新聞記者のレビュー・感想・評価
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情報操作と民主主義
一言で言えばちゃらちゃらしない立派な映画を頑張って作ったと思う。センセーショナルな内容を求めず、地道に一つづつ重ねていく展開で、見応えのあるものだった。
ただ、新聞記者と銘打つからには、新聞記者とは?というところの掘り下げがあってほしい。女性のレイプ事件は、同情だけでは真実とはいえないし、政府の隠蔽もどこまでが事実なのか、一担当官の証言だけで突き進めるには、単なる週刊誌的なスクープ記事でしかないわけで、相当な取材に基づいて真実を求めるのが、ジャーナリズムの姿ではと、疑問は浮かぶ。ましてや、言葉が武器の記者が、片言の日本語しか話せない帰国子女って設定はいかがなものかと肝心要のところがものすごく不思議。シムウンギョン大好きなのに、残念な配役だった。
ましてや、どうやら現政権の批判がテーマかとも思われる話だが、この映画こそまさに情報操作とはいえないかと、少々荒唐無稽ぶりが目立ち、残念だった。
とまあ、いろいろ考えさせることも多く、映画の役割は十分果たしていると思う。
日本における政府批判
日本における政府批判の映画は、スポンサーが付かなかったり、上映館が極端に少なかったりしてなかなか陽の目を見ないことが多いが、今回のこの作品は真っ向勝負している。
平日昼間の上映にもかかわらず、館内はほぼ満席。
日本の政治を憂いている人がいかに多いかということを感じる。
久しぶりに観た社会派映画
久しぶりに観た社会派映画でした。内閣情報調査室という権力、そして父への思い、家族愛。とにかく考えさせられました。吉岡エリカ役のシムウンギョンの演技は素晴らしいかったです。杉原奈津美役の本田翼も夫思いの優しさが出ていました。松坂桃季が演じる杉原拓海が、最後に言った無言のことばが気になります。権力に負けたことばを言ったのかと思った方が多いのではないでしょうか。
国民、官僚にむけて
見る前どうかと思っていた、主人公の外国人起用については、外国育ちという設定も含めて、外国人だからこそ客観性が生まれて説得力が増した思います。日本人という同種の中に一人、少し日本語がつたない人がいる事自体で微妙な空気を表現できていた。普通に日本人女優の起用だったら、ありきたりな邦画になっていたかもしれない。テレビの中で討論している人達を俳優が演じるのではなく、実在の本人なのも映画に深みを与えた。
事実とフィクションの間に位置し、この話を商業映画として成り立たせるという事はおおむね成功したのではないでしょうか。
他社の記者の存在と各社、業界全体の空気感が描かれていたらとは思いましたが、あまり色々詰め込んで複雑な構図にしなくて良かった。できるだけ多くの人に見てもらい、日本の現状から目をそらさず考えてもらうために。
内調が暗い
最近あまり無かった、現代政治への疑問を呈した物語。民主主義といいながらも、政府が内調を使って密かにプロパガンダをやってるという内容。
題材はちょこちょこ実際の事件を元にしているが、全体的にはフィクションなので、政治色が濃すぎるわけではない。トランプ大統領のロシアゲート疑惑もそうだが、ネットを使って政治的に優位に立とうというのが、あっという間に当たり前になった。ナチスは広告宣伝で国民の支持基盤を固めていったが、情報がリアルタイムで伝達する現代世論の操作はより拡大しやすいのは確かなので、気を付けないと一歩的な意見に巻き込まれやすい。その視点では内容的に少し物足りなかった。
多分演出だろうが、内調のオフィス内が妙に暗く、反面廊下がやたら明るいので、リアリティが失われた感じがした。
役者陣も良く頑張っていた。松坂桃李、本田翼が夫婦役で、なかなか良かった。田中哲司の内調の上司役は、いかにも腹にイチモツありの感じが素晴らしい。主演のシム・ウンギヨンは演技は良かったけど、イントネーションには、どうしても違和感あって、少しトーンダウン。途中でイモトアヤコに見えてしまってから、なんか気になってイマイチ感情移入しにくかった。残念(笑)。日本の女優さんでやるとすると、市川実日子とか、門脇麦あたりのイメージかな。
胸を張って生きられるか?
