「面白いが、前作ほどの衝撃は…。」クリード 炎の宿敵 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
面白いが、前作ほどの衝撃は…。
名作ボクシング映画『ロッキー』シリーズの第8作にして、『クリード』シリーズの第2作。
世界チャンピオンになったアドニスの前に、父アポロの命を奪ったイワン・ドラゴの息子、ヴィクターが立ち塞がる…。
○キャスト
ロッキー・バルボア…シルベスター・スタローン(兼脚本/製作/キャラクター創造)。
アドニス・クリード…マイケル・B・ジョーダン(兼製作総指揮)。
ビアンカ…テッサ・トンプソン。
『クリード チャンプを継ぐ男』があまりに傑作だったので、続編である今作もすぐさま観賞。
勿論、羽佐間道夫吹き替え版での観賞であります。
うーむ…。これは…。
いや、決して悪い映画ではないのです。
『ロッキー』シリーズとしては十分に合格点な作品だと思います。エンタメとして普通に面白いっ👍
そしてとにかく、ヴィクター・ドラゴ役のフロリアン・ムンテアヌの身体がすげぇ…。
ただ、『クリード』シリーズとしては正直不満。
前作にあった映像としての現代的なかっこよさが薄れている。
例えばアドニスがYouTubeでアポロの映像を流しながらシャドーをする場面や、アドニスがダウンし、その最中に見る走馬灯にアポロが現れた瞬間にバッ!と覚醒する場面。そして全体に漂う詩的な雰囲気。
なんか、こういったものが欠けていたように思います。
少しきつい言い方をすると、本作にはちょっと古臭さを感じる。前作では出来ていた現代映画へのアップデートが出来ていないのです。
それを象徴するのが、アドニス&ロッキーの特訓シーン。
荒野にある謎のボクシング施設で原始的な根性論トレーニングを行う二人。
ここがすごく昭和の映画っぽい。近代的で冷たい印象を受けるドラコ親子のトレーニングと比較させたかったのでしょう。似たような描写が『ロッキー4』でもありました。
物語的にわかりやすいんですが、これを今やるのは正直ダサい。嘘くささが目立ってしまう。
前作でも古典的なトレーニングは行なっていましたが、リアリティ・ラインを超えないギリギリのバランスを保っていました。今作はそのラインを超えてしまったため、昭和な雰囲気が出てしまい、『クリード』シリーズとしては今一つだと感じてしまったのでしょう。
前作と較べて気になった点といえばもう一つ、今作ではロッキーの影がうすい。
前作ではアドニスとロッキー、二人とも各々の死闘を演じていましたが、今作でのロッキーはサブキャラに徹しており、そこがちょっと物足らない。
細かいことですが、癌を患っていたとは思えないロッキーのガタイの良さに違和感…😅
あと、アドニスをしっかりと描写したかったのでしょうが、そのせいで全体のバランスが悪くなっていると思いました。
アドニスの人物描写が多すぎてお腹いっぱい。正直間延びしていて、退屈なところもあったりします。
そもそも本作は、一作の中で世界チャンプ、プロポーズ、父親の仇ドラゴの出現、子供の誕生、(実質)敗北、リベンジと『2』〜『4』までの物語を詰め込んだようなシナリオ。正直言ってこれは詰め込みすぎ。
そしてアドニスにはフォーカスし過ぎている反面、仇敵ドラゴ親子や、ロッキー&ロッキーJr.との関係の描写が薄くなってしまっていることには不満。
…『ファイナル』で和解したはずのロッキーとJr.の関係がまた微妙になっているのはなんで?
強く思ったのは、ヴィクター・ドラゴのバックストーリーをもっと重点的に描いてよ!ということ。
彼の境遇や両親との確執をより明確に描写していれば、最後のリベンジマッチはさらに燃えるものになっていたのに!いや、もったいない…。
BD特典の未公開シーンで、アドニスとヴィクター・ドラゴが試合後に顔を合わせる場面で、ロッキーとイワン・ドラゴがアイコンタクトで意志疎通するという描写がありました。
非常に感動的な演出だったので、ここはカットせずに本編に組み込んで欲しかったな〜と思います。
再度申し上げますが、映画として駄作だとは全く思いません。普通に面白いです。
ただ、前作の出来の良さによって高く上がったハードルを飛び越えることは出来ていない作品でした。
やっぱりライアン・クーグラー監督は凄かった!
おそらく次回作の構想もあるのでしょうが、ライアン監督、どうか復帰して下さい!
やはり彼あっての『クリード』シリーズでしょ!
※『クリード3』はまさかのマイケル・B・ジョーダンが監督っ!
スタローンとの間でなにやら一悶着あったようだが、いやはやどうなることやら…。