蜜蜂と遠雷のレビュー・感想・評価
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音楽と映像が良い
原作は知りません。
ストーリー的には、面白くない訳ではないのですが、大絶賛するほど面白い訳ではないかと…。
ただ、4人のピアニストたちの演技は、素晴らしかったです。そして、やっぱり、音楽。ピアニストのお話なので、音楽があるのは当たり前なのですが、音楽と映像の相乗効果を感じられます。今回は、雨音や雷の音なと自然の音も聞こえてきたりして、より、ピアノの音が強調されていたように感じました。こういう時に、やっぱり、映画っていいなって思います。
さて、今回の4人のピアニストですが…いい人たちですね。こういう作品の時って、必ず、陥れようとする人がいるじゃないですか…。仲良く4人で遊びに行ったりして、なんて平和なんだろうと…。正々堂々と競ってるあたりも好感持てました。
落ちても救いはある
音楽が流れ続ける映画で、音楽に興味のない人には面白くないとは思うが、音楽にまったく興味がない人というのは滅多にいないと思うので、程度の差こそあれ、それなりに多くの人々が楽しめる作品だと思う。
ストーリーと言うべきものは殆どなく、コンテスタントたちの群像劇である。最も重要なシーンは、主人公栄伝亜夜が子供の頃に母親とピアノを引きながら、自然の中にある音楽をピアノを通じて表現できることに気づくところだ。これが蜜蜂のシーンだと思う。次はコンクールを通じて親交が生まれたコンテスタントたちが遠くの遠雷を眺めるシーン。これは見たままの遠雷のシーンである。このふたつのシーンによって観客は、主人公の心に自然と生命の息吹とも言うべきものとの共生感が生まれたことを知る。表現すべきことは既に手に入れた。そして表現するための技術はとっくの昔に身に付けている。あとは心にかかるブレーキを取り去るだけだ。
実は心のブレーキを取り去るのは非常に難しい。それは理性でもあるが、生命の防御本能でもあるからだ。
怒りを覚えたからといって誰彼構わず殴りかかったりしないのは、自分の基本的人権が守られるように他人の人権を尊重するためで、それは理性の働きである。しかしそれだけではなく、日常生活の安定を失うことの恐怖でもある。
恐怖心が少なく、いつでも自在に振る舞える強気な人間が世の中を支配する。それは簡単に言えば暴力による支配だ。暴力的な指導者がエスカレートすれば戦争になる。人間の世の中は理性的ではないのだ。
社会が暴力的だと、恐怖はますます強まり、心のブレーキは強くなっていく。ブレーキが強くなりすぎたら、外に出られなくなる。即ち鬱病だ。
従って我々はブレーキを適度に効かせつつも、ときにはそれを断ち切って自分の心を解き放つ必要がある。そうしなければ前に進めないからだ。
主人公がそうやって一歩を踏み出す再生のストーリーであるが、コンクールに落ちたときには落ちたときの人生があることを作品は同時に描き出す。音楽がすべてだが、コンクールがすべてではないのである。そこに救いがある。
松岡茉優は相当に気合いの入った演技をしていて、自信と不安の間でメトロノームのように振れる気持ちがよく伝わってきた。主役を張るには少し存在感に乏しい女優だが、本作品の演技は一生懸命な、いい演技だったと思う。悲しいよりも幸せな表情が似合う人で、特に月を見て「ペーパームーン」や「月光」を弾くシーンはほのぼのと楽しそうで、心に残るシーンだった。
退屈でした
本は読んでいませんが、昔ピアノを嗜んでいたのもあり、とても楽しみにしていた作品でした
が、前半は眠くて眠くて……
と言うのも、グッと引き込まれる、心を鷲掴みされる描写がなくて、見終わってみると、ダラダラ長い映画だったなと言った感想でした
タイトルと物語が合致しない感もあるような……
指揮者ですが、指揮を覚えたての小学生がいっちにーさんしーと、振ってるみたいで、少し違和感……
あと、黒い馬!あれはなんだったのでしょうか??(どなたか教えてくださーい!)