社会に積極的にコミットしようという意欲的な作品です。
国家権力と闘う映画は、韓国の場合だと〝この国を良くしたい〟〝権力を私物化する奴は許さん〟といった、ナショナリズムやヒロイズムが主人公のモチべーションとなっている事が多いように思いますが、この映画では〝娘にとって胸を張れる父でいられるか?〟〝父の無念を晴らせるのか?〟といった家族との絆が主人公のモチベーションとなっています。それだけに悲壮感が漂い爽快感は皆無ですし、作品全体も重苦しい雰囲気で終始しています。
それは、娯楽作品としては欠点ですが、日本社会の現状と真摯に向き合った結果だと思います。ナショナリズムが国家権力に独占され、政権を批判する者は疎まれて孤立してしまう現状では、権力との闘いは私的な人間関係によってしか支えられないという事なのでしょうか。
観る者に問い掛けるような結末は素晴らしかったです。
いつか、国家権力と闘う主人公が、悲壮感ばかりではなく、明るくカラッとした心性をも備えた人物として造形され、ハッピーエンドで終わる映画が創られる日が来る事を願います。
よくぞ撮った。
最後、あの後どうなるのだろうか、
記事が官邸、内調を倒すか、そのまま政府の発表に反論できないままなのか。
...おそらくバットエンドなのだろうな。
かれはそのまま赤信号を渡り、、、
これが浄化作用が失われた日本の現実。
唸る
凪待ちから映画、邦画好きが再燃。こちらも鑑賞してみた。
はびこる忖度、忖度、抵抗、圧力。
どの世界にもあるのだろう、都合が悪くなる事が予想、なら見て見ぬふり。腐るほどたくさんあるのだろう。
真っ直ぐに納得しがたい、くすぶる気持ちはどこで収めるか。
問われた。
あえて批判を
映画を見て問題の多い映画と思われました。
まず内閣情報調査室の描き方ですが、藤井道人監督はかなり綿密な取材を試みたにもかかわらず、内閣情報調査室(内調)について内情は分からなかった旨をインタビューで答えています。
・内閣×マスコミを、日本映画でここまで描ききった勇気、客観性…。『新聞記者』藤井道人監督インタビュー
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohiroaki/20190622-00131074/
-しかし、官僚側に取材しても絶対に教えてもらえない部分があった。それは内閣情報調査室の内情である。
藤井「取材した相手で、内調に入ったことがある人や、内調に知り合いがいる人はいませんでした。あるいは、知っていても言えなかったのかもしれません。
内調がどのビルの何階にあるのかは、都市伝説レベルなんです。
ですから映画でリアルに描くのは不可能だと思い、内調のシーンは均一された空間で、色のないローコントラストの世界で表現してみました。杉原の心情の変化に合わせ、そこに色彩を宿らせたりしています。(略)」
の割には、あたかも映画で描かれた内調の姿が「現実」だとあるノンフィクション作家に言わしめ
https://twitter.com/WsT01TkNiOsib04/status/1147408994866102272
世間でもその認識が広がっています。
これは危うい話だと思われました。
いわゆる官僚による情報スピンのようなことは今までも内調に限らずどの省庁でもやられてきたと思われますが、はたして今回の映画の中で描かれた、内調が人の生命を脅かす追い込み行動をまでしていたのが事実(「現実」)なのか、その点はきちんとした事後検証が必要だろうなとは思われました。
完全のフィクションであればそんな検証など必要ではないですが、映画要素のモデルともなった加計学園問題の一方当事者の前川 元文部科学省事務次官が映像として登場し、現実とフィクションの境界線をあいまいにした今作は、どこまでが現実なのかの線引きは、昨今の思い込みと現実の溶解の風潮の中、やはり必要だと思われました。
その意味で最後の大学新設真相の話はさすがにフィクションだろうね、とは思われましたが、
現実の加計学園問題も、映画でも描かれていた通り安倍総理とお友達だった問題はありました。
・安倍首相の「本当のお友達」に、こうして血税176億円が流れた
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51382
しかしもう一方で、文部科学省と獣医学会との関係で行われていたいわゆる「岩盤規制」の問題もありました。
・加計問題、なぜか報道されない「当事者」前愛媛県知事の発言全容
https://www.j-cast.com/2017/07/11302992.html?p=all
