運び屋のレビュー・感想・評価
全496件中、1~20件目を表示
その身体から滲み出るオーラというか、陰影深さというか。とにかくその魅力に滅多打ちになる
颯爽と現れ展示会の空気をさらっていく彼の姿は何とも言えないチャーミングさに満ちていた。が、そこから全てを失った彼のほうが、身体から放出されるオーラというか陰影の深さが明らかに違って見える。イーストウッド作の主人公は、人々の真ん中よりも、こうしてアウトサイダーとして佇んでいるのがよく似合う。
ご老人が危険なブツの運び屋になる。たったそれだけでも物語として完璧なのに、御大はそれに加えてにわかに「この国のかたち」を描いているように思える。それは様々な人種間のやり取りに集約されるのだろう。この主人公に壁なんてない。誰とでもうまくやれる。時には差別的なジョークを介しながらも、それについて指摘されると、ああごめんな、と笑って謝る。そのやりとりが実に軽妙で、また愛おしい。
人々の分断なんて、我々は軽く飛び越えられるのだよ、という心の声がどこからか聞こえてきそうだ。この芳しい香りにまたしてもやられた。
歌が多くを語る
イーストウッドが自分の監督作の音楽を自ら手掛けるほどの音楽好きで、ジャズピアノを嗜むことはファンにはよく知られているし、カントリーシンガーを演じた『センチメンタル・アドベンチャー』のように、トレードマークとのしわがれ声で歌ってみせた作品もある。ただし、ここまでカジュアルなノリで歌いまくった映画も珍しい。イーストウッド扮する主人公は、ドラッグの輸送で全米をドライブしながら、カーステレオに合わせて歌いまくるのだ。
この主人公の老人のお気楽なノリは、彼の魅力でもあり、強面のギャングの心を軟化させ、また、彼自身を軽率に犯罪の世界に足を踏み入れてしまった遠因にもなっている。
巧いなあと思うのは、ガンで死ぬゆく妻を見舞った際には、カーステで流れていた「More Than Yesterday」の歌詞がそのまま愛の言葉になっていること。いかにもハリウッドらしいやり口だが、こういう脚本の妙にまんまと乗せられるのが、悔しいというよりも心地いい。
これはハリウッドに絶えて久しいスター映画
商売の近代化に後れを取った老園芸家は、家族との付き合い方にも失敗して、今や破産寸前の独居老人である。しかし、彼には商売柄アメリカ各地をトラックで旅するという経験があり、それを"買われて"コカインの運搬人というニュー・ビジネスにありついた。さわりだけでも実話とは思えない面白さがある上に、監督&主演(10年ぶり)のクリント・イーストウッドに余人には代えがたい適材適所な個性と味わいがあるから、冒頭から思いっきり震えながら笑える。もの凄くやばいのに、飄々と危機に対応していくイーストウッドを見ていると、むしろわくわくして来るのだ。相手が誰だろうが自分の経験値と、そこで培った価値観を元手に堂々と対応する主人公にイーストウッド本人の実像が重なる時、本作「運び屋」はハリウッドに絶えて久しいスター映画の再来を実感させるのだ。今年88歳のスターは、勿論、現役最長老。永遠には続かない贅沢な映画体験を、是非。
A・ガルシア、音楽アルトゥーロ・サンドヴァルのキューバ人脈にも注目
「人生の特等席」が2012年なので、あれから6歳位年を取ったイーストウッドがスクリーンに映っているのだなあと感慨。最近観た中では「マイ・ブックショップ」のビル・ナイなどもそうだが、老名優は皺が人生の年輪のようでそれ自体に味がある。本作は実話に基づくが、家庭人とは言い難かったイーストウッドの人生にも重なってみえるように作った点は自虐か、開き直りか。
意外だが、麻薬カルテルのボス役のアンディ・ガルシアとイーストウッドは初共演。ガルシアは、同じキューバ出身のジャズトランぺッターであり「マンボ・キングス」などハリウッド映画にも長年関わってきたアルトゥーロ・サンドヴァルの伝記映画で主演したことがあり、ガルシアが橋渡しになり本作の音楽担当が決まったとか。ジャズ好きのイーストウッド、さぞかし喜んだだろう。ただ映画全体の音楽の印象は、主人公が運転中にラジオに合わせ歌うカントリーのイメージが強いけれど。
良きタイミングで観れて良かった。
映画好き先輩のライブラリーから。
再生してまずクリント・イーストウッドがあまりに歳を取っていることにビックリ!!
