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荒筋としてはそんなに難しくはない。売れない漫画家が、生活と恋人との結婚、そして自身の出世の為に手っ取り早くエロ漫画を描くことになり、キャラ設定していた女の子が紙から現実世界に飛び出てきて、魔法か何かで漫画家を女性化し、女性の気持を追体験させていくというストレートなファンタジーストーリーである。それまで女性の気持に無頓着故にそれが作品に投影できないという欠点を、トータルリコール宜しく、その対象そのものに変身することで、相手の気持に寄り添う事が出来たという、或る意味教訓的なコンセプトでもある。それをアニメ的な構成で実写化しているという建付けに施されている。
男から観た女、女から観た男はこうであろうという思考を固定観念の中で生活しているから、意識のギャップがなかなか埋まらないというジレンマを盛り込むのが定石かと思うが、本作はそこまでは深くはない。
そう、本作はあくまでピンク映画を一般劇場向けにR15+バージョンダウンしたOP PICTURES+作品だからであり、そのデメリット部分が顕著に現れた作品である。元々アダルト作品を再編集したので、編集の甘さというか大変テンポが悪い。カットの幾つかは冗長だし、キレが端的に悪いのである。その悪効果が益々作品を鈍重にしていき、筋が全く通っていないどっちつかずの内容担ってしまっているのである。
セックス描写が甘いので必然が薄れる。淫らさが足りなければピンクの矜持が保たれない。勿論15Rだからなのだが、ならばいっそのことカラミをバッサリ切って、女優のヌードのみのグラビア感に偏重してしまってもよかったのではないだろうか。ドタバタ劇を強調して、ポルノ性を抑えてしまい、外連味とシリアスを切り分けながら、そもそものテーマ性を押し出す構成で作れば、或る意味一つの“セカイ系”作品に仕上がったのではないだろうかと思う。モロにポルノではないが、中途半端に疑似に見える性交行為が益々、テーマ性を霧の中に閉じ込めてしまい、『女性の気持を理解しよう』という大義名分が陳腐になる。道徳を訴えてるのか、ギャグ漫画なのかバランスの悪さは正視できない。ならばいっそシリアス自体無くして、単に男が女体化して、女の快楽を初めて得ることで快楽の極みを味わう方向性に走った方がスッキリする。付け焼き刃的に二刀流を施すような作品は、この企画には参加させず、普通のピンク映画で上野上映したほうが余程マシであり、ましてやDVD化する理由もない。
アイデアとしてそれぞれの性器を男女の頭だけ映し出しての表情や声や頭の動きというアクションで快楽のメタファーを表現する件は面白かった。確かに使い古されたアイデアなのだが、チープさが駄目なので、もっとその視覚効果や演技方法を突き詰めれば、往年の映画『パンツの穴』のヲタクバージョンとして位置づけが可能だったかも知れない筈である。