ゴジラvsコング : 映画評論・批評
2021年6月29日更新
2021年7月2日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
満腹!“映画史上最も激しい怪獣バトル”に偽りなし!!
レジェンダリーによるゴジラ3作目は、2017年公開の「キングコング:髑髏島の巨神」と融合を成し、コングとの怪獣王を争うドリームマッチを実現させた。本家・東宝のシリーズでも「キングコング対ゴジラ」(62)というタイトルで顔合わせをしているが、リメイクとまでは行かずとも、人間が私利私欲で怪獣を手札にし、モンスター狂騒曲を鳴り響かせる作劇を受け継いでいる。
生態系の破壊者キングギドラを倒したゴジラは、タイタン(怪獣たちの呼称)の勝ち残りとして秘密機関モナークの監視下にあった。だがある日、再び人類の前に姿をあらわし、人工頭脳開発企業エイペックスの施設を襲撃する。理由は人類が生態系を乱そうとするのを察したからだ。いっぽう同じモナークに見張られていた髑髏島のコングも、新たな動きを見せる。タイタンの驚異的存在の源に迫ろうとするエイペックスと科学者チームが、彼を島の外に出し、生誕の地へ案内させようとするのだ。
かくして始まるコング輸送作戦。映画はこうした流れを、過去2作にはないハイテンポな編集でさばいていく。そして移動中の洋上で遂に両巨獣は接触し、映画史上最も激しいモンスターバトルへと一気になだれ込む。光線や飛行能力を駆使するギドラやラドン、モスラと違い、コングはステゴロ(素手喧嘩)のファイターだ。「眼前に立つ奴はひとまず殴る」のジャイアン主義で、ゴジラの顔面やボディに容赦ないパンチをあびせる。ゴジラも尾をしならせ倍返しで応酬。これがオレ様の流儀だ、返礼だと言わんばかりに!!
カメラも激闘を逃すまいと対象にグイグイ迫り、衝撃を食らって構図が乱れるといった、新鮮な映像スタイルを展開していく。そして彼らを脅かす第三者の介入など物語は波乱を起こすのだが、戦いの派手さに応じて都市破壊も大規模化。クライマックスの約30分間にわたる戦いづくめの展開は、必ずや怪獣映画ジャンキーたちを昇天へといざなうだろう。個人的にはゴジラの特徴的な背びれを活かした、前半部での「ジョーズ」(75)を思わす海戦演出に唸った。事実、今回はゴジラの背びれが重要なキーとなるので、その布石としてパワフルな印象を残すのだ。本作でレジェンダリーのゴジラはひとつの節目を迎えるが、いや待て、まだ登場してないヤツのライバルがたくさんいる。やっとモーターのコイルがあったまってきたところだぜ!(️(c)金田/「AKIRA」より)
(尾﨑一男)