昔は地上波で『ダーティハリー』を良くやってた印象で小さい頃何度も観た記憶があるんですが、冷静に考えたらそれ以外のイーストウッドの出演作は公開当時レイトショーで彼女と観た『マディソン郡の橋』以来かも?!
本作公開時は88歳?すごい俳優、すごい監督です!
アール「デイリリーは時間と努力が必要だ」メアリー「家族だってそうよ」
園芸家だったアール、当時軽く見ていたネットの台頭などで仕事、家族関係ともに悪くなり、アメリカ中を走った経験と切符を切られたことのないマークされにくさを買われて、そうとは知らず麻薬の運び屋を引き受け多額の報酬を得ますが、トラックを新車に買い替え、孫娘の披露宴資金援助、自宅と農園買い戻し、火事に遭った退役軍人クラブの復活など使い道が微笑ましく「もっとゆったり生きろよ 人生を楽しめ 俺みたいに」いい歳になって若い者にこう言える老人、憧れます。実際仕事中何度もヤバい場面に遭遇しますが、その経験値、年の功でうまいこと切り抜けていきます。
「あなたはいつも外に生きてた そばにいるためにお金なんか必要ないわ あなたは私の人生で最愛の人 そして最大の苦痛の元…ぜひあなたに…知ってほしい 何よりうれしいの 来てくれて」死期を迎えた奥さんメアリーの言葉ですが、なんか私もアール同様、仕事>家族の生活だっただけに自分に言われているようで。。。
捕まったアールがベイツ捜査官に「間違ってばかりの人生だった (家族との関係)それが一番大事なことだよ あんたと家族のためにも 他のことはどうでもいい」「時間がすべてなんだ 何でも買えるのに時間だけは買えなかった」胸に沁みます。
裁判でも弁護士を遮り自ら有罪を申し出る潔さ、カッコいいです。
実話を元に作られたこの作品、私も基本給がカットされる歳になり今まで蔑ろにしてきた家族に少しずつでも恩返しをと思っていた矢先に、人員削減により給料カットされたまま重責を担わされることになって腹立たしい思いでしたがアールを見習って、ゆったり楽しみながらやってみるかという気持ちになれてこのタイミングで観れて良かったです。
なんかアールと同じ道を辿りそうな予感さえしていますが、これもまた人生か。。。
イーストウッドの娘さんがまさに親子役での共演で素敵だったこと、久々に見たマトリックスのモーフィアス役ローレンス・フィッシュバーンの貫禄が更に増していたことも追記しておきます。
ロウソクは、消える直前に最も明るく燃える
きみも後期高齢者になれば分かるだろう
・・監督はそう言ってくれているように思った。
「闇バイト」が巷では大はやりだけれど、
労働は面倒くさくてお金だけが手っ取り早く欲しい彼ら。
そんな《若者たち》だけでなく、いまや生活困窮者の《中年》や、
そして生に迷う《老人》たちも捕まっている。
老人は生きるための理由が欲しいのだ。
それがどのような頼まれごとであっても、自分が必要とされることが例えようもなく嬉しい。
忘れ去られることは辛い。
だから声を掛けられると舞い上がる。
だから《老人》は薄々詐欺だろうと感じていても誰かの役に立ちたくて、また役に立つ自分でいたくて 、自らオレオレ詐欺の仲間として立候補し、そして生きることの躍動に悦びの涙を流すのだ。
・・・・・・・・・・・・・
「運び屋」、
原題 The Mule =“薬”を運ぶ驢馬のこと。
運送業ですね。#mee too now
花卉栽培農家ですね 。#mee too ago
本作は、90歳で闇バイトに堕ちていった老人の姿を、僕たちに哀しく見せてくれる社会派映画だった。
「グラントリノ」以来、クリント・イーストウッドは、自らの老いと、枯れてゆく肉体に、自身、抑えようもない興味と魅力を感じているに違いない。