最後に……塵役の鈴鹿央士くん、愛らしかったですねー.゚+.(・∀・)゚+.゚
彼が使っていたピアノ……昔の大映ドラマ、少女に何が起こったかを思い出しました笑
今後の活躍に期待したいと思います
ピアノ星からやってきたピアノ星人
2019年6作目。今年は邦画しか見てない気が…。タイトルちょっとふざけてますが、「りゅうおうのおしごと」11巻を読んでいるところなのですみません。
コンテストなのでもっとシノギを削るのかと思いきや、良い意味で刺激しあって奏でるハーモニー。
最後の亜夜の笑顔が最高でした。
さて。マンガなら解説役に回る彼ですが、取材スタッフと知り合いということで強引に出入りさせてました。ちょいと無理筋でしたね。
演奏ではマサルよりも塵や亜夜で鳥肌が立ちました。楽しそうに演奏する演技も相まって、塵の演奏が一番心に響いた気がします。でも、亜夜を応援してしまうのですが。最後にコンテストの結果が字幕で出ますが、あなたのコンテスト結果はどうだったでしょう。
演奏たっぷり
原作を読んだ方が良かったのかな
ピアニストを目指す4人がフューチャーされているが、全員にスポットを当てているため部分部分がわかりづらい。あと片桐はいりの描写はけっこう謎だったりする。
原作読んで予備知識があったらもっと深く入り込めて楽しい映画だったのかもしれない。
世界は音に満ち満ちていて、私はその1つになることができる
ピアノを鳴らす。
小説は既読。とても好きな作品。
映画は原作とよく似ているが、完全な別物と感じました(それが悪いという意味ではなく)
すごく良かった一方で、細部が本当に残念でした。
カメラワークやショットが本当に綺麗。これはテーマの「世界は音楽に満ちている」を絵で表現しようとしたんだと思いますが、とても良かったです。その先のメッセージも綺麗に落とし込まれていました(少し明確に示しすぎ、かとも思いましたが。原作のボカす感じが好きなので)
二次予選、およびクライマックスの演奏は圧巻でした、演奏も表現も。主役級4人は皆良かった。
一方で特に序盤、説明セリフが酷い。というか会話が全部説明じゃん。そんな最初から全て求めてないですよ。
原作は著者恩田陸お得意の群像劇ですが、本作では松岡茉優演じる女性1人の物語だと感じました。
それなのに群像劇としてのスキームを捨てられていないので、特に森崎ウィン演じる役とか、要らなくね?という印象。演技は決して悪く無かったですけど。演出の問題。
あと調律士とかクロークとか審査員とかを事あるごとに描写しているのも、やっぱり群像劇にしたかったのかな、1人の話なのか皆の話なのか、振り切れていなくてすごくモヤモヤしました。いらないし、下手。
自らの高みを目指す若者たち
国際ピアノコンクールに参加する4人を中心に、自らの高みを目指す若者たちとそれに関わる人々を描く。
松岡茉優と森崎ウィンの再会を軸に、宮沢賢治のような松坂桃李、謎の少年、風間塵がからむ。主役は松岡茉優だが、少女時代の母との連弾を繰り返し描いているが、最終審査に臨む葛藤や覚悟を決めたあたりの描き方は、少し弱かった。雨中の馬のスローモーションは、「愚行録」のバスのシーンを思い出させもするが、今ひとつ意味が読み取れなかった。
タイトルの意味は、他の若者たちに刺激を与える陰の主役、風間塵を現しているのだろうか。
ピアノシーン、オーケストラとの協奏シーンなど、音楽は良かった。特にラストのプロコフィエフ第3番が素晴らしかった。
音楽って共鳴して広がる
人と人が繋がる方法はコミュニケーションを取ること。
一般的に、人は言葉や態度、仕草で他者との距離を測り、自分の居場所や意思を伝えて生活している。
それがいわゆる「普通の感性」だ。
芸術の側面ではこの「普通の感性」を表現する媒体が音楽や絵画やダンスや歌だったりする。
「普通の感性」を一般的なやり方でない方法で表現するからこそ「芸術」なんだと思う。
役者の演技力でもって、キャラクターの心の揺れ動きが分かりやすく伝わってくる。
芸術に触れるとそれを自分の中に取り込んで咀嚼して、急いでアウトプットしたくなる気持ちはとてもよく分かる。
良いものは波紋のように広がって、自分の中の何かを形にしたい衝動に駆られる。
その余波を共感できた者同士が共鳴すると、観ていた景色が広がっていく。
きっと、絵を描いたり、ピアノを弾いたり、何かを表現することが好きな人には刺さる映画だと思う。
ただ、個人的に評価が3止まりなのは、キャストに少し不満が残ったからだ。
レポーター役のブルゾンちえみと指揮者役の鹿賀丈史が自分的にはミスキャストだったように感じてしまった。
ブルゾンちえみは存在感が薄い方が良い。観客の知識補填役として、素人の立ち位置でコンクールや参加者の説明をしてくれる役所なのだが、随所で目に入る。バラエティでは爪痕を残すことが最良の仕事だが、映画においては作品の中に溶け込む演技力を身につけてから仕事を引き受けて欲しかった。彼女が悪いわけではなくて、他の役者の演技力が優っているので浮いて見えるのは仕方ないのかもしれない。
鹿賀丈史に関しては明らかに指揮者役の勉強不足だと思う。オーケストラを束ねるコンマスだよね?指示出してる?って思うくらいただ手を振っているだけ。一筋縄ではいかない指揮者をやるなら、100回は原曲を聴いて少しは自分で振るぞって気概がないと何のためにこの役に選ばれたんだか分からないよ。
他の役者さんが実際にピアノは弾けなくても、目線や表情で演奏の芝居をしているのに対して、少しどころか素人目にもお粗末な指揮者だった。
作品自体はキャラクターの心理描写に特化した良作で、音楽をテーマとした難しい作品をここまで映像化した良作だと思います。
素人が偉そうなことを書きましたが、胸にグッとくる表現力のエネルギーを是非劇場でお楽しみください。
音響の良い映画館でご覧になることをお勧めします。
それから、今回はポップコーンよりホットドッグがオススメです。
神の息吹が感じられるレベルで競い合う若者たちの姿はそれぞれに美しい...
