ラストレターのレビュー・感想・評価
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岩井俊二監督の力業
アタクシ的には『リリィ・シュシュのすべて』でコテンパにいてこまされて以来、
19年振りの岩井俊二監督作品。
いやはや、(『スワロウテイル』とか『リリィ・シュシュ~』みたいな)
激 し い 場 面 等 一 切 な い の に も 関 わ ら ず、
岩井監督の力業で捩じ伏せられたといった印象。
如何せん登場人物の皆々様がえぇ人なのか何なのか、我々観衆 (=外野) が観ながらにして感じるであろう “違和感” に本人達は何の疑問を持つ事も ましてや怒るなんて事なんか絶対にないままに (笑) 只々ゆったりと淡々と物語は進む。
そのせいかコチラが「いやいやいやっ」と苦笑いを浮かべてしまったとしても、流れ行く画面世界は終始平穏である。
心がほっこりしたりする景色や日常の何気ない会話、懐かしさを覚える瞬間や ぷっと吹き出してしまう様な微笑ましい行動、学生時分も大人になってからも伝えたい気持ちを上手く伝えられないもどかしさ、甘酸っぱさ、
そして胸を締め付ける事実──。
それらを丁寧に、実に瑞々しく彩るのが他でもない 魅力溢れる出演者達なのだ。
演技をしていない様な演技と云うか何というか (稚拙な表現でほんまに申し訳ない…)、主要キャスト達からは「是ってほんま素ぅのまま喋ってへんか??」と疑ってしまう様な台詞っぽくない台詞が度々出て来て、思わずはっとさせられる。
そんな話の核を成す人々に加えて誰もが知っている超有名俳優達 (例えば Love の Letter さん両人とかw) が重要な脇役として現れ、強烈な印象を残し 更に作品を盛り上げる。
嗚呼素晴らしい。
既に様々宣伝されている “発明” とも表現出来る物語導入部分の展開を劇場にて実際味わってみるのも中々にえぇモンやと思うが、どうか?
そして、知らぬ間にアタクシの様にどっぷり浸って頂ければ是幸いだ。
ほっこり、あたたかくなる映画・・☆
どうなのかなぁ・・と若干 懐疑的な思いも持って観た映画でしたが、
思ったより ずっと素敵な映画でした。
福山雅治は、「マチネの終わりに」よりもずっと良かった。
決めてるギタリストよりも売れない小説家の方が雰囲気がある感じ。
個人的には、時々 手紙を書きますがやはりSNSとは違うやりとりの
タイムラグとかにも心ときめきます。
何より少女二人の演技が素晴らしくて、広瀬すずは安定しているが
それよりも、森七菜の初々しさがすごく良かった。
岩井俊二監督の映像も美しかったので、廃墟となった高校で、
福山雅治がボルゾイを伴った二人を見かけるシーンなど絵画のようでした。
配役も、廣野秀明以外はベストポジション。
豊川悦司と中山美穂が、壊れた男とその女な雰囲気にピッタリだったし、
松たか子は相変わらずのそつのない役どころ。
ある意味、じれったいくらいの恋愛映画ですが 逆にその分新鮮に
感じていました。
ラブレター、ラストレター
「早春の風に背中を押されるように…」
乙坂は未咲に背中を押されたのだ。
そして、早春の風が通り過ぎるように、未咲は乙坂の元を去った。
高校時代の裕里も、大人になった裕里も、寂しそうな笑顔が印象的だ。
願っても叶えられない恋もある。
叶えられずとも、未来は決して暗くはない。
たとえ叶っても辛い恋もある。
辛くても人は乗り越えなくてはならない。
屈託のない鮎美と颯香のやり取りや、未咲の死を受け入れ乗り越えようとする鮎美に若さの可能性を感じる。
この4人で交わされた手紙は、皆と亡き未咲を繋ぐ。
乙坂から未咲への手紙は、鮎美と未咲をより深く繋ぎとめる。
人を想い続けることはラブレターを書くこと同じだ。
しかし、いつか終わりにしなくてはならない。
未咲が乙坂と作った答辞は、鮎美へのラストレターとなった。
答辞は、それまで一生懸命に過ごしたというメッセージだ。
ラストレターは、未咲が一生懸命生きたという鮎美へのメッセージだ。
だから、鮎美の背中を更に強く押すのではないか。
