劇場公開日 2020年2月28日

黒い司法 0%からの奇跡 : 特集

2020年2月17日更新

そこでは“黒人であること”が罪になる――この事実と戦い続ける男がいる
“無実の死刑囚”と“立証不可能な裁判に挑む弁護士”が起こす奇跡の実話
この英雄を知ることは── あなたの人生を、180度変える!

“黒人であること自体が、罪になる”。2月28日に公開を迎える映画「黒い司法 0%からの奇跡」は、そんな“いともたやすく差別が行われた信じがたい事実”を題材としている。

物語の主役は、有力な証拠もないのに死刑囚にされた黒人と、彼を救うため戦い続けた黒人弁護士。怒りすら覚えるような冤罪事件が背景にあるが、物語には重苦しい絶望を振り払う逆転劇が備わっており、見るや爽快な希望の灯が胸にともる。これは“0%”を覆した不撓不屈の男たちによる、奇跡の実話である。


【予告編】ただ、慈悲を―― 心揺さぶる奇跡の実話

1988年のアラバマ州 ある黒人男性が正当な理由なく“死刑囚”に
仕立て上げられる… 繰り返す、これは“現在へ続く実話”である

近年、“黒人の不当逮捕”を描く作品が多く製作されている。例えば映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」「ビールストリートの恋人たち」や、Netflixドラマ「ボクらを見る目」がそうだ。世界的に広く問題視されるこのモチーフは、現代社会を語るうえで避けては通れない。

本作は、まさにそんな“黒人の不当逮捕”から始まる。林業に従事する黒人ウォルターは検問で止められ、保安官との世間話の後、全く身に覚えがない“18歳の少女を惨殺した罪”で逮捕される。そして、まるでベルトコンベアに乗せられたように、いとも簡単に死刑囚に仕立て上げられてしまうのだ。

逮捕に確たる証拠はまるで存在せず、警察が語った根拠は、要約してみれば「こいつが黒人だから怪しい」というものだった。以下は、本作で描かれる“事実”の一部である。

・黒人である それだけで警官から要注意の対象に ・証拠の捏造は当たり前 そもそも逮捕に証拠は不要 ・目撃情報の捏造も朝メシ前 嘘の証言を強要される場合も ・証言を断ると凶悪犯と同じ刑務所に送られ、死刑をちらつかせられる ・現在もアメリカでは、冤罪の可能性のある死刑囚の10人に1人しか釈放されていない

横暴を通り越し、鬼畜の所業とさえ思える非道ぶり。そして「現在も冤罪の可能性のある死刑囚の10人に1人しか釈放されていない」という文言は、この事件は“過去のもの”ではなく、負の遺産は現在にも脈々と受け継がれている、という事実を端的に示す。

観客はウォルターに感情移入し、怒りに打ち震えながら拳を握りしめるはずだ。裁判で無罪を勝ち取ることは、国選弁護人には不可能、0%だ。どうか神様、助けてほしい――。そんな願いは“ある英雄”の登場によって叶えられ、物語は筆舌に尽くしがたい高揚感がみなぎる“大逆転劇”へと発展していく。


主人公は、マイケル・B・ジョーダン扮する“実在の英雄”
利益はない ただ過酷 それでも、死刑囚を救うため奔走する理由とは――

英雄の名は、ブライアン・スティーブンソン。実在する黒人弁護士で、現在も冤罪の死刑囚を救うため東奔西走している。ここでは、彼がいかに優れた人物であるか、そして彼の物語をいかに優れたキャスト・スタッフ陣が紡いだのかを紹介していこう。


・冤罪の死刑囚のため立ち上がる、実在の弁護士B・スティーブンソン

ハーバード・ロースクール出身のブライアンは、金儲けには脇目も振らず、冤罪と思われる死刑囚たちの元へ足繁く通った。やがて彼は、基本的人権の保障に取り組む非営利団体“EJI”を立ち上げ、数多くの“無実の死刑囚”を救うようになる。その過程で、ウォルターと出会った。

利益はまるでない。警察からの妨害工作も苛烈で、命の危険を感じることもある。それでもブライアンが、ウォルターのために著しく不利な裁判に挑み続ける理由は、果たして何なのか?