つまり、「今のこの自分にしか表現出来ないその世界を」彼は自分の老いた姿をまな板に乗せて演出している。
老境に至ってこそ、演じて、遺して、
そして伝えておかなければならないものを、監督が我々に見せてくれるのだ。
うまく愛してやれなかった。そして上手に一緒に暮らしてあげられなかった妻と子供たちに、
死ぬ前に何とか償いを果たしたい男アールの、最期の償いと足掻きだ。
イーストウッドの老年期の作品群は、実にそこにテーマが集中している。
「あなたはいつも外にいたわ」。
「あなたは遅咲きの花」。
「でも帰ってきてくれて嬉しい」。
これがアールの妻の最期の言葉だ。
・・
けれど、
僕はもうひとつのクリント・イーストウッドの横顔も観察する。
【へそ曲がりな彼の本当の姿】だ。
画面を観ていると、アールは涙涙の帰宅を果たしてようやく家庭人に戻った・・という100%の感じでもない。そこがとっても面白い部分だと思う。
仕事一途の男や運送業の男は、
妻子とは、昔も噛み合わないし、今でもそのまま噛み合わない。ずっとすれ違ったままなのだ。
(僕もそれで家庭をダメにしたからイタいけれど・・)、
運送業の映画も、老人の映画も、どれもちょっと哀れなものだ。
一日しか咲かないデイ・リリーを植えながら、この独りよがりの男は
そのうち君たちにも分かるよと、監督はしわがれ声としわくちゃの顔で
男の人生の結末を教えてくれる。
そしてもう一言、こう呟いて付け加えることを忘れていない
「後悔もあるが、どうしようもない。これが俺なのさ」。そんな彼の心の声が聞こえてくる。
西部劇のガンマンだったイーストウッドの語るのは、男の強がり。「これが老いぼれが終わっていく姿だぜ」とうそぶく彼。
あの横っ面よ。退役軍人らしく、ベタで甘ったるいラストにしないところが、破れてて正直だし、彼らしくて可笑しい。
やんちゃ 上等と思わないか?
娘は言っていた
「お父さんがどこにいるのか分かっているから安心よ」⇒刑務所(笑)
・ ・
日本では
65歳以上の高齢者、930万人が働いている。
年金だけでは足りないものね。
そして意地一本で、日本のアールたちも、きょうもどこかで生きていて、 ロバのように走っている。
お金よりも重要なもの。
家族よりも大切なもの。
―「自分のちんけな夢」を、デイリリーの夢を喰って生きているアホな連中がいるのだ。
予告編を見てから見ると…
何よりも家族を大切にしろというメッセージは強く伝わってきたが、内容は薄っぺらく感じた
何よりも家族を大切にしろというメッセージは強く伝わってきたが、内容は薄っぺらく感じた
家族をないがしろにしてきた男が職を失い、ひょんなことからヤクの配達人に
金の余裕を得てから家族に目がいくようになり挽回を図る
ヤクの配達人である必要性全くない
着想を得たと最後にあったけどそこから作ってメッセージ性ねじ込んでるから余計な要素にしか感じない
職を失ったけど新しい仕事始めたら成功したでも全然通じる
悪者がガバガバすぎる
いつでも見てる(見てない)
後ろからずっと付いてくならお前らが運べ
スマホ持たせてんのに見失うな
弱みを握っておけ
配達だけで金払いすぎ
挙句の果てには仲間割れ
こいつらほんま・・・
伝説と謳ってるけど全然そんな描写ない
言うてるだけ
イーストウッドファンでも無ければ率先しても観るようなもんでもない
虚栄心への執着
タイトルなし
the America
これは名作!アメリカを代表する名俳優による、アメリカらしい家族愛をテーマにした、アメリカ文化を感じられる映画です。テーマは家族愛だと思うけど、ハラハラする場面や思わず微笑んでしまうシーンが多く最後まで惹きつけられました。
イーストウッドの存在感が凄すぎる!
たまらない空気感
イーストウッド健在!
