スカイライン 奪還 : 映画評論・批評
2018年10月9日更新
2018年10月13日より新宿バルト9ほかにてロードショー
今年の“最もハチャメチャな映画”BEST3入りを確信。脳にダイレクトに効く劇薬!
2018年の“最もハチャメチャな映画”である。いや、まだ2018年は終わってないので百歩譲って「“最もハチャメチャな映画”ベスト3」入りを確信しているのが、この掟破りの宇宙人襲来SF「スカイライン 奪還」だ。
本作は2010年のSFパニック映画「スカイライン 征服」の続編。前作は低予算を逆手に取って、宇宙人が圧倒的な力で地球を制圧していく3日間をロサンゼルスの高層マンションだけを舞台に描いていた。撮影に使われたマンションはVFX工房“ハイドラックス”の社長でもある(前作の)監督の自宅。「ウチの会社、こんなCGできまっせ!」とアピールする商魂が濃厚で、決して大ヒットしたわけでも高い評判を呼んだわけでもなかったが、見る者すべてを仰天させる“衝撃のラスト”によって一種のカルト映画になった。
正直「なんで今になって続編が?」という当惑と、「あのラストの続きが観たい」という野次馬気分と50:50くらいの割合で観たのだが、斜め上のウルトラCが矢継ぎ早に繰り出され、こちらのちっぽけな思惑なんぞ完全に吹き飛ばす大怪作だったのである!
厳密には“続編”とはちょっと違う。前作と同じ“宇宙人襲来”を、別の場所で遭遇した人々を主人公にした映画なのだ。LA市警の刑事と半グレの息子、地下鉄の女性運転手らがなすすべもなく逃げ惑う前半は、絶望が重くのしかかるサバイバル映画。ところが中盤辺りから、観客は「あれ? あれれ?」と右に左に揺さぶられることになる。「途中でチャンネル替わった? なんでアジアにいるの? てか、この武術使い、どっかで見たことない?」
それもそのはず。監督のリアム・オドネルは、インドネシアの武術“シラット”をフィーチャーしたインドネシア産アクション「ザ・レイド」を観て主演のイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンに惚れ込み、「スカイライン」チームに呼んできたのだ! かくしてVFX映像に肉弾アクションが紛れ込み、監督も想定していなかった方向に走り出す(監督が想定してないのだから、観客は振り落とされないように映画にしがみつくしかない)。
オドネル監督が放り込んだ食材は“シラット”だけじゃない。前作ラストの大風呂敷をさらに広げた壮大なスペースオペラ、伝説の特撮職人レイ・ハリーハウゼンを彷彿とさせるコマ撮り風ロボット対決、戦隊ものみたいな超アナログ着ぐるみバトル……そしてゴッタ煮を強引にまとめ上げるガッツと情熱! 本作を観たある編集者は「カツカレー大盛りフルーツパフェぶっかけランチって感じですね!!」とメールをくれた。なんと的確な表現か。たまのゲテモノ喰いも楽しいもの。だったら今年は絶対にコレ。脳にダイレクトに効く劇薬ですぜ!
(村山章)