ビール・ストリートの恋人たち : 映画評論・批評

ビール・ストリートの恋人たち

劇場公開日 2019年2月22日
2019年2月19日更新 2019年2月22日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

どんな差別にも、どんな迫害にも、どんな逆境にも揺るがない純粋な愛

この映画のドラマは4つの要素で構成されている。ひとつは、19歳のティッシュ(キキ・レイン)と幼なじみのファニー(ステファン・ジェームス)の黒人カップルが繰り広げる純愛ストーリー。2つ目は、子供を授かった2人を見守る家族の物語。3つ目は、レイプ犯の濡れ衣を着せられたファニーの無実の立証をめぐる法廷サスペンス。4つ目は、白人から犯罪者のレッテルを貼られる黒人の人種差別の苦悩を描く社会派ドラマの要素だ。

ジェームズ・ボールドウィンの同じ原作の舞台をフランスのマルセイユに置き換え、白人少女と黒人青年のラブストーリーに翻案した「幼なじみ」は、2番目の家族の物語の比重が高い。ロベール・ゲディギャン監督の共感の対象が、恋人たちの親であるからだ。

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一方、「ビールストリートの恋人たち」のバリー・ジェンキンス監督の共感は、100%ティッシュとファニーに寄せられている。だから、この映画の成分のほとんどは純愛ストーリーだ。ジェンキンス監督の前作「ムーンライト」の主人公が犯罪に染まっても失わなかったピュアな魂が、ティッシュとファニーの中にも息づいている。どんな差別にも、どんな迫害にも、どんな逆境にも揺るがない純粋な愛。その透明度の高さを象徴的に物語るのが、留置所のガラス越しの面会シーンだ。留置所の面会室で、ガラス越しに向き合ったティッシュとファニーが愛の言葉を口にするとき、2人を隔てるものはなくなる。そう感じさせるカメラ目線の演出がうまい。

ファニーを救う証言を得るためプエルトリコへ飛ぶティッシュの母、「アラバマ物語」のアティカス・フィンチのようにファニーのために闘う白人弁護士。ドラマを構成する家族と法廷の要素は、脇役を通じて控えめに、しかし的確に語られる。そして、理不尽に引き裂かれたティッシュとファニーの姿が、4番目の要素を強く印象づける。アメリカのどの町、どの時代にもいる名もなき恋人たちの物語。それをジェンキンス監督は、差別に愛で立ち向かう誇り高い同胞の物語として描いた。

矢崎由紀子

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