「奇跡が現実になる瞬間を活写。」フォードvsフェラーリ ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡が現実になる瞬間を活写。
絶対王者に実績がない者が勝つには、ある種の奇跡が必要だ。この映画は、奇跡が現実になっていく様をドラマティックに描いている。きっかけは、企業買収においてフォードがフェラーリにコケにされたことから起こる「企業復讐劇」みたいなものだ。その一方で、「ル・マン」に勝って企業イメージを高めて勢力拡大につなげたいフォードの「大組織の論理」と、実際にレースに勝つために知恵と情熱を捧げるキャロルとケンの「現場の論理」の戦いでもある。金は出すがすべてこちらの指示に従ってもらうという会社側の傲慢な態度が勝利への障害になる。このままでは空中分解してしまう所を、キャロルが体を張って軌道修正していく場面が見所になっている。勝利に向けて組織と現場が一体になった所から奇跡は始まる。最後まで対立は解消されなかったけれども、キャロルとケンはやりとげたと実感する。
男たちの熱い戦いはすべてレースに集約されている。実際にレースカーに乗っているような臨場感を味わえるだけでも、この作品を見た甲斐はあるというものだ。
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