この世界の(さらにいくつもの)片隅にのレビュー・感想・評価
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「前作は1100日以上ロングラン」
今年3本目。
今作は250カットを超える新エピソードによって、上映時間は約40分長くなりました。
前作は1100日以上ロングランを続けています。
加えられたのは主に、遊郭で働くリンとの交流。
この加えられたシーンによって前作と同じ場面でも、複雑な意味合いを持って心に迫って来ます。
ディレクターズズカットとは違う、新作として楽しめる作品になっています。
ほろ苦さとリンさんの優しさ
前作ではあえて省いたリンさんとのエピソードを盛り込んだ3時間の大作。ノーカット版は得てして冗長になりがちだけど、この作品は全く長さを感じさせない。それどころか、前作を繰り返し観たマニアで、ストーリー展開を熟知している層にも全く新しいテーマを提示してくれる。
リンさんと周作さんの再会シーンも描かれていたけど、その場面も含め、りんさんはすずさんに対して、一切周作さんとの関係を匂わせるそぶりもみせていない。知らん顔されたら嫌じゃろう、と述べたシーンに秘められたのだろうか。
プロフェッショナルに徹したその態度があればこそ、すずさんも周作への嫉妬心を消すことができたんだろう。原作では中巻44ページで示されたような、リンさんの心理描写を示すシーンは気づかなかった。
原爆投下後髪を切ったシーンや終戦の時の場面だけでは唐突だったけど、リンさんのエピソードが入ると、単にぼーっとしたキャラに思えた前作のすずさんの、実はうちに秘めた強さが説得的に伝わる。
代用品のことを考え過ぎたシーンは原作以上に描写がアダルトで、それも本作のほろ苦さを際立たせているなと。
原作に寄り添いながらさらに踏み込んだ傑作でした。
素晴らしい作品をありがとうございます。
年のはじめに観るのはこれしか考えられなかった。
元日のテアトル新宿はほぼ満席で、一緒に観た人たちは、まだ出会っていないだけの友人みたいな感じがした。
映画はオープニングのコトリンゴの声を聴いた時から泣いてて、っていうか正直言うとテアトル新宿の前でビジュアルを見た時からもう泣きそうだった。
「波のうさぎ」のシーンではもう号泣してしまって、どうしちゃったんだ私の涙腺…。そしてハンカチ忘れてきちゃって大変なことに…。
こうの先生の原作は私が人生で一番大切な漫画なんだけど、正直前回の映画はそれほど積極的に乗れなかった。リンさんと周作さんの関係がないと、祝言の時に周作さんが拳を握りしめた理由が分からない。
監督が「この映画が原作を読むきっかけになれば」っておっしゃっていて納得したけど、それでも残念な気持ちは残った。
今回の映画で、そういう気持ちは完全に成仏した。
本当に何の心残りもなく、ただただ素晴らしい作品をありがとうございます。それだけです。
テルちゃんの登場も(悲しいけど)嬉しかったし、原作以上に説明的な場面もあったけど、原作を知らない人には必要な措置だったとも思う。
前回の映画を観た人も観てない人も、本当に本当にひとりでも多くの人に観てほしい。
この作品に触れると、小西康陽によって広まった
「戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである」
という吉田健一の言葉をどうしても思い出す。
クソみたいなニュースが飛び交う世の中だけど、諦めず、地に足つけて、誠実に暮らしたい。
「大変だと思えていた頃が懐かしいわ」なんて言ってしまう未来が来ないように。
長尺になっても良作
長尺になっても薄まった印象はなく、全てのシーンが丁寧に作られているなあと感じました。
今作は立場の違う女性たちそれぞれの視点で見た戦時下の暮らしが描かれていました。
その内容には全く不満はないです。
アニメも声の演技も音楽もどれも本当に素晴らしいです。
ただ前作の方が私は好きです。
前作には説明が省かれて描かれていないシーンを、登場人物の表情や当時の時代背景から観客自身が想像して理解するように誘われました。
今作のように直接的に描かれてしまうとかえって私にとっては本当らしさがなくなってしまったようです。
実際の当時の暮らしでも、言葉にしない、言葉にはできない、その時には自分自身でも意識できなかったこと。そんな人々の心にしまってあった事柄が無数にあって、私たちの祖母や曽祖母たちはそういう言葉や思いを抱いて年を重ねていったのだと思います。前作の鑑賞後にそんな女性たちの人生に思いを馳せた感覚は、残念ながら本作では得られなかったからです。
幸せはすぐそばに
1年を幸せに過ごせたらと、前作の作品を2017年元旦に観てすごくよいスタートが切れたので、今回も元旦に行きました。
なんですかね。冒頭から涙が(早い)。
なにに対しても、かけがえのない物であるという価値観をおしえてくれる。それは、
私たちが享受している日々が「当たり前」に存在しているわけではなくて、たくさんの人や色々な出来事の失敗や工夫の積み重ねの上に構築されたもので、どれだけ幸せなのかをやさしくおしえてくれます。