その答えはぜひとも本編から確かめてもらいたい(作品のテーマがまるごと凝縮されているからだ)。が、ブライアン本人が語る信念を、ヒントとしてここに記しておく。

「人はみな、失敗するものであり、誰もが神の愛や贖罪を必要としている。(中略)慈悲というのは、そういうことを理解することから生まれる。(中略)慈悲というのは、それを当然もらうべき人々に与えるのではなく、もらう資格がないような人々にも与えるものだという概念を伝えたかった。公正であることこそが慈悲なんだ」


・主演は今最も注目のスター

ブライアンに扮したのは、「ブラックパンサー」「クリード チャンプを継ぐ男」などのマイケル・B・ジョーダン。彼が体現したブライアンを見ていると、15世紀の宗教家トマス・ア・ケンピスの言葉が思い浮かぶ。

「愛は何をもいとわない。どんな困難もものともせず、己の力以上のことに挑み、決して諦めることをしない。この世の全ては当たり前であり、不可能はないと、信じているから」

どんなときも希望を捨てず、あくまでも正攻法で苦境を打破しようとするブライアンを、“内なる闘志”をにじませながら誠実に演じている。


・共演にはJ・フォックス、B・ラーソンら超実力派 監督は“挑み続ける俊英”

無実の死刑囚・ウォルター役には、類まれな存在感で作品に重厚感と意外性をもたらすジェイミー・フォックス。今回のフォックス、注目はその表情だ。顔の筋肉をミリ単位の精度で操ることで、言葉を発さずとも心情の機微を伝えている。

そして「ルーム」「キャプテン・マーベル」などの好演が記憶に新しいブリー・ラーソンが、ブライアンの同僚エバ役に。“ともに立ち上がり、支えた最初の白人”であり、物語における“黒人と白人の境界”をつなぐ重要人物である。余談だが、アメコミファンは「キルモンガー(ジョーダン)とキャプテン・マーベル(ラーソン)が死刑囚を助けている!」という楽しみ方もできる。

メガホンをとったのは、デスティン・ダニエル・クレットン監督。常に“負の構造”のなかに生きる個人を描き続け、世界的な評価を獲得してきた俊英だ。ちなみにラーソンとは、彼女の出世作「ショート・ターム」「ガラスの城の約束」に続く3度目のタッグとなっている。


【感謝】この映画体験に「ありがとう」と言いたい――!
逆転の高揚感、真心への感動…鑑賞料1900円以上の価値

見ればどんな感情が得られるのか? ここでは映画.com編集部員によるレビューを綴っていく。

映画評論家・荻昌弘氏(故人)は、かつて「ロッキー」を語る上で、こんな大名言を放っている。「これは人生、するか、しないかというその分かれ道で、『する』のほうを選んだ勇気ある人々の物語です」。本作もまた、「する」を選んだ人々の苦闘と逆転の物語である。

ブライアンらを襲う逆境はとことん過酷で、警察や検察の腐敗ぶりには、見ていて怒りで腸が煮えくり返る。しかし絶望が濃いほど、希望は輝きを増す。ブライアンの熱意は周囲の“無慈悲な人々”を突き動かし、困難は次々と打ち破られ、最後には立ち上がって拍手したくなるような爽快なシークエンスが映し出される。

見る間中、「こんな思いにさせてくれて、ありがとう」という感謝が、心からどっとあふれ出てきた。鑑賞料1900円は開始20分くらいで回収することができ、その後は人生を180度変えてくれるような、とびっきりの時間を堪能することができるのだ。

本作にノックアウトされた者は、もちろん世界中にいる。辛口で知られる映画批評サイト「Rotten tomatoes」では99%ポップコーン(観客の99%が高評価/1月10日時点)という異次元の数字を叩き出し、さらにバラク・オバマ前大統領は「2019年のベスト映画リスト」に選出した。多様性における重大なパラダイムシフトを経験する現代の私たちが、絶対に見逃してはならない一作である。

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