望した曲を流れている中、監獄に入ってる他の囚人が音を立ててハーブに最期のエールのようなものを送っていたのが、とても切なかった。ハーブの命をあそこにいる人たちは何も思ってないんだなと思ったら泣けてきた。誰もハーブの苦悩を共感しようともしないのが苦しかった。しかし、刑の後、最初、怠惰そうで冷たかった白人の若い刑務官も気持ちが変わったのが、とても良かった。偽証をさせられた男も、ブライアンも電気椅子の光景を観て考えが変わったというのが少しでも共感できると思える名シーンだった。
・偽証させた保安官がラスト、結構長い間現役で活動していたらしいのが怖かった。
・デトロイト、ドリーム、ジャンゴとか黒人差別がテーマの映画ってアメリカではどういった受け取られ方をしているんだろうと疑問に思った。
もうひとつの『アラバマ物語』
80年代の米国。
ハーバード大学を出た若き黒人弁護士ブライアン・スティーブンソン(マイケル・B・ジョーダン)。
インターン時に出逢った黒人囚人がきっかけで、弱き者の助けをすることを決意する。
選んだ仕事は、死刑囚たちの人権問題。
米国、特に南部では、証拠もなく、司法権力により冤罪で死刑宣告を受けた囚人たちがいる。
米国北部から南部アラバマ州に冤罪死刑囚たちのNPOを立ち上げたブライアンは、なかでも18歳の白人女性を殺した罪で収監されている黒人男性ウォルター・マクミリアン(ジェイミー・フォックス)の事件に関心を抱き、彼の再審請求に挑もうとする。
その土地は、『アラバマ物語』の舞台となった土地。
黒人への偏見は和らいだようにも思えるが・・・
というところからはじまる物語。
この映画、実話が基になっているのだけれど、この事件については知らなかった。
ですので、「ふーん、人権無視の地で立ち向かう黒人弁護士の物語、さぞや、丁々発止の法廷ものなのだろう」と思っていました。
ですから、観進めていくうちに、「ありゃりゃ、法廷での丁々発止、意外と少ない・・・」と落胆しました。
ま、こういうことは、何十年も映画を観ているとあるわけですが・・・
さて、映画は実際の事件を基にしており、物語も起伏に富み(なにせ、どう考えても、再審請求が通るだろうと思われる事態になる中盤で、却下されるときにはビックリしました)、決着の「0%からの奇跡」も感動的です。
が、個人的には、いまひとつ映画に乗り切れないところがありました。
丁々発止の法廷ものでない・・・
というのはその通りなのですが、法廷ものの醍醐味とは、いわゆる証拠主義。
事実の有効性を問うものです。
つまり論理のぶつかり合い。
この映画では、この事件の起きた地が、そんな論理から価値観が程遠いところにあるからかも知れませんが、論理など一顧だにされず一笑に付される有様です。
ですので、論理のぶつかり合いはありません。
いくらブライアン側が証拠・証言を提出しても、「そりゃ、嘘だろ。デマカセだぁ」なわけです。
ここのところが遣る瀬無い。
けれど、映画としては、そこんところの無茶ぶりがもう少し描いていてもよかったかもしれません。
無茶感は、ブライアンが携わる裁判の近くだけ起こってい、前半にあったような無名の住民からのいやがらせは後半描かれていません。
ここが少々不満。
けれど、もっと不満(というか違和感というか)は、音楽の選択で、全編にゴスペル調の音楽が流れます。
これは原題の「JUST MERCY」とも関連するのでしょうが、この逆転劇(というのでしょうが)は、ある種のMERCY(神の慈悲)だという印象が残ります。
つまり、そもそもの歪んだ価値観を正した結果を、神の慈悲としてとらまえてしまうことには、どうにも違和感を感じざるを得ないわけです。
もうひとつ踏み込むと、この逆転劇をもたらすのは、結果として(事実だからかもしれないが)、白人の改心による。
