クリード 炎の宿敵 : 映画評論・批評

クリード 炎の宿敵

劇場公開日 2019年1月11日
2018年12月25日更新 2019年1月11日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

「ロッキー4」を「面白い映画」から「いい映画」へと変える“父子の宿命”篇

1985年に公開された「ロッキー4 炎の友情」は、いわゆる「いい映画」ではなく「面白い映画」として、筆者の中では位置づけられている。科学トレーニングで超人と化したソ連(ロシア)のボクサー、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)が、全米元チャンプのアポロをリング上で撲殺し、ロッキー(シルベスター・スタローン)が単身敵地に渡ってリベンジマッチを繰り広げるのだ。米ソ新冷戦時代を象徴する物語展開や、強国アメリカを体現したスタローンのマッチョぶり。加えてこの強敵のインフレ化は、連載の止め時を逸した少年マンガのごとき様相で第1作目のファンをげんなりさせ、一部の好事家からはカルトな人気を得ている。おしゃべりロボットやゴルバチョフのそっくりさんまで出てくるところ、「1」のボクシング映画としてのリアリティや、涙と感動のサクセス・ストーリーを粉砕してしまう破壊力だ。

だがロッキー神話を継受した「クリード」は、アポロの遺児アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)を主人公にしている性質上、この「4」とどこかでリンクを果たさなければならなかった。それを華麗に成し遂げたのが今回の「炎の宿敵」だ。怪物ドラゴの「その後」を捉え、そしてアポロJr.vsドラゴJr.という因縁の対決を実現させることで、彼の存在をロッキー史の重要事項として編み込んでいる。しかもドラゴの登場は単なるノスタルジーではない。ロッキーに敗れてロシア国内での立場を悪くした彼と息子ビクター(フロリアン・ムンテアヌ)の苦悩が、実子との確執に心痛めるロッキーや、自らも父親となったアドニスにクロスし、映画は「父と子」という壮大な総譜を奏でていく。

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なによりビクターの存在は、ヘビー級チャンピオンとしてキャリアの頂点に立ったアドニスを、逆境へと向かわすのにこれほど格好のものはない。事実、父親の血を受け継いだハードパンチャーとして、本作でアドニスをとことんまで窮地に立たせている。ドラゴとルドミラ(ブリジット・ニールセン)との間に生まれた子にしては顔立ちがずいぶんと違うが、それはこのさい、ここで問うべき問題ではないだろう、たぶん。

戦わなければ、オレは何者でもなくなる——。アドニスとビクターとのモスクワでの再戦、そして勝敗を決めるシチュエーションなど、「4」の韻を踏む要素が随所に顔を出す。なので、できれば同作を事前に観ておいて損はない。そこで「4」を「いい映画」あるいは「面白い映画」と認識するかは個人差と体調によってまちまちだろうが、きっと多くの者が前者だと思うだろう。「炎の宿敵」は、そういう作品に仕上がっている。

尾崎一男

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