早春の風よりも少し強く…。
何か好きです
本人を装ったり、本人に届かなかったり、ヤキモキな感じが松たか子さんの可愛らしさで表現されていて良かったです。
松さんの姉になりすましていたら、姉が生きている様な感じがして、亡くなった人も思い続ければ生きているのと同じみたいな台詞を言われたとき、涙がハラリと出ました。
お姉さんの恋は大学で何があったのか、詳しくは描かれていませんでしたが、そこがまた妄想を掻き立てます。大人に是非観てもらいたいラブストーリーでした。
私はいい作品だと思います。
良い映画を観た。
登場人物が言って欲しいことを言ってくれる、言って欲しいことを超えることを言ってくれる映画。相変わらず子供を描くのが独特。世界観という言葉は好きではないが、岩井俊二の懐中の中で気持ち良く抱かれた様な心地良さがあった。矛盾やそんなうまくいかないだろうと思う点もあったがそんな事は些細なこと。神木隆之介は岩井映画が描く子供群像から浮いた感じがったが新しい味付けになった。
全てを語らない、想像の余地を残した奥行きのある、これこそ2時間のエンターテインメント、完璧な映画でした。現在の未咲を描かない、未咲と鏡史郎のやり取りは最小限だけど雰囲気が感じ取れるいい塩梅。にくい。
キャストについては森七菜は素晴らしく、蒼井優のような存在になるのではないだろうか。主演作が見てみたい。庵野秀明だけが疑問。それで減点(嘘)w
じんわり泣けます!
涙好きの私はまた観てしまいました。この作品の登場人物、皆さんものすごくピュアに演じているので心に刺さるのです。初恋がテーマですからそういう風な演技になるのは分かるのですが、すごくビシビシと感じました。
この映画は初恋の重さをしっかり描いていて、ある意味魔力のように人間の一生を左右するような流れに、うなづいたり違和感を持ったりと、複雑な思いで観ました。それとともに、違う人が手紙を書いたり、相手の素性を知っているのに知らないフリをするところは、とても気になりましたが、これはストーリーに深みを持たせるという意味では納得。
また、題名通り手紙が小道具となっていますが、何故か京アニの自動手記人形のストーリーのような細やかな展開に唸りました。
にしても、すずちゃんが星の王子様がもう少し早く来てくれていたら、母は死ななかったという残酷な現実に涙がこぼれました。
ヒロインは亡くなったことが作家にとっての起死回生になりましたが、やはり良い小説は悲劇から生まれるのでしょうか。
最後に感動の場面をいくつか。すずちゃんが自転車に乗ってきて、神木が初めてマスクを取った彼女を観た時の驚き、これが恋に落ちる瞬間なのかと胸が苦しくなりました。可憐さマックス。
姉妹が過去と現在2役やるわけですが、まさにすずちゃんのオンパレードで感激。あと、仙台が舞台ですが、その美しい自然は秀逸でした。ぜひ、鑑賞してください。
もう一度、美咲に宛てて書く、手紙のこと。
室内の「画」が最高です。ホントに見とれた。乙坂が遠野家を訪れた場面の陰影。喪失の哀しみを共有する3人。言葉を失う颯花は、暮れなずみ行く夏の午後の暗さの中に。美咲の本心に触れて絶句し、後悔しながらも、書く意欲が再び芽生え始める乙坂の背景は、少し明るい外を背景に。母が、心のどこかで待ち続けていた乙坂を前にして、哀しさと嬉しい気持ちが混ざり込む鮎美は平坦な感触の浅い陰影。撮影監督は神戸千木さん。ごめんなさい、存じ上げませんでした。が、前半部のドローン多用は気になりましたが、人物の撮り方が、最高に好みです。同窓会を出て行こうとするも途中で足を止め中を伺う松たか子さん、バス停でアドレスを交換する二人の距離が少しづつ狭まって行くワンカット、飲み屋での豊悦の薄暗さ。なんか、その他諸々の色んな場面で素晴らしさを感じました。
映画の方は、松たか子さんパートと福山雅治パートに大別できます。コミカルでクスクスしてしまう松たか子さんパート。いや、「夢売るふたり」で松たか子さんの演技に衝撃を受けて以来、俺の中では日本最高の女優さんなんですけど。やっぱり彼女の芝居は別格です。天然入ってる可愛すぎるオバサンですよ。場外では「みちのたびへーー」なんて歌声も流れてるし。全くもう、どうなってんの、彼女w