https://www.youtube.com/watch?v=j7UrXi764Ag&t=5084
・加計学園「半世紀ぶり獣医学部」は不要か 東京大学名誉教授 唐木英明
https://president.jp/articles/-/22413
即ち、加計学園問題は、安倍政権に深く入り込んだ加計学園理事長の問題と、文部科学省が獣医学会の意向を汲む形で半世紀にわたり獣医学部の新設を拒否していた問題、の対立といえます。
映画としてはこの双方の問題を描いた上で、後者の前愛媛県知事らへの批判があるなら前愛媛県知事らの主張を直接聞いた上でその趣旨を描きさらに反論を描く必要があったのではと思われます。
いずれにせよこの映画は一方の側が善で一方の側が悪だと色濃く描かれ、双方それぞれの問題を踏まえられていないように感じました。
そしてその上でこの映画は現実とフィクションの境界をあいまいにしてしまっています。
この映画の現実とフィクションの境の曖昧さは、精神的には現実と妄想の境の曖昧さに類似してしまうと思われます。
この病的一歩手前の問題は、ネット時代の現代の問題を表していると考えても良いと思われます。
その境界をあいまいにしたままで一方的な現実の善悪価値を混ぜ込める手法は、個人的にははっきり言って危険だと感じてもいます。
一番初めにも触れた内調の件も含め、今一度、この映画の現実とフィクションの境はどこだったのか、観客も含め、藤井監督自身が更なる検証に向かう必要があるのではないかと、個人的には思われました。
非常に他のレビュー評価が高い映画なので、あえて注意喚起として評価の低い点数を付けました。
藤井監督は好きな監督であるのでそれを踏まえてのあえての点数でもあります。
金環蝕を思い出したりしてけれど…
オヘンスとディフェンス。
どちらかに偏れば身を亡ぼすことになる。
バランスが良くなければ生き抜けない。
でも、バランス感覚が秀でる者に個性は
無い。
ただ、思ったんだ。
人の弱みに付け込んで生き抜くのは避けたい。
そして、否応なしに組み込まれたのであれば、
恥じを忍ぼう。
シムウンギョンでよかった
たぶん日本人女優が演じる予定だったり、いろんな予定だったりがいくつもあったであろう企画も、今、このタイミングでこの題材を、という一点突破した企画の勝利か。首相官邸前でロケしたのかな、たまげた。
で、結果的にすべてはシムウンギョンが持っていった気がする。あの歩き方、あの佇まい、言語でないところでの噛みつき具合がいい。特に記事を書くクライマックスらへん、かなり抑えた芝居が巧みさ、書き上げた達成感の芝居に涙した。
とはいえ、あんなに練った映像でなくとも、この題材の魅力は伝わったろうに、などとも思う
こういう映画、もっと増えてほしい
「向かいのバズる家族」「日本ボロ宿紀行」と、最近ドラマが面白かった藤井道人監督の作品という事と、元々現与党のメディア戦略に興味があったのでこれは必見!と、映画館に足を運びました。
「内調」に関しては良く知らなかったのですが、世論を操作してまで事実を捻じ曲げたい多田参事官の「嘘か本当かを決めるのはお前じゃない。国民だ。」は核心をついた本音だと思います。
欲を言えば、最近問題になったViViのTシャツコラボ企画に見られる様な、若者を取り込む為のイメージ戦略や、お食事会で懐柔されるメディアトップの方々の政権忖度・・等々、具体的な話の裾野をもう少し広げて取り入れたりしたら、より物語に厚みが増したのでは?と思いました。(さすがに難しいか・・・)
とにかく委縮した日本のメディアでよくぞ作品にして頂きました。
作った心意気はよし、というところか
誤報にされた記事を苦にして自死した父親をもつ新聞記者の娘と、政府に都合の悪い内容をもみ消す毎日を過ごしている若手官僚の話。
作った心意気は、よし。
日本でも社会派映画はもっともっと増えてもいいよね。
ただ、映画としての出来は今ひとつかな。
松坂さんは、難しい役が上手くなったけれど、本作では気難しい顔一辺倒で、メリハリに欠けたかな、と残念。
シムさんは、米国からわざわざ日本に来て5年めという設定とはぴったりだけれど、やはり2、3カ所あったたどたどしさは惜しい。流れが切れるね。(ごめんなさいね、あれだけの日本語を聞いておきながら厳しいこと言って…) 逆字幕スーパーで観たら、もっとよいかもしれない。
隠されていた真相が派手なのはドラマの面で仕方ないかなと思うけれど、途中に何度かはさまれるTV番組からの解説はいらないんじゃないかなあ。自分としては、あれが逆に、観客が擬似体験することを妨げてしまっていると感ずる。
でも、最初に言ったように、社会派映画をちゃんと商業映画として撮ろうとした心意気が素晴らしいという点は忘れていません!