そして、その改心を促すあたりの描写が弱いと感じました。
で、わたしがいちばん感心し、驚いたのは、エンドクレジットが流れる直前。
米国での冤罪の多さ、映画のモデルになった人々の現在(特に、冤罪を生み出し続けている白人保安官が何期も連続で当選している)でした。
つまり、エンドクレジットが流れる前の映画の部分が、実際の数分足らずの画に負けている、と感じたわけです。
実録ものの事実は優れていますが、映画の力としては、少し物足りなく感じました。
なお、『アラバマ物語』は、この地での「われわれは、黒人を理解している」という、ひとつしかない免罪符ですね。
「ひとつしかない」とは「全然ない」よりマシではないということも感じました。
生まれた時代や国によっては普通の出来事だった
事実に基づいた作品なんですが、民主主義と自由の国アメリカで今も根強く残る人種差別や偏見を描いています。この手の作品を見ているとホントに今の日本は平和で自由で良いなあと思います。全ての自由や平和は数多くの人の努力と犠牲によって成り立っているという事を痛感します。
2015年、米アラバマ州バーミングハムのファストフード・レストランのマネジャー2人が射殺された1985年の強盗殺人事件で死刑判決を受けて収監されていた男性が無罪となり、この男性は3日、約30年ぶりに釈放された。釈放されたのはアンソニー・レイ・ヒントン氏(58)裁判所がヒントン氏の全ての罪状について無罪とした翌日、支援者たちが歓声を上げる中、裁判所から出てきたヒントン氏は涙を流し、集まった友人や親戚たちと抱き合った。ヒントン氏の主任弁護人、ブライアン・スティーブンソン氏は、不正な有罪判決が出された理由の一部にはヒントン氏が黒人であることもあったと指摘する。「人種、貧困、不適切な法的支援、無実の罪を着せられた人に対する検察側の無関心な態度が相まって、教科書に載るような典型的な不法行為を作り上げた」と話した。米NPOの死刑情報センター(Death Penalty Information Center)によると米国で1973年以降に死刑判決を受けた後で無実になったのはヒントン氏が152人目、2015年では2人目だという。
デジャブの様な
数々の映画で観た風景。
グリーンブックもツアーの最後の地がアラバマだった。
黒人に対する、警察官のレイシストぶりはデジャブかと思うほど同じだ。
そして描かれている時代を比べて更に驚く。
グリーンブックは1962年、黒い司法は1988年こんなにも時が流れていても状況は変わらないのか!?
きっと今のこの瞬間もそうなんだろうと、わかり切っていても愕然とする。
そんな中、弁護士ブライアンの一瞬の隙も見せない誠実な態度が心強いし、誠実さが世界を変えてくれそうな兆しを感じる。
粘ればいつしか変わる、もどかしさを抱えている人に希望を与えてくれている様だ。
オーソドックスな作品だが、シンプルに前向きな気持ちにしてくれる良い作品だった。
人間の弱さを克服するものは ただ慈悲を
原題「JUST MERCY」
2020/03/10
監督 デスティン・ダニエル・クレットン
出演 マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソン
キーワード
1.黒人差別
2.死刑制度
3.冤罪
1.黒人差別
舞台は1980年代のアラバマ州。黒人差別が根強く残る。主人公のブライアンは弁護士という身分でありながら、刑務所を訪れた際に、白人看守からボディチェックという名目で裸にされたり、車で走っているだけで、警察に呼び止められ、銃を頭に突きつけられる。
明らかに不当な逮捕、判決なのに、被告人ウォルターは「黒人は生まれつき有罪なんだ」と諦めてしまっている。もはや反抗する気も起きないほど、差別は激しく、権力の上下関係が生まれてしまっている。