福山パートは泣かしに来る、かと思いきや。こっちは、小説家としての再生パートで、お涙頂戴には来ません。ちょっと予想外。
阿藤の意地の悪い、しかし辛辣な言葉に打ちのめされた乙坂は、閉鎖された母校を訪れ、美咲と裕理の娘と偶然出会い、美咲の実家を訪れる。美咲に送り続けた手紙が、美咲の宝物であった事を聞き、阿藤の悪魔の言葉の呪縛から解放されます。卒業式の答辞の添削をした日、小説家になれるよと褒められた思い出。その言葉通りに小説を書いた自分を、美咲は喜んでくれたのか。懐かしんでくれたのか。いつの日か、かつての恋人だった乙坂が、自分の元に現れてくれることを夢にみていたのか。誰にも分んないよ、今となっては、そんなこと。だけど一つだけ、乙坂は確信したことがある。書き続けることが、彼女への供養になるのだと言うこと。彼女の願いを、叶え続けることになるのだと言う事。
娘の鮎美に宛てた封筒の中には、答辞の原稿が、折りたたまれて入っていました。何度も、何度も、何度も開いて折りたたんでを繰り返した後の、ボロボロな状態で。
Last Letter は、まだ、この世に存在しない。
これから。乙坂が書くのだから。また、美咲に宛てて。
って事で。
クスクスから滲みぃぃぃに転じる、豪華キャスト使い切りの岩井作品。観終わってから、地味に噛みしめ直してます。正直言いますと、俺、広瀬すずが大嫌いなんですけどw これは良かったです。ちょっと吹っ切れて来ましたか?
良かった。地味に。
ちょっと眠くなったけど、もう一回見ても良いと思うくらい。
言葉にするのは難しい
手紙がテーマということで、言葉を大事にしているというか言葉の一つ一つが身体に染み渡っていくような趣があったように感じる。それは台詞の力ももちろんあるが、役者の声の力も大きいように感じた。言葉を発するというよりも、台詞を唱えるというよりも、役者の肉体に宿った登場人物の声が溢れ出しているような。
ラストレターの正体は愛した人とともに綴った最初の手紙だった。かつては彼に宛てて、自分に宛てて、友に宛てて書かれた手紙が、時を超えて娘の元へと届く。彼女にとって最も美しく素晴らしい時代の言葉が、数十年を経ても変わらず誰かに届けたい言葉となっていたことはロマンチックでもあるが、同時にその言葉に縋るしか無かったのが哀しい。
他の登場人物と違って、鮎美が広瀬すずの姿しか持たないというのが止まってしまった時間や、過去の幻影としての切なさが際立ついい演出だったと思う。
松たか子がラストで福山雅治と握手するシーンが個人的には一番感心したポイント。「先輩と握手できた」と喜ぶ姿が、高校時代を演じた森七菜の祐里が本当に歳を重ねた姿なのではと思うくらいに二人の演じた祐里が一つの存在として繋がっていた。
主題歌の『カエルノウタ』も素晴らしいですね。
未咲は何故、あんな男と結婚してしまったのかな⁈
亡くなったばかりの姉、未咲(広瀬すず)の高校の同窓会に出席した妹、裕里(松たか子)が過去手紙を通じて姉と交際をしてた小説家、乙坂(福山雅治)と会った事から物語がスタートする。
ある事情から同窓会の席で姉の死亡を言えないままに未咲として出席した事で複雑な展開になり乙坂と手紙の交換を続ける事になる。
一方、未咲の娘鮎美(広瀬すず)と裕里の娘サヤカ(森七菜)は実家に届いた乙坂の手紙に対して悪戯心で未咲になり変わり返事を書く。
過去、姉と文通してた乙坂に恋心を抱いてた裕里は突然訪ねてきた乙坂に姉の事を正直に話してしまう。
事情を知った乙坂は懐かしさの為、今は廃校となった高校を訪ねそこで偶然、未咲と瓜二つの鮎美と出会い家に案内される。
そこで過去の未咲と乙坂の事、それと未咲と結婚する事になる阿藤(豊川悦司)と言う男の事。
過去20数年前の高校時代の回想シーンと現在の展開を織り交ぜながらそれぞれの人生模様を描く作品ですが、高校時代優秀で憧れの的であった未咲が悲しい結末で亡くなってしまうストーリーがやらせない!
