金子文子と朴烈(パクヨル)

劇場公開日:2019年2月16日

金子文子と朴烈(パクヨル)

解説・あらすじ

大正時代の日本に実在した無政府主義者・朴烈と日本人女性・金子文子の愛と闘いを、「王の男」「ソウォン 願い」のイ・ジュニク監督、「高地戦」「建築学概論」のイ・ジェフン主演で描いた韓国映画。1923年の東京。朴烈と金子文子は、運命的とも言える出会いを果たし、唯一無二の同志、そして恋人として共に生きていくことを決める。しかし、関東大震災の被災による人びとの不安を鎮めるため、政府は朝鮮人や社会主義者らの身柄を無差別に拘束。朴烈、文子たちも獄中へ送り込まれてしまう。社会を変えるため、そして自分たちの誇りのために獄中で闘う事を決意した2人の思いは、日本、そして韓国まで多くの支持者を獲得し、日本の内閣を混乱に陥れた。そして2人は歴史的な裁判に身を投じていく。ジェフンが朴烈役を、「空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯」のチェ・ヒソが金子文子役を演じるほか、金守珍ら「劇団新宿梁山泊」のメンバーが顔をそろえる。2018年・第13回大阪アジアン映画祭では「朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキスト」のタイトルでオープニング作品として上映された。

2017年製作/129分/PG12/韓国
原題または英題:Anarchist from the Colony
配給:太秦
劇場公開日:2019年2月16日

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映画レビュー

4.5 近代史を扱った見事な作品

2019年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

愛を描いた映画として出色で、日韓の複雑な歴史にスポットを当てた点でも高く評価できるし、表現の自由の大切さを訴えた作品としても素晴らしく、権力と大衆の愚かさの普遍性を描いたという点も見事。同じ時代を舞台にした『菊とギロチン』と合わせて観るとより深く理解が進む作品だと思う。
大正末期の関東大震災直後は、震災のショックと政治権力の圧力の増大という点で、現代とも共通した社会背景があるが、朝鮮人へのいわれなき非難などのデマの横行など、人々の行動もあまり変わらないようだ。日本人、韓国人の登場人物ともにフェアに描かれていて、国籍関係なく時代と権力に翻弄された人々の生き様を鮮烈に描いた作品だ。
有名な「怪写真」のくだりは、どの程度事実なのだろうか。作中の解釈は正しいのかわからないが、あの2人の人間性に惹かれた人間は、実際に権力側にもいたのだろうか。少なくとも、本作での、あの写真の撮影に至るまでの物語には非常に説得力があったと思う。あの写真の2人のふてぶてしさが全編に渡ってよく表現されていた。

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杉本穂高

4.0 アナーキーな恋人たち

2025年8月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

驚く

関東大震災直後に起こった朝鮮人虐殺の最中に逮捕され、爆弾による皇太子(後の昭和天皇)暗殺を謀ったというでっち上げの大逆罪で死刑判決を受けた(直後に恩赦で無期懲役に減刑)植民地朝鮮出身のアナーキスト(無政府主義者)朴烈とその恋人である日本人アナーキスト金子文子を描いた映画。

僕はこの2人を全く知らなかったが、それは韓国でも同様で出演俳優たちも全然知らなかったとのこと。朴烈ら同志は爆弾入手を計画はしたものの失敗に終わっており、また爆弾の使用目的もはっきり決まってはいなかったらしい。また金子文子には秘密にしていたのだが、彼女は自分も計画の仲間だと主張して、同様に逮捕された。大逆事件というでっち上げの構図も、彼らは自らの思想を法廷で主張するために積極的に受け入れ、堂々と弁論を展開していったという。

映画は2人の出会いから、関東大震災(CGも使ってかなりリアルな描写)と自警団による朝鮮人虐殺、国際的批判を恐れた政府による隠蔽のスケープゴートとしての朴烈らの逮捕と取り調べ、そして裁判までを描いている。全編日本が舞台で7割ぐらいが日本語の映画だが、日本在住経験のある韓国人俳優や日本出身の在日コリアン俳優や日本人俳優を多く起用しており、時代考証にも不自然なところはほとんどなかった。特に小学生の時に日本に住んでいたという金子文子役のチェ・ヒソはほぼネイティブな日本語の台詞を話していて非常に好演。朴烈役のイ・ジェフンも熱演だった。

唯一、ん?と思ったのは、内務大臣の水野錬太郎があまりにもわかりやすい悪役になっちゃってるところで、観終わってからパンフを読んだら、やはりそこは史実と異なるようだ。イ・ジュンイク監督の意図としては「日本人vs朝鮮人」という民族的な構図になるのを避けたかったようで、そこで水野1人に悪役を集約し、その一方で2人を支援する布施辰治弁護士などの良心派日本人も多数登場させているとのことだが、政府の中で1人だけ徹底的な悪役にされちゃった水野はちょっと気の毒。

