金子文子と朴烈(パクヨル)

劇場公開日:

金子文子と朴烈(パクヨル)

解説

大正時代の日本に実在した無政府主義者・朴烈と日本人女性・金子文子の愛と闘いを、「王の男」「ソウォン 願い」のイ・ジュニク監督、「高地戦」「建築学概論」のイ・ジェフン主演で描いた韓国映画。1923年の東京。朴烈と金子文子は、運命的とも言える出会いを果たし、唯一無二の同志、そして恋人として共に生きていくことを決める。しかし、関東大震災の被災による人びとの不安を鎮めるため、政府は朝鮮人や社会主義者らの身柄を無差別に拘束。朴烈、文子たちも獄中へ送り込まれてしまう。社会を変えるため、そして自分たちの誇りのために獄中で闘う事を決意した2人の思いは、日本、そして韓国まで多くの支持者を獲得し、日本の内閣を混乱に陥れた。そして2人は歴史的な裁判に身を投じていく。ジェフンが朴烈役を、「空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯」のチェ・ヒソが金子文子役を演じるほか、金守珍ら「劇団新宿梁山泊」のメンバーが顔をそろえる。2018年・第13回大阪アジアン映画祭では「朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキスト」のタイトルでオープニング作品として上映された。

2017年製作/129分/PG12/韓国
原題または英題:Anarchist from the Colony
配給:太秦
劇場公開日:2019年2月16日

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映画レビュー

4.5近代史を扱った見事な作品

2019年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

愛を描いた映画として出色で、日韓の複雑な歴史にスポットを当てた点でも高く評価できるし、表現の自由の大切さを訴えた作品としても素晴らしく、権力と大衆の愚かさの普遍性を描いたという点も見事。同じ時代を舞台にした『菊とギロチン』と合わせて観るとより深く理解が進む作品だと思う。
大正末期の関東大震災直後は、震災のショックと政治権力の圧力の増大という点で、現代とも共通した社会背景があるが、朝鮮人へのいわれなき非難などのデマの横行など、人々の行動もあまり変わらないようだ。日本人、韓国人の登場人物ともにフェアに描かれていて、国籍関係なく時代と権力に翻弄された人々の生き様を鮮烈に描いた作品だ。
有名な「怪写真」のくだりは、どの程度事実なのだろうか。作中の解釈は正しいのかわからないが、あの2人の人間性に惹かれた人間は、実際に権力側にもいたのだろうか。少なくとも、本作での、あの写真の撮影に至るまでの物語には非常に説得力があったと思う。あの写真の2人のふてぶてしさが全編に渡ってよく表現されていた。

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杉本穂高

5.0「福田村事件」大ヒットで再上映されている映画館も増えている作品。

2023年9月18日
PCから投稿

今年318本目(合計968本目/今月(2023年9月度)28本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 この映画自体はすでに公開から4年経っていますが、「福田村事件」が連日の立見席まで売られているようにヒットしている事情から、この映画に発展・関係するようなテーマの映画も同時に放映される傾向があり、この映画もその一つです。

 ストーリーに関しては、実話であることもあり、かなり厳密に描かれているな…といったところです(一部、「福田村事件」と関係して当時の差別事情があったことは前提として求められます。何にせよ「福田村事件」等何らかの作品を見てないと理解が難しいです)。

 ドキュメンタリー映画という要素もそこそこあり、あることないこと描けないタイプの映画になること、また、当時の思想感がそのまま表れているため、2023年の今日においてはやや不適切ないし配慮を要するのではなかろうかという字幕、言い回しも一応ありますが(注意書きはなかったはず)、映画の趣旨として当然使われうる範囲に収まっています。

 ストーリーという観点では特に触れるところはないものの、見る方が混乱するかなぁ…という説明不足に見られる点はいくつかあります。

 行政書士の資格持ちレベルでの感想です。

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 (減点0.3/2人がなぜ拘束されたのかの説明が不十分)