一言で言えば、何故あんな男と‥‥と思いましたが未咲の旦那の阿藤も自分の人生に苦しんでいた。
人生と云うのは一筋縄ではいかない難しいんだな〜とつくづく考えさせられます。
鮎美が乙坂にお母さんもいつか迎えに来てくれる事を
思っていた。と、さらにもう少し早ければ。と‥‥
とても感動する良い作品でした。今はメールが当たり前の時代ですが、手紙が懐かしくなりました。
また、回想シーンと現在のサヤカと鮎美を演じた森七菜と広瀬すずの演技もファンタジーなシーン凄く良かったです!
回想での乙坂役の神木隆之介も福山雅治と違和感なく演じてピッタリの配役でした。
最後に難点が一つだけあります。それは高校時代未咲の妹である裕里と乙坂が何度も会ってたのにもかかわらず、現在の同窓会シーンで乙坂と会った時などずいぶんよそよそしい雰囲気がありました。
その点がひっかかり0.5点の減点となりました。
作品のスタートとラストが滝の映像は人生の流れを表現してるのでしょうか?
雰囲気は良い作品。
☆☆☆☆ 一体なんなんだ!令和2年1月の映画界は〜! まだ1月の半...
☆☆☆☆
一体なんなんだ!令和2年1月の映画界は〜!
まだ1月の半ばにして、早くも今年のベスト1が出たんじゃないの?ひよっとして(;´д`)
岩井俊二が、『パラサイト』や『ジョジョラビット』どころか。『リチャード・ジュエル』のイーストウッドすら軽々と越えて来やがった〜!
ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3
いやいや〜!マジでやられました〜!
ある程度の出来の良い作品になりそう…ってのは、原作を読了済みの為に分かってはいたものの…。
…とは言うものの。全てに於いて〝 完璧な映画 〟等とは申しません。寧ろ、作品の端々に気になる箇所が無い…とは決して言えないのは事実。
例えば、原作を読んだ際に感じる。ちょっとしたミステリー的な要素だった、最後に鏡史郎と少女2人が出会って分かる真実や、水越・小室の関係を見ると。「あれ?原作と違って、アッサリと説明しちゃうの?」と思ったり。「結局、その関係はどうなっちゃうの?」等、細かなアラ探しをしてしまうとキリがないのですが…。
ところが作品全編を観終えた瞬間。そんな細かい事は最早どうでも良くなってしまっていましたね。
兎にも角にも、作品全体を漂う…。
《 純 粋 無 垢 な ピ ュ ア 感》
これがも〜〜〜〜〜〜半端ない(´・ω・`)
歳を取ってしまうと、いやが上にも人間の嫌〜〜〜な部分が見え隠れしてしまうのが常なのに…。全く持って、岩井俊二って奴は本当にも〜_| ̄|○
そんな、純粋な登場人物ばかり出て来る中にあって。豊川悦司演じる元美咲の夫は。原作を読んだ際に、余りにもゲスが更にゲスの鎧を纏っているかの様な人物で。読んでいて、逆の意味で魅力的に感じたのですが。どうやら、岩井俊二って人は。根がピュア過ぎるが故に、ゲスな人間を《トコトンまでにゲスな人間として》描くのは、不得手らしいのが垣間見えたのは残念…と言えばよいのか?それとも安心した…と言って良いのか(u_u)
それにしても。多くの純粋なるキャスト大集合の中にあって、森七菜ちゃんの《完璧なるピュア感》には脱帽です。まさに、今の時期を逃してはならない。少女から大人の女性へ脱皮する間際に香る瞬間の表情には、完全にノックアウトを喰らいました。
ところが…。
広瀬すずだよ!全くこの小娘が〜!最後の最後に何ですか〜全く〜!
この小悪魔娘のおかげで、最後に涙腺が完全崩壊してしまったじゃないか〜。゚(゚´ω`゚)゚。
何代にも渡る手紙による〝心の想いの伝え合い〟
現代に於いては、メールやLINE等を通した瞬間的な回答であったり、ダラダラとしたやり取りだが。携帯がなかった時代には手紙による《文通》とゆう通信手段が存在した。いや!まだ存在している。
現代ではネットを通す事によって、他人になりすましての通信が可能だ。映画の中でも、2人の少女はやはり母親になりすます事で、鏡史郎と母親との恋愛模様を知る。その後の母親が辿る運命を感じながら。
《文通》とゆう手段を知る世代は。手紙を書くとゆう行為を、現代の若者達が相手にメールを打つ際に感じているだろう、簡単な手段による《方法》とは考えてはいない。1文字1文字心を込めて書いている。当時にも多少の取り繕いはあったのだろうけれども。多くの人達が自分自身の心を、全身全霊を込めて手紙に書き込んでいたのだと思う。
そして、その後に待ち受けるのは。数日間に及ぶジリジリとした、相手の返信を待つ胸の奥にチクっと何かが刺さるかの様な感覚。
2人の少女も、母親の若い頃を知った事で。当時の多くの純粋な若者達と同じく、ジリジリとした感覚を知るに至り。本当の自分自身を出す事の怖さと同時に、その怖さを乗り越えた先にある人間としての成長を意識したのではないだろうか?
