この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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主題歌がこの映画にぴったりです
すずさんと再会
公開から遅れること1か月余り、先週から地元映画館でもやっと上映が始まり、さっそく鑑賞してきました。待ちに待ってたすずさんとの三年ぶりの再会。なつかしくて、すずさんの声を聞いただけで涙が出そうでした。前作からかなりの追加シーンがあったというとこですが、序盤から「こんなシーンあったっけ?」の連続で、追加シーンがどこだか指摘できないほどでした。というのも、ストーリーは覚えていても、細かなシーンをはっきり記憶してなかったからだと思います。でも、おかげで新作を鑑賞するような新鮮さを味わえました。
新鮮さを感じたのは自分の記憶が曖昧だったからだけでなく、作品から受ける印象が変わったからだと思います。本作ではリンさんに大きくスポットが当たっていたような気がします。しかし、決してリンさんを描こうとしているのではなく、それによって描かれるのはあくまですずさんです。リンさんの存在が、すずさんの穏やかな笑顔の裏にある本音の部分を引き出しているように感じました。これによって前作以上にすずさんの内面が深く描かれ、すずさんをより身近に感じ、涙なしには見られませんでした。
その一方で、前作同様、明るくほのぼのしたすずさんを通して、何気ない日常が描かれ、戦時中のことなのに思わず笑いがあふれるシーンがそこかしこにありました。逆らえない体制の中でも、自分の中で理由を探し、折り合いをつけて生活してきたであろうすずさん。そうして彼女が出した一つの答えが、「笑顔で日常を送る」ことだったのではないかと思います。大切な日常を守り、周囲の人々とともに笑顔で生活することを、自分の戦いとしてきたのです。
それなのに、そんなすずさんの思いにおかまいなく、日本は敗北によって終戦を迎えます。これまでの苦しい生活、悲しい犠牲、つらい日々は、いったい何だったのか…。玉音放送後のすずさんの怒りと悲しみの慟哭には、胸を締めつけられました。すずさんの強い思いが、胸に突き刺さるようでした。
本作でもまた、明るく強く優しくたくましいすずさんに、大きな感動をもらいました。と同時に、当時の日本の片隅には、さまざまな「すずさん」が懸命に生きていたのだと、改めて気づかされます。月並みのことしか言えませんが、一人でも多くの人に見て、感じて、考えてほしい作品です。
やはりこれが「完全版」か
2月9日、京都の出町座で鑑賞。40席ほどの小さな劇場だが満席だった。
古い話で恐縮だが高校生の頃、劇場版「ガンダム」を見た時の記憶が蘇った。大好きな作品でTV版を何度も見直していたためどのカットのあとにどんなシーンが来るのかほぼ覚えていたので、新作カットになるたびに感動すると同時に違和感も覚えた。
この作品でも元からのファンが多かったのか、鑑賞中、新作シーンになるたびに場内になんとなく緊張感が走ったように感じたのが可笑しかった。
予想していたことだが、やはり「完全版」と呼ぶべきものであった。本来あるべきピースがピタリと収まり納得できる出来であった。
「完全版」と呼ぶと以前公開されたオリジナルが「不完全版」となってしまうため新たなタイトルがつけられたが、今後このバージョンが「この世界の片隅に」の公式版になるだろうと予想する。
周作さんのハ◯頭
上映時間3時間に少し腰が引けていましたが、観に行って良かったです。
すずさんとリンとの繋がりは前作で分かっていたのですが、ここまで深く繋がりがあったとは・・。
ところで本作は、すずとリンの話しをメインに構成されている感じがしましたので、他のキャラクターが、完全に脇役に見えてしまいました。
前作では、すずさんとその家族の、戦争を生き抜く姿が印象的だったのですが・・。
まあ今回は先の展開が分かっていたから、そう感じたのかもしれませんね。
ところで、入場特典のポストカードに、周作さんのハゲ頭が描かれていましたが、本編では出ていませんでしたよね?
