ナイチンゲールのレビュー・感想・評価
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暴力の歴史
オーストラリアがイギリスの植民地であった時代の物語だ。原住民のアボリジニに対する差別や、女性差別が描かれる。主人公はアイルランド人の女性であるが、ここで歴史を押さえておく必要がある。この地域を支配していたのはイングランド人だ。アイルランド人は同じ白人であってもイングランドから差別される対象だった。主人公が囚人であることもポイントだ。オーストラリアに入植した白人の大半は、最初のころは囚人たちだった。オーストラリアは流刑地だった。主人公は女性という点で弱者であり、島流しにあった囚人としても弱者である「二重の弱者」だ。
これはそんな彼女が夫と子供を殺された復讐を果たす物語だ。道案内にアボリジニの青年を連れていく。弱者同士の連帯も描かれるが、安易な形ではない。アボリジニにとっては彼女もまた侵略者でもある。2人の奇妙な緊張関係が物語を引っ張る原動力となっている。
全編強烈な暴力が描かれる。しかし、これが人類史なのだ。どうしようもなく人類の行ってきたことだと強烈に印象づける。
最後が、少しガッカリ🥹
タイトルなし
むごい話だが歴史の一端だ
うっすらとオーストラリアでもアボリジニが迫害を受けた歴史があったとオリンピックの時に聞いたような気がした。
こういう実情だったのかと初めて知った。
アボリジニに限らず、権力に酔う輩にとって同じ白人であっても人間とは見ていない。
そんなものどもが、精霊のいる森を、善良な人々を、穢して踏みにじっていくさまは目を覆いたいものがある。
もはやあんな殺し方では手ぬるいんじゃないかと言いたいくらいだ。
夜に悲しい歌を歌うナイチンゲールは夜明けを迎え、崇高な魂を持った戦士も自分の太陽を得た。
立場は違えども同じ地球上で同じ朝日を穏やかに迎えることが、人間同士できるはずなのだとこの映画は訴えている。
映画祭では気分を害して席を立ったものも多かったと言われる問題作扱いだが、問題作などではない。
正面から、見る者へ人間としてどう生きていくべきなのかと問うてくる意欲作だ。
迫害する者、される者、中間にいてどちらも認める者、様々な道を選んでる者をこの作品の中だけで描いている。
ビリーの目を見るだけで泣けてくる。あんなにも悲しみと慈愛をたたえた瞳があるだろうか。
3.8 アボリジニの癒やし
前半は胸糞展開が進み、後半もあまりスカッとしないレベルの復讐劇が進む。誰も彼もが報われない。植民地時代の映画。史実通りかという側面よりも、映画の演出、歴史の断片的な側面で見ると良い気もする。
全体を通してアボリジニの癒やし、そして自然の癒やしを感じた。精霊や守り神や儀式といった、昨今巷ではやっている新興宗教とは違うレベルの伝統的な信仰感にはとても癒やしと生活や文化との密着感を感じとても癒やされた。
ビリーやチャーリーおじさんがめちゃくちゃ愛らしかった。また英国側がとても悪く表現されているので、これ演じる役者も大変だなと思った。
アイルランドとアボリジニ、英国。白人と黒人。流刑人と兵隊、一般庶民、民族。あらゆる対立が複雑に絡み合っており、これは受賞しやすそうな映画だなと感じた。
流刑地タスマニアに響く慟哭の歌声
美しくも残酷な復讐のバイオレンス・スリラーです。
19世紀初頭。
オーストラリアのタスマニアはイギリス兵に占領されていた。
イギリス政府は先住民族アポリジニの根絶作戦が繰り広げられていた。
早い話が、アポリジニの大虐殺作戦です。
オーストリア出身の女性監督ジェニファー・ケントは、オーストラリアの
黒歴史を、ひとりのアイルランド人女囚クレアと、アポリジの青年ビリーを
主役に、ふたりのプラトニックな愛にも似た絆を、壮大に残酷に描きます。
クレアはアイルランド出身で、些細な窃盗罪でタスマニアに流刑になりました。
囚人の身ながら夫と赤児に恵まれて幸せな日々でした。
しかしイギリス人将校のホーキング(サム・クラフリン・・・よくぞ引き受けた鬼畜将校役)の性のはけぐちとして日夜・性暴力に耐えていた。
それを知った夫がホーキンスに食って掛かると、夫と赤児はいとも簡単に殺されてしまうのだった。
復讐を誓いホーキンスの山越えを追うクレアに降りかかる苦難。
飢え寒さ、そして自然の脅威と更なる身の危険。
そして行く先々で虐殺されるアポリジニの人々。
アポリジニには生まれ育ったタスマニアが、安住とは程遠い民族浄化の大虐殺の地であり、イギリス人に怯える少数の先住民族なのだ。
血が流れます。
女はいとも簡単に犯され殺されます。
勇敢に銃を持ち復讐を誓うクレア。
生き残ったクレアは勇ましさとは裏腹に無力で身も心もズタズタ。
夫と赤児の夢を見て、死者の幻影にうなされるのです。
題名のナイチンゲールは歌の上手いクレアのあだ名です。
透き通った声が哀しみをたたえて美しくも物哀しい。
アポリジニの青年ビリーの歌声や呪文は温かい響き・・・
クレアを癒してくれます。
なぜに、不毛な殺し合いが未だに全世界で終わることがなく、人間は
かくも愚かで弱のでしょう。
クレアとビリーが《血みどろの復讐の旅路の果て》に見る
あっと声を上げるほどの荘厳な光景。
タスマニアの美しい森林や自然が、この過酷で残酷な物語を慰めてくれます。
テーマがブレてしまっているような、、、
冒頭の勢いが…
怒涛の勢いで、復讐を誓い将校たちを追い掛けるが、追いついてから失速。怖くなり、中弛み。途中、更なる蛮行を繰り返す将校たちへの憎悪も見ていて増幅するが、使用人としてしか見ていなかった黒人ビリーとの信頼関係構築のシーンが描かれ出す。結局ビリーが命と引き換えに復讐を果たすが、あんまりスッキリしなかった。
イギリス植民地時代のオーストラリアでの話。刑期を終えても解放され...