まんがは未読なので、前作の映画ではリンさんの存在がよくわからなかったのですが、本作でのリンさんの掘り下げで、あの時代の厳しさがよりわかりやすかったです。
厳しい中でも人々は明るく、みんなが一生懸命に生きていて勇気づけられるのですが、リンさんの言葉がさらに、背中を押してくれます。
「最高に贅沢じゃない?」
ドキッとして、ふわっと温かい気持ちになりました。
物は考え方次第だとは思いますが、まさに痛感しました。
元気が出ない時とか観たら、尻を引っ叩かれたような一喝されて、よい涙が流せそうです(^^)
傑作。前作も良かったけれど更に面白く重い。
前作でカットされたリンが関わるエピソードが追加されてすず、周作の心情がよく分かり、前作では理解出来なかった周作の水原とすずに対する行動の理由が納得できるようになった。北條家の人々が単なる良い人達ではない事も見えてくるし、何よりすずが社会というか国家、戦争の犠牲になっていたんだという事実が玉音放送に対する怒りに現れた事もわかりやすい。絵柄はソフトだけれど内容は結構エグい。上映時間は長いが全く気にならない。
この世界の片隅のすべての人に
2020年最初に鑑賞した映画。やはり名作だ。今年、世界から紛争・戦争が一つでも少なくなりますように。新たな紛争・戦争が一つも起こりませんように。紛争・戦争で亡くなる人、難民になる人が一人でも少なくなりますように。
すずとリンの話として再構成
2017年公開の映画に追加シーンを入れたロングバージョン。オリジナル版は鑑賞済。
どこが追加シーンかは明確にはわからないが、リンとのシーンがかなり増えていた感じがする(本当のところはわからないけど)。結果、オリジナル版は夫や嫁ぎ先での居場所を見つける話の印象が強かったが、本作はすずとリンが2人でそれぞれの居場所を見つける物語に見えた。
オリジナル版も気に入っていたが、本作はもっといい。家族との関係、嫁ぎ先での関係、夫との関係、リンとの関係。力強くたくましく、そして笑いながら生きていく姿がとても感動的だった。遊郭や、当時の結婚・近所関係を含めて戦時中の広島で、すずが居場所を見つけていく物語としてとても深みがあった。
とっても長いのだが、多くの人に観てほしい。
気持ちが近くなった。
前作はすずさんをどこか外側から観ていたが、今回は親近感わく作りになっていた気がする。
のんびりなすずさんのペースに乗って、ゆるゆるとホンワカした気持ちになり、恋愛のソワソワに巻き込まれる。
あんな壮絶な出来事の時代とは思えない空気が、不思議な感じだ。
流される様に生きている訳じゃない、至ってシンプルなすずさんの思考は、未来を明るく照らす気がする。
<片隅>たちと生きる、を先に観ていた為に更に深みが増す。
何気に観ている風景も、出来事も細部にまで渡って調べ上げられていて、人物の動きや着物の柄に至るまで研究されている。
その牛歩のような歩みで、丁寧に積み上げられられているからこそ、伝わるんだと思った。
心の底の秘密
深みが更に増し
素晴らしい映画でした。
ますます すずさんが大好きになりました。
艶っぽいところもあるよね。
なんでか知らんけど
途中からずっと泣きっぱなし。
不思議と『手』のぬくもりを感じました。
2020.1.3 二回目鑑賞。
何度観ても毎回新しい発見がある
コトリンゴの歌が今も頭の中を流れています。
前回の映画では見えなかったことが、今回の作品では詳しく描かれています。
核家族になり夫婦だけになり結婚しない独身が増える現代で、
あの時代の家族や親戚、ご近所さんなどの付き合いが
現代の私たちには煩わしくも思えるが
家族っていいかもって思ってしまった。
劇中のリンさんのいくつかの言葉が胸に染みます。
より多くの人に観てもらいたい作品。
グッとこみ上げてくる
人の人生、色々あって当たり前ですけぇ。
常に笑顔の人に限って心の中では泣いてたりするもんですけぇ。
この大きな世界の中の、こんなちっぽけなほんの片隅に、生まれ、育ち、出逢い、別れ、泣き、笑い、怒り、そして、ホッと一息つける。
そんな空間を大切にしたい、と思いました。
奇跡的傑作なのは揺るぎないがもうちょっと削った版を見たいかも
前作が10年に1本の突出した傑作ゆえ待ちに待って本年ラストの劇場鑑賞へ。
ちょっとした足し算がより広いドラマ、映画空間を作っている部分は感じ、むかしマンガで読んだことのあるリンさんのエピソードはやはりあったほうが自然、と思いつつ、終わりの方には若干足し過ぎ感も感じた。
これは情報量の多さの問題でもある。映画は特に後半は観客の想像力が加味されるので、若干削ったくらいがちょうどいいところ、に、突っ込まれたエピソードは少し蛇足、とは言わないまでもリズムを崩している気がしてもったいない気がした。
と言えども、やっぱりこれは非凡過ぎる特別な、奇跡の作品だよな、と思いながら。奇跡と言えるのは、この原作、この監督、そして監督のリアリティの追求、のんはじめ声優陣の選択、コトリンゴの音楽と歌。
激動の昭和前半の悲劇と喜劇
最初に言っておくこれは映画ではない!この作品は映画以上の何かを持っている。
じゃあ何だ?