上映が始まってから、ハゲ頭をずーっと探していたのは私だけだったのでしょうか(^_^;)。
あっという間の3時間だった
前作「この世界の片隅に」がとても素晴らしかったので、本作も鑑賞。
前作から新作カットを追加し、3時間超えの大作。私は映画への集中力があまり無く、ちょっとでも面白くないとすぐ飽きてしまう性格なのですが、本作は3時間全く飽きずに鑑賞できました(これは私にとってはすごいことです!)。
前半は主に日常パートを描いており、太平洋戦争真っ只中とは言え、ほのぼの笑いありといった雰囲気。ですが後半に入ると空襲のシーンが増え、戦争の苛烈さにより、日常が崩壊していく様が描かれています。また登場人物の中にも、死亡したり、行方不明になる人がいて、前半の何気ない日常からの落差が、見ていて辛くなります。この作品に限らず、戦争モノというのは、虚しさと言うか、やるせなさと言うか、なんとも言えない悲しい気持ちになりますね。
またアニメーションならではの空爆の描き方は面白いです。画用紙にボタッと絵の具を垂らしたように爆発を表現するのは、実写映画では不可能。まさにアニメ独特の表現ではないかと思います。
話は変わりますが、最近は実写映画よりもアニメ映画のほうが面白いのではと思っています。直近では「アナと雪の女王2」「幸福路のチー」などを見たのですが、どちらも傑作でした。アニメ技術の向上なのか、アニメでしかできないような表現が、より磨かれていると感じます。これからもこのような素晴らしいアニメ映画を見ていきたいですね。
優しさに胸が震える
私は原作を読み、公開時のバージョンは未見。160分もありながら、それでも原作からこぼれている細かなエピソードはあり、この原作の奥深さを逆に感じることとなった。あくまですずという女性の、戦時下の他愛ない男と女の話でありながら、りんとすずというこの時代の、選択肢の少ない女性の対照的な生き方を描き、最後は輪廻転生をも思わせる宇宙観さえ感じる。
すずが西瓜を与えた屋根裏の子供はりんさんかもしれなくて、そのりんさんは周作の隣にいることはできなくて。
はるみちゃんは死んでしまったけど、名も知らぬ子供が新しい家族になって。
誰かが、誰かの場所だったところにおさまって。
そう簡単に居場所が無くなったりしないよ、というりんさんの声が胸を締め付ける。誰もがそうではないことも含めて。
りんさんも、ピカドンで息子を亡くし隣人の女性も、両親と腕を無くしたすずも、あまりにも失ったものへの執着が無くて、それなのに何かを諦めている様子でもなくて。戦争は人に悲しんだり後悔したりする暇も与えず、どんどん何かを奪っていく。そんな状況を受け入れるしかないけれど、でも日々の営みを丹念に過ごしていくすずたちが、健気で胸を打つ。
すずは人生の何一つも自分で決めていないように見えるけど、何でも受け入れてしまうしなやかさに惹かれた人たちから、選ばれているのかもしれない。
戦時下のごくごく普通の家庭の生活を、こんなに丹念に描いた作品はあまり思い出せない。
「配給」「バケツリレー」そういったステレオタイプ以上の描写は、こちらが想像する以上のものがあった。日本全体がこんなにかつかつの生活をしていて、よくご先祖達は耐えてきたなと。
すずの腕に母を見出した子どもは救われたが、実際は戦争孤児としてひどい目にあった方たちもたくさんおり、そのドキュメンタリーを見たときは、同じ人間の所業かと唖然としたことがある。
だからこそ、フィクションであろうと、最後に描かれたすずたちの選択に涙が出た。
そりゃ良いに決まってるんだが
前作も良かったけど本作も
「これはこれで ゼイタクな 気がするよ…」
前作、
…と言っていいのか分かりませんが
前作が公開して間もない頃、
プロデューサーの真木 太郎 さんがネット対談で明かした
【30分、資金と時間の都合上やむを得ずカットした】
というお話を聞いて驚きました!
そして、真木さんは【片渕監督が望めば、〈完全版〉を手掛けてもいい】
ともおっしゃっていました。
その言葉を聞いて嬉しい反面、不安にも感じました…
「この30分間が復活したら、作品の密度が薄まってしまわないだろうか?」 と…
杞憂でした!
