劇場公開日 2019年6月14日

  • 予告編を見る

メン・イン・ブラック インターナショナル : 映画評論・批評

2019年6月13日更新

2019年6月14日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

シリーズのお約束に、スパイ活劇とポリコレ要素も増し増しの欲張り娯楽作

エイリアンやUFOの目撃現場に、どこからともなく現れる謎めいた黒スーツの男たち――。そんな都市伝説に着想を得たコミック「The Men in Black」を原作とし、実写映画化されたSFアクションコメディー「メン・イン・ブラック」(97)。地球上にエイリアンが生息しているという世界観のもと、彼らが人目につくトラブルを起こすと現場へ急行し、問題解決と隠蔽工作を行う秘密組織が「MIB」だ。寡黙なベテランエージェント役のトミー・リー・ジョーンズと多弁な新米エージェント役のウィル・スミスという2人の凸凹コンビぶりと、CGで描画されたエイリアンたちのキモカワな魅力も相まって大ヒットを記録。続編も2本製作された。

そして、7年ぶりの第4作となるのがこの「メン・イン・ブラック インターナショナル」。過去3作の主演2人は登場せず、「マイティ・ソー バトルロイヤル」でも共演したクリス・ヘムズワーステッサ・トンプソンが新たにコンビを組む。ただしストーリーはおおむねトンプソンが扮する新米エージェントMの視点で語られ、彼女が実質的な主人公。劇中にも組織名になぜ「Women」が含まれないのかというやり取りがあるなど、多様性を尊重しポリティカル・コレクトネスを強化するハリウッドの傾向を如実に表している。

画像1

一番の新味は、「007」シリーズや「ミッション:インポッシブル」シリーズのようなスパイアクションの要素を盛り込んだこと。MIBのNY本部からロンドン支局へ派遣されたMは、悪のエイリアン勢力と通じた裏切り者が組織内にいると気づき、ヘムズワースが演じる先輩エージェントHと共に独自捜査を進めてフランスへ、さらにモロッコへといった具合に、各国を飛び回って世界を救うスパイ映画のパロディーになっているのだ。

もちろん、白人の先輩と黒人の新米という組み合わせをはじめ、新米は記憶消去装置ニューラライザー(別名「ピカッ」)を持たされない、MIB特別仕様車を運転させてもらえないなど、シリーズのファンを喜ばせるお約束も抜かりなく用意。「アイアンマン」の脚本家コンビが盛り沢山の要素を手際よくシナリオにまとめ、「ストレイト・アウタ・コンプトン」のF・ゲイリー・グレイ監督がノリ良くポップに仕上げた。意外性もメッセージ性も弱いが、アクションに興奮し、ユーモアに笑い、鑑賞後には楽しかった気分だけが残る。この軽さもまたMIBシリーズの良さ……でも実は、観客もピカッとやられ重大な記憶を消されていたりして。

高森郁哉

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る
「メン・イン・ブラック インターナショナル」の作品トップへ