ビューティフル・ボーイのレビュー・感想・評価
全90件中、81~90件目を表示
表面だけを追わず
依存の怖さと、父と息子の絆の深さ
それぞれの想いが胸に響いて、いろいろなことを感じながら、始まりから終わりまで、飽きることなく見入った。
父デヴィットの愛情が、本当に素晴らしく、何度もニックに裏切られても、その手を離そうとしない。諦めようとしない。
理解する為に、ドラッグを調べ、プロに話を聞き、依存症で街を彷徨っている少女に話を聞いたりする。(そのあとの行動にも驚かされる)
親だから、の一言では片付けられないような愛情と信頼。
後半、繰り返し手を出し、破滅に向かうニックを見ながら、自分には救うことなど出来ないと、ある決意を持って、ニックと話をする。
そのシーンは観ているこちらまで、苦しく、辛く、それが正しいのかも分からない不安を感じて、泣きそうにさせる。それすらも愛情だから。苦しいほどの、痛いほどの愛情。
そして、2人がどんな状況でも、堅いハグを交わす時に言う言葉「Everything」
それは、デヴィットが、幼い息子に伝えた言葉、この世の何よりも愛している、何より(anything)すら超えたすべて(everything)より愛している、I love you more than everything、から生まれた2人の合言葉ような一言
ハグとその一言に、この父と息子、双方の愛情と絆の深さが見える
それでも、ドラッグに溺れたニックには、その愛情もいっときの助けにしかならない。
途中で、ドラッグがどのような状況を脳内に起こしているかの話が出てくるのだけれど、依存症の人たちが、断ち切っても、何度も手を出して、何度も繰り返す怖さを知ることになる。
家族や愛情は必要だけれど、それだけでは、この依存を断ち切ることは出来ないのだろう。
ニックにも、デヴィットだけなく、実母のヴィッキー、再婚相手であるカレン、みんなが救い出そうとする。幼い弟妹も兄を慕い続ける。それだけ、愛情に包まれているはずなのに、彼の依存を断ち切れない。
後半、車を走らせるカレンの姿に、こちらも悔しくて、ともに泣きかけた。
ヘビーな気分になる
薬物は✖︎。僕は○。
去年、広島の街中にペタペタと貼られていた、「カープの丸佳浩選手」を起用した、ドラッグ撲滅キャンペーンのポスターのコピーが、そんな感じだったと思う。FA権を行使した巨人移籍発表、数日後には町中からキレイサッパリ消えたけど。
薬物依存撲滅の訴求力としては、あのポスターの方がシンプルで良かった。
父と息子の愛情物語として見れば、不満しか残らない。出来の良くない散文詩。緩慢、一転、説明省略のぶっ飛ばし。時系列引っ掻き回し。人物描写の決定的欠如。映画としての出来に不満。
久し振りに、スティーブ・カレルの地顔を見れたが、率直に言って、所謂「無駄遣い」。あくまでも個人的な好みに合わなかった、ってことかも知れないけど、これは本年のワーストグループに入ります。
すれ違う二人の思いが切ない
ドラッグ依存症になってしまった息子と、彼を必死になって救おうとする父の物語
実話の映画化
もしも、息子が依存症になってしまったら、家族にできることは何か
この映画を観ると、依存症という病気を克服することが、本人と家族にとって、どれだけ大変なことなのかがよく分かる
父にとって息子は、小さい時から変わらないかわいい息子だけど、
息子は、両親の離婚や親からの期待というプレッシャーの中で、もがき苦しみながら成長している
そして、現実逃避で試してみるドラッグ
それが依存症へと発展していく
その中で、父は必死になって息子に救いの手を差し伸べるけれど、時には笑顔で、時には泣きながら、息子はその手をすり抜けてしまう
この物語は、そんな二人の交差して、すれ違ってしまう思いが切ない作品だった
それが、実話だからこそ、真に迫って心に響いてくる
依存症を克服しなければいけない本人も大変だけど、その家族も大変なんだなと改めて思った
誰だって、依存症になったらいけないのはわかっている
けれど、ちょっとした好奇心があれば、誰だってその深い闇に簡単に落ちてしまう可能性がある
自分がそうならないためにも、そして、もしも、自分の周りの人が落ちてしまったら、何ができるのかを知るためにも、この映画を観るべきだと思う
そして、その息子を演じたティモシー・シャラメはやっぱり天才だった!!
