この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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完全版
前作『この世界の片隅に』に40分近いシーンを加増した、言わば完全版。これから見てみようかなとお思いの方は、敢えて見比べたいのでなければ、是非こちらを。
元々、何気ない日常の短いエピソードを一つ一つ継いでいきながら、戦争によって徐々にきな臭さを増し、脅かされていく生活を、時の流れに沿って描いた作品だったが、前作では、見覚えのないシーンが回想で唐突に現れたりと、少し整合性に欠ける部分があった。
ああ、上映時間の関係などで、切り捨てざるをえなかったシーンがあるのだろうな、と、察してはいたのだが、新作では、その座りの悪い部分が全て表されていて、成る程、こういう事だったか!と、すっかり腑に落ちた。
特にリンさん関係のエピソードがしっかり語られた事で、戦前の日本女性の、相手の人となりもよく解らないまま結婚し、嫁として他人の家族や環境に囲まれ、共に時を過ごし生活をおくる内に一つの【家】になっていく姿が、より鮮明さを増した。
無論戦争ものとしても見るべき作品だが、今回は、一人の女性と周囲の人々の人生を追う群像劇としても見応えがある。
あの頃、たくさんのすずさん、たくさんのリンさん、たくさんの晴美さん、たくさんのお姉さん、たくさんの周作さん、たくさんの水原さんがいた。今もいる。
ごくごくパーソナルで小さい物語が、日本中に、世界中に、観客一人一人の物語となって広がっていく。
初めて見た友人は感激していました
前作に引き続きなので疲れを感じました、
すずさんの性格や生き方はわかるけれど、りんさんとの話が今回は中心にあってので、そちらをもっと深くした方がよかったです
あまりに家族の話を入れすぎたので、初めてみる人は良いけれど、長さを感じたのは私だけではないはずです
さらにいくつもの拍手
アニメーションならではの表現力で描き切られた人間賛歌。
前作に新たな場面が追加された完全版とのことで、普通なら「どこが追加された」なんてところに意識が行くものだ。しかし、本作に関しては最初からどっぷり作品に浸れて、それが前にあったシーンかどうかは、関係なくなってしまった。長時間であったものの、感覚としては前作と変わらず、時間はあまり気にならない。それどころか、映画としての魅力がパワーアップされている。
それにしても、このふわっとした「すずさん」の魔力はなんなんでしょう。観ている間の居心地の良さ、久しぶりに味わいました。
恐ろしい程に厳しい日常でも、楽しく生きるたくましさ。この豊かな時代にも通じる、人びとの生活への真摯さ。戦争ではなくても、災害の時などには、同じように打ちのめされることはこれからもあるだろうけど、この社会は大丈夫だという強くしなやかなメッセージ。人びとの日々の生活こそ、社会を支えていて、ホントに素晴らしいものなんだよとの賛歌が聞こえる。
何度観ても心動かされるとともに、元気をもらえる貴重な作品です。
リンさんと一緒にスイカを食べたい
50分くらい追加になったというのに、リンさんを中心とした遊郭パートしかわからない(昨日見たというのに、トホホ)。なんとなく序盤に出てくる憲兵も前作ではいなかった気もするのですが、軍艦の絵を描いたというだけで間諜扱いされたなんて『少年H』(2012)まで思い出してしまう。やっぱり敵性語だから“スパイ”は使わずに“間諜”なんですね。
周作とリンの間に何かある!と疑ったのは綺麗な茶碗をすずが見つけたため。この柄はリンさんに似合うな~などと妄想を膨らませると、お義父さんからは簡単に聞き出すことができた。見受けするには相当な額が必要だろうに、ちょっとその辺りが気になった。
終盤のシークエンスはほぼ踏襲する形で思い出したかのように涙腺が決壊するのですが、今作では遊女テルのパートでも泣けるのです。そしてリンさんの世界にもどっぷり浸れるのだ(スイカのエピソードなど)。周作とはどんな関係だったかなんて、たった一度きりの客だったと予想はできるし、そんなに深くはのめり込まなかったのだろうと終盤に推測できる場面もあった。
晴美ちゃんがミリタリーオタクだったという事実も判明。前作でもそんな雰囲気はあったけど、多分追加されているんじゃないでしょうか?一緒になって「青葉っ!」と叫んでしまいそうになりました。
『この世界の片隅に』(2016)レビュー↓
https://eiga.com/movie/82278/review/02228143/
追加分でさらに生活感覚が
さすがです…
原作にはないと思っていた追加シーンがすべてあったので訂正しました…
前作(無印の「この世界」)を見過ぎてしまったために「あ、ここが追加シーン」と考えながら観てしまうのは大目に見て欲しいんだけど…
追加シーンで印象的なのは、リンさん・テルさん絡みのシーンと、リンさんの語りのシーン、台風・土砂崩れ絡みのシーン。
後ろ二つの追加シーンでは、あまり多くを語らないことで物語的なカタルシスを獲得していた前作の印象が大きく変わったのは間違いないと思われる。結果的にはバランスが崩れてしまうのを恐れずに説明的な描写も加えていった。そこが素晴らしい。これは意図的なものだよね〜…
台風や崖崩れの被害も踏まえた上で、合わせて救済する…
作品の射程が、距離も広がりも格段に大きくなる。そういう片淵監督の意図がハッキリと現れている。
さすがです…
でも、でもね、監督の意図に反してるかもしれないけど、これはあえて「この世界の片隅に(完全版)」と言いたい…
お腹いっぱい
マイナス評価がない映画
自分も含めて前作から3年間で育った超コアなファンが一定数いるので、公開直後の満足度No.1なのは素直にうなずける。