 当時の治安警察法の運用において、広く「何らか事件を起こしそうな人、思想が有害と思われる人」といった異様に幅広い対象をとって「予防検束(~けんそく)」(強制的に一時隔離するというもの。現在の行政法の考えでいうと直接強制にあたるもの)が、行政執行法という法律の規定のもと行われており、これによります。

 ただ、この予防検束は人権侵害という疑いが強いもので(直接強制それ自体も)、戦後はこれらは廃止され、趣が異なる「行政代執行法」という法に変わりました。

 ※ 現在(2023年)においては、特に人権侵害の恐れが強い「直接強制」が行われることはほぼありません(違法駐車の車をレッカー移動させるのは「即時強制」と呼ばれるものでこの2つは似ていて違います)。
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 (減点なし/参考/一部のセリフについて)

  ・ (大審院では)日本語を用いなければならない
  ・ (大審院において、必要に応じて)非公開の裁判ができる

 → 今の「裁判所法」の前身の「裁判所構成法」に定められていたもので、前者はそのままありますが、後者は日本国憲法へ移動し「秩序を乱すなどの恐れがある場合」について非公開とできる(判決は必ず公開)というようになりました(日本国憲法82条)。

 (減点なし/参考/大審院と現在の最高裁判所の違い)

  ・ 大審院と今の最高裁判所は「およそ」同じで、法律の学習における判例学習においては、解釈上有効な限り大審院の判例も学習しますが(例えば、民法177条における「第三者」が何を指すのか、は、有名な「大審院」の判例)、一方で、大審院には違憲立法審査権が認められない、下級裁判所への指揮命令権がなかった(当時は司法大臣が全権を握っていた)といった点が異なります(ただ、不完全ながらにも三権分立の芽生えが見られた当時の帝国憲法とそれから派生した不十分ながらの大審院ほかから構成される「不十分な」状態は、当時の世界水準でもまだ高い方であり、これが第二次世界大戦後に「十分な」今の姿になっていくのです(もっとも、現在も改憲運動があるように、「完全な」ものではないし、ある制度に「完全さ」を「常に追い求めていく不断の努力」は常に必要なのです)。

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yukispica

4.5今を生きる日本人に見て欲しい作品

2023年7月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

「私は人のために生きているのではない。私は私自身の真の満足と自由とを得なければならないのではないか。私は私自身でなければならぬ」

壮絶な人生を生きてきた者にとっての救いとはなにか。

私は女性だから、どうしても女目線で鑑賞してしまうから文子気持ちを想像しながら鑑賞した。

私は幸い今まで飢えることなく、屋根もある、清潔な寝床もある割と豊かな暮らしをさせてもらってきたから、ここで描かれる朝鮮出身者や文子のような理不尽な思いを受けたことがない。

だから、彼らや彼女達の想いをどこまで理解できるのかはあくまで想像力が試されるわけだけど、そんな境遇で生きるしかなければ、彼らのように突き動かされ、何かを変えたいと強く思うに違いない。

彼らは若く情熱もあり、そして純粋だった。純粋だから、生き様も死に様も清々しいほど一貫して、五十代の私にとってとても眩しい。人生の一瞬の煌めきの如く生きた文子に私は感動した。彼女の朴烈への深い愛情と信頼も純粋なだけに、ため息が漏れた。

これだけ互いを理解し合う同志に出会え、魂を重ね合わせたことは、ただただ地を這いずり回って生きた彼らにとって闇の中で見る光だったのではないか。

日本ではなかなかリアルな明治大正昭和を描く作品が少なくて残念に思うが、近代史こそ今の日本人にとって学ぶべき時代ではなかろうか。その時代を生きた人々の想いに想いを馳せることのできる素晴らしい作品だった。

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akko

3.5日本ではあまり知られていない歴史??

2022年2月6日
PCから投稿

私が無知ゆえだけど、こんなことがあったとは、まったくく知らなかった。
文子役のチェ・ヒソ、日本語うまいな~と思ってたら、小学生時代に日本にいたと知って納得。
絶妙な配役。
過去のことをいつまでも引きずらないでほしいと思う反面、こんなことしてきたんだから恨まれても当然、とも思う。
日本人も、自分たちの過去を知らないといけない。

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UNEmi