達成感も挫折感もない不思議な味わい。いろんな場面に自作のセルフパロディが散りばめてあるように思える。例えば『ミリオンダラー・ベイビー』。これはネタバレになるので詳細は明かせないが、病室で元妻を看取るシーン。ここは女優さんの演技が凄すぎて、本当に家族の臨終を見ている気になる。
それから『人生の特等席』での娘とのギクシャクした関係性とか、『パーフェクト・ワールド』での追う側と、逃げる側の付かず離れずの距離感なんかは、まるでもう一度あの映画たちを体感している気分になる。やっぱりイーストウッド作品特有のリズムとか、空気が全編にわたり支配していて、心地よく身を委ねられる。
隣で爆睡していたおデブさんのイビキには辟易させられたが、それすらも映画の一部に思えてくるから不思議だ。大抵は、派手なアクション映画で私自身、寝落ちしてしまうことがよくある。それは展開がわかっていて、おそらく主要な人物の誰も死なない、そして派手な音楽を伴うシーンでよくある。これは自分の意思とは無関係に起きることで、それを理由につまらない映画だったとも思わないようにしている。
だけどこの映画は、とても静かで展開もゆっくり。イーストウッドがド派手なアクションを繰り広げるはずもなく、一見して退屈な映画に思えるが、なぜか全く眠くならない。それは編集が巧みで、主人公の身の上に必ず何か展開が起きていて、大きな話の流れを忘れないからだ。それはセリフのひとつひとつまで磨き込まれ、含蓄のある言葉として身体に沁みてくる。そう言えば、字幕担当は、松浦美奈さんだったが、相変わらず的確でいい仕事ぶりだ。「99歳の老人だけが100歳まで生きたがる」なんて、セリフ以上に文字が語りかけてくる。
とにかく、イーストウッド健在。そして、またあの苦笑いが見られて良かった。
エイジ・ドライバー
実話ベースと聞き、本当に驚きました。
もちろんキャラクターの性格や家族の話しは脚色だと思うけれど、
87歳の老人が10年間に渡り、麻薬カルテルの「運び屋」として、
一ヶ月に200キロ以上のコカインを、
シカゴへ運んでいたのは事実だという。
アール(イーストウッド)が機転を効かせてピンチを
切り抜ける描写がなん度もある。
❶まず、年寄りで疑われなかった。
❷運転が上手いし、法令を守る。
❸運転手に徹した。
❹楽しみながら仕事に励んだ。
中南部イチ美味いサンドイッチを寄り道して食べる。
アールは「運び屋」をやる前は食い詰めていて、家は競売に掛けられ、
娘の結婚式の費用も負担出来ない、と金に困っている。
「運び屋」をやるとなんと【ふた束】の報酬をもらい目を丸くする。
《金のありがたみ》
①新車に買い替えた。
②家を取り返した。
③退役軍人クラブの維持に2万ドルを寄付。
④孫娘の結婚式にお祝いとフリードリンクの費用を持てた。
⑤皆から尊敬されるそんざいになる。
やはりお金はいい物ですねー。
これなら悪いことをしても、お金は大事だし、ほしくて当然、
的な気持ちになってしまった。
鼻も引っ掛けられない老人が一端の要人になるみたいな?!
もちろんアールは最後にツケはキチンと払いますよ。
FBI捜査官でイケ面のブラッドリー・クーパーが出演してます。
本当に良い男でセクシー!!
その上司の警察幹部がローレンス・フィッシュバーン。
ラストが泣かせます。
長年、別れてから、嫌味ばかり言われる元妻のメアリー
(ダイアン・ウィースト)を看取るアール。
メアリーの最後は満たされた。
クリント・イーストウッド監督が、10年振りに主人公を自ら演じました。
この後に「クライ・マッチョ」2021年がありますが、
94歳になられたイーストウッド監督の、新作の便りは聞こえてきません。
あともう一本、観れたらどんなにか良いでしょうね!!