2020/4/16追記
あら、びっくり。本作が、アカデミー作品賞でしたね。
小難しいことばかり言ってないで
本田翼が可愛かったとか、
俺だって本田翼に慰められたいとか、
そんなことを思いながら民主主義ってなんだろう?メディアの意義は?正義って?考えていくキッカケになる作品でした。
今見るべき映画
もちろんフィクションですが
なんとなく感じていた恐怖を具体的に見せてくれて怖かったです。
これまで韓国や米国では実際に起きた事件を元にエンタメ化していますが日本では全くありませんでした。
今後もこのような映画をみたいです。
キャストの方の演技もすばらしく引き込まれました。
脚本もよくねられており今年1番の映画です
政府を批判したいならもっと正面から描くべき
この映画で、やりたい事が全て出来ているのか、これが限界だったのか。
これが日本の現状のように見えてくるが、絶対にそうだと言い切れるのか。こうだろうという考えで作ったとしたら、この映画こそ映画内のフェイクニュースと同じになるのではないか。
映画作品としてはきっかけや政府のやろうとしている事が強引な気がするし、テンポが悪いと思う。もっと松坂桃李の変わり方を見たい。もっと深いところまで見たかった
この映画を今評価できるのか
評価しにくい映画だ。
別に政権批判がどうこうとかそれ以前に、フィクションと明らかに事実から取った題材が混在しているからだ。
単純にこれを観て今の日本は恐ろしいとも言えないし、逆にこんなの嘘だ!とも言えないのだ。巧妙な作りだ。
完全なフィクションとしてみた場合、善悪があまりに綺麗に二極化していて、微妙。悪の書き方が薄すぎるのだ(新聞記者の話だからしかたないといえばそうだが)。じゃあノンフィクションとしてみようとすると、やはり内調の描き方が疑問に思える...。分からないから。報道で分かる事とその裏側を映画で表現することは別なのに、事象が現在進行形過ぎるせいで疑り深い私には迫ってこない。
あと、演出の意図が分かり易過ぎる。例えば、明らかに内調のシーンが暗いでしょう。あれなんてものすごく巧妙だよね。田中哲司にあまりに型通りの役を割り振っている点(人間臭さが全くないのでフィクション性が高い)、逆にあれだけの表現性を持つシム・ウンギョンを活かしきれていない点はどうかなあと思った。日本人は割と演技の善し悪しを台詞回しで判断していることは分かっていたと思うのだが...。
この映画を今製作して公開した勇気、が讃えられているように思う。しかし、これくらいの映画公開できないなら逆にもう日本終わりなのでは?とも思う。それが勇気になる時代に生きていたくはない。
むしろ私はこの映画を今でなく、数年後に検証して振り返るものとして捉えるべきではないかと思う。「誰よりも自分を信じ、疑え」とはそういうことなのではないだろうか。
この国の民主主義って形だけ
シム・ウンギョンの魂の眼光に釘つけ。そして、良心の呵責にさいなまれる心の葛藤を、松坂桃李がとてもリアルに表現していることに、さらにこの作品をリアルの染めていると感じた。また、ストーリーの無理を感じながらも、このテーマをどう捉えるかは、観客に突きつけられているように感じた。そして、フィクションの中にも、ひょっとしたら現実の政治と報道のあり方について、似たような状況があるかも知れないと、思わせる描写がさらに、観客を引き付けていると思った。記憶に残る映画だった。
期待していったけど
役者が薄い。内容は濃すぎるほど濃いどうぞ思われるが、役者が追いついていない。この映画に出演した松阪桃李には敬意を表したいが、この役のポジションにはちと早かった。良い役者さんなのに残念。
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