ティモシーファンには、観ていてかなり辛いシーンがあるけれど、あの才能を思う存分堪能できる作品になっているので、ティモシーファンもぜひ観て欲しい作品
家族の愛情と葛藤をリアルに描かれていた
家族とは
事実に基づいた、薬物依存症の息子を持った父親の話。
これはテーマが薬物依存症だったけど、お酒でもギャンブルでも、依存症ってこうなんだろうなと。
ちょっと親がうるさいとか、ちょっと生活環境が変わったとか、どこにでも誰にでもある取り立てて言う程でもない理由で、抜け出せなくなる。
助けようとする周囲の愛は空回りし、裏切られ、、。
でも最後まで見捨てない父親・スティーブ カレルの演技が素晴らしく良かった。
元妻や現在の妻とぶつかりながらもどこかで息子を信じたい。これが最後と思い、子供時代を懐かしみ、それでも息子は永遠に息子なのだ。
ティモシー シャラメも『君の名前で僕を呼んで』より断然素晴らしく、父親に甘える顔、小さな兄弟に見せる顔、大人っぽく振る舞う顔など、場面や相手によって変わる演技も素晴らしかったです。
残念だったのは時間軸構成。
ちょっとだけ分かりにくくて、これは回想シーン、現在のシーン、少し前のエピソード等、入り組んでいたのでそこが分かりやすかったらもっと良かった。
新しい編集の形
新しい作品。受け入れられ難いかもしれないが、新たなことには意味がある。
7割の期待と3割の裏切り。これは自分が映画を観るうちに感じた、自分の好みの黄金比である。ジャンルや監督、役者、宣伝などから自然と作られる期待。例えば、スピルバーグとトム・ハンクスのコラボレーションだと何となく、どういうテイストなのか想像できますよね。さらに、今ではSNSの影響もあり、他の人のレビューを読んで期待巣をすることも多くなってきたと思います。
その期待に100%応えられた映画というのも、とても面白く、エンターテインメントとして、ストレス発散としては十分に楽しめると思います。アメコミヒーローとかの大半はそうですよね。
一方、人生の礎になるような、「この映画は私の人生を変えました。」「この映画は何十回も観ました。」というような映画は、期待だけではなく、そこに良い意味での裏切りが必要だと思います。ツイストエンディングもその一つですが、思ってた方向とは違う方向にストーリーが進んでいったり、今まででは想像のつかないキャラクターを役者さんが演じたり。そういう裏切りがはまると映画は最大の力を発揮するのではないでしょうか。
本作も大きく裏切られました。予告も見ず、タイトルだけで想像したストーリー。期待通り、スティーヴ・カレルとティモシー・シャラメがいい演技を見せてくれました。そして裏切ってくれたのはストーリーの向かう方向と、編集の仕方。これが正解かどうかはわかりませんが、とても印象が強かった。
ストーリーは家族をテーマにするだけに、ほっこりしたものを想像しました。ちゃんと裏切られました。父親と息子の物語なのですが、どちらの感情で物語が進んでいくのか、どちらの思い通りに物事が動くのかというのが、最後の最後までわかりません。さらには、どこでエンディングを迎えるのかもわからない。そのサスペンス感がとても私の深くまで入ってきました。
そして何と言っても編集。JカットとLカットの応酬。時間軸が3つか4つあり、それらを行き来するため、最初はかなり混乱しました。しかし、必然的に「構成はどうなっているんだ?」と自分からストーリーを探ろうと前のめりになりました。ストーリーがどちらに転ぶのだという2択と、キャラクターが人生において何度も選択を迫られる2択、そしてそれらがうまく噛み合わないもどかしさが、その時間軸を使った編集を使って絶妙に表現されていました。
時間軸のジャンプは、ランダムに起きるのではなく、キャラクターの感情の繋がりを用いて行われます。たとえば思い出だったり、2人のキャラクターの感情のズレを時間軸をジャンプすることで表現したり。かなり、いろんな意味があるのですが、キャラクター中心に描かれているので、見失うことはありません。意識的ではないにしても無意識の段階で感じ取れる。
そして終盤、その時間軸が一つにつながり、父と息子のキャラクターの感情が重なり、遠のいていく流れがとてもスムーズでエモーショナルだった。これは新しい編集の力。
音楽もかなり、ジャンルや楽器を混在させた、チャレンジングなことをしていましたが、これはどうなんだろうか。ちょっと前面に押し出されすぎている感覚もありましたね。
この作品、賛否両論ありそうですが、私は個人的にとっても奥に入り込まれた作品でした。
全90件中、81~90件目を表示