人は幾つになっても間違うし正せたりする
当初ストーリーラインはシンプルに見えたが、さすがクリント・イーストウッド、哀愁とスカした感じは健在で物語に滲み出るある種の深みと雰囲気を感じた。
確かに家庭での関係に失敗し、最終的には仕事にも失敗し、ドラッグの運び屋まで身を落としたが、麻薬カルテルに殺される危険をおかしても死にゆく元妻に会いに行き、娘とも和解することに成功した。それも90歳になって。。人間やる気になれば何歳になっても人生の優先順位を正すことができるという希望を、また勇気をもらった。
余談ですが、最後クリント・イーストウッド扮するアールが、DEA麻薬捜査官たちに空から前から後ろから挟まれて絶体絶命になった時、彼が大口径のリボルバー拳銃で捜査官を撃ち殺し、薙ぎ倒していくイメージが一瞬頭によぎったが、全くそうはならなかった。ダーティーハリーまた観たいなぁ。
美味しい仕事には罠がある
88点 人生とはなにか?お金で買えるものは何か?
極上の人生ドラマ、隠し味は「西部劇」
イーストウッドおじいちゃんと言えば、頑固・偏屈・タフの3拍子揃った「俺様系おじいちゃん」を想像してしまう。
彼の演じてきた役柄がそんなイメージを植え付けているのだ。だから、今作「運び屋」のおじいちゃんもそんなキャラクターなんだと勝手に思っていた。
ところがなんと「運び屋」のアールは社交的で朗らか。ちょっとキザなところはあるけど、概ね柔らかい雰囲気の人気者おじいちゃん!
おじいちゃんウオッチャーとしては、完全に虚を突かれたね。
経営していた農場が差し押さえられ、一文無しのアールは、家族の中で唯一慕ってくれている孫娘の「結婚式の費用を出す」という約束を守れなくなる。
家族をほったらかし、仕事に邁進しすぎたアールは家族に拒絶され、孫娘の結婚式から締め出されそうになる。
結婚前のパーティーで出会った新郎側の友人は、そんなアールのオンボロトラックに目をつけ、運び屋の仕事を紹介する…、という流れで彼は縁遠い「運び屋」の世界に足を踏み入れることになるのが大まかなストーリーだ。
なんと言っても、アールのキャラクターが良い。どっからどう見ても、人の良さそうな可愛いおじいちゃんなのだ。
お金の使い途だって、孫娘の結婚式や退役軍人会館の修繕。怪しいタイヤ工房に常駐している刺青スキンヘッドの連中にも「タタ(じいちゃん)」と親しまれ、観てるこっちもほんわかした気持ちになる。
そんな優しいアールだが、彼自身は古い価値観の男だ。女性バイカーの集団に「息子よ」と話しかけたり、黒人男性へ差別的な呼び方をして注意されたり、全くアップデートされてない「時代遅れな男」。
ただ、アールが今までイーストウッドが演じてきたようなおじいちゃんと違うのは、そんな時代の変化をわりとすんなり受け入れて、全く相手を否定しないことだ。
だから最終的に相手にも受け入れてもらえる。
アールは古い男だ。家庭より仕事を優先し、外での価値を高めようとしてきたこともそう。それは変わらない事実だ。
そんな「時代に取り残された男」が、それでも「俺は俺」を貫き、常識では考えられない「運び屋」稼業を成立させる。
次第に周囲の人の好感を勝ち取り、状況のマズさと裏腹に充実した毎日を送っているのが、なんとも表現しがたい人生の不思議を感じさせる。
「時代に取り残された男」が、破滅の予感をさせながらきらめきを残す物語、という意味では同じくイーストウッドの「グラン・トリノ」や、西部劇の傑作「明日に向かって撃て!」とも共通するところがあるように思うけど、それをこんな可愛いおじいちゃんでもやれちゃうのは、ある意味衝撃だった。
どんな人生にも西部劇的なロマンはある、ということなのか。
もしくは「イーストウッド」というイメージが私にそう感じさせるのか。
それはどっちでも構わないと思う。映画から私が受け取った感情こそが、私を私たらしめているのだから。
変わっていく時代、変わっていく価値観、変わっていく関係の中で、それでも人の根本的なもの・好きなこと・大事なものは変わらない。
そんなラストシーンにじんわり感動できる、おじいちゃん映画の新境地。
おじいちゃん映画ファン以外にも、是非観て欲しい。
全496件中、1~20件目を表示