年頭から凄いのを観てしまったなあ〜(´-`)
取り敢えず、明日も早いのでこの辺でやめておきます。
思い出す事があれば、時々改訂します。そして早い内に、もう一度観に行かなければ( ˘ω˘ )
2020年1月19日 TOHOシネマズ錦糸町楽天地/スクリーン12
※ 最後に水越けいこさん。ご家族のご健康と、今後の活躍に期待をしております。
すれ違えども、愛は死を超えてちゃんと辿りつく
岩井俊二の女優のキャスティングと演出は毎度見事である。
岩井映画のレンズを通してみる広瀬すずと森七菜は、
白昼夢の中に現れる遠い日の憧れの女子生徒の面影のようだ。
田舎の夏の蜃気楼の向こう側にボヤッと現れる幻影、触れようと手を伸ばしても常に腕のほんの少し向こう側にあって触れることの叶わない蛍のようにはかない。
彼女たちは無垢と美しさと神々しさと残酷さと秘密を兼ね備えて僕らを翻弄する。
福山は美しすぎる過去に縛られて前進できずにいる、これは新海誠の秒速5cmや押見修造の漂流ネットカフェなどに通ずる、日本男児のセンチメンタリズムなのである。
手紙は岩井俊二の長らくからのテーマの一つであるが、作品に風情やノスタルジーや温かさを与えるとともに、主人公のキャラクターの性格そのものを如実に体現する。
過去の主人公たちの文通は、嘘とジェラシーと恋心からすれ違う。
現在の文通は松が中心に行われるが、過去の神木と対比していると共に、初恋にしがみつく両者のどうしようもなさも感じられる。
松は昔と同じく、結局嘘をついて姉のフリを選ぶ。
大人にはなったが、結局誰も、成長できてはいない。
やがて彼らは陽光に包まれた無垢な過去に別れを告げるために、暗く重たくのしかかる陰鬱な取り返しのつかない現在を見つめなければなるなくなる。
「ノルウェイの森」のように、大切な人の自殺による喪失、からである。
後半、広瀬母が高校時代のラブレターを大事に保管していたことが知らされ、福山は慟哭する。
豊川悦司が「お前はあいつの人生になんの影響も与えられなかったんだ。」と言っていたが、彼の手紙こそが彼女を絶望から救う生きる糧となっていた。
彼の小説も確かに読んでいた。
紛れもなく、二人は忘れられない人同士であった。
ようやく辿り着いた頃には、時すでに遅しだったが。
彼女が死ぬ間際みた過去は、恐らく、神木や妹、娘との素敵な思い出であった筈だ。
そして死によって苦しみから解放されていった。
これで文通の役目は最後である、彼らはそれぞれの生活に帰っていく。
牧は初恋を乗り越え、福山は仕事への情熱を取り戻し、広瀬も森ちゃんもお互いの生活に立ち向かう力を取り戻した。
彼らは大丈夫である、変われたのだ。
変われなかったのは、豊川だけである。
彼は全てから逃げてしまった。行先の不幸苦難が目に見える。
遥か昔から、手紙は時代や時を超えてさまざまな人々が愛や夢を綴ってきた。
言葉は力を持たないが、美しかった愛の記憶を、言葉は覚えている。
美しかった思い出だけで人は生きてはいけないが、生きていく理由を思い出すことができる。
そうやって、我々は騙し騙しでも、前進するしかない。虚無に抗うしかない。
誰かを本気で愛してしまったのなら、最終的にその人とのハッピーエンドはありえないのだ。
岩井の描くロマンは地に足がついた光と影のグラデーションである。美しく儚く残酷で優しい。
眠くなる
前半と後半
で、雰囲気が違いましたね。前半は松たか子さんを主軸にして笑いと軽快さがあり、後半は福山雅治さんを主軸にした深いストーリーになります。大きな山は無いですが、じっくり観れる作品でした。
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