神の息吹が感じられるレベルで競い合う若者たちの姿はそれぞれに美しいものだ。観ながら、この高みはどんな芸術でも、サッカーでも卓球でも同じではないかという気がした。純真に努力を積み、目標に向かって頑張っている全ての人に勇気を与える作品だったと思う。天才というのは所詮努力の結実であるからだ。新人鈴鹿央士の演技は途方もない傑物そのもののはまり役。鹿賀丈史が渋くて良かった。斉藤由貴の英語ふにゃふにゃ。映画の後で小説上下を読んだけど、原作よりむしろ良い。原作は下巻が冗長、三次予選間引くべき。映画では指揮者小野寺が亜夜の鍵盤をボーンと叩くエピソードが造られていたが、良かった。この映画は成功していると思った。
見応え聞き応えあり
母を亡くした事で挫折した少女ピアニストが、再び音楽家に戻るべくの挑戦と、それに絡めたコンテスト参加者のあり様や、それぞれの心模様を描いている。
とは言え、天才ピアニストアヤを演じる松岡の挫折は理解出来たが7年の空白を表すには、もう少し描き方があったのでは?とも思えた。
ともかくも、演奏シーンが素晴らしい。それぞれの演奏家としてのシーンも素晴らしかったが、なんと言っても月の光を見て、アヤとジン、二人の連弾、月光を弾くシーンは痺れた。
この映画は、音楽はもちろんだが、映像として、スローモーションの雨の馬のシーン、海の向こうの遠雷、何度も出て来る母との連弾シーン、その部屋の様子、ピアノを弾く手、アヤがコンクールでピアノを弾いた時、ピカピカのピアノに映る昔の自分と母の連弾場面。音楽と映像で、心情を現していた。
見応え、聞き応えがある映画であった。
見逃さなくてよかった
予告編を見て気にはなってなっていたけれども、スルーしていた。ムービーウオッチメンで宇多丸さんのレビューを聞いて見てみたいと思い、映画館に足を運んだ。
見逃していたら絶対に後悔していた。今年の日本映画で最高だと思う。
コンクールでの演奏場面がすごい。舞台袖の控え室からカメラが回り、演奏者の主観ショットに切り替わるので、見ている自分がそれぞれのコンクーラーとシンクロして演奏に臨む。会場からの視点に変わると、見ている自分たちが、一切の音を発することが憚られるコンクール会場と同じ緊張感に襲われる。劇場内では、誰もポップコーンに手をつけない。
演奏シーンがすごくよい、超絶技巧であることは、クラッシックに素養がない自分にもわかる。技巧的であること以上にピアノの弦が発する音の波が自分を歓喜の世界へといざなってくれる。
ピアノの音に酔いしれたのは、生まれ始めての体験。
なんていっても松岡茉優。トラウマがある元天才少女の見事に熱演していて、栄伝亜夜に一番感情移入してしまった。風間塵との連弾シーンは、もう一度見てみたい。月を見ながらピアノを一緒に奏でる二人は、音楽を心から楽しんでいた。
題名の「蜜蜂と遠雷」が不思議でしょうがなかったが、納得できた。自分もあらゆる音をミュージックとし楽しめるのではないかと思う。
面白かった。
蜜蜂は?修羅は?
原作より登場人物がコンパクトにまとめられていて良かった。
しかし主役4人の描写が不満。
・タイトルにある蜜蜂は、「父が養蜂家」このセリフだけ?
