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2017年はインド海軍潜水艦隊の 50 周年にあたり、14代大統領ラーム・ナート・コーヴィンドは名誉記章を潜水艦部隊に与え彼らを讃えた。そういう背景からインドでは珍しい潜水艦映画が誕生したのであろう。(以下ネタバレです)
舞台は第3次印パ戦争直前、ヴィシャーカパトナム沖で謎の沈没を遂げたパキスタンの潜水艦ガジについて、実はインド海軍のS21潜水艦のお手柄、戦争秘話として描いている。
パキスタン海軍に不穏な動きがあることを知ったインド海軍上層部はS21に偵察命令を出す、ただし艦長のシンは好戦的な性格であるため不用意に先制攻撃を仕掛け戦争を引き起こすことを懸念してお目付け役のヴァルマー少佐を付けたのだった。この辺は「空母いぶき」の葛藤と相通じるところがありますね。
典型的な海軍を持ち上げた国威高揚映画なのだがインドは野蛮な好戦国ではないとするために暴走艦長にブレーキ役を付けたり、軍人が戦うのは国民の安全、安心のためにあると、わざわざ民間人の婦女子を艦に載せる設定までして保険をかけるのに懸命です。
加えて艦長は狂人ではなく司令部が攻撃を躊躇ったせいで息子を戦場で犬死させられた過去があるとか、対立する少佐を庇って死んでしまうというお膳立てまでしていざ艦長の弔い合戦に挑むと言う回りくどいと言うか手の込んだプロットにしている。
潜水艦ものでは艦長同士の頭脳戦が醍醐味だがさして凄みや切れ味は感じられず残念、あえて艦の故障をハンデとして緊迫感を盛り上げているのでは物足りない、ただ、魚雷ではなく機雷を仕掛けるところは珍しい。
深海に逃げるのも潜水艦の醍醐味、潜水艦に馴染みのないインドの観客への配慮なのでしょう、映画の冒頭で新米水夫に卵を割って、水圧の恐怖まで見せる念の入れよう、ただS21カランジは最大深度250mの仕様だから450mも潜れる訳はないのだが、そこは映画のご愛嬌。
さすがにダンスシーンは入れようがなかったのだろうが、あえて全員の大合唱でソナーを通じて敵艦に悟らせるという設定で歌はしっかり入っているところは紛れもないインド映画ですね。