自警団による朝鮮人虐殺やアナーキストによる天皇制批判などの描写は、いずれも史実であるとはいえ日本映画だったらなかなか描けなかっただろう。力作でした。

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バラージ

4.0 【”何が私達をこうさせたか!”大日本帝国時代に、稀代の悪法である治安維持法により死刑を言い渡されたアナキスト金子文子と朝鮮人アナキスト・朴烈の生き様を描いた作品。】

2025年3月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 関東大震災の際に、流言飛語により多数の朝鮮人が虐殺された事は有名であるし、近年で言えば傑作「福田村事件」で描かれている。
  だが、この作品で描かれているアナキスト金子文子と朝鮮人アナキスト・朴烈の生き様を描いた映画は、今のところまだない。
  この映画は、韓国でないと製作出来ないであろうと思ったし、どこかユーモアを漂わせつつ、強烈に当時の日本の姿勢を糾弾しつつ、アナキスト金子文子と朝鮮人アナキスト・朴烈の真なる愛を描いた作品だと思う。

  それにしても、私達はこれも稀代の悪法である、”特定秘密保護法”を成立させてしまった事を、本作を観ていると苦々しく思い出すのである。
  凄い作品を観たなあ、と素直に思った作品である。
  と共に、あのような時代を二度と作ってはいけない事も、改めて思わせてくれた作品である。-

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NOBU

5.0 「福田村事件」大ヒットで再上映されている映画館も増えている作品。

2023年9月18日
PCから投稿

今年318本目(合計968本目/今月(2023年9月度)28本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 この映画自体はすでに公開から4年経っていますが、「福田村事件」が連日の立見席まで売られているようにヒットしている事情から、この映画に発展・関係するようなテーマの映画も同時に放映される傾向があり、この映画もその一つです。

 ストーリーに関しては、実話であることもあり、かなり厳密に描かれているな…といったところです(一部、「福田村事件」と関係して当時の差別事情があったことは前提として求められます。何にせよ「福田村事件」等何らかの作品を見てないと理解が難しいです)。

 ドキュメンタリー映画という要素もそこそこあり、あることないこと描けないタイプの映画になること、また、当時の思想感がそのまま表れているため、2023年の今日においてはやや不適切ないし配慮を要するのではなかろうかという字幕、言い回しも一応ありますが(注意書きはなかったはず)、映画の趣旨として当然使われうる範囲に収まっています。

 ストーリーという観点では特に触れるところはないものの、見る方が混乱するかなぁ…という説明不足に見られる点はいくつかあります。

 行政書士の資格持ちレベルでの感想です。

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 (減点0.3/2人がなぜ拘束されたのかの説明が不十分)

 当時の治安警察法の運用において、広く「何らか事件を起こしそうな人、思想が有害と思われる人」といった異様に幅広い対象をとって「予防検束(~けんそく)」(強制的に一時隔離するというもの。現在の行政法の考えでいうと直接強制にあたるもの)が、行政執行法という法律の規定のもと行われており、これによります。

 ただ、この予防検束は人権侵害という疑いが強いもので(直接強制それ自体も)、戦後はこれらは廃止され、趣が異なる「行政代執行法」という法に変わりました。

 ※ 現在(2023年)においては、特に人権侵害の恐れが強い「直接強制」が行われることはほぼありません(違法駐車の車をレッカー移動させるのは「即時強制」と呼ばれるものでこの2つは似ていて違います)。
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 (減点なし/参考/一部のセリフについて)

  ・ (大審院では)日本語を用いなければならない
  ・ (大審院において、必要に応じて)非公開の裁判ができる

 → 今の「裁判所法」の前身の「裁判所構成法」に定められていたもので、前者はそのままありますが、後者は日本国憲法へ移動し「秩序を乱すなどの恐れがある場合」について非公開とできる(判決は必ず公開)というようになりました(日本国憲法82条)。

 (減点なし/参考/大審院と現在の最高裁判所の違い)

  ・ 大審院と今の最高裁判所は「およそ」同じで、法律の学習における判例学習においては、解釈上有効な限り大審院の判例も学習しますが(例えば、民法177条における「第三者」が何を指すのか、は、有名な「大審院」の判例)、一方で、大審院には違憲立法審査権が認められない、下級裁判所への指揮命令権がなかった(当時は司法大臣が全権を握っていた)といった点が異なります(ただ、不完全ながらにも三権分立の芽生えが見られた当時の帝国憲法とそれから派生した不十分ながらの大審院ほかから構成される「不十分な」状態は、当時の世界水準でもまだ高い方であり、これが第二次世界大戦後に「十分な」今の姿になっていくのです(もっとも、現在も改憲運動があるように、「完全な」ものではないし、ある制度に「完全さ」を「常に追い求めていく不断の努力」は常に必要なのです)。

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