わたしたちは前作を観たあと、色々と想いを巡らせました。
何度も劇場に足を運んだ方、
何度も こうの史代 さんの原作を読んだ方、
何度も コトリンゴ さんの楽曲を聴いた方、
何度も のん さんの人柄に感じ入った方、
何度も 慰霊碑に祈りを捧げた方、
その度に、戦争に胸を痛めるわたしたち。
だからこそ、さらにこの作品が、愛おしくなる。
続編でもない。 焼き直しの長尺版でもない。
すずさんをはじめ、取り巻く人物のエピソードを《復活》させたことで
さらに強固な密度で、まさに《完全版》として名作が更新されたのです!
今まで、あらゆる時代と国で
勝手に始まって、勝手に終わっていった戦争のことを、その痛みを、
わたしたちは未来に伝えていかなければならない。
今まで、この世界の (さらにいくつもの) 片隅で生きた
すずさんのようなヒトたちがいたことを
わたしたちはけっして忘れてはいけない。
あなたたちが生きてくれたから
今、わたしたちが生きている。
「ありがとう、すずさん」
※追記 : ★マイナスひとつの理由は、
作品への思い入れが強すぎて、感情に流されないための
自分への戒めの釘を刺す思考といたしまして、
説明部分が加わって余韻が薄まってしまった感を
否定出来なかったわたしにあります…
2回目の観賞。 一度めは一人で、今回は友人と観ました。 私は前作は...
さらに厚みが増した
複数の視点でさらに掘り下げられた「この世界」。
片渕須直監督自身が述べているように、この作品は単に前作に30分追加した拡張版ではなく、ほぼ別の作品とも呼べるような内容になっています。
前作との最大の違いは、前作がすずさん中心だった物語であったのに対して、本作は周辺の人々、特にリンさんの視点が加わることで、より重層的な物語となっていることです。
彼女が深く物語に関与することで、すずさんと夫である北條周作さんとの関係が、単なる仲睦まじい若夫婦ではなく、非常に情念に満ちた関係であることが強調されます。同様に、北條家の人々のすずさんへの関わりに、前作では思いも寄らなかったほどの打算があったことが分かります。
こうした複数の視点から語られる物語は、終盤のある展開に収斂します。それは「無垢な自分」を含めて何もかも失っていったすずさんが行き着いた境地です。本作で最も印象的な場面ですが、前作以上にこの場面が胸に突き刺さる人も多いでしょう。同じ戦争を扱った作品である『ジョジョ・ラビット』が、最後まで無垢である事を失わないことと非常に対照的な展開となっています。今この時期だからこそ、本作と『ジョジョ・ラビット』を見較べてみると感慨深いかも知れません。
改めて劇場で観直してみると、映像だけでなく音響に大変な神経を使って作られた作品であることが実感できて、改めて片渕監督とスタッフの方々の熱意に心打たれました。この音響、そして本作で追加された新譜を体感できる点だけ取り上げても、十分劇場で観る価値のある作品です。
無印鑑賞済
りんさんとの描写が追加されたことで、周作との関係性も補完され印象が変わる。細かな描写にも意味が付加されたりしている。てるちゃんちょっと言葉が九州っぽいと思ったらクレジット中に「飯塚弁協力」の項目を観て、やはりと納得した。
子供時代の哲とのシーンの追加も後々効いてきた。
しっかり軍需工場でのエンジンテストで「いい音鳴らして」(実際はうまくいっていない場面だが)きたのは、ミリオタらしいというか(ですよね?)
枕崎台風にオチをつけてくるのがすずさんクオリティ。
知多さんがががが。
音楽も新曲追加やアレンジ変更など気合が入っている。
などが追加シーンの印象。
それと前からあったすずさんが焼夷弾を消す場面だが、黄燐焼夷弾だったら非常に正確に消し方を描いているとか(『このミステリーがすごい!2020年版』「皆川博子×辻真先 レジェンド対談」中の辻真先氏の発言より)。すずさんがやけくそになってめちゃくちゃに消してると捉えていたのだが、ちょっと違うのかもしれない。そんな新たな発見もあった。
原作の漫画を読んだので、戦渦で生きている女性をこんなふうに描いてい...
168分!