今でも、アメリカは「黒人男性の3分の1が刑務所に入ったことがある」という構造的問題を抱えている。
2.死刑制度
ウォルターの独房の隣に、ベトナム帰還兵の黒人男性が収監されている。彼は精神を病んでおり、爆弾で人の命を奪ってしまった。
ウォルターや仲間たちが彼に「あなたがいるべき場所はここ(刑務所)じゃない。病院だ」というシーンがある。
「刑務所は最後の福祉」と言うように、本来別の手段で保護されるべき人々が罪を犯し、刑務所で生活しているのは、現代の日本でもある。ベトナム帰還兵の男も適切な治療を受けていれば、罪を犯さずにすんだかもしれない。
ブライアンの奔走むなしく、男の死刑は執行されてしまうが、この過程がこれでもかと詳細に描かれる。頭も眉毛も剃られ、電気椅子に腕、脚、頭が拘束される。恐怖で呼吸は激しくなり、鼻水が出てくる。執行部屋には男が選んだ「最後の音楽」が鳴り響く。
囚人仲間たちは、独房でコップを格子に叩きつけながら「あんたは1人じゃない。俺たちがついてる」と叫ぶ。その音は男の耳にも届き、少し表情が柔らかくなる。その直後、電流がはしる。刑が執行されたのだ。
確かに男は犯罪を犯したが、人の命を奪ったことが罪なら、罪を犯した人物の命を奪うことは許されるのだろうか。殺人が野蛮で人間の本性に反するというなら、国家の合意のもとで行われる死刑
もまた野蛮で人間の本性にもとる行為ではないだろうか。
初めて刑の執行に立ち会う看守に先輩看守が言う。「まともに取り合うな。精神がやられちまうぞ」。
「犯罪者は殺してしまえ」という人たちは、死刑がどんなものか、どれくらいリアルに考えたことがあるのだろうか。「まともに取り合ったら、精神がやられちまう」のが本能的に分かっているから、目を背けているのかもしれない。
3.冤罪
ウォルターは明らかに潔白にも関わらず、犯人を早く逮捕したいという警察のメンツや黒人差別のために無実の罪に問われた。
どれほど、人類が進歩しても冤罪をなくすことはできない。罪を犯すのが人なら、罪を裁くのも人であり、そのどちらもエラーからは逃れられないからだ。
「現在も冤罪の可能性のある死刑囚の10人に1人しか釈放されていない」という本編最後の文言が重く響く。
死刑制度を考える時に冤罪は常に頭に入れておかなければいけない要素だろう。
総評
原題「JUST MERCY」は「ただ慈悲を」。どんなに貧しく、恵まれない人に対しても慈悲を向け、逆境の中でも正義を貫くことが真に人間らしいことだと教えてくれる映画。人間の弱さ、醜さは人間の強さ、美しさで克服するしかないのだ。
★3.5
黒と白とサックスブルー
舞台は1980年、アラバマ州
ハーバード大学卒のエリート黒人青年が立証不可能な冤罪に強い信念と精神で挑む実話。
傍聴席に座っている気分になりハラハラドキドキ、涙なしでは見れない。
正義とは何か、決して綺麗事ではうまくいかない。だけど「最終的には強い信念と情熱が勝つ」そう信じたい。
力強く、優しく、元気をもらえるそんな映画だ。
死刑囚一人一人に家族のように寄り添い、一緒に感情を共有していた弁護士ブライアン。
絶望の淵にいる死刑囚を救ったブライアンはアメリカのヒーローだ。
この映画のタイトルやエンドロールのカラーがシンプルな黒と白。ブライアンがよく着ているサックスブルーのシャツが似合っていた。
ブライアン(マイケルBジョーダン)の美しい瞳とスーツ姿に鍛えた身体にはため息が出る。
重く悲しいけど小さな光と希望が見える物語に、時折流れるゴスペルに癒され泣ける。ストーリーだけでなく映像、音楽、ファッションにも注目してほしい。
邦題が酷い
人権への気の遠くなるような道のりの一歩
全178件中、101~120件目を表示