劇場公開日 2020年1月10日

フォードvsフェラーリ : 映画評論・批評

2019年12月17日更新

2020年1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

カーレース界の王に挑む、栄光なき天才たちの“共闘”

激情型vsクレバーなライバル走者の“闘争”を描いた「ラッシュ プライドと友情」(13)は、熱い人間ドラマをF1に求めた秀作として、筆者の中で位置付けられている。が、まさか同作の公開からわずか6年で、それを凌ぐモータースポーツものに出会えるとは面食らった。

1960年代前半、大手自動車メーカーのフォードは自社ブランド拡大のため、フェラーリの独壇場だったル・マン24時間レースを制するマシンの開発に乗り出す。それはまるで、吉本新喜劇が笑い抜きの映画で米アカデミー賞を狙うがごとき、畑違いな野望だ。だがそれを可能にし、ル・マンでフェラーリを打ち負かすGT40マークIIを生み出したのは、レーサーあがりのカーチューナー、シェルビー(マット・デイモン)と、はみ出し者の凄腕ドライバー、マイルズ(クリスチャン・ベール)の“共闘”によるものだった。

大衆車文化を先導したフォードがスポーツカー市場に打って出た史実は、このジャンルに精通していないと立役者の存在が見えづらい。そんな栄光なき天才たちの功績を、前作「LOGAN ローガン」(17)でスーパーヒーロー映画に迫真性を与えたジェームズ・マンゴールド監督が詳らかにしていく。そして同作で正義に準じたはずのミュータントが社会から疎外されたように、皮肉にもフォードの保守的な企業体質が、シェルビーとマイルズのマシン開発を困難へと追いやっていく。

しかし作品の核にある二人の友情が、内外の障害をもろともせず、宿敵フェラーリチームが待つル・マンの決戦場へと彼らを駆け上がらせていく。互いをリスペクトしながらも、衝突の絶えない両者の関係性をマット・デイモンクリスチャン・ベールが説得力あるものにし、そんな演技のぶつかり合いが、観る者の心に4DXばりに振動してくる。

こうした要素に加え、観客を没入の深部へと誘うのが、劇中のデイトナ24時間レースやル・マン24時間レースの描写だろう。マンゴールドのチームはCGを極力排し、実際のコースに当時のマシンを走らせることで、物語に強靭なリアリティを与えている。作品の性質はドラマ「下町ロケット」に代表される池井戸潤原作の下請け逆転劇を彷彿とさせるが、良質を極めたレースシーンが、モータースポーツ映画としての価値を高めて揺るぎない。はからずもシネコンで、ガソリンやタイヤの焦げつく臭気さえ覚えるだろう。

尾崎一男

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る
「フォードvsフェラーリ」の作品トップへ