2020年映画館鑑賞5作品目
長い長すぎる168分
冗長だ
尾骶骨が痛い
期待していた内容と違う
白木リンのスピンオフかと思っていた
前作ではボツになった白木リンの話を単純に加えた完全版というわけでない
前作の部分もけっこう削られテンポが早すぎる
それなら120分以内にコンパクトにまとめて欲しかった
編集下手くそと少し腹が立った
前回同様絵はいいし能年玲奈も喋りも良かった
最近のジャンプの漫画よりこういう絵の方が好き
政治家に忖度することを批判するくせにバーニンググループのトップに忖度して能年玲奈を使わないテレビ局の人たちは偽善者だ
それを批判しない新聞も大馬鹿だ
僕は世界の片隅でを反戦映画と受け取らない
それだとなんか安っぽい感じになる
戦争や自然災害など過酷な状況で生きぬく人間ドラマの素晴らしさだ
それでいてほのぼのとしている
笑顔が絶えない
たしかにみんな笑って暮らせるならいい
∋ ∈
3
世界に誇れる反戦映画であり人間讃歌
オリジナル版もそうでしたが、今作でも後半から涙止まらずでした。世界に誇れる反戦映画であり人間讃歌。人の暮らし営みだけでなく、どうにもならない複雑な感情といったものが本当に繊細に丁寧に描かれていて、ずっと切実な気持ちでスクリーンに引き込まれていた。今よりずっと、人々の人権意識が低く、一人ひとりの人権も守られず、命も儚かなかった時代(嫁入り、人身売買、戦争など)に、それでも日々の暮らしを紡いで繋いでゆく人々のたくましさ、生々しい感情、悲しみ、笑い、楽しみ、切なさがほんとに美しく、そこが反戦映画としてだけでなく、美しい人間讃歌として成立しているこの作品の凄さだと思う。流されるようにして呉にきた主人公も、ほんとは意志を持って人生を生きてる。夫にも真摯に向き合ってる。自分の感情を見て見ぬふりせず、丁寧に扱ってる。そんな誇り高き人の人生を見せてもらえたことが尊い。前作同様エンディングにますます泣いてしまうのだけど、自分が産んだ子でなくとも、子どもの姿というのはいつの世にも希望の光になるとも思った。
戦下の生と(性と)死
2016年公開の『この世界の片隅に』の改訂増補版。オリジナル作品では「戦争の「当事者」としての庶民」を強く意識しましたが、本作では・・・
昭和19年、広島で暮らす19歳の浦野すず。
突然、見初められれ、呉の北條家に嫁ぐことになった。
大らかで、鷹揚で、かなり世間知らずのすず。
嫁いだ先でも、性格は変わらない。
しかし、海軍鎮守府のある呉は、敵機の襲来を繰り返し繰り返し受けることになる・・・
というのは原本のレビュー時に書いたあらすじめいたものだけれども、改訂増補版でもそれは変わりません。
けれども、印象はかなり異なります。
原本が「戦争当事者としての庶民」を強く感じさせるにしても、主人公すずのキャラクターから幾分ファンタジーめいた感がなきにしもあらずでしたが、今回は、三業地の赤線の女・リンとの関係を大きく描くことで、庶民の「生身」感は強くなりました。
夫・周作とリンとの関係、さらに、周作とすずの夜の営みも描かれることで、性=生の側面は強調されています。
個人的には、三角関係=平和な時代、というようなイメージがあるのですが、戦下で死が近しい分だけ、より生々しいものに拘るのかもしれませんね。
この生々しさによって、玉音放送を聞いたすずの悔しさは原本以上に増幅したように感じました。
原本よりも、今回の改訂増補版の方を評価します。
只々愛おしい
前作ですっぱり切り取ったリンのエピソード。
個人的に寂しかったがあれはあれで英断だったとも思うし、物語としてとても綺麗にまとまっていました。
そのリンのエピソードを加えた本作。
ディレクターズカット版なのか、完全版というべきなのか、ともかく嬉しかったです。
そしてやはりというか、リンが入る事で物語にとても深みが増していました。
前作はとてもふわふわしててそれがまた心地良いのだけど、そこに人々の巡り合わせや生と死の重さが増したような印象でした。
前作も何度か観る機会があったのですが、回数を重ねる度じわじわ沁み入ってくる感じですね。
特にその台詞一つ一つが心に残ってくるんです。
それと桜の木のシーン、再現度の高さというか演出が本当に素晴らしかった。
全体のつながりも良く、新しい作品としてまとまっていましたね。
逞しくて、悲しくて、嬉しくて、寂しくて、そして暖かい。
只々愛おしい作品です。
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