前作は今作公開の前日まで1133日にわたって劇場公開され続けた。これは映画館がこの映画と監督に惚れて公開し続けたからである。
監督の穏やかでマニアックで情熱的な言動もこの映画のヒットの要因だ。前作ではおそらく180回以上の舞台挨拶を行い、その度にファンと直接会話し、たくさんのエピソードを振り撒く。Twitterでファンのツイートを毎日いくつもリツイートする。
監督のこういったキャラクターが映画館の中の人を惹き付けて、ファンを長くファンでいさせた。
だから3年前公開された映画が今回長くなって新作として公開された訳じゃなくて、ひと続きの、一連のストーリーなのだ。
映画ファンでなく、ましてやアニメファンでもない僕が前作を劇場で45回も観るはめになったのは、作品そのものもさることながら監督、スタッフ、資料提供した方々、映画館、特にシネコンじゃない厳しい経営を強いられながらがんばる映画館みーんなが魅力的だったからです。
前作の映画を作るときに既にこの「さらにいくつもの」を見据えていたのは明らかであり、監督にとっては映画化を決めてから9年間の集大成となるのです。
今作も練りに練られたマニアックな部分と儚くもかわいい遊女のエピソードなどを挿入し、コアなファンが観ても全員納得な仕上がりになっている。
監督は既に次回作に着手したらしく、間違いなくこれからのアニメを牽引することになろう。
前作では語られなかった、遊郭の片隅に生きたリンさんの物語
こころに響く、あたらしい作品。そして補完しあう二つの作品に。
観た人の心の中で完成する作品
★が5.0では足りない。10も20も与えたい。
2016『この世界の片隅に』に38分を足して「新作」となった本作。
単なるボーナスカットではなく、「周りの人々のいくつもの片隅」が描かれ、それが効果的に「すずさん」を彩り、様々な感情や女性としての内面まで引き出して、すずせんの身近な人間らしさをより感じさせてくれました。
また、入市被曝した人々、友人のリンさんを空襲で亡くしたなどのエピソード、背後の雑踏の言葉も増してより時代が加わって、「時代」「戦争の悲惨さ」もより強く感じさせてくれました。
音響効果がバージョンアップし、爆撃の迫力も増しました。
新旧二作とも、芯となる「どんな時代においても、懸命に生きていた人々はいた」ことを伝えているという部分は、変わらなかったと思います。
どこかの新聞評にあった「反戦のために作られた」映画ではなく、この中から「反戦の気持ちが湧くことがある」のだと思います。
観た人の様々な心の引き出しにある感情を刺激し、観た人の中で完成する作品でした。
名作
とてつもない
前作というか3年前の本編は、良かったけれど同じ年の「聲の形」の方が私には刺さりました。
しかし今作は違った。今まで古今東西さまざまの作品で「完全版」「ディレクターズカット」「特別版」など出されましたが(ブレードランナーが走りだったような)、出来不出来や好き嫌い、期待や失望は別として「本編を超える衝撃」を受けたものはありません。初めて世に出る「封切」にはそれだけの意味や重みがあるとずっと感じてきました。
しかしこれは違ったのです、初めて。
あの完成度の高い端正な作品を、より深く広く優しく哀しく甘く苦く豊かに押し拡げて観せていただき、陳腐ですが感謝しかありません。
前日に観た、40年以上をリアルタイムで付き合ってきたサーガの最終譚が銀河の彼方に吹き飛んでしまうほど、あらゆる人に勧めたいと思えるマスターピースです。
色褪せることのない〝奇跡のような映画〟
前作にくらべてヒューマンドラマの要素がより濃く描かれていました。
そして、今回は爆弾を落とす側の視点も含めて、空襲のリアルな描写が容赦なく迫ってきます。遥か上空から田畑らしきものは判別できますが、人がそこに生活していることまではパイロットには見えないのです。
なるべく早く戦争を勝利で終わらせようという立場で戦略を立てる人たちにとっては、たぶん、相手国にダメージを与えることで戦争継続の意思を奪うことは大きな目的のひとつだと思うのですが、実際に爆弾を落とすパイロットにしてみれば、自分の操縦する爆撃機が搭載している爆弾をミスなく落とし切ることが仕事の目的になります。人によってはその行為に何らかの葛藤が生じるはずですが、訓練によって躊躇わずに爆弾を投下できる空軍兵士(パイロット)が多く選抜されているのでしょう。
彼らの心の中には、爆弾を投下する先にあるすずやリンやテルが生活している空間への想像力が存在してはならないし、戦争に参加していることがもたらすある種の昂揚感は、元来屈託のない素朴な青年であった若者たちを簡単に大量殺人者に仕立ててしまいます。
その結果、リンや晴海の人生は、パソコンのバックスペースキーでそれまで入力していた文字を消していくように、無かったことにされてしまうのです。
すずさんのただ受け身なだけではない芯の強さや葛藤や揺らぎ。そして、リンさんやテルさんのあまりに儚過ぎる人生。すずにとっては気持ちが通じ合う確かに存在していたはずの彼女らの人生は、すずさんの心の中に居場所を求めるしかないのです。
前作は映画自体は多くを語らず、観た人それぞれが想像力を駆使して、何が自分の心を震わせたのかについて自ら語りたくなるという稀有な作品でした。
本作は、すずさんやリンや径子の人生、そして戦争(空襲)のリアルをかなり具体的に語ることで、鑑賞者はかなり具体的なメッセージを受け取ります。
受け取ったそのメッセージをどう次世代に伝えていくのか。我々自身が宿題を課せられることになりました。
原作への忠実さが増した本作品。 充実した時間でした。
能年玲奈が上手くなってる!
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