ジンは、練習風景よりも自然児たる姿を見せて欲しい。麦わら帽子被せてお終いにしないで。
・明石は、やけに比重が大きいように感じた。「生活者の音楽」というセリフも多すぎる。
・アヤについては、ジンから触発される様が分かりにくいのではないかと思う。
修羅と母、このセリフを必ず入れるべきだっだと思う。
・マサルの葛藤は、先生との衝突だけで良かったのでは?オケの描写の蛇足感。
・後は審査員が中途半端な感じ。いっそ一切発言させずに権威的に描けば良いのに。
「元天才少女からのアドバイス」も唐突。
含みのあるセリフ(離婚の慰謝料)は、原作読んでなきゃ伝わらないと思う。
・雨(ギャロップ)の映像がやたらと出ていたけど、あまり効果をなさないのでは?
・音楽については、ひとつだけ。
ジンがサティを間奏に使うの、聴きたかったなぁ〜
・純粋に楽しみに行った。物語や音楽に没頭したくて。だから残念。もっとのみ込まれたかった。
・最後に、英語のセリフが多々あり、その間字幕です。お子さんと見る方ご注意を。
若い専門家たちが集う場の空気感を味わう
残念ながら、原作は未読。
一つのイベントを通して若者たちの群像劇を描くのは恩田陸の得意技だから、是非読みたいと思っている。
この映画は、まず松岡茉優の魅力に尽きる。
彼女の独特の間というか、特にクスッと微笑してから台詞に入るときの表情と声のトーンは、彼女の素の癖かもしれないが、なんとも不思議な雰囲気で忘れられない。本作の役は明るいキャラクターではないから、これが凄く活きている。
そして、松坂桃李。
4人のメインキャラクターの中で唯一の大人であり普通人である役回り。芸達者な松坂桃李ではあるが、今回は「生活者の音楽」を追求しながらも家庭人であるという男を自然体で演じている。
全編で一番好きなのは、4人のコンテスタントと記者(ブルゾンちえみ)が海岸で一時を過ごす場面だ。
3人の天才たちが、砂浜に着けた足跡で音楽を表現し合ってはしゃぐ。それを高いところから見下ろして「僕にも分からない。あっち側の世界は」と言う松坂桃李の、羨むでもやっかむでもなく天才たちをいとおしむ眼差しが印象的だ。
松岡茉優(栄伝亜夜)が鍵盤に指を降ろす瞬間でタイトル表示に切り替わるアバンタイトルから、凝った演出が随所にあって画面に惹き付ける。
亜夜の幼少期の回想シーンが繰り返し挿入されるが、母親とのピアノ練習の場面が何度目かになる最後で初めて母親(キタキマユ)と少女の会話を映し出す。幼女が音楽に目覚めるこの瞬間が優しさに溢れていて心に残る。
エンドロールで、4人それぞれに一人づつ演奏担当のピアニストがついていたことが分かる。
だが、多い少ないの差はあれど、4人ともに鍵盤を叩く本人の指が映される場面があり、感心した。
世界に溢れる音
原作は未読で予告だけを頼りに鑑賞。
第一印象は、よく出来ていたと思う。それぞれが悩みや葛藤を抱えており、厳しい現実と向き合いながら自分の殻を破ろうともがく人間模様が面白い。
映像も美しく、心理描写をVFX交え上手く表現していると思った。
テンポも良く、気持ちの良いドンデン返しもあり総評として及第点。
しかしながら、気になった点もある。
一つは、心理描写の黒馬の扱い方。原作に絡んでいるのかと思いつつも、かなりクローズアップされているので、意味を考えるが最後まで分からなかった。なので色々と調べてみたら、世界は音楽で溢れているという表現の中の一部で、雨だれの音が、走る馬の蹄の音に聞こえるという、英伝亜夜の子ども時代の一節らしい。その表現が亜夜が成長する為の心理描写として描かれていたと理解したのだが、であればただ単にスローにして表現するのではなく、雨だれの音が馬の蹄に聞こえるというような母親との会話などがあればより深く理解出来たと思う。音の表現を映像だけで表現しようとしたのは、はっきり言って失敗だと思った。
もう一つは、手持ち撮影の多さ。コンクールに出場する奏者の不安な心理を、不安定な手持ち撮影で表現しようとした演出は良いと思うが、使用する箇所があまりにも多すぎると思った。途中で少し酔ってしまい、気持ちが冷めてしまった箇所が何度かあったので、ここぞという時に手持ち撮影という考え方があっても良いと思った。もしくは、ひどい揺れの箇所をスタビライズして揺れを緩める手法でもだいぶ違うと思う。
最後に、コンクールの結果の順位がよく分からなかった。ピアノの良し悪しは素人には分からないので、結果を見てもふーんそうなんだとしか思わず、なんだかモヤモヤした。盛り上がりはラストの奏者が一番盛り上がるのは分かるけど…。
という感じ。
しかし、役者も脚本も演出も全体としてよく出来ており、見応えもある。
観ても損はしないと思います。
綺麗だった
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