自分は教科書だと思う。
学校で戦争を学ぶ時よくはだしのゲンを見るがこの世界の片隅にを見て欲しい!
この作品に評価は必要ない。誰が評価しても同じようなかんじだと思うから。もしこの「教科書」を星3以下で評価する人がいるなら感動して指が震えたか、「泣かせてくれたなぁチクショー」となってあえて低くしたかのどっちのはず!
自分の様な評論家でもないただの映画好きにこの教科書の感想は書けません。というか書けません。
唯一書けるとしたら「感無量」かな。
日本人として観るべき教科書です。
是非劇場へ。(cmではありません)
2019年ラストでこの世界の片隅にこのような傑作に出会えてよかった!ありがとう。
全世界の人に観てもらいたい。
泣きました。不条理、そう思います。
元教員です。どんな道徳の教本よりこの映画を子どもたちに観てほしい。
「戦争はいけない」なんてうわっぺらで言ってても何も変わらない。
戦争を肯定している人にも観てほしい。
全世界の人に観てほしい。
この映画を見ている間、この映画館を出たら外には平和が広がっている。戦争という悲劇を味わった人たちの犠牲の上に。そう思いました。
申し訳ない気持ちになりました。
すでに何度も見たのに、長さも感じさせない、ただし…
3年前の公開で3回程リピートした作品でしたが、今回は新規部分を追加した再編集版で、内容は同じです。それにしてもこの完成度の高さは近年上位に入る作品で、3時間という長尺も全く感じさせない内容でした。1作でこの長さは『RWBY』以来です。
前回にはなかった(割愛された?)、キービジュにもあるリンさんと、夫の周作さん身辺の『大人の裏』要素が加えられ、ほんのチョッと成人向けに振った形になりました。ただ前回作でも当時の過酷な日本に生きた人達は充分描写されていましたが、今作は『大人の事情?』裏部分を加えてより原作重守・そこに生きる人間を更に濃密に描く事で完成度のアップを目指した感があります。
より視点を北条夫妻に寄せて、すずさん1人称から北條さんところのすずさん、的な雰囲気に仕上がっていたかと。
ですが正直、この追加されたリンさんと周作さんの一件で悩むすずさんを挿入した事には賛否分かれそうな気がします。加えた事によって却ってバランスを崩す事も大いに有り得る話で、蛇足だと感じるお客さんも居そうだなと。
個人的には平凡にボサーっとした人生が如何に幸せな事か、むしろ難しい事なのかをより印象づけられたのと、逆にすずさんがワリと大衆の中の1人の一般的な女性である事がシッカリ描かれてたかと思います。
ですが、茶碗の件は確か当人自身がバラしてましたよね? 言わなければあの一連の話は知らなかった事になり、なくても成立はしていて敢えて騒動を一つ追加しただけの事です。あってもイイのですが、決して必要不可欠ではありません(必要不可欠なら前作で外す筈がないので)。
ところで、太平洋戦争を題材にした作品はどれもが暗く、悲惨さを訴える右に倣った物が多い印象です。この作品は、内容のワリには暗さは然程感じられない作風ですが、やはり中盤以降に一転、春美ちゃんの一件を挟んで哀しい様相に暗転していきます。そして終盤には下を向いても仕方がない、前を向いて生きようという姿勢で穏やかに幕を閉じます。
結局いつも激動の時代は常にネガティブに押し流され、そのくせ性懲りもなく同じ事を繰り返す自分や世の中に無力感を覚えます。その結果つくづくあの時代に生まれなくてよかった、でも後10年遅く生まれたかったな、と妙な感想を思いつつ映画館を後にしました。
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