19世紀初頭のタスマニア
19世紀初頭のタスマニア、アイルランド人の女性が主人公、残虐な軍人に夫と赤ん坊を殺される。
アボリジニの青年を道案内に雇い、軍人たちに復讐しようと追いかける。
主人公の復讐心がブレるのがドラマを複雑にしている。
タスマニアの原生林は素晴らしい。
残酷な歴史
支配欲の権化
冒頭一瞬だけ、「ん、紳士的な人?」と思ったが、とんでもなかった。というか自分が悪いと全く思っていなさそうなのが、余計にタチが悪い。むしろ「目的のためには手段を選ばないオレカッケー」とか思ってそうなのがもう、ね。
単純にギッタンギッタンにしちゃってくださいよ、と思うのは所詮他人事という感覚がこちらにあるからだろうか。
『裸足の1500マイル』ではもっと後の時代だから、ここまでではなかったように思うが、いやあれはあれでイロイロヒドイけど。下に下を作る支配構造はどこでも通用しちゃうのね…。
イギリスとの確執は知識として分かっていても、小説や映画で目にしていたアイルランド系の立ち位置や扱われ方が、初めて腑に落ちた。なんで『タイタニック』で下層の船室の音楽があれなのかとか。
英語じゃないのはアイルランド語(ゲール語?)なのだろうか。
とりあえず元気な時に観ないと精神的に辛い映画だった。
世話の焼ける
『デトロイト』のビグロー姐さんと同じく、女性監督による豪州発骨太衝撃作!
これは非常に真摯に作られた映画でして、
思わず襟を正して観たくなる、
いや必然的にそうならざるを得ない
壮絶な内容でしたね。
さすがマッドマックスが
産み出された御国というべきか、
令和の時代に突入して尚もこの復讐劇、
しかも近未来とかカーチェイスとか、
ジャンル映画的ご褒美設定もなく
1800年代の植民地時代のキョーレツな
差別描写と非人道的な行いの数々が
これでもかと…。
更にポール・カージーよろしく
[街のダニどもはオレが始末する]的な
痛快無比なリベンジアクションでもなく、
発砲・弾着エフェクトも最小限で、
敵味方関係なくひたすらに無慈悲な殺され方
なので、悲痛さが我々にも
ヒシヒシとのし掛かってくる次第。
早速同監督が撮ったホラー
『ババドック 暗闇の魔物』も観てみましたが、
なるほど、こっちも相当にキツイ。
一応超常現象ホラーの体ですが、
その実シングルマザーの抱える
やり場のない負の感情が、
ババドックとして発露しているように見えるの
で、暗闇の魔物=母親のダークサイド
という生々しさを伴っており、
やはりジャンル映画として割り切って
観られない張り詰めた空気感が今作にも
漂っておりました。
オーストラリアの黒歴史?
19世紀当時英国の流刑地でもあったオーストラリアタスマニアが舞台で、収監されている囚人の白人、管理している将校達、白人に居住地を奪われ殺し合いを続けている黒人(アボリジニ)が入り混じる。主人公クレアは刑期を終えたにも関わらず中尉に気に入られ兵舎から釈放してもらえないアイルランド人女性。若いが夫と乳飲み子の娘がいる。大尉を目指す中尉は人妻の彼女のことが好きで、歌声を聞いてうっとりと切ない顔を見せたり、少年囚に字を教えてやると言ったり知的な面も持つが、基本的に自分の出世が大事なかなりのエゴイスト。冒頭は、中尉に囲われている彼女とその釈放を懇願する夫と、大尉になるには厳しい山を越えた島の反対側の街ローンセストンに駐屯する大佐に合わなければ無理だと知った中尉やその部下の対決で、ある夜、中尉達が彼女の家を襲ってもみ合った結果、部下達が夫と娘を殺されてしまう。復讐を誓って中尉を追うがローンセストンへ発った後だった。夫と二人で手に入れた一頭の馬に跨って中尉を追うが周囲にせめて黒人の案内人を連れて行けと止められ、大嫌いな黒人ビリーを雇う。そこからは、厳しい自然の中でクレアとビリー、そして中尉達一団の厳しい旅程が交互に描かれる。中尉達もガイドとしてビリーのおじにあたるアボリジニを雇っており厳しい山中では彼が頼りだとわかっていながら差別をし、山中で出会うアボリジニを惨殺、レイプをする。また当初は互いに憎しみ合っているクレアとビリーだったが、ビリーも家族を白人に殺された過去を持つことを知り、徐々に信頼し合っていく。
この映画は激しい暴力シーンで物議を醸したらしいが、タランティーノなどの暴力シーンと全く別で、どんなにひどい暴力でも目を背けず描き切ろうという決意を感じるもの。オーストラリアは近年多様化を積極的に受け入れているデモクラティックなイメージが強いが、50年前は白豪主義だった国で、こういった負の歴史はどの国も持っている。そういう過去を隠さず描き出すことで、過去に向き合って未来を変えることができるのだ。
胸糞悪い
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